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ERP導入後の運用で気をつけるべきこと

ERPは、導入して終わりではなく、運用フェーズでの取り組みが成否を分けます。本番稼働後も、システムの安定運用、利用者からの問い合わせ対応、マスタデータの維持管理など、継続的な運用管理が求められます。運用体制が不十分なまま放置すると、せっかく導入したERPが十分に活用されない事態に陥ることもあります。本記事では、ERP導入後の運用で気をつけるべきポイントを解説します。

導入後の運用体制の構築

ERPの本番稼働後は、導入プロジェクトとは異なる視点で運用体制を整える必要があります。プロジェクト期間中は一時的に増強した体制も、運用フェーズでは持続可能な形に移行しなければなりません。

運用担当者の役割と配置

ERP運用には、システム面と業務面の両方をカバーできる体制が求められます。

システム運用担当は、ERPの技術的な側面を担当します。システムの監視、障害対応、バックアップ管理、セキュリティ対策などが主な業務です。クラウド型ERPの場合は、ベンダー側がインフラ運用を担うため、自社の負担は軽減されますが、ベンダーとの連携窓口としての役割は残ります。

業務運用担当は、ERPを使用する業務部門を支援する役割を担います。利用者からの問い合わせ対応、操作マニュアルの整備、新機能の活用促進などが主な業務です。業務知識とシステム知識の両方が求められるため、導入プロジェクトに参加していたメンバーが担当することが多いです。

ヘルプデスク機能の整備

本番稼働後は、利用者からの問い合わせが発生します。「この操作はどうすればよいか」「エラーが出て処理が進まない」といった日常的な問い合わせから、「業務要件に合わない」といった改善要望まで、内容は多岐にわたります。

問い合わせ対応の窓口を明確にし、対応フローを整備しておくことが重要です。問い合わせ内容を記録・分類することで、よくある質問をFAQ化したり、システム改善の優先度を判断したりする材料にもなります。

社内のヘルプデスクだけで対応しきれない技術的な問題については、ERPベンダーや導入パートナーのサポート窓口に問い合わせることになります。サポート契約の内容や問い合わせ方法を事前に確認しておくことが必要です。

ベンダー・パートナーとの関係維持

ERP導入を支援したベンダーやパートナー企業との関係は、導入プロジェクト完了後も継続することが一般的です。保守契約に基づくサポートの提供、追加開発の依頼、バージョンアップの支援など、さまざまな場面で協力を仰ぐことになります。

定期的な打ち合わせの機会を設け、運用状況の共有や課題の相談を行うことで、問題の早期発見と解決につながります。

日常的な運用タスク

ERPの安定運用を維持するためには、日常的に実施すべきタスクがあります。これらを計画的に遂行することで、システムの健全性を保つことができます。

マスタデータの維持管理

ERPの動作は、マスタデータに大きく依存しています。顧客マスタ、仕入先マスタ、品目マスタ、勘定科目マスタなど、さまざまなマスタデータが業務処理の基盤となります。

マスタデータは、事業環境の変化に応じて更新が必要です。新規取引先の登録、取り扱い終了品目の廃止、組織変更に伴う承認ルートの変更など、日常的にメンテナンスが発生します。

マスタデータの登録・変更・削除については、申請から承認、登録までのワークフローを整備し、責任者を明確にしておくことが重要です。誰でも自由に変更できる状態では、データの整合性が崩れるリスクがあります。

定期的なデータ確認

ERPに蓄積されるデータの正確性を維持するため、定期的な確認作業を実施します。

残高の照合は、会計データの正確性を確保するうえで欠かせません。売掛金や買掛金の残高が取引先の認識と一致しているか、在庫データが実際の在庫と一致しているかを確認します。棚卸は、在庫データの正確性を検証する重要な機会です。

未処理データの確認も重要です。未出荷の受注残、未検収の発注残、承認待ちの伝票など、処理が滞留しているデータがないかを定期的にチェックします。長期間放置されたデータは、業務上の問題を示唆している可能性があります。

セキュリティ管理

ERPには企業の重要な情報が集約されているため、セキュリティ管理は運用の重要な要素です。

アクセス権限の管理では、従業員の入退社や異動に応じて、適切な権限の付与・削除を行います。退職者のアカウントが残ったままになっていたり、異動前の権限がそのままになっていたりすることがないよう、定期的な棚卸が必要です。

監査ログの確認も重要です。ERPでは、誰がいつどのような操作を行ったかの記録が残ります。不審な操作がないかを定期的に確認することで、不正の早期発見や抑止につながります。

バージョンアップへの対応

ERPは、ベンダーによって継続的に機能改善やセキュリティ対策が行われており、定期的にバージョンアップがリリースされます。バージョンアップへの対応は、運用フェーズにおける重要な課題の一つです。

バージョンアップの種類

バージョンアップには、大きく分けて「パッチ適用」と「メジャーバージョンアップ」があります。

パッチ適用は、バグ修正やセキュリティ対策を目的とした小規模な更新です。比較的頻繁にリリースされ、適用の影響範囲も限定的なことが多いです。ただし、セキュリティパッチについては、脆弱性を放置するリスクを考慮し、速やかな適用が推奨されます。

メジャーバージョンアップは、新機能の追加や大幅な改善を含む大規模な更新です。リリース頻度は年に数回程度のことが多く、適用には十分な検証期間が必要です。既存のカスタマイズ部分への影響確認や、利用者への教育なども必要になる場合があります。

バージョンアップ計画の策定

バージョンアップは計画的に実施することが重要です。ベンダーからのリリース情報を把握し、自社への適用時期を検討します。

検討すべき事項には、新バージョンで追加される機能の業務上のメリット、既存のカスタマイズ部分への影響、検証に必要な工数と期間、適用作業のスケジュールと体制などがあります。

業務の繁忙期を避けて適用時期を設定したり、万が一の問題に備えて切り戻し手順を準備したりといった配慮も必要です。

カスタマイズ部分への影響

ERPをカスタマイズして利用している場合、バージョンアップ時にカスタマイズ部分が正常に動作するかを確認する必要があります。ベンダーが提供する標準機能のバージョンアップに、カスタマイズ部分が追随できないケースもあります。

過度なカスタマイズを行っている場合、バージョンアップのたびに多大な検証・改修コストが発生し、結果としてバージョンアップを見送り続けるという事態に陥ることがあります。導入時にカスタマイズを最小限に抑えることが、長期的な運用負荷の軽減につながります。

運用コストの管理

ERPの運用には継続的なコストが発生します。運用コストを適切に管理し、投資対効果を維持することが、長期的な活用において重要です。

運用コストの構成要素

ERPの運用コストは、主に以下の要素で構成されます。

ライセンス費用・利用料は、ERPを利用するための基本的な費用です。オンプレミス型の場合は年間保守料、クラウド型の場合はサブスクリプション費用として発生します。利用者数や利用機能によって変動することが一般的です。

保守・サポート費用は、ベンダーやパートナーからの技術サポートを受けるための費用です。問い合わせ対応、パッチ提供、技術情報の提供などが含まれます。

インフラ費用は、オンプレミス型の場合に発生するサーバーやネットワーク機器の維持費用です。機器の保守契約、電力費、設置場所の費用などが含まれます。

運用人件費は、社内でERP運用を担当する人員の人件費です。専任・兼任を問わず、運用業務に費やす時間に相当するコストを認識しておく必要があります。

コスト最適化の観点

運用コストは、削減できる部分と維持すべき部分を見極めることが重要です。

利用者数の見直しは、コスト最適化の一つの観点です。実際には利用していないアカウントにライセンス費用が発生していないか、利用頻度に対して過剰な権限(高額なライセンス区分)が付与されていないかを確認します。

一方で、保守・サポート費用を過度に削減すると、問題発生時の対応が遅れ、業務への影響が拡大するリスクがあります。コスト削減と安定運用のバランスを考慮した判断が求められます。

投資対効果の継続的な確認

ERPの導入時に想定した効果が、運用フェーズで実現できているかを定期的に確認することも重要です。業務効率化による工数削減、在庫削減、決算早期化など、当初設定した目標に対する達成度を評価します。

期待した効果が得られていない場合は、その原因を分析し、活用方法の改善や追加施策の検討につなげます。ERPは導入して終わりではなく、継続的な改善活動を通じて価値を高めていくものです。

この記事のまとめ

  1. ERP導入後は、システム運用担当と業務運用担当を配置し、ヘルプデスク機能を整備するなど、持続可能な運用体制を構築することが重要です。
  2. 日常的な運用タスクとして、マスタデータの維持管理、残高や未処理データの定期確認、アクセス権限やセキュリティの管理を計画的に実施します。
  3. バージョンアップは計画的に対応し、パッチ適用とメジャーバージョンアップそれぞれについて、影響範囲の確認と適用スケジュールの策定を行います。
  4. 運用コストはライセンス費用、保守費用、インフラ費用、人件費などで構成され、コスト最適化と安定運用のバランスを考慮した管理が求められます。
  5. 導入時に設定した効果目標の達成度を定期的に確認し、継続的な改善活動を通じてERPの活用価値を高めていくことが長期的な成功につながります。

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