拡散板は、光を散乱させて均一に広げる光学部品です。主に照明や光学機器で使用され、効果的な光の制御と均一な照明の実現に貢献しています。
本記事では、拡散板の特性や素材、多岐にわたる用途について、詳しく解説します。
このような方におすすめ
■ 光源を用いた産業用装置の開発者の方 / 照明メーカーの開発者の方
・均一に光を当てたいのにムラが取りきれない
・光の拡散角度
・形状をコントロールしたい
・透過率の高い拡散板を探している
拡散板とは、特定の方向に光を均一に拡散させるための光学部品です。光学システムにおいて光の均一化や柔らかな照明効果を得るために重要な役割を果たします。
拡散板は、アクリル板やポリカーボネートなどの透明または半透明の材料で作られることが一般的で、表面には微細な凹凸や粒子が含まれていることが多いです。この構造により、光が板に当たると、多方向に散乱され、直進する光を拡散する効果が得られます。
また、拡散板は、光ムラを抑えたり、影を柔らかくする効果もあるため、均一な光を必要とするさまざまなシーンで活用されています。
拡散板は光を効果的に拡散させながら、同時に高い透過性を維持するよう設計されています。多くの拡散板は、入射光を均一に散乱させつつ、光の損失を最小限に抑える特性を備えています。
この特性により、光源の明るさを維持しながら、柔らかく均一な光を生み出すことが可能です。
拡散板の材質は、その用途や環境に応じて選択されます。ガラス製の拡散板は高い耐熱性を持ちますが、耐衝撃性は比較的低くなります。一方、プラスチック製の拡散板は耐衝撃性に優れ、成形性も高いですが、耐熱性はガラスほど高くありません。
各材質の特性を理解し、適切な環境で使用することが重要です。
拡散板は非常に柔軟性の高い光学部品です。製造過程で、特定の用途に合わせてサイズや形状を調整することができます。さらに、表面処理や材質の選択により、配光分布を制御することも可能です。
このようなカスタマイズ性により、照明設計者は特定の照明要件に合わせて最適な拡散板を選択または設計することができます。
ガラスやプラスチックは、拡散板の素材として用いられることの多い素材です。
ガラス製拡散板は通常のガラスを加工して製造されます。代表的な種類として、フロスト型と腐食型があります。フロスト型はガラスの片面をすりガラス状に処理したものです。一方、腐食型はフロスト型をさらにフッ化水素で表面処理を施したものとなっています。
プラスチック製拡散板はアクリル樹脂やポリカーボネートなどの合成樹脂を使用して作られます。透明性が高く、軽量で加工しやすいという特徴を持っています。その性質から、様々な用途に適した拡散板として広く利用されています。
光学特性 | 透過率:材料によって光の透過率が異なります。例えば、ガラス製の拡散板は一般的にプラスチック製よりも高い透過率を持ちます。 拡散性:材料や添加物によって光の拡散の度合いが変わります。例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、シリカ粉末、ガラスビーズなどの光拡散材を含有させることで、拡散性を調整できます。 反射特性:アルミ粉や銀粉などの光反射微少素材を使用することで、反射特性を変えることができます。 |
---|---|
物理特性 | 耐熱性:材料によって耐熱性が大きく異なります。例えば、特殊な有機-無機ハイブリッド材料は300°C以上の耐熱性を持つことがあります。 耐衝撃性:プラスチック製の拡散板はガラス製に比べて一般的に耐衝撃性が高くなります。 加工性:プラスチック製の拡散板は、ガラス製に比べて加工が容易です。 |
環境特性 | 耐候性:屋外で使用する場合、UV耐性や耐湿性が重要になります。材料選択によってこれらの特性が変わります。 環境負荷:材料の製造過程や廃棄時の環境への影響が異なります。 |
機能特性 | 均一性:材料や製造方法によって、光の均一な拡散の度合いが変わります。例えば、ビーズ粒子の分布や埋め込み方によって均一性が調整できます。 特殊機能:特定の波長域での高い透過率や、温度変化に対する安定性など、材料選択によって特殊な機能を持たせることができます。 |
これらの特性は、拡散板の用途や要求される性能に応じて、適切な材料を選択することで調整されます。
セキュリティシステムにおいて、拡散板は画像の品質向上に重要な役割を果たします。監視カメラでは、拡散板を使用することで光を均一に分散させ、画像のコントラストを改善し、死角を減らすことができます。
顔認証システムでは、拡散板によって照明を最適化し、より正確な顔の特徴抽出を可能にします。
自動運転技術において、拡散板はセンサーの性能を向上させる重要な要素です。車載カメラやLiDARシステムに使用される拡散板は、様々な天候条件や照明環境下でも安定した視覚情報を提供します。
3Dセンシング技術では、拡散板が近赤外線の均一な分散を実現します。この技術はスマートフォンの顔認証や、工業用の3D計測など幅広い分野で利用されています。
拡散板により、センサーは対象物の正確な3D情報を取得することができ、より精密な空間認識が可能となります。
照明器具において、拡散板は直接的な光源からの眩しさを軽減し、柔らかく均一な光を作り出す役割を果たします。住宅、オフィス、商業施設など、様々な場所の照明に使用され、快適な光環境を創出します。
ディスプレイ技術において、拡散板はバックライトの光を均一に分散させ、画面全体の輝度を均一にする役割を果たします。また、屋外広告板では、拡散板によって昼夜問わず鮮明で均一な表示が可能となり、広告効果を高めます。
これらの用途では、拡散板が視認性と画質の向上に大きく寄与しています。
一般的には、すりガラスや乳半の拡散板が広く流通していますが、それらの拡散板を産業用装置の光源部分で用いるには、以下のような課題があります。
一般的な拡散板では、明るさのムラが取りきれず、検査照明、画像処理用照明、顕微鏡照明などの産業用照明で必要とされる光の均一性が担保できないことがあります。
一般的な拡散板は、光の拡散角度(光がどのくらい広がるかを表す数値)の保証がされていないケースがほとんどです。また、楕円・線状などの形状での光の拡散にも対応していない場合があります。
光の透過率が低い拡散板を用いると、拡散後の光の量は少なく、暗くなってしまいます。その場合、必要な明るさを得るためによりパワーの高いLEDを用いる必要があるため、消費電力の増加や、LEDが発する熱にも配慮する必要が出てきます。
オプティカルソリューションズ株式会社は、光学技術に特化した問題解決を提供する専門企業です。レンズ拡散板(LSD)やUV拡散板(UFD)などの拡散板をはじめとした、様々な光学製品を開発・販売しており、独自の技術と充実のラインナップで、上記のような課題の解決に貢献します。
レンズ拡散板:LSD(Light Shaping Diffusers, Luminit)は、特殊な仕組みで光を拡散させているため、非常に高い透過率を持ち、拡散後の光の均一性にも優れます。これにより、明るく、ムラのない照明を実現します。
拡散のバリエーションも多彩で、特注不要でお客様のニーズに合った拡散板をご提供可能です。
紫外線・可視光・近赤外線で使用可能な素材をそれぞれ用意しているため、幅広い波長の光源でお使いいただけます。(240nm~1100nm)
※紫外域は拡散の種類が限定されます
※Light Shaping Diffusers (LSDs®)、Light Shaping Diffuser、 ライトシェイピングディフューザーは、米国「Luminit, LLC」の製品です。
※株式会社オプティカルソリューションズは、「Luminit, LLC」が指定した日本正規代理店です。
画像処理 | カメラ用照明、LEDライン照明、LEDリング照明、赤外照明、防犯カメラ用照明、顕微鏡用照明 |
---|---|
産業機器 | ナンバー読取用照明、測量用トランシット、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、加速度センサ(モーションセンサ)、ジェスチャ認識装置、紫外線硬化(UVキュアリング)、郵便物仕分け装置、ロボット関連(照明系)、ステッパ(露光装置) |
OA機器 | バーコードリーダ、スキャナ・コピー機、プロジェクタ |
医療関連 (メディカル関連) | 歯科用照明、無影灯、医療検査装置用、レーザ治療装置 |
検査機器 | 指紋読取用LED光源、静脈認証装置用照明、バイオ機器用照明、ラインセンサ用バー照明、屈折計、血液検査関連、3次元検査装置 |
パネル照明 | 機器メーター照明 |
自動車 | ヘッドアップディスプレイ(HUD)、テールランプ、ストップランプ、インパネ照明 |
航空機 | 計器類照明、機内照明 |
ディスプレイ | 3Dディスプレイ、スクリーン |
UV拡散板:UFD(UV Fused Silica Diffusers)は、UV光源の照射ムラを解消します。
合成石英の表面に形成された構造体により、決められた範囲に効率良く照明光を広げます。また、合成石英の耐候性をそのままにお使いいただけます。
※1 耐熱:900℃程度 / 使用可能波長範囲:190nm~2,000nm
※2 拡散角度のラインナップを増やすため、現在開発を進めています。
ランバート拡散板は、均等な照明を作り出すガラス拡散板です。
熱処理によるガラスの内部構造により光を散乱させ、透過率が高くない反面、完全拡散光を得られます。
他の拡散板と違い入射角依存が少なく、出てくる光はほぼ同一の配光分布を示します。
また、可視域から近赤外域に渡ってフラットな分光透過特性を有します。レーザー光のスペックル軽減や評価・検査用スクリーン※用途などで実績があります。
※NDフィルター・アッテネーター(減衰器)など