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産業用PCの種類と形状別の特徴比較

「産業用PCを導入したいが、形状や種類が多すぎてどれを選べばよいかわからない」という声は多く聞かれます。産業用PCは用途や設置環境に応じてさまざまな形状が用意されており、それぞれに明確な特徴があります。
本記事では、ボックス型、パネル型、ラックマウント型といった代表的な形状から、冷却方式や取り付け方式による分類まで、産業用PCの種類を体系的に解説します。

産業用PCの種類と形状による分類

ボックス型PCの特徴と用途

ボックス型PCは、省スペースで設置できるため、工場の制御盤内や製造装置の内部など、限られたスペースに組み込むのに適しています。多くの製品がファンレス設計を採用しており、粉塵や振動に強い構造となっています。

豊富なインターフェースと高い拡張性を持ち、機械の制御、カメラと接続しての画像処理、センサーデータを収集・処理するIoTゲートウェイなど、幅広い用途で活躍します。製品サイズは幅70mmから260mm程度まで多様なラインナップがあり、設置スペースに合わせて選択できます。

ボックス型PCが適した用途

  • 制御盤への組み込み

  • 製造装置内への設置

  • エッジコンピューティング

  • IoTゲートウェイ

  • 画像処理・検査装置

パネルPCの特徴と用途

パネルPCは、コンピュータ本体と液晶ディスプレイ、タッチパネルを一体化した製品です。「パネコン」とも呼ばれ、キーボードやマウスを使わず画面に直接触れて直感的に操作できます。

機械の操作盤や生産ラインの状況を表示・操作するHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)として広く利用されています。

画面サイズは7インチから21インチ程度まで用途に応じて選択でき、タッチパネル方式も抵抗膜式と静電容量式の2種類があります。

オールインワン構成で省スペースなため、設置場所を選びません。

また、防水・防塵性能の高いモデルも多く、食品工場や薬品工場など水や埃が多い環境でも使用されています。前面パネルがIP65準拠の製品であれば、粉塵の侵入を完全に防ぎ、あらゆる方向からの噴流水にも耐えられます。

パネルPCが適した用途

  • 製造ラインの操作端末

  • 生産管理システムのHMI

  • 品質検査工程での作業指示表示

  • 食品・薬品工場など衛生管理が求められる現場

  • 店舗や受付のキオスク端末

ラックマウント型の特徴と用途

ラックマウント型は、19インチラックに格納されるように設計された産業用PCです。高さは1U(約44.5mm)から4U程度まであり、データセンターや工場の制御室など、複数のサーバーやPCを集中管理する環境で使用されます。

複数のサーバーを縦空間に積み上げられるため、フロアスペースの圧迫を最小限に抑えられます。また、サーバー関連機器を一カ所にまとめられるため、保守・メンテナンス作業が容易です。専用のサーバーラックに収納することで外部環境からの影響を最小限にでき、故障リスクを軽減できます。

一方、省スペースのために小型の冷却ファンを採用しているため、稼働音が大きくなりやすい点には注意が必要です。サーバールームを用意できる環境での使用が理想的です。

ラックマウント型が適した用途

  • 工場全体の統合管理システム

  • 大規模なデータ収集・分析

  • 仮想化環境の構築

  • 複数拠点を統括する中央監視システム

  • 高性能GPU搭載によるAI推論処理

冷却方式による分類

ファン搭載型の特徴

ファン搭載型は、内部に冷却ファンを備え、強制的に空気を循環させて放熱する方式です。高性能なCPUやGPUを搭載した製品で採用されることが多く、高負荷処理時にも安定した動作温度を維持できます。

メリット

  • 高性能CPUやGPUを搭載可能

  • 高負荷時でも安定した冷却性能を発揮

  • 比較的コンパクトな筐体設計が可能

デメリット

  • ファンの回転音が発生する

  • 粉塵を吸い込むためフィルター清掃が必要

  • ファンは消耗部品であり定期交換が必要

製造現場で画像検査や機械学習推論など、高い処理能力が求められる用途ではファン搭載型が適しています。ただし、粉塵が非常に多い環境ではフィルターの清掃頻度を高めるか、防塵フィルターの性能が高いモデルを選択する必要があります。

ファンレス型の特徴

ファンレス型は、ヒートシンクや筐体全体を利用した自然放熱により冷却を行う方式です。可動部品がないため、信頼性が高く、メンテナンス頻度を低減できます。

メリット

  • 粉塵環境での高い信頼性

  • 完全な静音動作

  • ファン交換が不要でメンテナンス負担が軽減

  • 振動に強い構造

デメリット

  • 搭載できるCPUの処理性能に制限がある

  • 高負荷が継続する用途には不向き

  • 放熱のために筐体サイズが大きくなりやすい

食品工場や医療現場、クリーンルームなど、粉塵を嫌う環境や静音性が求められる環境ではファンレス型が最適です。また、振動が発生する装置内への組み込みや車載用途でも多く採用されています。

取り付け方式による分類

DINレール取り付け対応

DINレールは、制御盤内で使用される制御コンポーネントを取り付ける際に一般的に利用される金属製のレールです。ドイツ工業規格(DIN)で寸法が規定されており、どのメーカーのDINレールでも統一された寸法になっています。

DINレール取り付け対応の産業用PCは、ワンタッチで着脱できるため、ネジによる取り付けに比べて施工・メンテナンス工数を大幅に削減できます。制御盤内でPLC、リレー、ブレーカーなどの機器と並べて設置でき、配線・配置的にもコンパクトにまとまります。

制御盤内でよく使用されるDINレールは35mm幅のタイプで、コンパクトなボックス型PCの多くがこの方式に対応しています。

DINレール取り付けのメリット

  • 工具なしで着脱可能

  • 制御盤内の他機器と統一した設置が可能

  • メンテナンス時の交換作業が容易

  • 省スペースな配置が実現

壁掛け対応

壁掛け対応の産業用PCは、専用のブラケットやVESAマウントを使用して壁面に固定できます。制御盤内のスペースに余裕がない場合や、装置の近くに設置したい場合に有効です。

パネルPCは壁掛け設置に適した製品が多く、作業者の目線の高さに合わせて設置することで操作性を高められます。壁掛け設置では背面からの放熱スペースを確保するため、取り付け位置と周囲の空間に注意が必要です。

卓上設置対応

卓上設置は、デスクやテーブルの上にPCを置いて使用する最もシンプルな方式です。専用の設置工事が不要なため、導入や移設が容易です。

ボックス型PCの多くは卓上設置用のゴム足が付属しており、振動や滑りを防止します。また、卓上設置と壁掛けの両方に対応した製品も多く、運用状況に応じて設置方法を変更できる柔軟性があります。

耐環境性能による分類

IP等級(防塵・防水性能)の見方

IP等級は、IEC(国際電気標準会議)によって定められた防塵・防水性能を示す指標です。「IP」に続く2桁の数字で表され、1桁目が防塵性能(0から6)、2桁目が防水性能(0から8)を示します。

代表的なIP等級と性能

IP等級 防塵性能 防水性能
IP20 指の侵入を防止 保護なし
IP54 有害な粉塵の侵入を防止 飛沫に対する保護
IP65 完全な防塵 噴流水に対する保護
IP67 完全な防塵 一時的な水没に対する保護(水深1m、30分)
IP69K 完全な防塵 高温・高圧水噴射に対する保護

パネルPCでは、前面パネルと背面で異なるIP等級を持つ製品があります。例えば「前面IP65、背面IP20」と記載されている場合、前面は噴流水にも耐えられますが、背面は通常の室内環境での使用を想定しています。

食品工場や薬品工場など、定期的な洗浄が必要な環境ではIP65以上、水没の可能性がある環境ではIP67以上を選択してください。

動作温度範囲の考え方

産業用PCの動作温度範囲は、製品が正常に動作することが保証される周囲温度の範囲を示します。民生用PCは一般的に5度から35度程度の範囲ですが、産業用PCは用途に応じてより広い温度範囲に対応しています。

動作温度範囲の目安

分類 動作温度範囲 想定環境
標準仕様 0度から50度 空調のある制御室、一般的な工場内
広温度範囲 -20度から60度 空調のない工場、倉庫
拡張温度範囲 -40度から70度 屋外設置、冷凍倉庫、高温環境

製品仕様に記載される動作温度範囲は「周囲温度」であり、筐体内部の温度ではありません。密閉された制御盤内や直射日光が当たる場所では、周囲温度が上昇するため余裕を持った選定が必要です。

また、広温度範囲に対応した製品は産業用グレードの部品を採用しているため、標準仕様の製品と比較して価格が高くなる傾向があります。実際の設置環境の温度を測定し、必要十分な性能を持つ製品を選択することでコストを最適化できます。

用途に適した種類の選び方

制御盤への組み込み

制御盤内は限られたスペースで複数の機器が配置されるため、コンパクトなボックス型でDINレール取り付け対応の製品が適しています。

盤内は密閉されて温度が上昇しやすいため、ファンレス設計で放熱性能の高い製品を選び、動作温度範囲に余裕を持たせてください。

製造ラインの操作端末

作業者が直接操作する端末にはパネルPCが最適です。画面サイズは表示内容と設置スペースに応じて選択し、手袋をして操作する場合は抵抗膜式タッチパネル、素手で操作する場合は静電容量式タッチパネルを選びます。粉塵や水滴がかかる環境では前面IP65以上の製品を選択してください。

画像検査・AI推論処理

高性能CPUやGPUを必要とする画像検査やAI推論処理には、拡張性の高いボックス型または1U/2Uのラックマウント型が適しています。処理負荷が高いためファン搭載型を選び、設置環境に応じた防塵対策を行います。

データセンター・統合管理システム

複数のシステムを統合管理する用途では、ラックマウント型を選択します。将来の拡張を見越して十分なラックスペースを確保し、冗長電源やRAID構成などの信頼性向上オプションを検討してください。

この記事のまとめ

産業用PCの種類は、以下の組み合わせで分類される。

・形状(ボックス型、パネル型、ラックマウント型)

・冷却方式(ファン搭載、ファンレス)

・取り付け方式(DINレール、壁掛け、卓上)

耐環境性能(IP等級、動作温度範囲)の選定方法は次の通り。

・設置環境の特性(温度、湿度、粉塵、振動)を明確にし、必要な耐環境性能を決定

・用途に応じた処理性能と拡張性を検討し、

・設置スペースに合った形状と取り付け方式を選択

産業用PCは10年以上の長期稼働を前提とするため、導入時点での要件だけでなく、将来の拡張性やメンテナンス性も考慮した選定が重要です。

不明点がある場合は、製品仕様を詳細に確認するとともに、実際の設置環境での動作検証を行うことをお勧めします。

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