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ウッドプラスチックの成形方法 | 射出・押出・プレス成形の特徴と適用製品

ウッドプラスチック(木材・木質樹脂)の加工を検討する際、「自社の成形設備で対応できるのか」「どの成形方法が目的の製品に適しているのか」と悩む技術者は多いでしょう。ウッドプラスチックには主に押出成形・射出成形・プレス成形の3種類があり、それぞれ適用製品や加工条件が異なります。本記事では、各成形方法の原理と特徴、加工時の注意点を解説し、自社設備での加工可否を判断するための情報を提供します。

ウッドプラスチックの成形方法の全体像

ウッドプラスチックは、木粉と熱可塑性プラスチックを複合化した材料です。一般的なプラスチック成形と同様の方法で加工できる点が特長ですが、木粉を含むことで材料特性が変化するため、成形条件には独自の配慮が必要です。

日本国内で製造されるウッドプラスチック製品のほとんどは押出成形によるものです。これはウッドプラスチックの材料特性、特に溶融時の流動性の問題に起因しています。ただし近年は技術開発により、射出成形やプレス成形への対応も進んでいます。

成形方法を選択する際は、製品形状、生産量、自社設備、材料の木粉充填率などを総合的に考慮する必要があります。

押出成形|ウッドプラスチックの主流となる成形方法

押出成形の原理

押出成形は、加熱したシリンダー内で木粉とプラスチックペレットを混練・溶融し、ダイス(押出口)から連続的に押し出す方法です。押出後、空気や水で冷却して固化させることで、一定断面の長尺製品が得られます。

この方法では金型内で成形するのではなく、ダイスの形状で製品断面が決まります。そのため、デッキ材やフェンス材のように「同じ断面が長く続く製品」の製造に最適です。

押出成形の特徴と適用製品

適用製品 デッキ材、フェンス、ルーバー、手すり、サイディング
メリット 連続生産が可能、材料ロスが少ない、長尺製品に対応
課題 複雑な立体形状は不可、製品形状が断面に限定

押出成形はウッドプラスチックにおいて最も多く採用されている方法であり、国内ウッドプラスチック製品の大部分がこの方法で製造されています。木粉充填率30〜70%程度の中充填ウッドプラスチックで広く用いられ、ウッドデッキをはじめとするエクステリア製品の主要な製造方法となっています。

加工時の注意点

押出成形では、木粉に含まれる水分や揮発成分への対策が重要です。木粉は無機フィラーと比較して吸湿性が高いため、原料の乾燥工程が不可欠となります。

また、木質成分の熱分解によって発生する酢酸などの有機酸は、シリンダーやダイスの腐食を引き起こす可能性があります。このため、押出機内部には耐食性の高い材質を採用するなどの対策が求められます。

射出成形|複雑形状への挑戦

射出成形の原理

射出成形は、加熱溶融した材料を高圧で金型内に注入し、冷却・固化させて製品を得る方法です。金型の形状がそのまま製品形状となるため、複雑な三次元形状の製品を高精度で量産できます。

プラスチック成形としては最も一般的な方法ですが、ウッドプラスチックにおいては技術的なハードルが存在します。木粉を多量に含むウッドプラスチックは溶融時の粘度(溶融粘度)が著しく高くなり、通常の射出成形条件では金型への充填が困難になるためです。

射出成形の技術的課題

ウッドプラスチックの射出成形が困難とされてきた主な理由は以下の2点です。

第一に、流動性の問題です。木粉を添加すると溶融粘度が大幅に上昇し、金型への充填が難しくなります。この問題は特に木粉充填率が高い材料で顕著に現れます。

第二に、熱分解の問題です。木質成分(セルロース、ヘミセルロース、リグニン)は200℃を超えると徐々に分解が始まり、230℃を超えると分解が加速します。射出成形時の樹脂温度は200℃以下に抑える必要がありますが、これでは汎用プラスチックの適正成形温度を下回る場合があります。

熱分解が進行すると、成形品の変色(褐色〜黒色)、異臭の発生、さらには金型や成形機シリンダーの腐食といった問題が生じます。

射出成形可能なウッドプラスチックの開発

従来は困難とされていた射出成形ですが、近年は技術開発により実用化が進んでいます。特殊な配合技術や相容化剤の改良により、一般的な射出成形機と金型で成形可能なウッドプラスチック材料が登場しています。

射出成形の適用製品と可能性

適用製品 雑貨、日用品、自動車内装部品、電子機器筐体
メリット 複雑形状に対応、高い生産効率、寸法精度が高い
課題 材料選定が限定的、温度管理が厳密

射出成形の実用化により、ウッドプラスチックの用途は押出成形品(建材中心)から雑貨や部品へと広がりつつあります。木の質感を活かした日用品や、環境配慮型の自動車内装部品など、新たな市場開拓が期待されています。

プレス成形|原料制約の少ない方法

プレス成形の原理

プレス成形は、金型に材料を配置し、熱と圧力を加えて成形する方法です。溶融した材料を金型内で高圧によって圧縮し、冷却後に取り出すことで製品を得ます。

射出成形や押出成形と比較すると、材料を金型に流し込む必要がないため、溶融粘度の影響を受けにくい点が特長です。このため、木質系原料やプラスチック原料の種類による制約が少なく、幅広い配合に対応できます。

プレス成形の特徴と適用分野

適用製品 擬木製品、板状製品、精度が求められる部品
メリット 原料の制約が少ない、寸法精度が均一、高充填率対応
課題 生産効率は射出成形より低い、複雑形状に制約

プレス成形は、特に精度や寸法の均一性が求められる製品に適しています。例えば照明カバーや包装資材などの製造に用いられます。

プレス成形の加工上の留意点

プレス成形では、材料の均一な分布と適切な温度・圧力の管理が品質を左右します。材料を金型内に配置する際のばらつきが製品の品質むらにつながるため、材料供給の工程設計が重要です。

また、成形サイクルは射出成形と比較すると長くなる傾向があるため、大量生産には向かない場合があります。用途や生産量に応じた成形方法の選択が求められます。

成形方法の比較と選定の考え方

3つの成形方法の比較

押出成形 製品形状 :長尺・断面一定
生産性  :高い
木粉充填率:中充填向き
設備普及度:広く普及
射出成形 製品形状 :複雑な立体形状
生産性  :非常に高い
木粉充填率:低〜中充填
設備普及度:普及拡大中
プレス成形 製品形状 :板状・精度重視
生産性  :中程度
木粉充填率:高充填対応
設備普及度:限定的

成形方法選定のポイント

成形方法を選定する際は、以下の観点から総合的に判断することが重要です。

製品形状の観点では、デッキ材のような長尺製品は押出成形、日用品や部品類は射出成形が基本となります。生産量については、大量生産なら射出成形や押出成形、小ロット多品種ならプレス成形も選択肢に入ります。

自社設備の観点では、既存のプラスチック成形設備が活用できるかどうかが重要です。射出成形対応のウッドプラスチック材料であれば、特別な設備投資なしに既存の射出成形機での加工が可能な場合があります。ただし、成形機や金型の耐食対策は検討が必要です。

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まとめ

  1. ウッドプラスチックの成形方法には押出成形・射出成形・プレス成形の3種類があり、国内ではデッキ材等を中心に押出成形が主流となっている
  2. 押出成形は長尺で断面が一定の製品に適しており、連続生産による高い生産性と材料ロスの少なさが強み
  3. 射出成形は従来ウッドプラスチックでは困難とされていたが、技術開発により複雑形状の製品製造が可能になりつつあり、用途拡大が期待される
  4. ウッドプラスチック成形では木粉の熱分解(200℃超で発生)対策として、樹脂温度200℃以下の管理や、成形機・金型の耐食対策が重要
  5. 成形方法の選定は製品形状、生産量、木粉充填率、自社設備の状況を総合的に考慮して判断する

ウッドプラスチックについて詳しく知りたい方は、『ウッドプラスチック(木材・木質樹脂)』のページもご覧ください。