チョコ停は、製造業でよく使われる言葉。チョコ停は見逃されがちなものですが、度重なると大きなロスにつながるので早めに対策を打つことが大切です。この記事では、チョコ停とは何かやドカ停、その他ロスの違い、チョコ停が起こる原因と対策方法などについて解説していきます。
チョコ停とは、「工場内の設備が数秒から10分程度の間チョコっと停止する」トラブルのことです。
チョコ停は、停止する時間が短いため、見逃されるケースが多く、対応の優先順位は下げられる傾向にあります。しかし、対策をしないと何回もチョコ停が続いたり、大きな損害につながったりする可能性があるので注意が必要です。
ドカ停は、「空転ロス」とも呼ばれるロスで、停止時間が長いトラブルを指します。
チョコ停とドカ停では、トラブルが発生してから復旧にかかる時間の長さが異なります。どちらも停止時間に明確な定義はありませんが、1時間以上にわたって稼働が停止するようなトラブルはドカ停とされるのが一般的です。
製造工程でのロスには、チョコ停以外にも、大きなロスにつながる「7大ロス」があります。チョコ停は、7大ロスのひとつに含まれています。
製造現場には、上記のように数多くのロスが発生するリスクがあります。これらのロスをゼロにすることはできませんが、大きなロスにつながらないように改善することで、作業効率を上げられます。
チョコ停はすぐに復旧するものですが、軽視していいものではありません。チョコ停が現場に与える影響は、以下のようなものがあります。
チョコ停による停止時間はひとつずつは短いですが、何度も発生すると全体の稼働率が下がるため、納期に間に合わなくなる可能性があります。納期に遅れてしまうと、結果的に自社の信頼を失うことにもなりかねません。
チョコ停が発生すると、製造ラインが止まるため、製品の品質低下や不良品の増加が発生するおそれがあります。例えば、成形時にチョコ停が発生すると成形不良になり、場合によっては廃棄しなければいけません。
またチョコ停を復旧するためには、人の手が必要になるため、ヒューマンエラーの発生や異物混入などのリスクが高まり、製品の品質低下につながります。
チョコ停の復旧では、設備における安全面でのリスクが潜んでいるため注意が必要です。
例えば、機械が急に止まったり、復旧作業中に詰まりや引っ掛かりを取り除いた途端に残圧で設備が動いてしまったりして、思わぬケガにつながる可能性があります。
このようにチョコ停による現場に与える影響は小さくないため、できるだけチョコ停が起きないように根本から対策を行う必要があります。
チョコ停が起こる原因には、さまざまな環境や状況が起因するため、一概にこれとは言えません。ここでは、チョコ停が起こる一般的な原因をご紹介します。
製品の生産に使う設備の定期メンテナンスを怠ることが原因で、チョコ停が発生する可能性があります。
定期メンテナンスを行わないと、チョコ停につながる小さな問題を見逃しやすくなります。さらに定期メンテナンスを行わないと、清掃が不十分になるため、センサー類の反応が悪くなるなどの悪影響にもつながり危険です。
点検時期を定めるなどして管理を行い、設備を定期的にメンテナンスして、チョコ停の発生率を下げましょう。
製造ラインのバランスが整っていないことも、チョコ停が起こる原因となります。製造ラインの設計が不適切だと、ライン上でのひっかかりやつまりが起こりやすくなるため、チョコ停が発生する可能性が高まります。
チョコ停の発生率を下げるためには、材料や部品、製品を流す量や速度、不良品の選別方法などを適切に設計することが重要です。
工程ごとに製造の品質にばらつきがあると、ある特定の工程での発生率が増えるおそれがあります。製造ライン全体での一元管理と、不良品に対する対策を徹底することで、チョコ停が発生する回数を減らせます。
設備を長く使っていると、経年劣化や環境によって、センサー類の認識が鈍り、チョコ停が発生しやすくなります。
センサー類の認識精度の低下が原因で、チョコ停が起こりやすくなっているため、設備交換の検討が必要となるでしょう。
チョコ停がどのくらい起きているのかは、チョコ定率を算出することで把握できます。
【チョコ停率の算出方法】
(チョコ停時間/可動時間)×100=チョコ定率
※稼働時間は、可動時間+チョコ停時間+空転等の時間の合計です。
例えば、可動時間が23時間で、チョコ停時間と空転等の時間が30分であった場合、(0.5時間/24時間)×100となり、チョコ定率は2%であることが分かります。
チョコ停で発生するロスは、現場に与える影響が小さいですが、将来のことを考えると、早めの原因追究と対策を行うことが大切です。
チョコ停対策では、まずチョコ停の現状を正確に知ることが必要です。
「ワークサンプリング」という手法を用いて、チョコ停の現状を数値化するのがおすすめです。チョコ停の原因や、チョコ停によって設備の停止時間、復旧までにかかった工数、機械や従業員の動作状況などを記録します。
さらにチョコ停対策では、設備を稼働と非稼働に分けましょう。非稼働は、チョコ停、段取り替え、設備トラブルに分けて記録を残します。
チョコ停による設備停止時間の数値化ができたら、設備の稼働率を割り出します。
【設備の稼働率の算出方法】
稼働時間/負荷時間=稼働率
※負荷時間は、1日または1ヶ月で設備が稼働する時間
チョコ停を含める稼働率を計算する際は、「稼働時間/(負荷時間・チョコ停時間)」で計算します。
チョコ停の現状を把握したら、続いてデータを分析して原因を突き止めます。
ワークサンプリングで記録したチョコ停の原因と回数を記録したら、パレート図を作成して、優先すべき原因を明確にします。パレート図とは、対象項目の度数が大きい順に並べた棒グラフと、累計比率を反映した折れ線グラフを組み合わせたものです。
チョコ停におけるパレート図は、縦軸に「発生した回数とチョコ定率」、横軸に「発生原因」とすることで、分析に活用できます。
パレート図を作成すると、優先度の高い原因が明確になるので、実際にどの原因に対して対策を行うのかを考えます。対策すべき原因かどうかは、チョコ停での損失額から判断することができます。
【チョコ停における損失額の算出方法】
チョコ停が発生した時間×時間当たりの生産数×製品単価=損失額
また対策案だけでなく、今後チョコ停が起こる確率を下げるためにも、予知保全を行いましょう。予知保全とは、設備の不具合のサインを見つけて、事前に故障を予防することです。また、設備が使用できなくなる期間や回数に応じて、部品を交換する予防保全も効果的です。
今後起こりうるチョコ停のリスクを減らすためにも、今すぐ行うべき対策案とともに予防保全も合わせて行うのがおすすめです。
チョコ停の対応策を実施して対策を行いますが、チョコ停の対策は一度行ったら終わりではなく、結果が出ているかを確認する必要があります。対策後も、記録表を付けていき、チョコ停が発生する回数が減っていれば、対策できていることを意味します。
チョコ停を記録表に残す作業は、人が動かないといけないため、時間やコストがかかります。しかし、大きな問題にならないようにするためにも、しっかりと記録していきましょう。
チョコ停は停止時間が短く、一度製造ラインが停止してもすぐに復旧するため見逃されやすいです。ただし、チョコ停が何度も起これば、後々の大きな損害につながる可能性があるので、早めに対処することが大切です。
この記事でご紹介した対策方法を参考にして、大きな問題にならないように早めにしっかりと対策しましょう。