「ゲル紡糸法」による超高分子量ポリエチレン繊維の作製方法の課題
超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)は分子量が100万以上のポリエチレンのことを言います。 共有結合でつながった非常に長い化合物で、ひも状の構造をしており、優れた特性を持ちます。
超高分子量ポリエチレンから高強度繊維を作製するためには、繊維中の分子鎖を一方向に規則的に並べる必要があります。しかし、超高分子量ポリエチレンには「溶融成形性に乏しい」という性質があり、熱で融かして繊維状にするのが困難です。
そのため、大量の有機溶媒に溶かして高強度繊維を作ります。この手法をゲル紡糸法と言います。
ゲル紡糸法は、1980年代から利用される超高分子量ポリエチレン繊維を作る一般的な手法です。しかし、環境負荷が高く、工程が複雑で大規模な設備を必要とするため、コストも高くなります。
製造コストは製品価格に反映されるため、高強度繊維で作られた商品は高価格で販売されています。
このような理由から、高強度繊維を用いた商品製造・販売は大企業が中心となっており、大量生産が必要なことから多様な商品が出てきづらい状況となっています。
グリーンプロセッシングによる作製システムの仕組み
既存手法より環境に優しく、低コストで高機能な商品を生み出すために活用できるのが、高分子の構造特性を利用する方法です。
高分子を並べる際に、有機溶媒に溶かすのではなく、加熱して融かし、繊維を作る方法を検討しました。これは一般的な紡糸手法ですが、超高分子量ポリエチレンは分子鎖が絡み合っているため、次の課題がありました。
超高分子量ポリエチレンの溶融紡糸における課題
- 融かした時に流動せず繊維状にするのが難しい
- 分子鎖がきれいに並ばず強度が低い
これらの課題を解決するために研究を重ね、2つの技術を組み合わせることで、有機溶媒を一切使用せず、超高分子量ポリエチレンから高強度繊維の作製を実現しました。
課題解決の技術
- 溶融流動特性を制御による「溶融紡糸」の実現
- 絡み合いを解きほぐしながら引き伸ばす「溶融延伸法」の導入
これにより、従来の方法よりも低環境負荷・低コスト、かつ小規模設備での高強度繊維の作製が可能となります。
有機溶媒を一切使用しない本手法は、 持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する紡糸法です。
商品化の展望
衣料品、アウトドア用品、釣り糸等 | 高強度・柔軟性を兼ね備えた繊維、布等を用いる商品。有機溶媒を用いた繊維とは異なる肌触りの実現も期待。 |
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帆船用ロープ、遊具 | 耐摩耗性に優れた特性を活かし、高い耐久性を求められる製品に利用。金属製に比べ軽量化できるメリットも期待できる。 |
抗菌繊維、医療用繊維 | 繊維作製の際に成分を添加することで高機能化 |
団体情報
出展団体名 | |
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所在地 | 〒371-8510 群馬県 前橋市荒牧町 4-2 群馬大学 荒牧キャンパス |
設立年月 | 2016年04月 |
従業員規模 | 501名以上 |
URL |
よくある質問
本プロセスは他の高分子素材にも応用できると考えています。
有機溶媒を利用する方法に比べ、設備投資が小さくて済むため、中小企業でもチャレンジしやすくなります。大量生産によりコストを下げる必要がないため、少量多品種の商品開発が可能です。よりバリエーションの豊かな繊維を作れることで、活用の幅も広がると考えています。
分子量複合化によって高強度繊維を作製することができます。「高密度ポリエチレン」を混ぜて実現した事例がございます。
群馬大学 研究・産学連携推進機構
群馬大学が世界水準の研究大学として発展することを目指します
高度教育研究及び産学連携に必要な戦略を策定し、研究企画立案、研究資金の調達・管理、知的財産の活用等を総合的にマネジメントし、本学の研究力を顕在化することによって、本学が世界水準の研究大学として発展することを目的に以下の業務を推進しています。
(1)高度教育研究及び産学連携に係る戦略策定に必要な情報収集及び分析
(2)高度教育研究及び産学連携に必要な戦略の策定及びマネジメント
(3)高度教育研究及び産学連携に関するプロジェクト等の企画立案
(4)高度教育研究及び産学連携に係る大型ファンディングへの対応及び統括等
出展団体名 | 群馬大学 研究・産学連携推進機構 |
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所在地 | 〒371-8510群馬県前橋市荒牧町4-2 群馬大学 荒牧キャンパス |
設立年月 | 2016年04月 |
従業員規模 | 501名以上 |
URL | https://research.opric.gunma-u.ac.jp |