ラインスキャンカメラとは?
ラインスキャンカメラとは、スキャナーのように対象物を一列にスキャンし、そのデータを合成して画像を生成するカメラのことです。工業用途や医療用途などで使用されています。
ラインスキャンカメラは、ラインカメラとも呼ばれ、センサー部分が1ラインに並んでいて、画素数は並んでいるセンサの数を指します。
画素数は1K=1024画素で呼称します。上記の例は2048画素のもので、省略して2Kと表記します。
エリアカメラとラインカメラの違い
エリアカメラは、1フレームごとの静止画像の撮影に適していますが、連続的に流れるシート状の物体の撮影には向いていません。
対照的に、ラインスキャンカメラはガラス、フィルム、樹脂板などの連続的に流れるシート状の材料や円筒形の部品の撮影に優れており、画像を連続的に取得して大きな一枚の画像を生成することができます。したがって、ラインスキャンカメラを使用することで、エリアカメラでは難しい撮影要件を満たすことができます。
ただし、ラインスキャンカメラにはいくつかのデメリットも存在します。例えば、操作が複雑でピント合わせが難しいことや、複数のカメラを連結する場合の位置合わせの難しさが挙げられます。また、撮影対象物を移動させるための治具や、十分な明るい照明が必要です。明るい照明が必要なのは、ラインスキャンカメラの露光時間が短いためで、それによって画像が暗くなることがあります。
ラインスキャンカメラの種類
ラインスキャンカメラは、モノクロとカラーに分類され、それぞれもいくつかの種類に分けられます。
モノクロ
1ライン | センサが1ラインのみの、シンプルな構造のカメラ |
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マルチライン | 通常2本または4本のセンサラインを持ち、各ラインは個別にデータを出力します。 これらのデータは後でデジタル的に合算され、高感度の情報が生成されます。 さらに、位置の微調整のために、ラインディレイ機能も備えています。 |
TDI | 32、64、または128のラインが垂直に配置され、データを結合して高感度を実現する仕組みです。 このプロセスでは、電荷が物理的に伝達され、全画素のデータが最下部のラインから出力されます。 |
カラー
1ライン | ラインセンサー上に、赤/緑/青のフィルタが横一列に配置されています。 各ユニットは3つの画素から構成され、これにより色のズレが生じますが、他のカラーカメラに比べてコストが低い特徴があります。 |
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2ライン | 2つのラインセンサーには、赤/緑/青のフィルタが配置されています。 人間の視覚システムが緑に対して感度が高いことから、緑の占める割合が多くなっています。 ただし、輝度差の大きいエッジ部分では時折偽の色が現れます。この問題を軽減するために、補間データを生成して偽色を減少させます。 |
3ライン | 各ラインセンサの上にそれぞれ赤/緑/青のフィルタがあり、3つのラインセンサを並べています。 フィルタなしのセンサを加えた4ラインのものもあります。 各ラインの場所のずれを調整するためにラインディレイ機能がついています。 |
3板式 | 3つのラインセンサーと3つのプリズムを搭載することで、ラインディレイ機能による調整を不要にしています。 プリズムの内蔵により、他のカラーカメラに比べてサイズが大きなることから、高額です。 |
ラインスキャンカメラの選び方のポイント
適切なラインスキャンカメラを選ぶために検討すべきポイントをいくつかご紹介します。
画素数
「画素数」とは、カメラの撮像素子に並んでいる画素の数を表す指標です。画素数が多いほど、より高精細な画像を撮影できます。ただし、必要な画素数は撮影対象物の大きさや必要な精度によって異なり、過剰な画素数は処理に時間がかかるため、必要な精度を満たす画素数を選択することが重要です。
例えば上部の足あとを撮影する場合は、対象物がかけることなく撮影範囲に入る必要があるため、ラインセンサの方向の長さ(幅a)を測定します。
一方、足あと内で最も小さいのは小指部分です。縦/横のうち短いほうの長さ(最小検知サイズb)を測定します。
このa, b2つの値によって、カメラに必要な画素数を計算することができます。
【対象物の大きさa ÷(最小検知サイズb ÷5※)= カメラに必要な画素数】
ラインレート
「ラインレート」とは、1秒間にスキャンできるライン数を示す指標です。ラインスキャンカメラは被写体をスキャンするか、あるいはカメラ自体を移動させて撮影する必要があり、この移動速度を「搬送速度」と呼びます。搬送速度とラインレートが適切でない場合、下記のように画像に伸び縮みが発生する可能性があるため注意が必要です。
搬送速度と視野幅によって、ラインレートを計算することができます。
【搬送速度(mm/sec) ÷(視野幅(mm) ÷ カメラの画素数)= カメラに必要なラインレート(Hz)】
各単位の変換に気を付けてください。上記計算式で算出したラインレートより速い(大きい)数値のカメラを選べば問題ありません。
インターフェース
下記3種類が、ラインスキャンカメラで使用される主なインターフェースです。
画素数とラインレートが設定されると、サポートするインターフェースが特定されることもありますが、適切なインターフェースを選択する際には、以下の2つの要点を確認しましょう。
カメラとコントローラ(PC)までの距離
CameraLinkは最長10mまでしかケーブル長がありません。 それ以上の距離の接続が必要な場合はGigE VisionかCoaXPressを検討する必要があります。
必要な画像処理速度(タクトタイム)
検査速度(タクトタイム)が速い場合は、転送速度が速くないと画像処理が滞ってしまいます。処理速度に問題がないか検証するようにしてください。
ラインスキャンカメラの用途例
ラインスキャンカメラを活用した検査事例についてご紹介します。
幅計測 | 対象部材(ゴム、鉄、フィルム、紙など)の幅を連続測定します。 被検査物体がカメラと照明の中を通過する際、照明からの光がカメラに射す光路を遮断します(遮光)。 この遮光された領域は、カメラに内蔵された受光素子(センサ)で検知され、その遮光された画素の数と画素ごとのウェイトを利用して、物体の幅が計測されます。 幅の広い対象物や高い精度が求められる場合は、システムの構築においてカメラの数を増やすことが考えられます。 |
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欠陥検出 | 対象部材を連続監視し、穴あきや異物などの欠点部を検出します。 検査対象物とその中で生じる欠陥(穴や異物の混入など)部分に差異がある場合、これを検知します。差異が大きければ大きいほど、検出が容易になります。また、検知可能なサイズや数は機器の性能に依存します。 異物が発生した箇所で、製品部分(正常な部分)との差異がある場合でも検出が可能なことがあります。 |
位置不良検出 | 対象の位置を監視し、ズレなどの不良部を検出します。 対象の各位置(エッジや中心位置)を検出し、基準との差が設定値以内であるかどうかを判断します。 |
個数計数 | 視野内を通過する対象製品の個数を計数します。 量産される製品の数を計測します。製品がカメラの視野を通過すると、対象画素部分が入光⇒遮光⇒入光と継続的に変動するため、そのサイズや時間などを基に判定し、数をカウントします。 |
表面検査装置 | 対象物の表面を検査し、欠点や異物などを検出します。 被検査物に光を照射し、その反射光をカメラで受け取り、画像処理を通じて物体の表面情報を取得して検査を行います。ラインセンサカメラでは、円筒形の物体を回転させながら撮影することで、物体表面を平坦に取り込むことができます。これにより、円筒形のワーク(例: シャフト部品など)や球体形状のワークにおいて、形状による影響を軽減して検査が可能です。 |
NEDラインスキャンカメラのご紹介
NEDが提供するラインスキャンカメラには、「Ryuganシリーズ」「CLISBee-Aシリーズ」「SUシリーズ」「RAINBOWシリーズ」の4シリーズがございます。
Ryuganシリーズ
NEDが自信をもって提案する新しいラインスキャンカメラシリーズ「Ryugan(龍眼)」は、高速かつ高品質な性能を備えています。厳格な要件を持つアプリケーションにも対応し、GigE Visionモデルを含む新しいモデルがRyuganシリーズに順次追加されています。
画素数 | 2-16K pixels |
ラインレート | ~125kHz |
CLISBee-Aシリーズ
CLISBee-Aシリーズは、高い感度、高速、低ノイズをリーズナブルな価格で提供しています。このシリーズにはシングルとデュアルのセンサーがあり、マルチラインセンサーの利点がお客様のプロジェクトの成功に寄与します。
画素数 | 2-16K pixels |
ラインレート | ~77kHz |
SUシリーズ
SUシリーズは、ローコストアプリケーションや簡易的なシステム構築に有効なコストパフォーマンスの高いラインスキャンカメラのシリーズです。
画素数 | 2-7K pixels |
ラインレート | ~12kHz |
RAINBOWシリーズ
Rainbowシリーズは、カラーラインスキャンカメラのシリーズです。デュアルラインと3ラインのセンサーモデルが効果的な性能を提供します。RC3Cシリーズは、Ryuganシリーズのセンサを組み込んでおり、高解像度のカラー処理に適しています。
画素数 | 1-7K pixels |
ラインレート | ~40kHz |