マシンビジョンカメラは、産業分野において製品検査や品質管理を自動化するカメラ機器です。高性能なセンサーと特殊な通信機能を備え、製造工程での外観検査から寸法測定まで、多岐にわたる用途で活用されています。
本記事では、マシンビジョンカメラの基本的な特徴から具体的な用途例、さらに選定時の重要なポイントまでを詳しく解説していきます。
マシンビジョンカメラは、製造工程での検査や品質管理を行う際に人間の目の代わりに機能するカメラです。
製造、医薬、交通監視、セキュリティシステムなど幅広い産業分野で使用され、製品の検査、測定、選別、識別、追跡などのタスクを高速かつ高精度で実行します。製品品質の向上、コストの削減、業務の最適化を実現し、産業用オートメーションの重要な基盤技術となっています。
産業用途に特化した設計となっており、ノイズを極限まで抑えた高品質な撮影が可能です。リフレッシュレートは生産ラインの速度に合わせて最適化され、高速な連続撮影を実現します。感度とダイナミックレンジの広さは、暗所や明暗差の大きな環境下でも鮮明な画像取得を可能にします。
露光方法も用途に応じて選択でき、グローバルシャッターによる歪みのない撮影や、複数回露光による合成なども行えます。解像度も検査対象に合わせて数メガピクセルから数十メガピクセルまで幅広く選択可能です。
GigE VisionやUSB3 Visionなどの産業用規格に準拠した通信プロトコルを採用しています。高速かつ安定したデータ転送が実現され、リアルタイムでの画像取得と解析が可能です。
カメラの各種パラメータも外部から詳細に制御でき、撮影条件の微調整や自動化された設定変更にも対応します。
製品検査や解析の目的に応じた最適なカメラを選択できます。可視光カメラは一般的な外観検査に使用され、赤外カメラは温度分布の可視化や内部欠陥の検出に活用されます。
深紫外カメラは微細な傷の検出に優れ、X線カメラは製品内部の非破壊検査を実現します。
ハイパースペクトルカメラは物質の分光特性を分析し、材質判別などに使用されます。
ハイスピードカメラは高速な動作の解析に、3Dカメラは立体形状の測定に、偏光カメラは応力分布の可視化などに活用されます。
画像処理アルゴリズムとAI技術を組み合わせた高度な分析システムを備えています。パターンマッチングや欠陥検出、寸法測定、文字認識など、多様な分析タスクを自動的に実行します。
分析結果に基づいて合否判定や品質評価を行い、生産システムへフィードバックすることも可能です。機械学習モデルの導入により、複雑な判断基準にも対応した柔軟な検査を実現します。
マシンビジョンカメラは、産業界で幅広く活用されており、主に以下の具体的な用途があります。
製品検査と品質管理 | 外観検査:製品の傷や欠陥を検出 寸法測定:部品や製品の寸法を高精度で計測 色検査:製品の色むらや色差を確認 |
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製造プロセスの自動化 | バーコードやシリアル番号の読み取り 製品の分類や選別 ロボットのガイド:位置や方向の情報を提供し、ロボットの動作を制御 |
設備管理と保守 | 工場設備の点検:故障の検知や稼働状況のリアルタイム監視 自動メールアラート通知:異常検出時に通知を送信 |
物流と在庫管理 | 荷物の追跡:バーコード読み取りによる物流工程の管理 在庫の自動カウントと管理 |
自動運転技術 | 車線検出、道路標識認識、周囲の人や車の検出 |
マシンビジョンカメラの選定には、以下の重要なポイントを考慮する必要があります
製品検査における細部の確認や寸法測定の精度は、画質と解像度に大きく依存します。検査対象物の最小特徴サイズを基準に、必要な画素数を算出します。
一方、過剰な解像度はデータ量の増大やコスト上昇を招くため、用途に応じた適切な選択が重要です。
画質においては、ノイズレベルやコントラスト、色再現性なども重要な判断基準となります。
CCDセンサーとCMOSセンサーでは、感度特性や読み出しノイズ、飽和電荷量が異なります。CCDは高画質だが高価格、CMOSは高速・低コストという特徴があります。
センサーサイズも大きいほど高感度で良好なS/N比が得られますが、光学系が大型化する傾向があります。用途や予算に応じた適切な選択が必要です。
生産ラインの速度や検査対象物の動きに合わせた適切な設定が必要です。高速移動する対象物の撮影では、モーションブラーを防ぐために十分な速度が要求されます。
また、連続撮影時のバッファメモリ容量やデータ転送速度との整合性も考慮が必要です。
GigE Vision、USB3 Vision、CoaXPress、Camera Linkなど、各規格の特徴を理解した上で選択します。転送速度、ケーブル長、コスト、既存システムとの互換性などを総合的に判断します。
将来的なシステム拡張性も考慮に入れた選定が望ましいです。
検査対象物の特性や検出したい特徴に応じて、最適な波長域を選択しましょう。可視光では検出が困難な欠陥でも、赤外線や紫外線を使用することで明確に検出できる場合があります。
蛍光観察や分光分析など、特殊な検査要件にも対応できる波長域を選定します。
プログレッシブ走査方式は、動きのある対象物の撮影に適しています。インターレース方式と比較して、画像の歪みが少なく、より正確な検査が可能です。
高速な対象物の撮影では、グローバルシャッター方式の採用も検討します。
設置スペースの制約や周辺機器との干渉を考慮し、適切なサイズを選びましょう。
また、防塵・防水性能、耐振動性、動作温度範囲など、使用環境に応じた保護等級を持つモデルも選択する必要があります。
グローバルシャッター方式とローリングシャッター方式では、動く対象物の撮影時の画像の歪み方が異なります。
高速移動する対象物の撮影では、グローバルシャッター方式が有利です。照明条件や露光時間の制約も考慮した選択が必要です。
画像処理ソフトウェアやプログラミング言語との互換性を事前に確認します。SDKやドライバの提供状況、開発サポート体制なども重要な選定基準です。
システムの長期運用を見据えた、メーカーのサポート体制や製品の継続性も考慮に入れます。
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