高圧プラグとは?種類や用途、選定ポイントをわかりやすく解説

製造業の現場では、さまざまな機器や設備で「高圧プラグ」という部品が使われています。しかし、この言葉が指すものは一つではありません。扱う対象が液体や気体か、あるいは電気かによって、その役割や形状は大きく異なります。正しく部品を選定し、安全に設備を運用するためには、これらの違いを正確に理解することが不可欠です。

本記事では、高圧プラグについて基本的な情報を収集されている製造業のご担当者様に向けて、高圧プラグの概要や種類ごとの違い、主な用途、そして選定時に確認すべき重要なポイントについて詳しく解説します。

高圧プラグの基本的な役割と種類

「高圧プラグ」という言葉は、製造現場において主に2つの異なる部品を指すために使われます。一つは高い圧力の流体(液体や気体)を扱うための接続部品で、もう一つは高い電圧の電気を安全に扱うための接続部品です。これらは目的も構造も全く異なるため、混同しないよう注意が必要です。

流体・気体を扱う「高圧プラグ(継手・カプラ)」

流体・気体用の高圧プラグは、油圧や空圧システムの配管やホースを接続・分離するために使用される部品です。一般的には「継手(つぎて)」や「カプラ」という名称で呼ばれることが多く、工具を使わずに手で簡単に着脱できるタイプも普及しています。
その主な役割は、高い圧力がかかった状態でも流体が漏れることなく、確実に流路を確保することです。工場内の高圧空気配管や、油圧で動く産業機械など、様々な場面で活用されています。

電気を扱う「高圧プラグ(コネクタ)」

電気用の高圧プラグは、数百ボルトから数キロボルトに及ぶ高い電圧の電気回路を安全に接続・分離するための部品です。より専門的には「高電圧コネクタ」と呼ばれます。
その最も重要な役割は、高い電圧を安定して伝送すると同時に、絶縁性を確保して漏電や感電といった事故を防ぐことです。産業用ロボットや検査装置、医療機器、そして近年では電気自動車(EV)など、高い電圧を必要とする最先端の分野でその重要性が増しています。

高圧プラグ(継手・カプラ)の概要

ここでは、油圧や空圧などの流体・気体を扱う高圧プラグ(継手・カプラ)について、その構造や用途を詳しく見ていきましょう。

構造と原理

流体用の高圧プラグは、基本的にはめ込む側の「プラグ(オス)」と、受け入れる側の「ソケット(メス)」が一対となって構成されます 5。接続部にはネジが切られており、これを締め込むことで固定します。
内部には液体や気体の漏れを防ぐためのシール材(パッキン)が組み込まれており、高い気密性を保ちます 。
特に重要な機能として、内部にバルブ(弁)を内蔵したタイプがあります。中でも「両路開閉型」と呼ばれる構造は、プラグとソケットを分離した瞬間に両方の流路が自動的に閉じる仕組みになっています 2。これにより、ホースを取り外した際に作動油などが漏れ出すのを防ぎ、作業環境の安全と清潔を保つことができます。

主な用途例

流体用の高圧プラグは、その信頼性の高さから幅広い産業分野で利用されています。

  • 工場設備: エアーツールや自動機の動力源となる、圧縮空気を供給するための配管接続。
  • 建設機械・産業車両: ショベルカーやフォークリフトなどのアームや駆動部を動かすための油圧回路の接続 。
  • 高圧洗浄機: 本体とホース、ガン(トリガー)などを接続する部分。
  • 各種製造装置: 作動油や冷却水を供給する配管の接続部。

また、自動車部品の製造過程で生じる不要な穴を塞ぐための「シールプラグ」も、広義のプラグの一種としてエンジンブロックやトランスミッションなどで使用されています。

高圧プラグ(コネクタ)の概要

次に、高い電圧の電気を扱う高圧プラグ(コネクタ)について、その安全性を支える構造や、具体的な用途を見ていきましょう。

構造と安全のための仕組み

高電圧コネクタは、安全に電気を流すために非常に精密な構造をしています。主要な構成部品は以下の通りです。

  • コンタクト: 電気を通す金属製の端子部分。オス側のピンコンタクトとメス側のソケットコンタクトがあります。
  • インシュレータ(絶縁体): コンタクト同士が接触してショート(短絡)するのを防ぐ絶縁部品。コネクタの心臓部とも言える重要なパーツです。
  • シェル(外殻): 内部の部品を物理的に保護し、コネクタ全体の強度を保つ外側のケースです。
  • プラグとレセプタクル: コネクタのオス側(プラグ)とメス側(レセプタクル)のハウジング全体を指します。

高電圧を安全に扱う上で最も重要なのが、インシュレータの設計です。絶縁破壊を防ぐため、導体間の距離を十分に確保する必要があります。この距離には、空間を通る最短距離である「空間距離」と、絶縁物の表面を沿って測る距離である「沿面距離」の2種類があります。製品の小型化を図りつつこれらの距離を確保するため、絶縁体の内部に物理的な壁(リブ)を設けるといった工夫が凝らされています。

また、エンジンのスパークプラグのように極めて過酷な環境では、耐熱性や機械的強度に優れた高純度のアルミナを絶縁体に用いるなど、用途に応じた最適な材料が選択されます。

主な用途例

高電圧コネクタは、私たちの身の回りにある様々な機器や、産業を支える大規模な設備で活躍しています。

  • 産業機器: プラント設備、非常用電源、電動の大型建設機械、各種検査装置など。
  • エネルギー分野: 太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの関連設備。
  • 自動車: 電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)のバッテリー、モーター、インバーターといった主要ユニット間の電力供給ライン。
  • 医療・研究分野: レントゲン装置やCTスキャナ、放射線測定器、加速器などの実験装置。

高圧プラグ選定で失敗しないための重要ポイント

高圧プラグを選定する際には、単に形状やサイズが合うというだけで選ぶと、性能不足による不具合や、重大な事故につながる可能性があります。ここでは、流体用と電気用の両方に共通する選定のポイントを解説します。

選定項目 高圧プラグ(流体・気体)の確認点 高圧プラグ(電気)の確認点
定格仕様  最高使用圧力 (MPa), 使用流体 定格電圧 (V), 定格電流 (A)
使用環境 使用温度範囲 (℃), 屋内外, 振動・衝撃 使用温度範囲 (℃), 保護等級 (IPコード), 振動・衝撃
材質 本体 (炭素鋼, ステンレス等), シール材 (NBR等) 絶縁体 (PBT, PA66等), コンタクト (銅合金), めっき (金, 銀)
接続・形状 ねじの種類・サイズ, 接続方式 (ワンタッチ等) 結線方式 (圧着, はんだ等), 極数, 形状
安全性 バルブ構造 (両路開閉型等) 誤嵌合防止機構, 絶縁・沿面
  確実な接続

距離, 安全規格 (UL, CE等)

基本仕様の確認(圧力・電圧・電流)

選定の第一歩は、使用するシステムの要求仕様とプラグの定格仕様を一致させることです。
流体用の場合は、システムの「最高使用圧力」を確認し、それを十分に上回る耐圧性能を持つ製品を選びます。例えば、3.0MPaの空気配管には、それに対応したプラグが必要です。

電気用の場合は、「定格電圧(V)」と「定格電流(A)」の両方を確認します。EV向けコネクタでは1000V DC、40Aといった高い定格を持つ製品も存在します。定格を超える使用は、発熱や絶縁破壊の原因となり大変危険です。

使用環境への適合性

プラグが使用される環境も、選定における重要な要素です。

  • 温度: 装置が動作する周囲の温度範囲に対応しているかを確認します。自動車用途などでは-40℃から+125℃といった広い温度範囲が求められることもあります。
  • 振動・衝撃: 自動車や建設機械のように、常に振動や衝撃にさらされる環境では、それらに耐えうる構造の製品が必要です。
  • 防水・防塵: 屋外や水・油がかかる場所、粉塵が多い環境では、防水・防塵性能が不可欠です。この性能は「IPコード」という指標で示されます。IPの後に続く2桁の数字のうち、1桁目が固形物(塵など)に対する保護等級、2桁目が水に対する保護等級を表します。例えば「IP67」は、「粉塵の侵入が完全に防護されており、一時的に水中に沈めても浸水しない」レベルを意味します。

材質の選定

材質は、プラグの耐久性や信頼性に直結します。

  • 流体プラグ: 本体には、強度に優れた炭素鋼(S45Cなど)や、錆に強いステンレス鋼がよく用いられます。シール材には、油への耐性が高いNBR(ニトリルゴム)などが一般的です。
  • 電気プラグ: 絶縁体には、PBTやPA66といったエンジニアリングプラスチックが使われます。特にPBTは吸水率が低く、湿度の高い環境でも電気特性が安定しているという特長があります。コンタクトには導電性の高い銅合金が用いられ、接触抵抗を下げて腐食を防ぐために表面に金めっきや銀めっきが施されます。

安全性と信頼性

最後に、安全な運用を継続するための機能を確認します。

流体用プラグでは、前述した「両路開閉型」のようなバルブ構造が、不意の離脱時の流体漏洩を防ぐ上で非常に有効です。

電気用プラグでは、安全性を高めるための様々な仕組みがあります。
「耐電圧」や「絶縁抵抗」は、そのコネクタがどれだけの電圧に耐え、どれだけ電流を漏らさないかを示す重要な品質指標です。

また、同じ形状のコネクタが複数並んでいる場合に、異なる回路を誤って接続してしまうことを防ぐ「誤嵌合防止機構」も重要です。ハウジングの形状にキー(突起や溝)を設けたり、色分けをしたりすることで、物理的に正しい組み合わせでしか接続できないように工夫されています。
さらに、UL規格やCEマーキングといった第三者機関による安全規格の認証を取得しているかどうかも、信頼性を判断する上での一つの目安となります。

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まとめ

  1. 「高圧プラグ」には、流体・気体用の「継手・カプラ」と、電気用の「コネクタ」の2種類があり、用途が全く異なります。
  2. 選定時には、圧力・電圧・電流といった基本仕様に加え、温度・防水・防塵(IPコード)・振動などの使用環境への適合性が極めて重要です。
  3. 安全な運用のため、流体用ではバルブ構造、電気用では誤嵌合防止機構や絶縁性能、各種安全規格への準拠などを確認する必要があります。

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