容積計量方式ディスペンサーの仕組みと時間圧力方式との違い
容積計量方式ディスペンサーは、機械的に一定の容積を送り出すことで高精度な定量吐出を実現します。塗布量のばらつきを抑えたい工程や、材料コストを厳密に管理したい用途で採用されることが多い方式です。
本記事では、容積計量方式の仕組みや時間圧力方式との違い、代表的な種類と適した用途について解説します。
容積計量方式とは
容積計量方式とは、ポンプやシリンダーなどの機械的な動作によって、あらかじめ決められた容積の液剤を押し出す計量方式です。吐出量は機構の動作量(ストロークや回転数など)によって決まるため、液剤の粘度変化や供給圧力の影響を受けにくいという特徴があります。
この方式では、シリンダー内に液剤を充填し、ピストンやプランジャーの移動量に応じた体積分だけを正確に吐出します。スクリュー式の場合は、スクリューの回転量に応じて液剤が送り出されます。いずれの場合も、機械的な動作と吐出量が直接的に対応している点が特徴です。
容積計量方式は「ポジティブディスプレイスメント方式」とも呼ばれ、高い再現性が求められる精密塗布工程で広く採用されています。
時間圧力方式との違い
ディスペンサーの計量方式には、容積計量方式のほかに時間圧力方式(エア式)があります。両者の違いを理解することで、用途に応じた適切な方式を選定できます。
時間圧力方式の仕組み
時間圧力方式は、シリンジ内の液剤にエア圧力をかけ、バルブの開放時間によって吐出量を調整する方式です。構造がシンプルで導入コストが比較的低いため、幅広い用途で使用されています。
ただし、吐出量は圧力と時間の掛け合わせで決まるため、液剤の粘度変化や残量による圧力変動の影響を受けやすいという特性があります。温度変化による粘度変動や、シリンジ内の液面低下に伴う吐出量のばらつきが生じることがあります。
精度面での違い
容積計量方式は、機械的に決まった体積を押し出すため、粘度変化や圧力変動の影響を受けにくく、安定した吐出精度を維持できます。一方、時間圧力方式では、同じ設定でも環境条件や液剤の状態によって吐出量が変動する可能性があります。
高い繰り返し精度が求められる工程や、材料の歩留まりを厳密に管理したい場合には、容積計量方式が適しています。
用途による使い分け
時間圧力方式は、構造がシンプルでメンテナンスが容易なため、試作工程や少量生産、塗布量の許容範囲が広い用途に向いています。一方、容積計量方式は、量産工程での品質安定化や、高価な材料を使用する工程でのコスト管理に効果を発揮します。
容積計量方式の種類
容積計量方式には、機構の違いによっていくつかの種類があります。それぞれの特徴を理解することで、液剤や用途に応じた適切な方式を選定できます。
プランジャーポンプ式
プランジャーポンプ式は、シリンダー内をプランジャー(ピストン)が往復運動することで液剤を計量・吐出する方式です。プランジャーのストローク量で吐出量が決まるため、微量から中量までの精密な吐出に適しています。
構造上、1回の吐出ごとに液剤を充填する動作が必要となるため、間欠的な塗布(点塗布やショット塗布)に向いています。
スクリューポンプ式
スクリューポンプ式は、スクリュー(ねじ)の回転によって液剤を連続的に送り出す方式です。回転数と吐出量が比例するため、連続的な塗布(線塗布や面塗布)に適しています。
フィラー入り材料や高粘度液にも対応しやすく、幅広い液剤に使用できる汎用性の高さが特徴です。
ギアポンプ式
ギアポンプ式は、かみ合う2つの歯車の回転によって液剤を送り出す方式です。歯車の歯と歯の間に液剤が入り、回転とともに吐出側へ運ばれます。
低粘度から中粘度の液剤に適しており、連続吐出での安定性に優れています。ただし、フィラー入り材料では歯車の摩耗が進みやすいため、使用する液剤の特性を考慮する必要があります。
ピストンポンプ式
ピストンポンプ式は、プランジャーポンプ式と類似した構造ですが、より大容量の吐出に対応できる設計のものを指すことがあります。ポッティングなど、比較的多量の液剤を定量吐出する工程で使用されます。
適した用途と液剤
容積計量方式は、その高い精度と安定性から、さまざまな産業分野で活用されています。代表的な用途と対応する液剤について整理します。
電子部品の精密塗布
半導体パッケージへのアンダーフィル材塗布や、基板上への接着剤塗布など、微量かつ高精度な塗布が求められる工程で採用されています。塗布量のばらつきが製品品質に直結するため、容積計量方式の安定性が活かされます。
自動車部品の接着・シール
エンジン部品やセンサーモジュールの接着、ハウジングのシール材塗布など、信頼性が求められる工程で使用されています。エポキシ系接着剤やシリコーン系シール材など、粘度の高い液剤を安定して塗布できる点が評価されています。
医療機器の組立
カテーテルや診断機器の組立工程では、生体適合性のある接着剤を微量かつ正確に塗布する必要があります。容積計量方式は、こうした厳格な品質要求に対応できます。
対応可能な液剤
容積計量方式は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系接着剤、グリスなど、幅広い液剤に対応しています。フィラー入り材料や高粘度液についても、方式を適切に選定することで安定した塗布が可能です。
ただし、液剤によっては機構部品との相性(化学的な適合性や摩耗性)を考慮する必要があります。使用する液剤の特性に応じて、接液部の材質や方式を選定することが重要です。
まとめ
- 容積計量方式は、機械的な動作で一定容積を押し出すことで高精度な定量吐出を実現する方式である
- 時間圧力方式と比較して、粘度変化や圧力変動の影響を受けにくく、安定した吐出精度を維持できる
- プランジャーポンプ式、スクリューポンプ式、ギアポンプ式など、用途に応じた複数の種類がある
- 電子部品、自動車部品、医療機器など、高い品質要求がある工程で広く採用されている
- 使用する液剤の粘度、フィラーの有無、塗布パターンに応じて適切な方式を選定することが重要である