ウッドプラスチック(木材・木質樹脂)とは
ウッドプラスチックとは、木材を粉砕した木粉と熱可塑性プラスチックを混練・成形した複合材料です。木材とプラスチック双方の特性を活かし、それぞれの欠点を補い合う設計となっています。
日本では1990年代に製造・販売が開始され、2006年にはJIS規格(JIS A 5741)が制定されました。特に、原料にリサイクル材を質量割合で40%以上用いたものは「木材・プラスチック再生複合材(WPRC:Wood Plastic Recycled Composite)」と定義されています。日本では、リサイクル材を原料とするWPRCが環境配慮型素材として注目され、特に公共事業向けに普及が進んでいます。
ウッドプラスチックの原料と配合比率
ウッドプラスチックは主に「木質原料」「プラスチック原料」「添加剤」の3つで構成されます。
木質原料
木質原料には、製材端材、建築廃材、間伐材などのリサイクル材が多く使用されます。国内で発生する木質廃材はウッドプラスチックの原料として十分な品質を確保できるため、環境面・コスト面からリサイクル木材が広く活用されています。粒度は100〜500μm程度の木粉が使用されています。
プラスチック原料
木質成分は200℃を超えると熱分解が徐々に始まるため、成形時の樹脂温度は200℃程度以下に抑える必要があり、使用できる樹脂に制約があります。代表的な樹脂は以下の通りです。
| ポリエチレン(PE) |
耐水性・耐薬品性に優れる |
| ポリプロピレン(PP) |
剛性・耐熱性のバランスが良好 |
| ABS系樹脂 |
衝撃強度・成形性に優れる |
ペットボトルキャップなどの再生プラスチックを原料として活用するケースも増えています。
木粉充填率による分類
木粉の充填率によってウッドプラスチックの特性は大きく変化します。業界では以下のように分類されています。
| |
木粉充填率 |
主な特徴 |
| 低充填 |
30%未満 |
プラスチック寄りの特性、木調意匠の付与が目的 |
| 中充填 |
30〜70% |
バランス型、国内で最も汎用的 |
| 高充填 |
70%以上 |
木材寄りの特性、熱寸法安定性に優れる |
現在国内で流通するウッドプラスチック製品の多くは中充填タイプです。充填率を変えることで、用途に応じた性能調整が可能となります。
ウッドプラスチックの特徴とメリット・デメリット
木材と比較した場合のメリット
ウッドプラスチックは木材単体と比べて以下の点で優位性があります。
木材の空隙にプラスチックが充填されているため、腐朽菌やシロアリによる劣化を受けにくく、耐久性に優れます。寸法安定性も高く、湿度変化による乾燥収縮・膨張が抑えられます。さらに、トゲやささくれが発生しないため安全性が高く、基本的に塗装不要でメンテナンス負担を軽減できます。
プラスチック成形技術を適用できる点も大きな特長で、押出成形により均一な品質の製品を効率的に生産できます。
プラスチックと比較した場合のメリット
プラスチック単体との比較では、木粉の充填により曲げ剛性が向上し、たわみにくい素材となります。熱膨張も抑えられ、従来プラスチック単体では難しかった用途への展開が可能です。
廃木材・再生プラスチックを原料として活用できるため、バージン材のみを使用する製品と比較して環境負荷を低減できます。木質成分により木の風合いが得られ、プラスチック特有の人工的な印象を軽減できる点も意匠面でのメリットです。
ウッドプラスチックのデメリット・注意点
一方で、ウッドプラスチックには以下の制約があります。
基本的に釘を打つことができず、ビス留め・下穴加工が必要です。天然木特有の木目の美しさや経年変化による風合いには及びません。また、高剛性である反面、強い衝撃に対しては割れや欠けが発生しやすい傾向があります。
成形面では、木質成分の熱分解(200℃超で開始、230℃超で加速)により樹脂温度に上限があるため、成形条件に制約が生じます。現行の建築基準では構造材としての使用が難しく、非構造部材としての用途が中心となっています。
ウッドプラスチックと木材・プラスチックとの比較については『ウッドプラスチックのメリット・デメリット』のページで詳しく解説しています。
ウッドプラスチックの成形方法
ウッドプラスチックの成形方法には、押出成形・射出成形・プレス成形の3種類があります。
押出成形
加熱したシリンダー内で木粉とプラスチックを混練・溶融し、ダイス(押出口)から連続的に押し出す方法です。冷却・固化させることで一定断面の長尺製品が得られます。デッキ材やフェンス材など「同じ断面が長く続く製品」の製造に最適で、国内ウッドプラスチック製品の大部分がこの方法で製造されています。
射出成形
加熱溶融した材料を高圧で金型内に注入し、冷却・固化させて製品を得る方法です。複雑な三次元形状の製品を高精度で量産できます。
従来、ウッドプラスチックは溶融粘度が著しく高いため射出成形は困難とされていましたが、近年の技術開発により実用化が進んでいます。特殊な配合技術や相溶化剤の改良により、一般的な射出成形機で成形可能なウッドプラスチック材料も登場しており、雑貨・日用品・自動車内装部品など用途の拡大が期待されています。
プレス成形
金型に材料を配置し、熱と圧力を加えて成形する方法です。溶融粘度の影響を受けにくいため、木質系原料やプラスチック原料の種類による制約が少なく、高充填ウッドプラスチックにも対応可能です。
成形方法の詳細については『ウッドプラスチックの成形方法』のページで、各方法の原理・適用製品・加工条件を解説しています。
ウッドプラスチックの主な用途と製品例
ウッドプラスチックは配合比率や成形方法を調整することで、幅広い用途に対応できます。
エクステリア・建材分野
最も普及している用途がエクステリア分野です。ウッドデッキ、フェンス、ルーバー、手すり、ベンチ、ボードウォークなどに採用されています。耐腐朽性・耐候性・メンテナンス性の高さから、公園・学校・商業施設など公共施設での採用が増えています。
物流・産業資材分野
敷板(仮設道路用)、パレット、コンテナなどの産業資材にも活用されています。敷鉄板の代替として、軽量性・施工性・繰り返し使用可能な点が評価されています。
住宅・インテリア分野
システムバス部材、フローリング材、階段手すり、腰壁、ドア枠などの内装材にも使用されています。高充填ウッドプラスチックは木質成分が多いため木材に近い質感と熱寸法安定性を持ちますが、耐久面の制約から屋内用途が中心となっています。MDF・パーチクルボード等の加工木の代替として使用されています。
新規用途への展開
射出成形技術の実用化により、雑貨・日用品、自動車内装部品、電子機器筐体など、従来は押出成形品が中心だったウッドプラスチックの用途が拡大しつつあります。木の質感を活かした環境配慮型製品として、新たな市場開拓が進んでいます。
ウッドプラスチックの具体的な活用事例について、『ウッドプラスチックの用途』で詳しく紹介しています。
ウッドプラスチックの環境配慮性
ウッドプラスチックは環境配慮型素材として高く評価されています。
リサイクル材の活用
製材端材・建築廃材・間伐材などの木質廃材と、廃プラスチックを原料として活用できます。通常であれば焼却・埋立処分される廃材を有効利用することで、廃棄物の削減とCO2排出抑制に貢献します。
マテリアルリサイクルの実現
ウッドプラスチックは熱可塑性を持つため、使用済み製品を回収・粉砕して再び成形し直すマテリアルリサイクルが可能です。循環型社会の構築に向けた持続可能な素材といえます。
グリーン購入法への対応
グリーン購入法に基づく特定調達品目として「木材・プラスチック再生複合材製品(WPRC)」が指定されています。JIS A 5741認証でリサイクル材含有率60%以上(R60以上)を取得した製品が判断基準を満たし、公共調達において採用されています。
低VOC建材としての評価
ウッドプラスチックは揮発性有機化合物(VOC)の放散が少ない建材として、安全・安心な住環境の提供にも寄与しています。