レーザーマーカーは、レーザーの力を用いてアイテムの印字や加工を行う道具です。素早く高精細に消えない印字ができるなど、製品生産の高速化や質の向上に役立ちます。
この記事ではレーザーマーカーの原理や主な種類、メリット&デメリット、分野別の活用例をご紹介します。
レーザーマーカーとは、レーザーの力でアイテムの印字や加工を行えるツールです。
一般的なマーキング用ツールは「接触型」と「非接触型」に大別でき、レーザーマーカーは後者に当たります。
レーザーマーカーは樹脂・プラスチック・金属・紙など、幅広い素材に対して使用できるのが特徴です。商品の製造日やロットを印字する際などに活用されています。
また、マーキング以外に素材の穴開けや切れ込み入れにも使えるなど、活躍機会の多い道具でもあります。
レーザーマーカーはアイテムの表面にレーザー光を照射し、化学反応を引き起こして印字や加工をしています。
その原理は、大きく「剥離(印刷面乖離)」「掘り込み(表面層乖離)」「発色」の3パターンに分類できます。
・剥離(印刷面乖離)
対象の表面を覆う塗装やコーティングを剥がす印字・加工方法
・掘り込み(表面層乖離)
対象の表面自体を削ったり溶かしたりする印字・加工方法。「刻印」とも呼ぶ
・発色
対象の表面自体を酸化させたり焦がしたりする印字・加工方法
一般的なレーザーマーカーが採用するレーザーは、「ファイバーレーザー」「CO2レーザー」「YAGレーザー」と3種類に分かれています。それぞれの特徴を見ていきましょう。
ファイバーレーザーは、インターネット回線でお馴染みの光ファイバーを用いたレーザーです。
出力が強く、極微細な照射(細かな加工)も可能で、なおかつ機器本体の軽量化・小型化もしやすいと3拍子揃っています。
その性能の高さから、加工難易度の高い金属への印字によく利用されています。
CO2レーザーは、炭素ガス(CO2)を利用して、遠赤外線を照射するレーザーです。
金属への印字や加工には利用できず、ガラスに代表される透明な素材へのマーキングによく採用されています。プラスチックの穴開けや切れ込み入れも得意分野です。
YAGレーザーは、「イットリウム (Yttrium) 」「アルミニウム (Aluminum)」「ガーネット (Garnet)」と3種類の素材を組み合わせて発生させたレーザーです。
YAGレーザーは照射先のアイテムに対する熱影響が少なく、表面にダメージを与えにくい性質を持ちます。
凹凸の少ない美しい印字を行えるほか、樹脂や金属など幅広い材質に照射できます。
続いて、レーザーマーカーのメリットを見ていきましょう。
レーザーマーカーの魅力は、高速・高精細・消えない形で印字ができる点にあります。
商品に製造日や製造番号を記載したり、ブランドのロゴやQRコードを入れたりといった何度でも行う生産作業を、高品質かつ時短した形で完了できます。
金属やプラスチックなど、幅広い素材を加工できるのもレーザーマーカーの長所です。
ただし前述の通り、レーザーの種類によって加工しやすい素材は変わるため(例:CO2レーザーは金属には向かない)、購入前に対象素材を確認しておきましょう。
非接触型のマーキングツールであるレーザーマーカーは、原則としてインクや刻印ヘッドなどの消耗品が不要です。
ほかのマーキングツールと比べてメンテナンスが簡単で、ランニングコストもほとんど電気代のみで済みます。
一方で、レーザーマーカーには注意しておきたいデメリットもあります。
レーザーマーカーは、本体価格の高額なモデルが多いのが欠点です。
モデルごとに価格はさまざまですが、通常は安くとも100万円を超えます。メリットの通り、ランニングコストは安価ですが、初期投資にはまとまった費用が必要です。
消えない印字ができることはレーザーマーカーのメリットですが、ときにはその性質がデメリットとなるケースもあります。
たとえば、誤った印字をしてしまった場合、内容によっては製品すべてを不良品として破棄しなければならないこともあります。
利用前にはミスを防ぐための確認・作業体制の構築が必須です。
パワフルなレーザーマーカーは、使用者が怪我をしないように安全対策を整えてから使用しなければなりません。
保護用のメガネや衣服を着用したり、起動前には周囲に人がいないか確認したりと、適切に業務手順を整えておくことが求められます。
レーザーマーカーは幅広い分野で活用されていますが、ここではその一例をご紹介します。
自動車分野では、ワイパーブレードからクランクシャフトまで車体を構成する多種多様なパーツへの印字にレーザーマーカーが活用されています。
レーザーマーカーの印字が消えない性質は、すなわち印字内容の改ざんが困難であるとも言い換えられます。
高度な品質管理が重視される自動車製造において、このメリットは重要です。
食品分野では、パッケージへの賞味期限や原材料の記載はもちろん、ペットボトルに直接刻まれている製造番号などもレーザーマーカーで印字されています。
珍しいところでは、米袋に微細な空気穴を空けるのにも活躍しています。針を刺して穴を開けるのと比較して、異物の侵入や袋の割けを防げると好評です。
医療分野では、医療器具への細かく・見やすく・消えない印字にレーザーマーカーを使用しています。
たとえば、カテーテルやチューブなどの医療器具には表面に型番が記載されていますが、それはレーザーマーカーによるものが主流です。
医療用のドリルやボトルへの印字に対しても、インクを用いておらず照射された面が錆びにくいレーザーマーカーの特徴が活躍しています。
この記事ではレーザーマーカーについて、特徴や原理、種類やメリット&デメリット、活用分野をご紹介しました。
レーザーマーカーは非接触型のマーキングツールであり、高速・高精細・消えない印字ができるなどの強みがあります。
一方で、印字を消せないことがデメリットになるケースには気を付けなければいけません。
また、レーザーマーカーは採用しているレーザーによって、対応素材が変わります。実際の購入前には、希望する素材の印字・加工に対応しているのかチェックしておきましょう。