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PIMSとMESの違いとシステム構成における役割分担
本記事では、PIMSとMESの定義や機能の違い、ISA-95階層モデルにおける位置づけ、そして両システムの代表的な連携パターンについて解説します。
この記事で分かること
- PIMSとMESの定義と基本的な性格の違いがわかる。
- 両システムが扱うデータの性質や主要機能の違いを整理できる。
- ISA-95階層モデルにおけるPIMSとMESの位置づけが理解できる。
- PIMSとMESの代表的な連携パターンと連携時の考慮点がわかる。
PIMSとMESの定義
PIMSとMESはそれぞれ異なる目的で開発されたシステムです。まず、両者の定義を整理します。
PIMSとは
PIMS(Plant Information Management System)は、プラント情報管理システムの略称です。工場やプラント内のDCS(分散制御システム)、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)、各種センサーから運転データを自動収集し、長期間にわたって蓄積・管理します。主にプロセスデータの収集・蓄積・可視化を担うシステムであり、「データ基盤」としての性格が強いのが特徴です。
MESとは
MES(Manufacturing Execution System)は、製造実行システムの略称です。製造現場における生産計画の実行管理、作業指示、実績収集、品質管理、在庫管理などを担当します。ERP(基幹業務システム)からの生産計画を受けて、現場レベルでの製造活動を管理・統制する「業務システム」としての性格が強いシステムです。
両者の基本的な違い
PIMSは「何が起きているか」「何が起きたか」を記録・蓄積することに主眼を置いています。一方、MESは「何をすべきか」「何をしたか」を管理・統制することに主眼を置いています。この基本的な性格の違いが、機能やシステム構成における位置づけの違いにつながっています。
主な機能の違い
PIMSとMESでは、提供する機能に明確な違いがあります。それぞれの主要機能を整理します。
PIMSの主な機能
PIMSが提供する機能は、プロセスデータの管理に特化しています。温度、圧力、流量、回転数などのプロセス変数をリアルタイムで収集し、独自の圧縮技術により数年から数十年にわたって蓄積します。蓄積されたデータはトレンドグラフとして可視化でき、過去の任意の期間を指定して参照できます。また、運転日報などの帳票を自動生成する機能や、収集データに対する演算・集計機能、アラーム管理機能なども備えています。
MESの主な機能
MESが提供する機能は、生産活動全体の管理に及びます。ERPから受けた生産計画を現場レベルの作業指示に展開し、作業手順を管理します。製造実績や品質データを収集・管理し、在庫・仕掛品の状況を把握します。製品がどの原材料から、どの工程を経て製造されたかを追跡するトレーサビリティ機能も重要な役割です。設備の稼働管理や作業者の労務管理を含む場合もあります。
扱うデータの性質
両システムが扱うデータの性質も異なります。PIMSが扱うのは主に連続的なアナログデータです。温度の変化や圧力の推移など、時間とともに連続的に変化する値を秒単位で記録します。一方、MESが扱うのは主に離散的なイベントデータです。ロットの開始・終了、作業の完了、検査の合否など、特定のタイミングで発生するイベントを記録します。
この違いにより、データの蓄積量や検索の仕方も異なってきます。PIMSでは膨大な時系列データを効率的に圧縮・保存する技術が重要となり、MESではイベント間の関連性を追跡できるデータ構造が重要となります。
システム構成における位置づけ
製造業のシステム構成は、一般的に階層構造で表現されます。この階層構造における両者の位置づけを理解することで、それぞれの役割がより明確になります。
ISA-95による階層モデル
製造業の標準的なシステム階層モデルとして、ISA-95(国際自動化学会の規格)があります。このモデルでは、Level 0(製造プロセス)からLevel 4(基幹業務)まで、5つの階層が定義されています。Level 1はセンサー・アクチュエータ、Level 2は監視制御システム(SCADAやDCS)、Level 3は製造実行システム、Level 4はERPが位置づけられています。
MESの位置づけ
MESはLevel 3に位置し、上位のERPと下位の制御システムの間で製造活動の実行管理を担います。ERPから受けた生産計画を現場レベルの作業指示に展開し、その実績をERPに報告する橋渡し役を果たします。MESは特定の階層に明確に位置づけられるシステムです。
PIMSの位置づけ
PIMSは、Level 1〜2のデータを収集し、Level 3〜4に提供するデータ基盤として機能します。階層モデルの中では「縦串」のように各レベルを貫通して存在し、プロセスデータを一元的に管理する役割を担います。特定の階層に固定されるのではなく、階層を横断してデータを流通させる基盤としての性格を持っています。
役割分担の基本的な考え方
PIMSは「データの収集・蓄積・提供」を担い、MESは「業務プロセスの管理・統制」を担うという役割分担が基本となります。PIMSが蓄積したプロセスデータをMESが活用するという関係性も多く見られます。両システムは競合するものではなく、それぞれの得意領域で補完し合う関係にあります。
連携のパターン
PIMSとMESは、それぞれ独立して導入されることもありますが、連携させることで相乗効果を発揮する場合があります。代表的な連携パターンを紹介します。
MESがPIMSのデータを参照するパターン
MESの品質管理機能において、PIMSに蓄積されたプロセスデータを参照するパターンです。製品に品質問題が発生した場合、MESで管理している製造実績とPIMSのプロセスデータを突き合わせることで、どの製造条件が品質に影響したかを分析できます。製造実績とプロセス条件を紐づけることで、品質トラブル発生時の原因究明が容易になります。
PIMSがMESのイベントデータを取り込むパターン
MESで管理しているロット情報や作業実績をPIMSに取り込むパターンです。プロセスデータの時系列グラフ上にロットの切り替わりや作業イベントを重ねて表示することで、プロセスの変化と製造活動の関係を可視化できます。ロット単位でのプロセスデータ検索も可能となり、トレーサビリティの強化につながります。
共通のデータ基盤として統合するパターン
PIMSをプラント全体のデータ基盤として位置づけ、MESを含む各システムがPIMSを介してデータを共有するパターンです。各システムが個別にデータを保持するとデータのサイロ化が起きやすくなりますが、PIMSを共通基盤とすることで統合的なデータ活用が可能になります。近年のDX推進において、このパターンへの関心が高まっています。
連携時の考慮点
連携を行う際には、いくつかの点を考慮する必要があります。まず、データの粒度や更新頻度の違いです。PIMSは秒単位のプロセスデータを扱うのに対し、MESは分〜時間単位のイベントデータを扱うことが多く、データの整合性を確保するための設計が必要です。
また、両システム間のインタフェース仕様も事前に確認が必要です。データフォーマットや通信プロトコルが異なる場合は、データ変換の仕組みを用意することになります。連携の範囲や方式は、導入目的や既存システムの状況に応じて検討することが重要です。
[PIMS MES 違い]に関連するFAQ
PIMSとMESはどちらを先に導入すべきですか?
どちらを優先すべきかは、導入目的や現場の課題によって異なります。プロセスデータの蓄積・可視化が課題であればPIMSの導入が有効であり、生産計画の実行管理や品質管理の強化が優先課題であればMESが候補となります。両システムは補完関係にあるため、目的に応じた段階的な導入も選択肢です。
PIMSとMESが扱うデータにはどのような違いがありますか?
PIMSは温度・圧力・流量など時間とともに連続的に変化するアナログデータを秒単位で記録します。一方、MESはロットの開始・終了や検査の合否など、特定のタイミングで発生する離散的なイベントデータを扱います。この違いにより、データの蓄積方法や検索の仕方にも差があります。
PIMSとMESを連携させるメリットは何ですか?
連携することで、MESの製造実績とPIMSのプロセスデータを突き合わせた品質分析や原因究明が可能になります。また、プロセスデータにロット情報を重ねて可視化することでトレーサビリティを強化できます。PIMSを共通のデータ基盤として活用すれば、データのサイロ化を防ぎ統合的なデータ活用にもつながります。
ISA-95の階層モデルにおいて、PIMSはどこに位置づけられますか?
MESがLevel 3に明確に位置づけられるのに対し、PIMSは特定の階層に固定されません。PIMSはLevel 1〜2の制御システムからデータを収集し、Level 3〜4のシステムにデータを提供する「縦串」のような役割を果たします。階層を横断してデータを流通させるデータ基盤としての性格を持つ点が特徴です。
この記事のまとめ
- PIMSはプロセスデータの収集・蓄積・可視化を担うデータ基盤であり、MESは生産計画の実行管理や品質管理を担う業務システムである。
- PIMSは連続的なアナログデータ、MESは離散的なイベントデータを主に扱い、データの性質が異なる。
- ISA-95階層モデルにおいて、MESはLevel 3に位置し、PIMSは階層を横断するデータ基盤として機能する。
- 両システムは競合関係ではなく補完関係にあり、連携により品質分析やトレーサビリティを強化できる。
- 連携時にはデータの粒度・更新頻度の違いやインタフェース仕様の確認が重要となる。
[PIMS(プラント情報管理システム)]
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