アップサイクル素材を活用したパッケージとは?リサイクルとの違いや種類を解説

SDGsへの関心の高まりを受け、廃棄予定だったものに新たな価値を与えて再生する「アップサイクル素材」をパッケージに採用する企業が増えています。本記事では、アップサイクル素材の基礎知識から、リサイクルとの違い、具体的な素材の種類、そして導入時のメリットや注意点について詳しく解説します。

アップサイクル素材とは?

アップサイクル素材とは、本来であれば廃棄されるはずだった製品や原材料に対し、デザインやアイデアといった新たな付加価値を持たせて別の製品へと生まれ変わらせた素材のことです。単なる素材の再利用にとどまらず、元の素材が持つ特徴やストーリーを活かすことで、製品そのものの魅力を高める点が特徴です。

環境負荷の低減はもちろん、消費者の「エシカル消費(倫理的消費)」への意識に応える手段として、多くの企業が注目しています。特にパッケージ分野では、企業の環境姿勢をダイレクトに伝える媒体として導入が進んでいます。

リサイクル・リユース・アップサイクルの違い

環境配慮型のアプローチには、アップサイクルの他にも「リサイクル」や「リユース」があります。これらは似ているようで、プロセスや目的が異なります。それぞれの違いを整理して理解しておきましょう。

以下の表は、3つのアプローチの違いをまとめたものです。

  概要 パッケージにおける特徴
アップサイクル 廃棄物に付加価値を与え、より価値の高い製品にする 元の素材の色や質感を活かし、物語性を付与できる
リサイクル 廃棄物を原料の状態に戻し、再び製品化する PETボトルや古紙を再生した段ボールなど、汎用性が高く普及している
リユース 製品をそのままの形で洗浄・修理して再使用する リターナブル瓶など、繰り返し使うことでゴミを出さない

パッケージにアップサイクル素材を採用するメリット

ストーリー性によるブランド価値の向上

アップサイクル素材には、「元は何だったか」という独自のストーリーがあります。例えば、「農作物の非可食部(食べられない部分)を有効活用した紙」や「廃棄されるはずだった果実の搾りかすを利用した紙」といった背景は、消費者の共感を呼びます。商品そのものの機能だけでなく、パッケージが持つ物語がブランドの好感度や認知度を高めるきっかけになります。

木材パルプの使用量削減への貢献

アップサイクル素材を紙の原料の一部として配合することで、その分だけ新しい木材パルプ(バージンパルプ)の使用量を減らすことができます。これは、森林資源の保護や、森林に依存する生物多様性の保全に寄与することにつながります。

原料由来の風合いを生かせる

アップサイクル素材には、元の素材が持つ独特な色味や質感が残っています。その「素材感」自体がデザインのアクセントとなり、売り場で消費者の目を引く差別化ポイントとしても期待できます。

パッケージに使われるアップサイクル素材の例

食品廃棄物を活用した素材

食品加工の過程で出る「非可食部(食べられない部分)」を活用した素材です。紙パルプに混ぜ込んで使用されるケースが多く見られます。独特の風合いが残るものもあり、食品や化粧品のパッケージとしても使用されます。

その他の産業廃棄物などを活用した素材

上記以外にも、さまざまな産業プロセスで発生する廃棄物がパッケージ素材として生まれ変わっています。パームヤシから油を搾った後に生じる副産物「パームヤシカサ」を活用した緩衝材などもパッケージに使用されています。

導入前に確認したい検討ポイントと注意点

原料の供給安定性とロット数

アップサイクル素材は、原料となる廃棄物の排出量に依存するため、一般的なバージン素材(新品の素材)に比べて供給量が不安定になる場合があります。特に農産物由来の場合、季節によって排出量が変動することもあります。採用にあたっては、必要な時期に必要な量を確保できるか、また最小発注ロット数が自社の製造計画に見合っているかを事前に確認しましょう。

コスト面での調整

回収、選別、洗浄、加工といった工程に手間がかかるため、既存の汎用素材と比較するとコストが割高になる傾向があります。単純な資材コストの比較だけでなく、ブランディング効果や広告宣伝費の一部としての役割、廃棄物処理費用の削減効果などを含めたトータルコストでの検討が必要です。

素材の特性や品質のばらつき

廃棄物を原料とするため、ロットごとに色味や風合いに多少のばらつきが生じることがあります。また、黒点や繊維が見えることもありますが、これを「汚れ」と捉えるか、「素材の味」と捉えるかで評価が分かれます。事前に品質の許容範囲(限度見本)をすり合わせるとともに、消費者に対しても「環境配慮素材特有の風合いである」ことをパッケージ上で伝える工夫をしましょう。

安全性と衛生面の確認

食品や化粧品のパッケージに採用する場合、安全性は最も重要な要素です。原料が廃棄物由来であっても、食品衛生法などの規格基準を満たしているか、不純物が混入していないかなど、メーカーの品質保証体制をしっかりと確認することが大切です。

アップサイクル素材を活用したパッケージ関連製品のご紹介

クラウン・パッケージのサステナブルパッケージ

Crown Grp Sdgs Package Mv V2

株式会社クラウン・パッケージは、社会課題に様々なアプローチで対応する多彩なパッケージソリューションを提供しています。素材開発・印刷技術・形状設計の3つの強みを掛け合わせ、お客様の幅広い課題解決に貢献します。

独自開発のリサイクル・アップサイクル素材や、ユネスコ支援につながる社会貢献型素材、さらに薄さと強度を両立したマイクロフルートなど、高付加価値な素材を活用したパッケージ制作が可能です。また、多様な形状設計により、減プラ・脱プラを支援するパッケージのほか、店頭での作業効率化に寄与するシェルフレディパッケージ(SRP)も実現できます。

クラウン・パッケージのソリューションについて詳しく見る

スマートパピエ®

スマートパピエ®は、サプリメントの搾りかす、茶殻、カカオ豆の皮など、一度役目を果たした未利用資源を紙の原料としてアップサイクルしています。木材パルプの使用量を削減し、森林資源の節約に貢献します。

詳細はこちら

Crown Grp Sdgs Package Img04

ヤシックスモールド

ヤシックスモールドは、パーム油搾油後に生じるヤシカサを主原料としたサステナブルなパルプモールドです。複雑な形状の容器や緩衝材として使用できます。

Crown Grp Sdgs Package Img03

まとめ

  1. アップサイクルとは、廃棄物にデザインやアイデアで付加価値を与え、新しい製品に生まれ変わらせること。
  2. パッケージへの採用メリットとして、ストーリー性によるブランド価値向上、紙パッケージの木材パルプ使用量の削減への貢献、素材独自の風合いによる差別化が挙げられる。
  3. 素材の種類は、食品加工の過程で出る副産物や、産業廃棄物(パームヤシカサなど)と多岐にわたる。
  4. 導入時は、原料供給の安定性、コスト、素材特有の個体差、および安全性を十分に確認する必要がある。

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