スーパーインクジェットプリンターは、独自開発のスーパーインクジェット(Super Inkjet/SIJ)ヘッドを搭載し、超微細かつ高粘度の液体を非加熱で吐出できる微細塗布・描画装置です。線幅1µm以下の超微細な描画実績もあり、水より低い粘度からハチミツに近い高粘度の液まで、幅広い材料を扱えます。
従来のインクジェットやディスペンサーでは難しかった「微細・高粘度・非加熱」の塗布や描画を、少量多品種の生産や研究開発の段階から実現します。
スーパーインクジェットが選ばれる理由
線幅1µm以下の超微細な描画
スーパーインクジェットは、最小0.1フェムトリットル(1リットルの1京分の1)という超微細な液滴を吐出でき、線幅1µm以下の超微細な描画実績もあります。飛翔中の液滴の直径は約0.5µmと非常に小さく、着弾後はサブミクロンから数十µmの範囲で描画を制御できます。
その微細さは、米粒より小さい2.2×1.3mmの範囲に世界地図を描けるほどです。肉眼では見分けがつかないレベルの印刷が可能で、電子部品や半導体の微細化が進むなかで求められる、極めて小さなパターンの形成に応えます。
高粘度インクの非加熱吐出
対応する粘度の範囲は0.5〜10,000mPa・sと非常に広く、水より低い粘度の液から、ハチミツに近い高粘度の液までを非加熱で吐出できます。従来のインクジェットは、水のようにさらさらとした液でなければ吐出が難しいという課題がありましたが、スーパーインクジェットはこの課題を解消しています。
高粘度の液を微細に扱えることは、スーパーインクジェットの大きな特長です。「高粘度の液を細かく塗りたい」というニーズに、インクジェット方式で応えられる点が、多くのお客様から評価されています。
専用インク不要・広範な液種に対応
導電材料、絶縁材料、レジスト(半導体などの製造で用いるマスク材料)、接着剤、タンパク質、溶剤系、UV系など、広範な液種に対応します。金・銀・銅などの金属ナノインクやITOインクから、樹脂系の材料、バイオ材料まで幅広く扱えます。
使用できる材料の粘度領域が広く、市販のいろいろな材料が使用できます。ガラスやシリコン、SiC、GaN、PET、PI(ポリイミド)、紙など、さまざまな基材への描画にも対応します。
フォトリソのような微細パターンを大気中で直接描画
大気中・常温で、フォトリソグラフィ(光を使って微細なパターンを形成する加工技術)のような微細なパターンを、マスクレスで直接描画できます。パターンごとのマスク作製が不要なため、少量多品種の描画や、狙った箇所へのピンポイントの描画・修復に向いています。
データを用意すれば、そのまま描画に進めます。試作や研究開発のように、パターンを頻繁に変えながら進める工程との相性が良い方式です。
スーパーインクジェットの特長
液滴サイズを自在に制御
専用ソフトウェアへの数値入力だけで、吐出量(ライン幅やドット径)を即座に変更できます。ヘッドやインクを交換することなく、条件設定を変えるだけでサイズを描き分けられる点が特長です。液滴の直径でいえば、最小0.5µmクラスの超微細なものから、数十µm程度の大きめのものまで対応します。微細なパターンから比較的大きなパターンまで、1台でカバーできるため、少量多品種の描画や試作を効率的に進められます。
液滴を小さくすると乾燥が速く進むため、液が濡れ広がる前に定着し、にじみを抑えられます。描きたいパターンや使用する材料に合わせて、吐出量を制御できます。
立体構造体(バンプ・ピラー)の形成
縦方向に積み上げるバンプ(部品同士を電気的に接続するための微細な突起)やピラー(柱状の立体構造体)を、大気中・常温で形成できます。液滴を小さくすると乾燥が速く進む性質を活かし、焼成などのプロセスを挟まずに直接積み上げられる点が特長です。
平面への描画だけでなく、高さ方向の構造も形成できるため、部品接合の接点づくりなど、立体的な形状が求められる場面で活用できます。
高精度ステージとリアルタイム観察
分解能0.1µm、繰り返し位置決め精度±0.2µm(標準モデル)の高精度な試料ステージを搭載しています。CCDカメラによる位置合わせに対応し、ソフトウェアによる角度補正機能も備えているため、狙った位置へ再現性高く描画できます。
微細な描画は肉眼では確認しにくいため、カメラを通して塗布中の映像をリアルタイムに観察できます。描画の状態を目で確かめながら作業を進められます。
微量充填・簡単交換・洗浄不要
わずか10µlの微量充填で長時間の使用ができるため、希少で高価な材料を無駄にしません。研究開発で扱うような貴重な材料を、少量から試せます。
インクの充填も簡単で、約3分でヘッドを交換できます。ヘッドや供給系の洗浄も不要なため、材料や条件を切り替えながらの評価をスムーズに進められます。
用途例
局所リペア(配線・レジストの欠陥修復)
フォトリソグラフィで製造した回路の配線欠損や、レジストのホール、傷などを、ピンポイントで修復できます。欠陥はランダムに発生するため、そのつどマスクを作製するフォトリソでの修復は手間がかかりますが、マスクレスのスーパーインクジェットなら、狙った箇所だけを直接修復できます。
微細な修復では、針の先に付けた液を対象に移す「ピン転写」も従来から用いられてきましたが、線幅の細かさや、狙った量を出す定量性の面で課題がありました。スーパーインクジェットは、細い線幅と定量的な吐出で、狙い撃ちの修復に応えます。液晶ドライバー回路やマイクロLEDディスプレイ関連の分野で、多くの引き合いをいただいています。
バイオ・医療(体外診断薬・バイオチップ)
体外診断薬(検体を体外で調べる検査用の試薬)の検査キットやバイオチップの分野で、タンパク質やDNA、細胞を含む溶液を、1つのチップの上に配置・集積化できます。さまざまな疾患を検出するために、多くの種類の材料を微細に配置したいというニーズに応えます。
これらの材料は熱に弱く、加熱すると物性が変わってしまう場合がありますが、スーパーインクジェットは非加熱で扱えるため、材料の性質を保ったまま配置できます。また、タンパク質やDNAを含む溶液は比較的粘度が高いものもありますが、高粘度の液に対応できる点も、この分野で活かされています。
光学部品の接着・マイクロレンズ形成
微小な光学部品への接着剤の塗布や封止に活用できます。小さな部品の接着には、高粘度でありながら微細に塗るという条件が求められる場面が多く、スーパーインクジェットの得意とする領域です。画像処理を実装することで、デバイスの傾きに合わせた接着剤塗布にも対応できます。
透明な樹脂を用いてマイクロレンズを形成したり、小型レンズの端に遮光マスクを印刷して光学部品の性能を高めたりといった用途にも展開できます。光学部品の小型化や高性能化に寄与します。
半導体後工程(バンプ・ビア・再配線)
半導体や電子部品の後工程で、幅広く活用できます。部品同士を接合するバンプの形成では、接合面積の拡大や接合距離の短縮、接合強度の向上に寄与します。金属超微粒子インクを用いた大面積の高放熱実装にも応用されています。
このほか、導電インクによるビア(層間を電気的につなぐ穴)の穴埋め、段差のある形状への配線(線幅5µm、パッド50µm角)、欠損した配線の再配線などに対応します。半導体の微細化が進むなかで、問い合わせの多い分野です。
次世代ディスプレイ(量子ドット塗布)
マイクロLEDなどの次世代ディスプレイで、量子ドット(QD/Quantum Dot:光の波長を変換する微粒子材料)インクの塗布に活用できます。量子ドットは、青色LEDの光を赤や緑に変換する役割を担い、ドット/スペース5µmといった微細な塗り分けに対応します。微細な配線の形成とあわせて、ディスプレイの製造プロセスを支えます。
そのほかの活用例
スーパーインクジェットは、インクを変えることで応用範囲が広がります。代表的な例として、次のような用途があります。
- 3次元曲面への塗布や、アンテナパターンの形成
- 極小QRコードや蛍光インクによるセキュリティ印刷(250µm角のQRコードなど)
- 有機TFT(薄膜トランジスタ)の微細チャネル印刷、有機単結晶薄膜の形成、テラヘルツメタマテリアル、マイクロ流体デバイスなどの先端研究での活用
製品ラインナップ
スーパーインクジェットプリンター(モデル一覧)
スーパーインクジェットプリンターは、用途に合わせて複数のモデルを用意しています。吐出量(0.1フェムトリットル〜10ピコリットル)、対応粘度(0.5〜10,000mPa・s、非加熱)は全モデル共通です。描画エリアの広さや、ヘッドの位置決め方式、アライメント機能の有無によって、最適なモデルを選定できます。
まず試したいというニーズに応えるエントリーモデルから、超微細な描画や高粘度対応に向いたスタンダードモデルまで、段階的にお選びいただけます。
| ET050 | 描画エリア:50×50mm ヘッド位置決め:手動 アライメント:オプション まず試したい方向けのエントリーモデル |
|---|---|
| S030 | 描画エリア:30×30mm(アライメントカメラ搭載時) ヘッド位置決め:手動 CCDカメラによる位置合わせに対応 |
| S050 | 描画エリア:50×50mm ヘッド位置決め:電動 CCDカメラによる位置合わせに対応する標準的なモデル |
| S150 | 描画エリア:150×150mm ヘッド位置決め:電動 CCDカメラによる位置合わせに対応 |
| S300 | 描画エリア:微動軸10×10mm/粗動軸300×300mm ヘッド位置決め:電動 CCDカメラによる位置合わせに対応 |
| S350 | 描画エリア:350×350mm ヘッド位置決め:電動 CCDカメラによる位置合わせに対応 |
組込ユニット
装置本体のほかに、生産装置の開発や生産ラインへの組み込みに向けた「スーパーインクジェット組込ユニット」も提供しています。スーパーインクジェットの主要部品であるコントローラーとヘッド周りを、装置メーカー様に向けてお届けします。
オーダーメイド型マルチノズルヘッド
スーパーインクジェットは、シングルヘッド以外にもマルチノズル(複数のノズルを配置)のご提案が可能です。液材の一括吐出により高速で印刷することが可能です。
お客様の印刷パターンや基板に合わせたヘッドのカスタマイズにも対応します。設計・製造にあたっては、事前の打ち合わせやテストを通じて、ご要望に沿った仕様を検討します。
そのほかの取り扱い技術・製品
SIJテクノロジは、スーパーインクジェットのほかにも、ピエゾインクジェット、スプレーコーター、エアロゾルジェット、ディスペンサーなど、多様な塗布技術を扱っています。塗布量や液の粘度、パターニングか成膜かといったご要望に応じて、最適な技術をご提案します。
また、二光子重合型の超高精度3Dプリント装置(製造元:IQS nano社/チェコ)も取り扱っています。
導入の流れ
装置の販売だけでなく、受託試作にも対応しています。用途や条件に合わせて、次のような流れで導入を進められます。
お問い合わせ・ご相談
塗布したい材料や基材、線幅、粘度などの条件をお聞かせください。Webからのお問い合わせや、カタログのダウンロードが入り口となります。「こうした塗布や描画はできるか」といったご相談も歓迎します。
サンプル評価・受託試作
装置を導入する前に、受託試作を通じて、塗布・描画の可否や品質をご確認いただけます。実際の材料や基材で試すことで、導入後のイメージを具体的に把握できます。
装置のご提案・導入
用途に合わせて、最適なモデルやカスタマイズをご提案します。多ヘッド仕様、温調ステージ、吸着ステージ、オートフォーカス機能など、オプションの組み合わせによって、お客様の工程に合わせた仕様を検討します。
SIJテクノロジについて
事業内容
SIJテクノロジは、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研/AIST)の技術移転ベンチャーとして設立された企業です。代表が産総研の研究者として発明したスーパーインクジェット技術を核に、微細塗布の分野で事業を展開しています。
事業内容は、インクジェットやスプレーなどの塗布技術を活用した装置の製造・販売から、お客様のニーズに応じた専用装置の設計・開発、製造まで、幅広く対応しています。塗布量や粘度、パターニングか成膜かといったお客様のご要望に応じて、スーパーインクジェットをはじめとする複数の技術から最適な方法を提案できる体制を整えています。
微細塗布の技術を軸に、エレクトロニクスや半導体から、光学、バイオ・医療まで、幅広い分野のものづくりを支えています。研究開発の段階から量産に向けた検討まで、お客様の課題に寄り添った提案を大切にしています。
会社概要
| 企業名 | 株式会社SIJテクノロジ |
|---|---|
| 所在地 | 〒305-0817 茨城県つくば市研究学園1丁目2番14号 |
| 設立年月 | 2005年4月 |
| URL | https://sijtechnology.com/ |