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配膳ロボットとは?導入メリットや選び方のポイントを解説

配膳ロボットとは?導入メリットや選び方のポイントを解説

飲食業界では、少子高齢化による労働人口の減少を背景に、慢性的な人手不足が深刻な経営課題となっています。このような状況の中、解決策の一つとして注目を集めているのが「配膳ロボット」です。大手ファミリーレストランやホテルでの導入事例も増え、業務効率化や生産性向上に貢献しています。本記事では、配膳ロボットの導入を検討されている方に向けて、その基本的な役割からメリット、選び方のポイントまで、幅広く解説します。

配膳ロボットとは?

配膳ロボットは、自律走行技術を用いて料理や食器などを運搬するロボットです。ここでは、その主な機能と、賢い動きを支える技術について分かりやすく解説します。

配膳ロボットの主な機能

配膳ロボットの最も基本的な機能は、厨房からお客様のテーブルまで料理を運ぶ「配膳」と、使用済みの食器を洗い場まで運ぶ「下げ膳」です。

しかし、近年のロボットはそれだけではありません。お客様を席まで案内する「案内モード」や、店内を巡回しながら下げ膳を呼びかける「巡回モード」といった多機能なモデルも登場しています。中には、本体に搭載されたディスプレイで動画を流し、メニューの宣伝を行うといった広告塔の役割を果たすものもあります。一台で複数の役割をこなせるため、店舗運営の強力なサポーターとなります。

店内での自律走行を支える技術

配膳ロボットが店内を自由に動き回れるのは、「SLAM(スラム)」と呼ばれる技術のおかげです。SLAMとは、「Simultaneous Localization and Mapping」の略で、日本語では「自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術」と訳されます。

これは、ロボットが走行しながらセンサーで周囲の状況を把握し、店内の地図を作成すると同時に、その地図上で自分がどこにいるのかをリアルタイムで認識する技術です。これにより、床に磁気テープを貼るなどのガイドがなくても、障害物や人を避けながら目的地まで自律的に走行できます。

このSLAM技術を実現するために、主に「LiDAR(ライダー)」と「カメラ」という2種類のセンサーが用いられます。

LiDAR SLAM

Visual SLAM

基本原理

レーザー光を照射し、その反射光が返ってくるまでの時間から物体との距離を正確に測定します。

カメラで撮影した映像から壁の角やポスターといった特徴的な点を識別し、その動きを追跡することで自己位置と地図を把握します。

測定精度

高精度で、数mm単位の誤差に抑えることが可能です。

LiDARに比べて精度は劣る傾向にあり、照明の条件などにも影響を受けやすいです。

使用環境

レーザー光を用いるため、暗い場所や夜間でも安定して動作します。明るさの変化に強いのが特徴です。

明るい場所では問題なく機能しますが、暗い場所や逆光など、明るさが急激に変化する環境では性能が低下する可能性があります。

コスト

高性能なセンサーやプロセッサーが必要なため、比較的高価になる傾向があります。

比較的安価なカメラを使用するため、コストを抑えやすいのが利点です。

多くの配膳ロボットでは、これらのセンサーを複数組み合わせる「センサーフュージョン」という考え方が採用されています。例えば、LiDARの正確な測位能力と、カメラの色や形を認識する能力を組み合わせることで、お互いの弱点を補い、より安全で確実な自律走行を実現しています。

配膳ロボットを導入するメリット

人手不足の解消と人件費の削減

配膳・下げ膳というホール業務の中核をロボットが担うことで、少ない人数でも店舗運営が可能になります。長期的に使用することで、大幅な人件費削減にも繋がります。さらに、求人広告費や新人研修といった採用・教育コストの削減も期待できます。

配膳・下げ膳業務の効率化

配膳ロボットは、一度に多くの料理や食器を運ぶことができます。機種によっては60kgもの積載が可能で、人間が一度に運べる量をはるかに上回ります。これにより、厨房と客席の往復回数が劇的に減り、特にピークタイムの業務効率が大幅に向上します。

スタッフの負担軽減と労働環境の改善

重い食器や熱い料理を運ぶ作業は、従業員にとって大きな身体的負担です。配膳ロボットがこの重労働を代替することで、従業員の身体的負担は大きく軽減されます。これにより、腰痛や腱鞘炎といった労働災害のリスクを低減し、年齢や性別を問わず誰もが働きやすい環境を構築できます。

より質の高い接客サービスへの集中

「ロボットを導入すると、サービスが画一的で冷たいものになるのでは」という懸念を持つ方もいるかもしれません。しかし、実際にはその逆の効果が期待できます。配膳・下げ膳という単純作業から解放されたスタッフは、お客様一人ひとりへのきめ細やかな対応に時間と意識を割けるようになります。例えば、おすすめメニューの丁寧な説明、追加注文の確認、お客様とのコミュニケーションなど、人でなければできない付加価値の高いサービスに集中できるのです。

非接触対応による衛生面の向上

感染症対策への意識が高まる中、非接触でのサービス提供は、お客様に安心感を与えます。配膳ロボットは、スタッフが直接料理に触れる機会を減らすため、衛生管理の観点からも有効です。一部の機種では、料理をホコリなどから守る扉付きのモデルや、UV殺菌ランプを搭載したモデルも存在し、より高いレベルの衛生管理を実現できます。

配膳ロボットの導入事例

全国チェーン飲食店

配膳ロボット

自律走行型運搬ロボット Lanky Porter

概要

店舗ごとに設計やレイアウトが異なるなどの課題がある中で、導入先全店舗に店内でのロボットの走行スピードやルート設定などを細かく検証。

他社競合製品と比較した中でLanky Porterの品質が安定していたことも後押しし、全国151店舗へ導入が完了しました。

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ホテル内レストラン

配膳ロボット

自律走行型運搬ロボット Lanky Porter

概要

ホテル内レストランで2か所合計5台の配膳ロボットを導入。

ホテル全体で人手不足や人件費の高騰といった課題を抱えていましたが、お客様へのサービスを維持しつつ、ロボットによる省力化でこれらの課題を解決しました。

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配膳ロボット導入前に知っておきたい注意点

多くのメリットがある一方で、配膳ロボットの導入を成功させるためには、事前に把握しておくべき注意点も存在します。ここでは、4つのポイントを解説します。

導入・運用にかかるコスト

配膳ロボットの導入には、相応の初期投資が必要です。購入する場合、機種にもよりますが1台あたり100万円から350万円程度が相場です。月々数万円からのリースやレンタルプランも用意されていますが、長期的に見ると購入より割高になるケースもあります。

また、本体費用以外にも、安定した稼働のためのWi-Fi環境の整備費用や、定期的なメンテナンス費用、通路の段差をなくすための小規模な改修費用などが発生する可能性も考慮しておく必要があります。

設置環境の制約(通路幅・段差など)

配膳ロボットは、安全に走行するために一定の物理的条件を必要とします。最も重要なのが「通路幅」です。多くのロボットは、最低でも55cmから80cm程度の通路幅がないとスムーズに走行できません。また、数センチ以上の段差や急な傾斜も苦手としています。

導入を検討する際は、まず店舗内の最も狭い通路を実測し、段差や傾斜がないかを確認することが不可欠です。ただし、小さな段差であればスロープの設置で対応したり、ロボットの地図設定で通行不可エリアを指定したりすることで解決できる場合もあります。

オペレーションの再構築と従業員への教育

配膳ロボットは、ただ設置すれば自動で全てがうまくいくわけではありません。導入を成功させるには、店舗の運営方法、つまり「オペレーションの再構築」が必須です。「誰が料理をロボットに乗せるのか」「お客様はどのように料理を受け取るのか」「スタッフとロボットの動線が交錯しないか」といったルールを事前に細かく決め、シミュレーションする必要があります。

また、従業員への教育も欠かせません。操作方法はもちろん、トラブル発生時の対応などを事前に共有し、全員が協力してロボットを活用する体制を整えなければ、かえって現場の混乱を招き、負担を増やしてしまう可能性があります。

顧客とのコミュニケーション機会の減少への懸念

「ロボットによる接客は、温かみがなく味気ない」という印象を持たれることへの懸念は、多くの店舗が抱く課題です。特に、お客様とのコミュニケーションを大切にしている店舗では、この点がサービスの質の低下に繋がるのではないかと心配になるかもしれません。

この課題への対策は、人とロボットの役割分担を明確にすることです。ロボットにはあくまで単純な運搬作業を任せ、それによって生まれた時間を活用して、スタッフがより積極的にお客様とコミュニケーションを取るように意識することが重要です。

お客様の反応は、店舗のコンセプトや客層によっても異なります。ファミリーレストランではエンターテイメントとして喜ばれる一方、高級店では雰囲気に合わないと判断される場合もあるため、自店のブランドイメージと照らし合わせて検討する必要があります。

補助金・助成金の利用における注意点

配膳ロボットの導入には初期費用がかかりますが、国や地方自治体が提供する様々な補助金・助成金を活用することで、その負担を大幅に軽減することが可能です。

ただし補助金・助成金制度は、それぞれ対象となる事業者の要件や補助率、申請期間、手続きが異なります。また、公募期間が限られていたり、予算に達し次第終了したりする場合がほとんどです。原則として、ロボットの購入契約やリース契約を結ぶ前に申請が必要ですので、導入を検討する際は、必ず経済産業省や各自治体の公式ウェブサイトで最新の情報を確認するか、専門家にご相談ください。

配膳ロボットの選び方

数多くの配膳ロボットの中から、自店舗に最適な一台を選ぶためには、どのような点に注目すればよいのでしょうか。ここでは、比較検討すべき7つの重要なポイントを解説します。

店舗のレイアウトと通路幅

最も基本的な確認事項は、ロボットが店内を問題なく走行できるかどうかです。店舗内のテーブル間や通路で、最も狭い場所の幅を正確に測定しましょう。機種によって必要な通路幅は異なり、例えばコンパクトなモデルでは55cm程度から、大型のモデルでは80cm以上が必要になる場合があります。

運搬容量(積載量)とトレイの仕様

一度にどれくらいの量を運びたいかを想定し、ロボットの積載量を比較します。総積載量は30kg、40kg、60kgなど機種によって様々です。宴会料理や食べ放題などで大量の食器を運ぶ場合は大容量タイプ、カフェなどで少量の配膳が中心ならコンパクトなタイプが適しています。

また、トレイの数やサイズ、トレイ間の高さも重要です。背の高いジョッキやデキャンタなどを運ぶ可能性がある場合は、トレイの高さを調整できるモデルが便利です。

機能性(稼働時間・充電方法・安定性)

稼働時間・充電方法・安定性といった機能性においても、自店舗に合うものを選定する必要があります。

稼働時間

ランチとディナーの通し営業など、長時間の稼働が必要な場合は、バッテリーの持続時間を確認します。10時間程度のモデルから、24時間近く稼働できるモデルまで幅広く存在します。

充電方法

充電ケーブルを手動で接続するタイプと、バッテリーが少なくなると自動で充電ステーションに戻るタイプがあります。充電の手間を省きたい場合は、自動充電機能付きのモデルがおすすめです。

安定性

ラーメンやスープ、ドリンクなど液体のメニューが多い場合は、ロボットの走行安定性が非常に重要です。振動を吸収する高性能なサスペンションを搭載し、揺れを最小限に抑える工夫がされたモデルを選びましょう。

操作性と他システムとの連携

従業員の誰もが簡単に使えるよう、直感的で分かりやすい操作パネルを備えているかを確認します。さらに、POSレジやテーブルオーダーシステムと連携できるかも重要なポイントです。例えば、POSレジで会計処理をすると、自動でそのテーブルへロボットが片付けに向かうといった連携ができれば、オペレーションは飛躍的に効率化します。

店舗のコンセプトに合うデザイン性

配膳ロボットは店内を動き回るため、お店の「顔」の一部になります。店舗の雰囲気やブランドイメージに合ったデザインを選びましょう。ファミリー層が多いカジュアルな店舗であれば、親しみやすいデザインが喜ばれます。一方、ホテルや高級レストランなど落ち着いた空間では、白や黒を基調としたシンプルで洗練されたデザインのモデルが適しています。

導入形態(購入・リース)と予算

導入方法は、一括で購入する以外に、月額料金で利用できるリースやレンタルという選択肢もあります。初期費用を抑えたい場合はリースやレンタルが有効ですが、3年や5年といった長期間で利用する場合は、総額では購入した方が安くなることが一般的です。自社の資金計画に合わせて最適な導入形態を検討しましょう。

サポート・メンテナンス体制

万が一の故障やトラブルは、店舗運営に大きな支障をきたします。特にピークタイムにロボットが停止してしまうと、その影響は甚大です。そのため、導入後のサポート体制は非常に重要です。「トラブル時にすぐに対応してくれるか」「代替機は用意してもらえるか」「定期的なメンテナンスは含まれているか」など、保守サービスの内容を事前にしっかりと確認しておきましょう。

配膳ロボット 製品のご紹介

自律走行型運搬ロボット Lanky Porter


Lanky Porterは、配膳や下げ膳、販売促進を主な業務とする高性能なロボットで、飲食店をはじめとする対面型サービス業に特化しています。

このロボットは、お客様のガイド、販売促進、質疑応答、遠隔操作、そして自動充電といった多彩な機能を備えており、効率的な運営をサポートします。博物館、図書館、ホテル、銀行、医療施設、学校、ショッピングモールなど、さまざまな施設で活用可能です。

自律走行型運搬ロボット「Lanky Porter」について詳しく見る

配膳ロボット 【Lanky Porter】のご紹介

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まとめ

本記事では、配膳ロボットについて、以下のポイントを中心に解説しました。

  1. 配膳ロボットは、配膳・下げ膳業務を自動化することで、飲食業界の深刻な人手不足や生産性向上といった課題を解決する有効な手段であること。
  2. 人件費削減や業務効率化、従業員の負担軽減などの導入メリットがあり、人がより付加価値の高い接客に集中することで顧客満足度の向上も期待できること。
  3. 最適な一台を選ぶには、通路幅や積載量といった物理的条件に加え、操作性、サポート体制も視野に入れた総合的な検討が不可欠であること。


配膳ロボットの導入は、省力化のみならず、持続可能な経営を実現するための戦略的投資です。この記事が、最適な配膳ロボットを選定するための参考になれば幸いです。