バイオプラスチックの種類と特徴|原料・製法による違いを解説
本記事では、バイオプラスチックの定義・分類から原料別の特徴、適した用途について解説します。
バイオプラスチックの定義と分類
バイオプラスチックという用語は、単一の素材を指すものではありません。「バイオマスを原料とするプラスチック(バイオマスプラスチック)」と「微生物によって分解されるプラスチック(生分解性プラスチック)」の両方、またはいずれかの特性を持つプラスチックの総称として使われています。
バイオマスプラスチック
バイオマスプラスチックは、植物などの再生可能な生物資源を原料として製造されるプラスチックです。原料に由来するバイオマス度(バイオマス原料の含有率)が一定以上であることが特徴で、石油由来のプラスチックに比べてCO2排出量の削減に寄与するとされています。ただし、バイオマスプラスチックが必ずしも生分解性を持つわけではない点に注意が必要です。
生分解性プラスチック
生分解性プラスチックは、一定の条件下で微生物の働きによって水とCO2に分解されるプラスチックです。土壌中や海洋中など、特定の環境条件で分解が進む特性を持ちます。生分解性プラスチックの原料は、バイオマス由来のものと石油由来のものの両方が存在します。
分類の整理
バイオプラスチックは、原料と分解性の2軸で分類すると理解しやすくなります。バイオマス由来で非生分解性のもの(バイオPEなど)、バイオマス由来で生分解性のもの(PLA、PHAなど)、石油由来で生分解性のもの(PBAT、PBSなど)の3つのカテゴリに大きく分けられます。素材選定の際は、この分類を踏まえて用途に適した特性を持つものを選ぶ必要があります。
原料別の種類と特徴
バイオプラスチックは原料によって特性が異なります。代表的な種類とその特徴を整理します。
ポリ乳酸(PLA)
ポリ乳酸(PLA)は、トウモロコシやサトウキビなどのデンプンを原料とするバイオマスプラスチックです。透明性が高く、硬質で光沢があるため、容器や包装材に適しています。生分解性を持ち、工業的なコンポスト条件下で分解されます。一方、耐熱性がやや低い点や、自然環境下での分解速度が遅い点は用途選定時の考慮事項となります。
ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)
ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、微生物が体内で生成するポリエステルを取り出して製造されるバイオプラスチックです。海洋環境を含む様々な自然条件下で生分解される特性を持ち、海洋プラスチック問題への対応策として注目されています。柔軟性があり、フィルムや成形品に加工可能です。
バイオポリエチレン(バイオPE)
バイオポリエチレンは、サトウキビ由来のエタノールを原料として製造されるポリエチレンです。化学構造は石油由来のポリエチレンと同一であるため、物性や加工性は従来品と変わりません。既存の成形設備をそのまま使用できる点が利点ですが、生分解性は持ちません。バイオマス由来であることによるCO2削減効果が主な採用理由となります。
バイオポリエチレンテレフタレート(バイオPET)
バイオPETは、原料の一部にバイオマス由来のエチレングリコールを使用したPETです。従来のPETと同等の透明性、強度、バリア性を持ち、飲料ボトルなどに採用されています。バイオPEと同様に生分解性は持ちませんが、リサイクルシステムとの互換性が確保されています。
ポリブチレンサクシネート(PBS)
ポリブチレンサクシネート(PBS)は、コハク酸とブタンジオールを原料とする生分解性プラスチックです。柔軟性と耐熱性のバランスが良く、農業用マルチフィルムや食品包装などに使用されています。原料のバイオマス化も進んでおり、バイオマス由来PBSも製造されています。
従来プラスチックとの性能比較
バイオプラスチックを採用する際は、従来の石油由来プラスチックとの性能差を理解しておく必要があります。
機械的特性
バイオプラスチックの機械的特性は種類によって大きく異なります。バイオPEやバイオPETは従来品と同等の強度や伸び率を持ちますが、PLAは硬くて脆い傾向があります。PHAは柔軟性がありますが、引張強度は従来のプラスチックより低い場合があります。用途に応じた素材選定と、必要に応じた改質や複合化が求められます。
耐熱性
耐熱性はバイオプラスチックの課題となることが多い特性です。PLAは熱変形温度が低く、高温環境での使用には適しません。一方、バイオPEやバイオPETは従来品と同等の耐熱性を持ちます。高温殺菌が必要な食品容器などでは、素材の耐熱温度を確認することが重要です。
バリア性
ガスや水蒸気に対するバリア性も用途によっては重要な特性です。バイオPETは高いガスバリア性を持ち、飲料容器に適しています。PLAは水蒸気透過性がやや高い傾向がありますが、用途によっては問題にならないこともあります。包装用途では、内容物の品質保持に必要なバリア性能を満たすかどうかの確認が必要です。
加工性
バイオPEやバイオPETは、従来のポリエチレンやPETと同じ成形条件で加工できるため、既存設備の活用が可能です。PLAやPHAは専用の成形条件設定が必要な場合がありますが、射出成形、押出成形、ブロー成形など一般的な加工方法に対応しています。
主な用途と採用事例
バイオプラスチックは様々な産業分野で採用が進んでいます。用途ごとに適した素材が異なるため、要求特性に基づいた選定が必要です。
包装・容器
食品包装や容器は、バイオプラスチックの主要な用途のひとつです。PLAは透明性を活かした食品容器やカップに、バイオPETは飲料ボトルに使用されています。生分解性が求められる場面ではPLAやPBS、従来品との互換性が重視される場面ではバイオPEやバイオPETが選択される傾向にあります。
農業資材
農業用マルチフィルムは、生分解性プラスチックの特性を活かせる用途です。使用後に土壌中で分解されるため、回収・廃棄の手間を削減できます。PBSやPLA系の素材が使用されており、作物の種類や気候条件に応じた分解速度の調整が行われています。
繊維・不織布
PLAは繊維化が可能であり、衣料品や産業用不織布に使用されています。吸湿性が低く、速乾性があることから、スポーツウェアの素材としても検討されています。農業用の防草シートなど、一定期間使用後に分解されることが望ましい用途にも適しています。
自動車・電機部品
自動車内装部品や電子機器の筐体にもバイオプラスチックの採用が進んでいます。バイオPEやバイオPAなど、従来素材と同等の性能を持つバイオマスプラスチックが使用されています。環境配慮をアピールする製品において、素材のバイオマス度を訴求ポイントとする動きが見られます。
この記事のまとめ
- バイオプラスチックは「バイオマス由来」と「生分解性」の2つの特性に基づいて分類され、両方または一方を持つプラスチックの総称です。
- PLA、PHA、バイオPE、バイオPETなど多様な種類があり、原料や製法によって特性が大きく異なります。
- バイオPEやバイオPETは従来品と同等の性能を持ちますが、PLAやPHAは耐熱性や機械的特性に違いがあり、用途に応じた選定が必要です。
- 包装・容器、農業資材、繊維、自動車部品など幅広い分野で採用が進んでおり、用途ごとに適した素材が選択されています。
- 素材選定の際は、バイオマス度、生分解性、機械的特性、加工性など複数の観点から要求特性との適合性を確認することが重要です。
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