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エクセルでの生産管理を詳しく解説 | テンプレート活用法とシステム移行の判断基準

製造業における生産管理では、多くの現場で身近なツールであるエクセルが活用されています。しかし一方で、「このままエクセルで運用を続けて良いのか」と不安を感じている方も少なくありません。エクセルは手軽な一方、事業規模の拡大とともに運用上の限界が表面化してくるのも事実です。

本記事では、エクセルを使った生産管理の具体的な手法から、そのメリット・デメリット、そして「脱エクセル」を見据えた次のステップまでを詳しく解説します。

生産管理とは

エクセルでの管理方法に触れる前に、まずは「生産管理」という業務の基本を理解しておくことが重要です。生産管理が何を目的とし、どのような業務を含むのかを明確にすることで、エクセルで管理すべき範囲や項目が自ずと見えてきます。

生産管理の目的とQCD

生産管理とは、製品を効率的に生産するための一連の管理活動全般を指します。

その最大の目的は、製造業における最も重要な3つの要素、すなわち「品質(Quality)」「コスト(Cost)」「納期(Delivery)」の最適化です。これらは頭文字をとって「QCD」と呼ばれます。

QCDの3つの要素は、それぞれが独立しているわけではなく、密接に関係しています。たとえば、コスト削減を優先しすぎると、安価な材料の使用や検査工程の省略などにより、品質が低下するリスクがあります。

また、納期を短縮しようと無理をすれば、作業者の負担が増えてミスが発生しやすくなり、結果として品質に悪影響を及ぼす可能性もあります。

このように、QCDの各要素は一方を優先すれば他方に影響を与える「トレードオフ」の関係にあります。生産管理の役割は、この3つの要素のバランスをうまく取りながら、顧客満足の向上と企業の利益の最大化を同時に実現することにあります。

生産管理の主な業務内容

生産管理は、製品が顧客の手に届くまでのあらゆる工程を管理対象としています。

しばしば混同されがちな「工程管理」や「製造管理」といった言葉がありますが、これらは生産管理という大きな枠組みの中に含まれる、より具体的な管理活動です。

生産管理 需要予測から資材調達、在庫、品質、原価まで、生産活動全体を統括する計画・管理活動。
工程管理 生産管理の一部で、計画通りに生産が進むよう、各工程のスケジュールや進捗を管理する活動。
製造管理 生産管理の一部で、主に製造現場に焦点を当て、作業手順の標準化や設備の保守、現場の安全などを管理する活動。

つまり、生産管理は森全体を見る視点であり、工程管理や製造管理は森の中の木々を管理する視点と考えると分かりやすいでしょう。これらの管理業務が連携して初めて、効率的な生産活動が実現します。

エクセルで生産管理を行うメリット

多くの企業、特に中小規模の製造現場でエクセルが生産管理ツールとして選ばれるのには、明確な理由があります。専用システムと比較した際の実用的な利点を理解することは、自社の状況に合った管理方法を選択する上で役立ちます。

低コストでの導入

最大のメリットは、導入コストを大幅に抑えられる点です。多くの企業では、業務用のパソコンにMicrosoft Officeが標準でインストールされており、追加の費用をかけることなく生産管理を始めることができます。

仮にライセンスを追加購入する必要がある場合でも、その費用は専門的な生産管理システムを導入する際に発生する高額な初期費用やライセンス料と比較すると、ごくわずかです。予算が限られている中で、まず管理体制を構築したいと考える企業にとって、このコスト面の優位性は非常に大きな魅力です。

多くの従業員が持つ操作習熟度

エクセルは多くの従業員が日常的に使用しており、操作に慣れているため、生産管理に導入しても新たな教育コストをほとんど必要としません。加えて、「新しいツールに抵抗がある」「今のやり方を変えたくない」といった現場の心理的ハードルも低く、スムーズな導入が可能です。

こうした習熟度の高さと受け入れやすさは、エクセルならではの大きな強みと言えます。

関数やマクロによる高い自由度

エクセルは、自社の業務内容に合わせて管理表を柔軟に設計できる高いカスタマイズ性が特長です。関数や条件付き書式、VBAによるマクロ機能を使えば、定型業務の自動化や独自の集計・分析も可能です。

例えば「在庫が一定数を下回ったら自動でセルを赤く表示する」「ボタンひとつで日報を作成する」といった、現場に最適化された機能を自分たちで実装できます。既製システムでは対応しにくい細かな要件にも柔軟に対応できる点が、エクセルの大きな強みです。

エクセルでの生産管理方法

ここでは、実際にエクセルを使って生産管理を行うための具体的な手順や便利な機能について解説します。

テンプレートを活用しつつ、自社の業務に合わせたカスタマイズを加えることで、実用的な管理ツールを作成できます。

生産管理表の基本構成と作成手順

生産管理の基本は、全体の流れを可視化することです。そのために広く使われるのが「ガントチャート」形式の工程管理表です。

管理項目の洗い出し 生産に必要な情報をすべてリストアップします。製品名、品番、担当者、各工程(作業内容)、作業開始予定日、終了予定日、進捗状況などが基本的な項目です。
シートの基本レイアウト作成 縦軸に作業項目(工程名)、横軸に日付(日単位や週単位)を設定します。洗い出した管理項目を列として配置し、基本的な表の形を作成します。
進捗の可視化
(ガントチャート化)
各工程の開始日と終了日に合わせて、対応する日付のセルに色を付けていきます。手作業で塗りつぶすこともできますが、「条件付き書式」を使うと自動でバーが表示されるようになり、便利です。

無料テンプレートの探し方と選び方のポイント

一から作成するのが大変な場合は、インターネット上で配布されている無料のテンプレートを活用するのが効率的です。

検索エンジンで「生産管理表 テンプレート エクセル 無料」や「ガントチャート テンプレート 無料」といったキーワードで検索すると、多くのテンプレートが見つかります。テンプレートを選ぶ際のポイントは以下の通りです。

シンプルさ 装飾が過剰でなく、誰が見ても直感的に理解できるデザインか確認する。
カスタマイズ性 自社の管理項目に合わせて列を追加したり、関数を編集したりできるよう、シートやセルの保護が解除されているか確認する。
管理期間 自社の生産サイクルに合わせて、日単位、週単位、月単位など、適切な時間軸のテンプレートを選ぶ。

在庫管理と生産計画を連携させる便利な関数

生産管理の精度を高めるには、複数の情報を連携させることが重要です。例えば、「生産計画シート」と「在庫管理シート」を別々に作成し、関数を使ってデータを連動させることで、よりシステムに近い管理が可能になります。

マスターシートの作成 製品情報や部品情報を一元管理する「マスターシート」を作成します。ここには「品番」「品名」「標準単価」などの固定情報を入力しておきます。
VLOOKUP関数で
データ連携
生産計画シートや在庫管理シートで品番を入力した際に、マスターシートから品名を自動で表示させたい場合は、VLOOKUP 関数が役立ちます。手入力による品名の間違いを防ぎ、データの整合性を保つことができます。

例えば、=VLOOKUP(検索する品番のセル, マスターシートのデータ範囲, 表示したい列番号, FALSE) のように使用します。
SUMIF関数で
在庫を自動計算
在庫管理シートでは、日々の入出庫を入力するだけで、現在の在庫数が自動で計算されるようにします。基本的な計算式は「前日の在庫数+当日の入庫数-当日の出庫数」です。

さらにSUMIF 関数を使えば、生産計画シートに入力された「使用予定部品」の数量を品番ごとに自動で集計し、在庫管理シートの「出庫予定数」に反映させるといった高度な連携も可能です。
ピボットテーブルで分析 このようにして蓄積されたデータを「ピボットテーブル」機能で集計すれば、月別の製品生産数や、部品ごとの使用量などを簡単に分析でき、将来の需要予測や発注計画に役立てることができます。

見やすい管理表にするための工夫

作成したエクセルファイルは、自分だけでなく複数の担当者が使用することを想定し、誰にとっても分かりやすく、ミスが起こりにくいように工夫することが大切です。

入力ルールの統一 日付の書式(例: 2024/04/01)や数値の入力方法など、基本的なルールを明確に定めて共有します。
プルダウンリストの活用 「データの入力規則」機能を使って、進捗状況(例: 未着手、作業中、完了)などをリストから選択できるようにします。表記の揺れを防ぎ、入力の手間を省くことができます。
数式セルの保護 誤って数式を消してしまわないよう、数式が入力されているセルをロックし、「シートの保護」機能をかけておくと安心です。

エクセルでの生産管理における注意点と限界

エクセルは手軽で便利なツールですが、事業の規模拡大や管理の複雑化に伴い、その限界が見えてきます。これらの注意点を事前に理解しておくことは、将来的なトラブルを回避し、次のステップへ進むタイミングを見極める上で不可欠です。

業務の属人化とブラックボックス化

エクセルでの管理が高度化するにつれて、複雑な関数やVBAマクロが多用されるようになります。その結果、そのファイルを作成した担当者しか仕組みを理解できず、修正やメンテナンスができない「属人化」という状態に陥りがちです。

例えば、生産計画を自動計算するマクロを熟知している「田中さん」が、もし急に退職してしまったらどうなるでしょうか。残された従業員は誰もそのマクロを修正できず、エラーが発生しても対処できません。

こうして、かつては効率化に貢献したはずのエクセルファイルが、誰も触ることのできない「ブラックボックス」と化してしまうのです。これは、事業継続における大きなリスクとなります。

リアルタイムでの情報共有の難しさ

社内サーバーに保存されたエクセルファイルは、基本的に複数人での同時編集ができません。一人がファイルを開いて編集している間、他の人は「読み取り専用」でしか開けず、編集内容を反映させるためには、その人がファイルを閉じるのを待つ必要があります。

この仕様は、リアルタイムな情報共有を著しく妨げます。結果として、各々が「生産計画_v2.xlsx」「生産計画_v2_田中修正版.xlsx」といったコピーファイルを個別に保存し始め、どのファイルが最新の情報なのか分からなくなるという混乱を招きます。

営業担当が古い生産計画を見て顧客に誤った納期を伝えたり、購買担当が更新前の在庫数を見て不要な発注をかけたりと、部門間の情報格差が直接的なビジネス上の損失につながる可能性があります。

データ増加に伴うパフォーマンス低下

エクセルは、本来、大規模なデータベースとして設計されていません。日々の生産実績や部品の入出庫履歴など、データが蓄積されていくと、ファイルの容量が増大し、開いたり保存したりするのに非常に時間がかかるようになります。

この「重さ」は、単なる待ち時間以上の問題を引き起こします。例えば、1回のファイル起動に3分かかると仮定し、午前と午後に1回ずつ開くとすれば、1日で6分、年間240日稼働で24時間もの時間がファイルの起動だけに費やされる計算になります。

これは、本来の業務に充てるべき貴重な時間を浪費していることに他なりません。最悪の場合、ファイルが応答しなくなったり、破損して開けなくなったりするリスクも高まります。

ファイル破損や誤操作のリスク

エクセルによる管理は、一見便利なようでいて、人的ミスに対する脆さが大きな弱点です。たとえば、重要な計算式が入力されたセルをうっかり削除したり、誤ってデータを上書きしてしまうリスクは常に存在します。わずか1つの数式ミスでも、シート全体の計算結果が狂ってしまい、信頼性が大きく損なわれることもあります。

さらに、エクセルファイル自体が突然開けなくなるなど、データ破損のリスクもゼロではありません。堅牢なデータベースシステムと違って、エクセルでは安全性や正確性を確保するために、定期的な手動バックアップや、ユーザーの慎重な操作に頼らざるを得ません。

このように、エクセル管理は便利な一方で、非常に繊細で不安定な側面を持つ管理手法と言えます。

「脱エクセル」で実現する生産管理の高度化

エクセル管理の限界が見えてきたとき、それは事業が成長し、管理体制が次のステージへ進むべきサインです。「脱エクセル」を検討し、生産管理システムを導入することで、これまで抱えていた課題を解決し、生産性を飛躍的に高めることができます。

生産管理システムへの移行を検討するタイミング

「いつシステムに移行すべきか」という問いに対する答えは、エクセル管理のデメリットが、業務上の無視できない「コスト」や「リスク」に変わったときです。自社の状況を客観的に評価するために、以下のチェックリストで確認してみましょう。

時間の浪費 手作業でのデータ入力や、ファイルの突き合わせ、修正作業に週に何時間も費やしているか。
実害の発生 過去数ヶ月の間に、エクセルのデータ間違いが原因で、生産停止、納期遅延、部品の欠品などが発生したか。
精度の欠如 ある製品の正確な製造原価を、10分以内に算出できるか。
属人化リスク 現在の主要なエクセルファイルを作成した担当者が明日いなくなっても、業務は問題なく継続できるか。

これらの質問に「はい」が多くつくほど、移行を検討すべきタイミングが近づいていると言えます。エクセルの限界によって生じる損失(材料の無駄、機会損失、修正作業の人件費など)が、システムの導入コストを上回ると判断できたときが、具体的な検討を始める絶好の機会です。

システム導入による課題解決

生産管理システムは、エクセルが抱える課題を根本的に解決するために設計されています。

属人化の解消 業務プロセスがシステム上で標準化されるため、特定の個人のスキルに依存することなく、誰でも同じ品質で業務を遂行できます。
リアルタイムな
情報共有
データが一元管理され、関係者全員が常に最新の情報をリアルタイムで共有できます。部門間の連携がスムーズになり、迅速な意思決定が可能になります。
業務の自動化と
効率化
データ入力や集計といった定型業務が自動化され、人的ミスが削減されます。従業員は、より付加価値の高い分析や改善活動に時間を使えるようになります。
堅牢なデータ管理と
セキュリティ
大容量のデータを安定して処理できるだけでなく、高度なアクセス権限設定や変更履歴の管理により、データの安全性と信頼性が格段に向上します。

エクセル管理との比較

エクセルと生産管理システムには、それぞれ異なる特性があり、その違いは非常に明確です。重要なのは、どちらが優れているかではなく、自社の規模や成熟度に合ったツールを選択することが重要です。

  エクセルでの管理 生産管理システム
導入コスト 低い
(既存ライセンス活用)
高い
(初期費用・月額費用)
リアルタイム性 困難
(同時編集に制限)
可能
(データの一元管理)
業務の属人化 起こりやすい
(関数・マクロが複雑化)
解消しやすい
(業務の標準化)
データ処理能力 データ量に比例し低下 大容量データに対応
セキュリティ ファイル単位での管理に依存  高度なアクセス権限設定が可能
他システム連携 手作業やCSV連携が中心 API連携などで自動化が可能

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まとめ

本記事では、エクセルによる生産管理について、以下のポイントを中心に解説しました。

  1. 生産管理の目的はQCD(品質・コスト・納期)の最適化にあり、それぞれは密接に関連していること
  2. 生産管理には、工程管理や製造管理など複数の業務が含まれること
  3. エクセルによる生産管理には、導入コストの低さや操作のしやすさなどの利点があること
  4. 一方で、エクセル管理には属人化・ファイル破損・情報共有の遅れなど、成長とともに限界が見えること
  5. こうした課題が業務リスクや非効率につながる場合は、「脱エクセル」を検討するタイミングであること

エクセルによる生産管理は、小規模・初期段階の管理体制としては非常に有効ですが、業務の複雑化や拡大に伴い限界が訪れることもあります。


本記事が、貴社の現状把握と今後の管理体制の見直しに役立ち、最適なツール選定の一助となれば幸いです。

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