ウッドプラスチックの用途 | 自動車・家電・建材など産業別の活用事例

ウッドプラスチックが採用される理由

ウッドプラスチックが幅広い産業で採用されている背景には、木材とプラスチック両方の特性を活かせる点があります。木材のような自然な質感を持ちながら、プラスチックの耐久性・耐水性を兼ね備えているため、従来の木材製品では対応が難しかった屋外環境や湿度の高い場所でも使用可能です。

さらに、廃木材や再生プラスチックを原料として活用できることから、環境配慮型素材としての注目度も高まっています。2006年にはJIS規格（JIS A5741「木材・プラスチック再生複合材」）が制定され、グリーン購入法の特定調達品目にも指定されるなど、公共調達においても採用が進んでいます。

建築・エクステリア分野の活用事例

ウッドプラスチックの最大の市場は建築・エクステリア分野です。特にウッドデッキ材としての採用実績が豊富で、1992年に米国で産業化された屋外デッキ製品がウッドプラスチック普及の契機となりました。日本でも1990年代後半に屋外デッキ専用製品が製品化され、現在まで市場を牽引しています。

	主な製品例	採用される理由
エクステリア	デッキ、フェンス、ルーバー	腐朽・害虫被害に強い
公園施設	ベンチ、遊具、擬木	メンテナンス頻度が低い
内装材	フローリング、壁材、階段踏板	木質感と寸法安定性の両立

建築用途では押出成形による長尺材の製造が中心となっており、天然木では必要な定期的な塗装・防腐処理が不要なことから、長期的なメンテナンスコスト削減につながる点が評価されています。屋外での耐候性向上のため、紫外線吸収剤（UVA）や光安定化剤（HALS）を添加した製品も開発されています。

土木・建設資材分野の活用事例

土木・建設資材分野における活用例として、ウッドプラスチックを用いた敷板があります。ウッドプラスチックは敷鉄板と比べて軽量であるため、搬送や設置・撤去の作業負担を軽減しやすいという特性があります。

自動車・産業機器分野の活用事例

自動車分野では、内装トリム部品やバンパーカバーなどへのウッドプラスチック採用が進んでいます。木粉を充填することで原料樹脂単体よりも弾性率が向上し、剛性と耐熱性が高まるため、厳しい使用環境での性能維持が求められる部品に適しています。

従来、ウッドプラスチックの自動車部品への適用は射出成形の困難さから限定的でしたが、近年の技術開発により射出成形可能なウッドプラスチックコンパウンドが登場しています。200℃以下の樹脂温度で成形することで木材成分の熱分解を防ぎ、臭気や変色のない製品が製造できるようになりました。

家電製品においても、筐体部品やリモコンなどの雑貨類への採用事例があります。木粉を配合することで静電気の発生が抑制される特性は、電子機器の筐体材料として有用です。また、廃棄時に回収・粉砕してリサイクル可能な点は、家電リサイクル法への対応としても評価されています。

日用品・雑貨分野の活用事例

射出成形技術の進歩により、ウッドプラスチックは日用品や雑貨分野にも用途が拡大しています。木のぬくもり感としっとりとした質感が特徴の素材です。

具体的な製品例として、おもちゃ、文具、キッチン用品、浴室用品などが挙げられます。ウッドプラスチックはシロアリなど害虫に強く、腐食耐性や耐湿性にも優れることから、水回りで使用するキャビネットや収納家具にも採用されています。

最近の開発動向として注目されているのが、生分解性樹脂とウッドプラスチック技術を組み合わせた製品です。コーンスターチやサトウキビ由来の生分解性プラスチックと木粉を複合することで、使用後に環境負荷の少ない形で廃棄できる製品の開発が進んでいます。アパレル用ハンガーや買い物カゴなど、3D印刷技術と組み合わせた新しい製品展開も始まっています。

用途別に見る成形方法の選択

ウッドプラスチックの成形方法は用途に応じて使い分けられています。製品開発を検討する際には、目的とする製品形状や生産量に適した成形方法を選択することが重要です。

押出成形はウッドプラスチック製品の大半を占める製造方法で、デッキ材やフェンスなどの長尺製品に適しています。金型から連続的に押し出すことで効率的な大量生産が可能です。プレス成形は照明カバーや包装資材など、精度や寸法均一性が求められる製品に用いられます。射出成形は複雑な形状の製品製造に適していますが、ウッドプラスチックは高温で木材成分が熱分解するため、温度管理が重要となります。