PRECILENCE(プレシレンス)超高精度ベアリング
高い精度と入手性の良さで、あらゆる業界の課題を解決
製造業における製品の品質と生産性の向上は、常に重要な課題です。特に、高精度が求められる製造プロセスでは、わずかな部品のばらつきが製品全体の品質を左右します。
ジェイテクトプレシジョンベアリングが開発した超高精度軸受、PRECILENCE(プレシレンス)は、このような製造現場の課題を解決するために生まれました。世界最高水準の精度と高い信頼性で、塗工機や工作機械の性能を飛躍的に向上させます。
目次
製造業におけるベアリング(軸受)の重要性
製造業の多くの機械に不可欠な部品であるベアリングは、その性能が機械全体の精度と効率に直結します。特に、高精度な加工が求められる塗工機や工作機械では、ベアリングのわずかな振れやばらつきが、製品の品質に致命的な影響を与える可能性があります。
ベアリングとは
ベアリングとは、回転や直線運動をする部品を支え、摩擦を減らして滑らかに動かすための機械要素です。最も基本的な役割は、回転する軸を支えて位置を正確に保ちつつ、摩擦や摩耗を抑えることです。

高精度なベアリングが求められる背景
2014年頃、軸受市場では安価な一般品が中国企業によって代替されるという見込みがありました。これに対し、各ベアリングメーカーは高精度な製品開発へと舵を切り、買収によって技術を取り込む動きも見られました。
こうした背景に加え、工作機械のスピンドルメーカーから「回転精度を抑えた軸受が欲しい」という要望が寄せられたことから、ジェイテクトプレシジョンベアリングは「世界一の軸受」を目指し、高精度なベアリングの開発に着手しました。

PRECILENCEの特長
PRECILENCEは、高品質な「Premium」、精密な「Precision」、静粛な「Silence」という3つの言葉から名付けられた超高精度軸受です。これらの要素を高い次元で実現し、従来のベアリングでは達成できなかった性能を提供します。
優れた振れ精度
PRECILENCEの最大の特長は、その圧倒的な振れ精度です。一般的な高精度軸受の振れ精度が1.5µmであるのに対し、PRECILENCEは0.2µmという世界最高水準の精度を実現しています。
この優れた精度は、軌道面を鏡面仕上げにする独自技術によって実現されています。その結果、回転時の振れが極めて小さく、精密な加工を可能にしています。特に極めて高い精度が求められる分野においては、他に類を見ない性能で独自の地位を築いています。

ベアリングにおけるアキシアル振れやラジアル振れは、できるだけ小さいことが理想です。
厳格な寸法精度管理
PRECILENCEは、ISO/DIN規格で定められた高精度軸受の許容差よりも、はるかに狭い公差で生産されています。
例えば、内輪内径の寸法公差は、P4Sで-1から-5ミクロン、P2ではさらに狭い2ミクロンレンジで管理しているため、組み付け時のばらつきを大幅に抑制します。

ハイエンド用途に特化した超高精度軸受
PRECILENCEは、一般的な用途ではスペックが過剰となる可能性がありますが、リチウムイオン電池の塗工装置、超精密加工機、金型製造工程など、サブミクロン精度が不可欠なアプリケーションにおいては、PRECILENCEが極めて重要な役割を果たします。
組み付け作業の効率化
従来品では、寸法公差のばらつきに起因して、事前の選別や組み付け時の最大振れ点調整といった作業が不可欠でした。
PRECILENCEは、極めて高い寸法安定性を有しており、選定や調整を行わずにそのまま組み付けが可能です。大量導入時においても組み付け自由度が高く、安定した振れ精度が確保されます。
組み付け前洗浄が不要
一般の軸受は、防錆油が付着しているため、組み付け前に洗浄・脱脂が必要ですが、PRECILENCEは、製造時に軽い潤滑油を塗布した状態で、クラス1レベルのクリーン環境下で真空パックされています。
そのため、開封後すぐに組み付けが可能で、洗浄・脱脂工程を省略できます。

・外箱も含めて、開封時にホコリの
出ないパッケージを採用
・組立作業場環境の清浄度維持に貢献
予圧調整・寿命への貢献
ベアリングを軸に組み付ける際のはめあいや予圧の条件は、製品寿命に大きく関わります。
PRECILENCEは寸法ばらつきが極めて小さいため、適切なはめあいや予圧の調整がしやすく、個別の軸受選定が不要になります。その結果、最適な寿命条件でのご提案が可能です。

・寸法ばらつきが極めて小さいため、
適切なはめあいや予圧の調整がしやすい
・組付け作業の効率化に貢献
・選択はめあいの必要がないため長寿命に
貢献
実用事例
PRECILENCEは、特に高精度が求められる製造業の分野で、その真価を発揮します。
NRRO(回転非同期振れ) とは
NRROとは「Non-Repeatable Run-Out」の略で、「回転非同期振れ」と呼ばれます。
主軸などの回転体が1回転するごとに、毎回異なる軌跡を描く現象を指し、理想的な状態では、回転体の中心は常に同じ軌道を描きますが、厳密にはわずかな振れが生じます。NRROは、この振れのなかでも特に、回転周期と同期せずに不規則に発生する成分です。
NRROが大きいと、工作機械で加工する際の加工面が不安定になり、製品の品質が低下します。逆に、NRROが小さいほど加工面は安定し、高品質な仕上がりが得られます。PRECILENCEのような高精度軸受を使用すると、このNRROを低減できるため、加工品の品質向上に貢献します。
切削工具の断面と加工面


リサージュ波形/NRRO実測データ

- 複数回転(10Revs)にわたって測定された波形がバラついており、NRROが大きい状態を示しています。
- 赤い波形が複雑で不安定、加工精度が不安定になるおそれがあります。
1

- 波形のバラつきが小さく、重なっており、NRROが小さい(= 高精度)であることを示しています。
- 工作機械、検査装置、半導体製造装置など、高精度回転が求められる現場ではこのような波形が理想です。
高精度塗工ロールでの活用
ペロブスカイト太陽型太陽電池/リチウムイオン電池の電極/機能性フィルムなど、均一な膜を塗布する塗工機では、わずかなロールの振れが製品の品質に直結します。
ロール単体の振れ精度が0.4µmのロールでも、一般的な高精度軸受を組み込むと振れ精度が1.5µmに悪化することがありますが、PRECILENCEを組み込むことで、振れ精度を0.5µmに抑えることができます。

工作機械
PRECILENCEは、工作機械の主軸において、その高い回転精度と低発熱特性により多くのメリットをもたらします。
| 加工面品位の向上 | 工作機械の主軸に組み込まれる軸受のNRROは、加工面の品質に直結します。NRROが大きいと、加工面に円周状の筋が現れ、品質が低下します。 PRECILENCEは、NRROを低減することで、加工面を安定させ、高品質な仕上がりを実現します。 |
|---|---|
| 温度上昇の抑制 |
精密な軸受は摩擦を抑え、温度上昇を最小限にします。スピンドルの熱膨張を防ぐことで加工精度を維持できるため、低昇温は重要な性能です。 PRECILENCEは、高速回転でも温度上昇を抑え、安定した加工を実現します。 |
| グリース潤滑への対応 | 優れた低昇温特性により高速回転時でもグリース潤滑での安定運転を可能にします。 オイルミストの発生抑制や騒音低減といった環境面での効果を発揮し、併せて潤滑装置の不要化による装置構成の簡素化とコストの低減にも寄与します。 |
検査機での活用
三次元測定機などの検査装置では、カメラが移動するたびに正確な位置へ戻ることが求められます。PRECILENCEは、正転・逆転いずれの回転方向においても優れた回転精度を維持することにより、測定誤差の最小化と測定の安定性向上に寄与し、検査機の高性能化を実現します。
ジェイテクトプレシジョンベアリングについて
事業内容
ジェイテクトプレシジョンベアリングは、各種ベアリング及びベアリングに関連する製品の製造・販売メーカーです。自動車・自動二輪車用をはじめ、産業ロボット用超薄肉軸受、特殊環境用軸受(EXSEV)、超高精度軸受(PRECILENCE)など多種多様の軸受の生産を行っています。
その中でも、PRECILENCEについては、お客様の課題解決をサポートするため、「PRECILENCEなんでも相談室」を設け、35年の経験を持つ設計のプロが、技術的なアドバイスやサポートを提供しています。

高精度ロールアッセンブリの提供
高精度ロールを得意とするメーカー様と連携し、ロール/軸受/ハウジングを組み込んだ状態でご提供する、セット提案を行っています。
組み付けの手間を省き、設備への即時導入が可能です。高精度なロールアッセンブリをそのままご使用いただけます。

軸受目線での設計フォロー
軸受組付け後に精度を出す為には、軸受周りの設計において、注意するポイントが数ヶ所あります。ジェイテクトプレシジョンベアリングでは、軸受の設計だけではなく、軸受周りの設計もサポートいたします。
組み付け技術指導
万が一、お客様の現場で組み付け後に所定の精度が得られない場合でも、技術スタッフが現地へ伺い、組み付け手順を丁寧にサポートいたします。
精度が確保できるまで寄り添いながら対応し、課題解決に貢献します。このような手厚いサポート体制も、ジェイテクトプレシジョンベアリングの大きな強みのひとつです。
沿革
ジェイテクトプレシジョンベアリングは、1936年に大阪精密工業所として設立され、1952年に大阪ベアリング製造株式会社、1986年には親しまれた「ダイベア株式会社」へと社名を変更しながら、2008年には本社と和泉工場を和泉市に移転しました。
2019年には和泉工場から800m離れた場所に分工場を新設して2020年からプレシレンスの量産を開始する一方で、ジェイテクトの完全子会社となり、現在の「ジェイテクトプレシジョンベアリング」へと社名を変更しました。
株式会社ジェイテクトプレシジョンベアリングの会社情報はこちら

会社概要
| 会社名 | 株式会社ジェイテクトプレシジョンベアリング |
|---|---|
| 所在地 | 大阪府和泉市あゆみ野2丁目8番1号 |
| 創業 | 昭和11年2月 |
| URL | https://www.precilence.com/ |