レーザー発振器の原理や種類ごとの特徴・用途について解説
この記事では、レーザー発振器の種類やそれぞれの特徴、また適した用途についてご紹介します。
レーザー発振器の原理

レーザーを発生させるレーザー発振器は、光に刺激を与えることで光の波を発生させ、より強いレーザー光を作り出します。以下にて詳しく解説します。
レーザー発振器の構造
レーザー発振器は大きく分けて3つの要素で構成されています。
- レーザー媒体
- 光共振器(ミラー)
- 励起源
レーザー発振器は、簡単にいうと下記のしくみでレーザー光を作り出します。
- 励起源により、レーザー媒体のエネルギー状態が励起(れいき)される
- レーザー媒体が光子の形でエネルギーを放出(誘導放出の発生)
- 放射光が光共振器を繰り返し通過することで、強度の高い光ビームになる
出力方式には連続発振、パルス発振の2種類があり、時短パルス発振も可能です。
- 連続発振:光ビームが連続的に出力される
- パルス発振:あらかじめ決められた周波数、パルス幅で断続的・周期的に光ビームを出力する
光の放出と発振形態
レーザー発振では自然放出・誘導放出を繰り返すことで光の波が増幅し、光の出力パワーを高めます。光の進行方向と位相を揃えることで、強い光を作れるというしくみです。
最適な発振条件実現のためには、媒質の吸収係数、利得係数、反射率など、各種の指標が重要です。
発振効率を最大化するため、コンピュータシミュレーションなども進歩しています。
また、温度管理とエネルギーを一定に保つことが重要となります。レーザー発振器は温度変化に敏感で、適切な放熱などが必要です。
温度管理が不適切な場合、レーザー出力の低下、機器の鈍化、機器の耐用年数に悪影響が起こる、といったさまざまなデメリットがあります。
一般的には15℃〜20℃、湿度40%〜70%が適切とされており、寒い季節は特に注意が必要です。
レーザーの使用例
レーザーは私たちの生活に欠かせない技術となっています。
身近なレーザーポインターや光通信、光ファイバー通信をはじめ、レーザー加工機、医療機器、軍事衛星通信、素材加工など幅広い産業分野で使われています。
最近ではナノテクノロジーの発展にも寄与しており、将来にわたって幅広く使われていく技術と言えるでしょう。
【種類別】レーザー発振器の特徴と用途例

レーザーを媒質によって分類すると、以下の種類があります。
- 気体レーザー(CO2レーザー、エキシマレーザー等)
- 固体レーザー(ルビーレーザー、YAGレーザー等)
- ファイバーレーザー
- 半導体レーザー(レーザーダイオード)
それぞれの特徴と用途例をご紹介します。
気体レーザー
ガスを媒質として光を増幅させるもので、最も早く実用化されたレーザーの代表とも言えます。CO2レーザーやHe-Neレーザーなどがあります。
単色性が高く、大きな出力が得られるためさまざまな分野で応用可能です。
固体レーザー
結晶体や鉱石などの固体媒質を使い、光を増幅させるものです。YAGレーザーやチタンサファイアレーザーなどがあります。高出力化が容易で安定性に優れ、分岐やファイバー伝送が可能です。
ファイバーレーザー
産業界では注目度の高いレーザーのひとつで、希土類元素(きどるいげんそ)をドープ(少量の不純物を添加)したものを用いた固体レーザーの一種を指します。
細いファイバー内に光を閉じ込めますので、エネルギー変換効率が高く冷却が容易です。ファイバーと光部品を一体化することにより、光軸が安定し低メンテナンスの利点もあります。
半導体レーザー
半導体レーザーは、電気―光交換効率が最も高く、レーザーダイオードとも呼ばれます。電流を流すことでレーザーを発生させることができます。
消費電力が低く、小型・軽量でさまざまな用途に応用できます。
ディスクレーザー
ディスクレーザーは固体レーザーの中でも特に薄い円盤(ディスク)状の媒質を備えているもので、熱レンズ効果を低減してレーザーの質を高めています。
小型でありながら、高効率・高品質・高輝度と、高い安定性を兼ね備えています。
各レーザー発振器が適した用途例
以上の特徴から、各レーザー発振器が適した主な用途をご紹介します。
レーザー発振器と電波法

総務省が定める電波法に、「通信・医療・工業等のために10キロヘルツ以上の高周波電流のエネルギーを利用している設備は設置する前に許可を受ける必要がある」とあります。
レーザー加工機などが該当しますので、必要な手続きを忘れずに行いましょう。
高周波利用設備の申請が必要
一定条件以上のレーザー発振器は、新たに機器を設置するとき、変更しようとするときなど、管轄する地方総合通信局長あてに届け出をする必要があります。
法律や適用条件は変わることがありますので、総務省HP(近畿総合通信局の場合)などから確認しましょう。
レーザー発振器の寿命は5年前後?使用用途・頻度により異なる
レーザー発振器は消耗品であり、使用用途や頻度、使用環境によって寿命が異なります。耐用年数を長くするためには、適切な環境で使用することが重要です。
交換のために新たに購入したり、専門家に依頼する以外にも、自分で簡単に交換できる方式の発振器を取り扱っている会社もあります。
一般的には3〜5年が交換の目安ですので、修理、交換といったランニングコストがかかることも念頭に導入を検討しましょう。
レーザー発振器についてのまとめ
レーザー発振器は特徴を活かして目的にあった種類のものを、適切な環境で扱うことが重要です。数あるレーザー発振器の中から最適なものを選べるよう、特徴や用途について確認しておきましょう。
また、レーザー発振器は日夜、研究が行われ、最新技術が進歩しています。情報収集にも努め、最適なレーザー発振器を選びましょう。
関連記事
光スペクトラムアナライザとは?仕組みや用途、選び方を解説
光スペクトラムアナライザは、光通信やレーザー開発など、最先端技術を支える重要な測定器です。本記事では、光スペクトラムアナライザの導入を検討されている研究開発や品質保証、製造部門のご担当者様に向けて、その基本的な役割から仕組み、主な用途、そして自社に最適な一台を選ぶためのポイントについて詳しく解説します。
2025年10月16日
回折格子とは?原理や種類、選び方を解説
回折格子(かいせつこうし)は、分光器やレーザーシステム、光通信機器に不可欠な、光を波長ごとに分ける機能を持つ光学素子です。自社製品の性能を最大限に引き出すためには、その特性を深く理解し、用途に最適なものを選定することが極めて重要です。 本記事では、分析機器やレーザー関連機器の研究開発・設計部門のご担当者様に向けて、回折格子の基本原理から、回折効率や分解能といった重要性能、製造方法による種類の違い、主な用途、そして最適な製品を選定するためのポイントについて詳しく解説します。
2025年10月15日
エリアレーザーとは?スポットレーザーやリフローとの違い、メリットを解説
電子部品の小型化や高密度実装が進む中で、従来のはんだ付け手法では品質の維持が難しくなっています。特に、熱に弱い部品へのはんだ付けや、狭いエリアでの精密な接合が大きな課題です。エリアレーザーは、こうした課題を解決する新しいはんだ付け技術として注目されています。本記事では、エリアレーザーの基本原理から、スポットレーザーやリフローとの違い、導入のメリット、主な用途について詳しく解説します。
2025年09月25日
ホテル・旅館における適切なLED照明とは? 選び方のポイントやおすすめの製品をご紹介
ホテル・旅館の空間作りには、インテリアデザインにおける色、素材の選択や、広い空間を演出するために収納スペースを確保するなど、様々な要素に目を配る必要があります。中でも、照明の役割は極めて重要で、部屋の明るさや色味によって空間全体の印象が大きく左右されるものです。 そこで今回は、宿泊施設における照明の特徴や選び方のポイントについて解説します。おすすめのLED電球・照明も併せてご紹介しますので、ぜひ照明選びの参考にしてください。
2025年09月10日
誘虫灯|特徴・用途例・最新技術の動向を解説
害虫を光で誘引して捕獲する「誘虫灯」は、農業や食品産業における効果的な害虫管理のための重要な照明装置です。本記事では、その基本的な仕組みから最新の技術動向まで、包括的に解説します。
2025年09月10日
LEDバーライト|間接照明として活用するメリットや選び方のポイントを解説
LEDバーライトは、省エネルギー性と優れた機能性を併せ持つ照明器具として、住宅やオフィス、商業施設など幅広い場所で活用されています。間接照明としての利用が特に人気があり、空間の雰囲気作りに大きく貢献します。 本記事では、LEDバーライトの基本的な特徴から具体的な用途例、種類の選び方まで、導入を検討されている方に役立つ情報を詳しく解説していきます。
2025年09月10日
LEDライン照明|用途・種類・選び方のポイントを解説
LEDライン照明は、建築空間や室内インテリアにおいて、機能性とデザイン性を両立する照明器具として注目を集めています。直線的な光のラインを活かした間接照明や、什器照明、アクセント照明など、その用途は多岐にわたり、空間の質を高める重要な設計要素となっています。 本記事では、LEDライン照明の特徴や種類、選び方のポイントについて、実践的な視点から詳しく解説します。
2025年09月10日
高演色LED:リアルで豊かな色彩体験を提供
高演色LED照明は、Ra90以上の高い演色性を持ち、美術館やホテル、レストランなどでのリアルで豊かな色彩体験を実現します。光源の柔軟な制御や多様な発光方式により、シーンに応じた最適な照明を提供します。特に、自然な色彩を求める展示や空間に最適なソリューションとして注目されています。
2025年09月10日
光学部品のレーザー耐久性を表す「レーザー誘起損傷閾値 (LIDT)」とは? 試験概要や試験の種類について解説します
レーザー誘起損傷閾値 (LIDT)試験を実施することで、レーザー光を使用する際に、光学部品がどの程度レーザー光に耐えられるかを測定することができます。LIDTが高い光学部品は耐久性に優れているなどの特徴を有しているため、様々な分野への応用が可能で、近年ではLiDAR用光学部品としても需要を高めています。 そこで今回は、レーザー誘起損傷閾値の概要や試験の種類についてご紹介させていただきます。オンライン展示会プラットフォームであるevortには、レーザー誘起損傷閾値 (LIDT)試験に関連する製品も掲載しているため、今回の記事に関心を持たれた企業様は、ぜひevort内で製品検索・資料検索をして探してみてください。
2025年10月03日
拡散板(光拡散シート・光拡散フィルム)
拡散板は、光を散乱させて均一に広げる光学部品です。主に照明や光学機器で使用され、効果的な光の制御と均一な照明の実現に貢献しています。 本記事では、拡散板の特性や素材、多岐にわたる用途について、詳しく解説します。
2024年09月17日
産業用レンズ拡散板:LSD
産業用レンズ拡散板:LSDは、光の拡散をコントロールする高性能な光学シートです。従来の拡散板が微小粒子による拡散反射を利用するのに対し、LSDは微小レンズによる屈折を用いており、従来の拡散板よりも大幅に高い透過率を実現しています。 その高い性能と多様な応用可能性から、照明技術の分野で重要な役割を果たしています。
2025年03月11日
レーザーカッターとは?基本的な仕組み・種類や特徴・活用法などを解説
レーザーカッターは、精密な加工を可能にする革新的な機器です。この特性を活かし、さまざまな分野で用いられています。 「レーザーカッターの仕組みや用途・導入によるメリットがわからない」という方のために、この記事ではレーザーカッターの基本的な仕組みや種類、特徴、そして活用法について詳しく解説します。
2025年09月09日
レーザー彫刻機とは?仕組みから選び方まで徹底解説
レーザー彫刻機は、精密な加工を可能にする革新的なツールです。精密な加工や個性的なデザインを実現できる一方で、初めて使う方にとっては仕組みや選び方が分かりにくいものです。 そこで、この記事では、レーザー彫刻機の基本から選び方まで徹底的に解説します。
2025年09月09日
レーザー加工機とは|種類・活用メリット・選定のポイントを解説
レーザー光を利用して様々な素材を加工する「レーザー加工機」。レーザー光を照射することで素材を切断・穴あけ・溶接・彫刻することが可能です。 そこで今回は、レーザー加工機についての基本知識、代表的な種類、そしてレーザー加工ならではのメリット・効果についてご紹介いたします。おすすめの製品も併せてご紹介しますので、レーザー加工機の導入を検討されている企業様はぜひ参考にしてみてください。
2025年09月09日
ビームシェーピングとは?製造業でのメリットや種類、選び方を解説
製造業の現場では、より高い加工精度や生産スピード、品質の安定化が常に求められています。その解決策の一つとして、レーザー加工は不可欠な技術となっています。しかし、単にレーザーを照射するだけでは、その能力を最大限に引き出せているとは限りません。 そこで重要になるのが、レーザー光の特性を加工目的に合わせて最適化する「ビームシェーピング」という技術です。本記事では、製造業のご担当者様に向けて、ビームシェーピングの基本原理から、そのメリット、主な方式、選定のポイントまで、幅広くご紹介します。
2025年10月17日
波面センサーとは? 測定の原理や用途例、導入における選定のポイントを解説します
光学技術の進歩において、波面センサーは革新的な役割を果たしています。これらの精密な装置は、光の波面の形状や強度分布を分析することで、光学系の性能を飛躍的に高めることができます。 本記事では、波面センサーの原理、その応用、精度向上の方法、および選択時の重要な考慮事項について詳しく解説します。光学技術の世界をより深く理解するための第一歩として、波面センサーの基礎からその高度な応用に至るまでの知識をご紹介します。 このような方におすすめです ・波面センサーの測定原理について理解したい方 ・波面センサーの産業用途について知りたい方 ・波面センサーを導入する際に考慮したいポイントについて知りたい方
2025年09月05日
レーザーマーカーとは?種類や特徴・メリット&デメリット・活用例を確認
レーザーマーカーは、レーザーの力を用いてアイテムの印字や加工を行う道具です。素早く高精細に消えない印字ができるなど、製品生産の高速化や質の向上に役立ちます。 この記事ではレーザーマーカーの原理や主な種類、メリット&デメリット、分野別の活用例をご紹介します。
2025年09月09日
超短パルスレーザーとは?メリット・デメリットや用途について解説
パルスレーザーのなかでも特に短いパルス幅を持つレーザーを超短パルスレーザー(ピコ秒レーザー・フェムト秒レーザー)と言います。 超短パルスレーザーを取り入れることで微細加工が可能になるほか、さまざまな材料を加工できるようになります。 この記事では、超短パルスレーザーがどのようなレーザーなのかを紹介するとともに、メリット・デメリット、用途を解説します。
2025年09月05日
フォトダイオードとは? 特性・種類・用途例を解説
光を電気信号に変換するフォトダイオードは、現代科学技術の多くの領域で重要な役割を果たしています。 この記事では、フォトダイオードの基本原理、その機能、および異なるタイプのフォトダイオードとその応用例について詳しく説明します。また、フォトトランジスタとの違いや特定の用途に適したフォトダイオードの選択方法についても掘り下げていきます。
2025年09月05日
光学プリズムとは? 概要・種類・用途例について解説します
光学プリズムは、透明な物質で作られた幾何学的な形状のもので、光を透過させる際に屈折させる特性を持ちます。光の性質を理解するための基本的なツールとして、光学プリズムは多くの科学的、技術的応用に利用されています。 光の進路を変えることや、光の分散、反射、屈折などの現象を引き起こす光学プリズムの概要と機能について、この記事で紹介します。 このような方におすすめです ・光学プリズムの概要や特性について知りたい方 ・光学プリズムの種類と各特徴について知りたい方 ・光学プリズムの産業用途について知りたい方
2025年09月09日