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院内搬送の課題と自動化 | 病院向け搬送ロボット導入のメリットを解説

院内搬送の課題と自動化 | 病院向け搬送ロボット導入のメリットを解説

医療現場では、慢性的な人手不足や医療従事者の業務負担増加が深刻な課題となっています。特に、薬剤や検体、医療材料などを運ぶ「院内搬送」は、必要不可欠でありながら多くの時間と人手を要する業務です。このような状況を解決する手段として、院内搬送を自動化するロボットの導入が注目されています。

本記事では、病院の搬送業務を自動化するメリット、ロボット導入時の注意点、そして自院に最適なロボットの選び方まで解説します。

院内搬送をとりまく環境

院内における搬送業務の種類

院内搬送は、さまざまな物品を正確かつタイムリーに各部署へ届ける必要がある、病院運営において欠かせない業務です。しかし、搬送にはスタッフの長距離移動が伴いやすく、緊急対応が必要なケースも多いため、現場の大きな負担となっています。

薬剤

薬剤部で調剤された内服薬や注射薬などを各病棟や外来へ搬送

検体

病棟や外来で採取された血液や尿などの検体を検査室へ搬送

医療材料・滅菌物

SPD(院内物流管理)センターから手術室や各部署へ、清潔な医療機器や消耗品を供給

食事

厨房から各病棟へ、配膳車を使って食事を搬送

リネン類

清潔なシーツやタオルなどを各病棟へ、使用済みのものを洗濯室へ搬送

書類・カルテ

診療科と受付、医事課などの間で紙カルテや各種書類を搬送

院内搬送の課題

日本の医療現場では、少子高齢化の影響で慢性的な人手不足が深刻化しています。限られた人員の中で、看護師や薬剤師、検査技師などの専門職が、専門外である搬送作業に多くの時間を費やしているケースも珍しくありません。

こうした状況は、患者ケアや本来の専門業務に割く時間を圧迫し、医療サービスの質低下やスタッフの心身疲労の原因となる恐れがあります。

搬送業務を自動化するロボットの役割

病院向け搬送ロボットは、病院内の多種多様な搬送業務を人に代わって自動で行うロボットです。ロボットは、あらかじめ記憶した院内マップとセンサーにより自己位置を把握しながら、人や障害物を避けて目的地まで自律走行します。

反復的で単純な搬送作業をロボットに任せることで、スタッフはより専門的で価値の高い業務に集中できるようになり、医療現場全体の効率と質の向上が期待できます。

院内搬送をロボットで自動化するメリット

医療スタッフの負担軽減

最大のメリットは、医療スタッフを煩雑な搬送業務から解放し、本来の専門業務に集中できる環境を創出することです。看護師が患者様のケアに、薬剤師が服薬指導や調剤業務に、臨床検査技師が分析業務に、より多くの時間を割けるようになります。

安定した搬送体制の維持

搬送ロボットは、休憩を必要とせず24時間365日稼働することが可能です。これにより、特に人手が少なくなる夜間や休日でも、安定的な搬送体制を維持できます。

搬送ミスの防止

人が行う作業には、ヒューマンエラーがつきものです。特に多忙な現場では、薬剤や検体を誤って別の部署に届けてしまうなどの搬送ミスが発生する可能性があります。搬送ロボットは、あらかじめ設定されたルートや指示を正確に実行できるため、こうした人的ミスを大幅に減らすことが可能です。

セキュリティ性の向上

セキュリティ機能を搭載したロボットも多く存在します。例えば、薬剤や個人情報を含む書類などを運ぶ際には、ICカードやパスワードで認証しなければ収納庫が開かないように設定できます。これにより、搬送中の盗難や紛失を防ぐことが可能です。

非接触搬送による感染リスクの低減

人が介在する機会を減らすことは、院内感染のリスクを低減させる上でも重要です。特に感染症病棟への物品搬送などにおいて、ロボットを活用することで、医療スタッフと患者様双方の安全性を高めることができます。

院内搬送を自動化するロボットの種類と特徴

搬送ロボットは、その「走行方式」や「形状」によっていくつかの種類に分けられます。それぞれの特徴を理解し、自院の環境や目的に合ったタイプを選ぶことが重要です。

走行方式による分類

ロボットが院内をどのように移動するか、という方式の違いです。大きく分けて「ガイド誘導方式」と「自律走行方式」の2種類があります。

ガイド誘導方式(AGV)

床に貼られた磁気テープや二次元コードなどの「ガイド」に沿って走行する方式です。AGVは「Automated Guided Vehicle(無人搬送車)」の略称です。

概要

床に貼られた磁気テープや二次元コードなどの「ガイド」に沿って走行する方式

メリット

・走行ルートが明確で安全性を確保しやすい
・比較的、導入コストを抑えられる傾向がある
・停止精度が高い

デメリット

・ルート変更の際にガイドの貼り替え工事が必要
・ガイド上に障害物があると停止してしまう
・床の材質によってはガイドを設置できない場合がある

自律走行方式(AMR)

センサーで周囲の環境を認識し、あらかじめ作成した地図情報(マップ)を元に、ロボット自身が最適なルートを判断して走行する方式です。AMRは「Autonomous Mobile Robot(自律走行搬送ロボット)」の略称です。

メリット

・ガイドの設置が不要で、導入やルート変更が容易
・人や障害物を自動で回避して走行できる
・柔軟な搬送ルートを設定できる

デメリット

・ガイド誘導方式に比べてコストが高くなる傾向がある
・Wi-Fi環境など、安定した通信インフラが必要
・周囲の環境変化(物の配置など)に影響を受けることがある

形状や積載方法による分類

どのようなものを、どのように運ぶかによって、ロボットの形状も異なります。

積載型
(棚・カートタイプ)

ロボットの上部に棚やコンテナが設置されているタイプ。薬剤や検体、書類などの小〜中程度の物品を複数同時に運ぶのに適している

牽引型

配膳車やリネンカートなど、既存の台車を後ろから引っ張って(牽引して)運ぶタイプ。一度に大量の物品を運搬する際に活用される

低床型
(潜り込みタイプ)

専用のカートや棚の下にロボット本体が潜り込み、そのまま持ち上げて運搬するタイプ。受け渡し場所でカートごと切り離せるため、効率的な運用が可能

院内搬送に最適なロボットの選び方と導入の注意点

導入を成功させるためには、事前の検討と準備が不可欠です。ここでは、導入前に確認すべきポイントを解説します。

導入目的の明確化

まず、「誰が」「何を」「どこからどこへ」「どれくらいの頻度・量で」運びたいのかを具体的に整理しましょう。例えば、「夜間の薬剤部から救急外来への緊急薬剤搬送を自動化したい」「日中の検体回収ラウンドの負担を軽減したい」など、目的を明確にすることで、必要なロボットの性能(積載量、速度、稼働時間など)や台数が見えてきます。

院内の環境確認

ロボットがスムーズに走行できる環境が整っているか、事前に必ず確認が必要です。

通路の幅

  • ロボットが人や他の機器とすれ違うのに十分な幅があるか

床の状態

  • 小さな段差やスロープ、溝などはないか
  • 床材はロボットの走行に適しているか

フロア移動の有無

  • 異なるフロア間の移動が必要か
  • フロア移動が必要な場合、ロボットは病院の既存エレベーターと連携可能か

通信インフラの確認

特に⾃律⾛⾏⽅式(AMR)の場合、院内をカバーする安定したWi-Fi環境や、SIMカードを利用した独立したネットワーク回線の確保が必要です。病院という場所柄、セキュリティ要件が厳しく、外部ネットワークとの接続が制限されるケースもあるため、ネットワークインフラの選定は慎重に行う必要があります。

安全対策と運用ルールの策定

ロボットと人、そして他の機器が安全に共存するための対策とルール作りが重要です。

安全機能の確認

  • 人や障害物を検知して自動で停止・回避するセンサーの性能や、緊急停止ボタンの有無などを確認

注意喚起

  • ロボットが走行中に音声や光で周囲に存在を知らせる機能の有無を確認

運用ルールの策定

  • ロボットの優先通行ルールや、トラブル発生時の対応フロー、充電場所や管理担当者などをあらかじめ決めておく

サポート体制とメンテナンス

導入後の安定稼働のためには、メーカーや販売代理店のサポート体制も重要な選定ポイントです。導入時の操作トレーニングや設定支援はもちろん、トラブル発生時に迅速に対応してくれるか、定期的なメンテナンスは提供されるか、といった点を確認しておきましょう。

病院向け搬送ロボット 製品のご紹介

扉付き屋内配送・配膳ロボット Lanky Porter Box


Lanky Porter Box(ランキーポーターボックス)は、扉付きの自律走行型サービスロボットです。パスワードで施錠できる密閉型のコンテナで、機密情報や衛生面に配慮が必要な物も安全に運びます。エレベーターでの移動も可能で、多層階の施設内を自律走行し、フロアを越えた配送業務の完全自動化を実現します。

キングソフト株式会社は、開発元であるOrion Star社の関連会社として、製品に関する深い知見と強力な連携体制を活かし、お客様の自動化推進を構想段階から導入後の安定稼働まで一気通貫でサポートします。

扉付き屋内配送・配膳ロボット Lanky Porter Boxについて詳しく見る

扉付き屋内配送・配膳ロボット Lanky Porter Box

密閉扉による安全な配送・配膳。エレベーターでのフロア移動も可能

密閉扉による安全な配送・配膳。エレベーターでのフロア移動も可能

Lanky Porter Box(ランキーポーターボックス)は、扉付きの自律走行型サービスロボットです。パスワードで施錠できる密閉型のコンテナで、機密情報や衛生面に配慮が必要な物も安全に運びます。エレベーターでの移動も可能で、多層階の施設内を自律走行し、フロアを越えた配送業務の完全自動化を実現します。
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まとめ

本記事では、院内搬送の課題と自動化について、以下のポイントを中心に解説しました。

  1. 病院向け搬送ロボットは、人手不足や医療スタッフの業務負担といった課題を解決する手段として注目されている。
  2. 導入により、「医療スタッフの負担軽減」「安定した搬送体制の維持」「搬送ミスの防止」「セキュリティ性の向上」「非接触搬送による感染リスクの低減」などのメリットが期待できる。
  3. 搬送ロボットには走行方式や形状に種類があり、自院の環境や目的に合わせた選定が重要となる。
  4. 導入を成功させるには、目的の明確化、環境の事前確認、安全対策や運用ルールの策定が不可欠である。


院内搬送業務の自動化は、医療スタッフがより専門的な業務に集中できる環境を整え、最終的には医療サービスの質の向上へとつながります。この記事が、病院向け搬送ロボットへの理解を深め、導入検討の一助となれば幸いです。