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地熱発電のスケール問題|発生メカニズムと対策を解説

地熱発電では、地熱流体に含まれる成分が配管や熱交換器にスケールとして付着し、発電効率の低下を引き起こします。特にシリカスケールの除去は技術的な課題となっています。

本記事では、地熱発電特有のスケール問題と対策について解説します。

地熱発電でスケールが発生するメカニズム

地熱発電は、地下深くに存在する高温の蒸気や熱水を利用して発電を行う再生可能エネルギーです。地下から取り出される地熱流体には、長い年月をかけて岩石から溶け出したさまざまな鉱物成分が含まれています。

地熱流体が地上に汲み上げられると、圧力や温度の変化が生じます。地下では高温・高圧の状態で溶解していた成分が、地上の環境では溶解度を超えて過飽和状態となり、固体として析出します。これがスケール生成の基本的なメカニズムです。

温度変化による析出

地熱流体は、地下から地上へ移動する過程で温度が低下します。多くの鉱物成分は温度が下がると溶解度が低下するため、配管内壁や熱交換器の伝熱面にスケールとして付着します。特に熱交換器では、熱を効率よく取り出すために流体を急速に冷却するため、スケールが生成されやすい環境となります。

圧力変化による析出

地熱流体が地上に到達すると、地下に比べて圧力が大幅に低下します。圧力が下がると、流体中に溶解していた二酸化炭素などのガス成分が放出され、pHが変化します。このpH変化によって、それまで安定して溶解していた成分が不安定になり、スケールとして析出することがあります。

フラッシュ現象による析出

地熱発電では、高温の熱水を減圧して蒸気を発生させる「フラッシュ」という工程があります。フラッシュによって蒸気と熱水に分離される際、熱水中の鉱物成分の濃度が急激に上昇します。この濃縮効果により、溶解限度を超えた成分がスケールとして析出します。

地熱発電で問題となるスケールの種類

地熱発電所で発生するスケールは、地熱資源の特性や地質条件によって異なります。主に問題となるスケールの種類とその特徴を解説します。

シリカスケール

シリカスケール(二酸化ケイ素、SiO₂)は、地熱発電において最も対処が難しいスケールの一つです。地熱流体には、地下の岩石から溶け出したシリカ成分が多く含まれており、温度低下に伴って非晶質シリカとして析出します。

シリカスケールの厄介な点は、その化学的安定性にあります。一般的な酸洗浄で使用される塩酸や硫酸ではほとんど溶解せず、除去が非常に困難です。従来はフッ酸を用いた洗浄が行われてきましたが、フッ酸は毒性が高く、取り扱いや廃液処理に細心の注意が必要です。

カルシウムスケール

カルシウムスケールは、炭酸カルシウム(CaCO₃)や硫酸カルシウム(CaSO₄)として析出します。地熱流体中に含まれるカルシウムイオンが、二酸化炭素の放出によるpH上昇や、温度・圧力の変化によって析出します。

カルシウムスケールはシリカスケールに比べると酸による溶解性が高く、適切な洗浄剤を選定すれば除去は比較的容易です。ただし、硫酸カルシウムは溶解度が低いため、炭酸カルシウムよりも除去に時間がかかる場合があります。

硫化物スケール

一部の地熱資源では、硫化鉄(FeS)や硫化亜鉛(ZnS)などの硫化物スケールが発生することがあります。これらは地熱流体中の硫化水素と金属イオンが反応して生成されます。硫化物スケールは黒色を呈することが多く、配管内部の腐食と併発するケースもあるため、スケール対策と腐食対策を併せて検討する必要があります。

複合スケール

実際の地熱発電所では、単一成分のスケールだけでなく、複数の成分が混在した複合スケールが発生することがあります。シリカとカルシウムが混合したスケールや、有機物を含むスケールなど、成分構成は発電所ごとに異なります。複合スケールの場合、成分ごとに適した洗浄方法が異なるため、スケールの組成分析に基づいた対策が求められます。

スケールが発電効率に与える影響

地熱発電所におけるスケールの蓄積は、発電効率と設備の信頼性に深刻な影響を及ぼします。

熱交換効率の低下

スケールは熱伝導率が低いため、熱交換器の伝熱面に付着すると熱交換効率が大幅に低下します。地熱流体から十分な熱を取り出せなくなり、蒸気の生成量が減少します。その結果、タービンの出力が低下し、発電量が減少します。スケールの厚みがわずか数ミリメートル増加するだけでも、熱交換効率は顕著に悪化することがあります。

流路の狭窄と閉塞

配管内部にスケールが蓄積すると、流路断面積が減少します。流路が狭くなると、地熱流体の流量を維持するために必要なポンプ動力が増加し、運転コストが上昇します。さらにスケールの堆積が進行すると、配管の完全閉塞に至る可能性もあり、発電所の運転停止を余儀なくされるケースもあります。

設備寿命への影響

スケールの付着は、設備の腐食を促進する場合があります。スケール下の環境は酸素濃度や温度分布が不均一になりやすく、局所的な腐食(すきま腐食)が発生することがあります。また、スケール除去のために頻繁に化学洗浄を行うと、洗浄液による母材へのダメージが蓄積し、設備寿命が短くなる恐れがあります。

メンテナンスコストの増大

スケール対策には、定期的な洗浄作業、洗浄剤の購入、廃液処理、人件費などのコストがかかります。スケールの堆積が早い発電所では、洗浄頻度が高くなり、メンテナンスコストが大きな負担となります。また、洗浄のために発電を停止する必要がある場合、その期間の発電機会損失も考慮しなければなりません。

地熱発電におけるスケール対策

地熱発電所では、スケールの発生を抑制する予防策と、発生したスケールを除去する事後対策を組み合わせて運用することが一般的です。

スケール抑制剤の添加

地熱流体にスケール抑制剤(スケールインヒビター)を添加し、スケールの核生成や結晶成長を抑制する方法です。抑制剤の成分や添加量は、地熱流体の組成やスケールの種類に応じて調整します。適切な抑制剤を選定・運用することで、スケールの堆積速度を低減し、洗浄頻度を下げることができます。

pH制御

地熱流体のpHを制御することで、特定のスケール成分の析出を抑制する方法です。例えば、炭酸カルシウムスケールはpHが高いほど析出しやすいため、酸を添加してpHを下げることで析出を抑制できます。ただし、pH制御は他の成分の析出や腐食への影響も考慮して慎重に行う必要があります。

運転条件の最適化

温度や圧力、流量などの運転条件を調整することで、スケールの析出を抑制できる場合があります。例えば、フラッシュ温度を調整してシリカの過飽和度を低減したり、流速を上げてスケールの付着を抑制したりする方法が検討されます。運転条件の最適化は、発電効率とスケール抑制のバランスを考慮して行います。

化学洗浄によるスケール除去

すでに付着したスケールを除去する方法として、化学洗浄があります。スケールの種類に応じた洗浄液を選定し、配管や熱交換器を洗浄します。カルシウムスケールには酸性洗浄液が有効ですが、シリカスケールは通常の酸では溶解しにくいため、専用のスケール除去剤を使用する必要があります。

化学洗浄を行う際は、洗浄液による母材へのダメージを考慮することが重要です。強酸を使用すると、スケールだけでなく配管や熱交換器の金属表面も侵食される恐れがあります。母材への影響を抑えながらスケールを効果的に除去できる洗浄剤の選定が求められます。

機械的除去

高圧水洗浄やブラシ洗浄、ピグ洗浄(配管内にピグと呼ばれる清掃具を通す方法)など、物理的な力でスケールを除去する方法もあります。化学洗浄と組み合わせることで、より効果的にスケールを除去できる場合があります。ただし、機械的除去は配管や伝熱面を傷つけるリスクがあるため、実施する際は母材への影響を十分に検討する必要があります。

設備設計での対策

スケールの付着しにくい材質や表面処理を採用することで、スケールの堆積を抑制する方法です。また、スケールが付着しやすい箇所に取り外し可能な部品を設置し、定期的に交換する設計も有効です。新設の発電所では、スケール対策を考慮した設備設計を行うことで、運転開始後のメンテナンス負荷を軽減できます。

この記事のまとめ

  1. 地熱発電では、地熱流体の温度・圧力変化やフラッシュ現象によってスケールが析出し、配管や熱交換器に付着します。
  2. 主なスケールの種類には、シリカスケール、カルシウムスケール、硫化物スケールがあり、それぞれ除去の難易度や対策方法が異なります。
  3. スケールの蓄積は、熱交換効率の低下、流路の閉塞、設備寿命の短縮、メンテナンスコストの増大など、発電効率と経済性に深刻な影響を与えます。
  4. スケール対策には、抑制剤の添加、pH制御、運転条件の最適化などの予防策と、化学洗浄や機械的除去などの事後対策があります。
  5. 化学洗浄を行う際は、スケールの種類に応じた洗浄剤を選定し、母材へのダメージを抑えながら効果的に除去することが重要です。

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