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熱交換器内におけるスケール除去対策の重要性とは? 付着により生じるリスクと併せて解説

熱交換器におけるスケール対策は、製造設備の安定稼働と効率的な運用において極めて重要な課題となっています。スケールの付着は熱交換効率の低下や設備の故障を引き起こし、多大な経済的損失をもたらす可能性があります。

本記事では、スケールの種類や形成メカニズム、付着により生じるリスク、そして効果的な除去対策について詳しく解説します。

熱交換器内に付着する「スケール」とは?

熱交換器に付着するスケールは、水中に溶けている無機塩類が析出した物質で、主にシリカ、カルシウム、マグネシウムなどから構成されています。スケールは非常に硬く、水に溶けにくい難溶性物質であり、熱交換器の性能を低下させる厄介な問題となっています。

日本の工業用水は特にスケールを生じさせやすい水質であるため、熱交換器のスケール障害が頻繁に発生しているのです。

スケールの種類と形成過程

スケールは主に以下の2種類に分類されます。

シリカスケール

冷却水中に溶解しているケイ素(シリカ)が、水温上昇や圧力変化などの環境変化により析出します。析出したケイ素は、水中のカルシウムやマグネシウムなどの金属イオンと化学反応を起こし、ケイ酸カルシウムやケイ酸マグネシウムなどの堅固な化合物を形成します。

一度形成されたシリカスケールは非常に硬く、除去が困難となるため、予防的な対策が重要です。また、高温環境下での形成が特に顕著であり、熱交換器や配管系統に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

カルシウムスケール

水中に溶解しているカルシウムイオンやマグネシウムイオンが、温度上昇や pH変動により溶解度が低下することで析出します。特に炭酸カルシウムの形態で析出することが多く、配管内壁に付着して徐々に堆積していきます。スケールの堆積は、配管径の縮小や熱伝導効率の低下を引き起こし、設備の性能低下や故障の原因となります。水の硬度が高い地域や、高温での使用環境下において形成されやすい特徴があります。

未然防止には、適切な水処理剤の使用や定期的なメンテナンスが効果的です。

熱交換器にスケールが発生する原因

熱交換器は、冷却水や温水、蒸気などの流体を介して熱を移動させる設備です。この流体中に含まれる無機成分が、温度変化や濃縮によって固体として析出し、伝熱面に付着したものがスケールです。

水質に起因する要因

工業用水や冷却水には、カルシウム、マグネシウム、シリカなどの溶存成分が含まれています。これらの成分は、水温の上昇や蒸発による濃縮が起こると溶解度が低下し、炭酸カルシウムや硫酸カルシウム、シリカなどの形で析出します。特に硬度の高い水を使用している場合や、循環水の濃縮倍率が高い場合は、スケールが発生しやすくなります。

温度条件による影響

熱交換器では、伝熱面付近で局所的に高温となる部分が生じます。この高温部では水の蒸発が促進され、溶存成分の濃度が急激に上昇するため、スケールが析出しやすい環境が形成されます。また、炭酸カルシウムのように温度上昇に伴って溶解度が低下する物質は、加熱側の伝熱面に付着しやすい傾向があります。

流速と滞留の影響

流体の流速が遅い箇所や、流れが滞留しやすい構造部分では、スケールが堆積しやすくなります。流速が低下すると、析出した微細なスケール粒子が伝熱面に沈着する時間が長くなり、付着・成長が進行します。熱交換器の設計上、流路が複雑な部分や、バッフル(邪魔板)周辺は特に注意が必要です。

熱交換器内にスケールが付着することによるリスク

熱交換器にスケールが付着すると、以下のような問題が発生します。

熱交換効率の低下 

スケールが熱交換器の伝熱面に付着すると、断熱層として機能し、熱伝導を妨げる原因となります。配管内の有効断面積が減少することで、熱交換に必要な水量の確保が困難になるのです。そのため、本来の性能を発揮できず、冷却や加熱に必要なエネルギー消費量が増加し、運転効率は大幅に低下することとなります。

さらに、設備の冷却不足による機器の過熱や、製品品質への悪影響なども考えられます。

水流の阻害

スケールの析出により配管内径が徐々に狭くなることで、設計時の想定よりも水の流れが制限される事態となります。流路の狭窄は水圧損失を引き起こし、循環ポンプへの負荷は著しく増大するのです。負荷増大によりポンプの消費電力が上昇し、最悪の場合、ポンプの故障や配管系統全体の機能不全に至る可能性も生じます。

また、流速低下により、さらなるスケール付着を促進する悪循環に陥る危険性も指摘されています。

メンテナンスコストの増加

スケール除去作業には、化学洗浄や物理的な清掃が必要となり、多大な労力と時間を要します。定期的な洗浄作業中は設備を停止する必要があり、生産性の低下は避けられません。また、強力な薬品による洗浄は、配管材質への悪影響も懸念されるため、より慎重な作業が求められます。

さらに、洗浄薬品の購入費、廃液処理費用、作業人件費など、様々なコストが発生することで、設備の維持管理費用を大幅に押し上げる結果となります。

配管内に堆積したスケールへの対処法

ここでは配管内に堆積したスケールへの対処法の代表例を3つご紹介します。

1. 配管そのものを交換してしまう

スケール除去を諦めて配管そのものを交換されるケースもあります。しかし、毎回配管を交換・廃棄するとコストがかかり、環境にも負荷がかかります。

2. スケールを物理的に削り取る

大きいものは、人力または機械で削り取ることもあります。しかし、複雑な形状の設備の場合はスケール除去が難しい場合があります。また、設備へのダメージや摩耗も懸念されます。

3. スケール除去剤を使用する

産業用途のスケール除去剤を活用することで、効果的にスケールを除去することができます。比較的迅速に除去できるため、設備のダウンタイムが少ないというメリットがあります。また、複雑な形状の設備のスケール除去にも適用可能です。

熱交換器の性能を維持するためのスケール除去対策

スケールの問題に対処するために、以下の方法が効果的です。

定期的な洗浄

強酸性の洗浄液を用いて、熱交換器内部に付着したスケールを化学的に溶解・除去する方法です。塩酸やスルファミン酸などの専用の洗浄剤を使用し、スケールを確実に除去します。配管材質への影響を考慮しながら、適切な濃度と洗浄時間を設定することが重要となります。

洗浄後は中和処理と十分なすすぎが必要であり、廃液の適切な処理も求められています。

電解式スケール除去装置

特殊な電極を用いて水中のスケール成分を電気化学的に処理する予防的な対策方法です。水中のカルシウムやマグネシウムイオンを強制的に析出させ、循環水中の濃度を低減させる仕組みとなっています。析出したスケール成分は装置内で捕集され、配管系統への付着を防止することが可能です。

設備の連続運転中でも稼働でき、化学薬品を使用しないため環境への負荷も少ない特徴があります。

自動洗浄装置

シェル&チューブ式熱交換器向けに開発された、自動でスケール除去を行うシステムです。特殊な洗浄ボールを伝熱管内に循環させることで、スケールの付着を物理的に防止する仕組みとなっています。運転中でも継続的な洗浄が可能であり、定期的な分解洗浄の頻度を大幅に削減することができます。

さらに、熱交換性能の低下を最小限に抑え、設備の安定稼働に寄与する効果も期待できます。

化学洗浄を行う際の注意点

化学洗浄は効果的なスケール除去方法ですが、適切に実施しないと設備を損傷させるリスクがあります。安全かつ効果的な洗浄を行うためには、いくつかの重要な注意点があります。

母材への影響を考慮した薬剤選定

スケール除去剤の選定においては、スケールへの溶解効果だけでなく、母材への影響を十分に考慮する必要があります。熱交換器には、炭素鋼、ステンレス鋼、銅合金など、さまざまな材質が使用されています。使用する薬剤によっては、これらの母材を腐食させ、孔食や減肉を引き起こす可能性があります。

特に、強酸を主成分とする洗浄剤は、スケール溶解力が高い反面、母材への攻撃性も強くなる傾向があります。洗浄剤の選定にあたっては、母材の材質を確認し、その材質に対する腐食性が低い製品を選ぶことが重要です。

洗浄条件の管理

化学洗浄の効果と安全性は、洗浄条件によって大きく左右されます。主な管理項目として、薬剤濃度、洗浄温度、洗浄時間、循環流速などがあります。

薬剤濃度が高すぎると母材への影響が大きくなり、低すぎるとスケール除去効果が不十分となります。洗浄温度についても同様で、高温にするほど反応速度は速くなりますが、母材への影響も大きくなります。これらの条件は、使用する薬剤のメーカーが推奨する範囲内で設定することが基本です。

洗浄後の処理

化学洗浄後は、薬剤の残留による腐食を防ぐため、十分な水洗(すすぎ)を行う必要があります。また、洗浄後の金属表面は活性化しており、そのままでは再腐食しやすい状態にあります。必要に応じて中和処理や防錆処理を実施し、設備を保護します。

洗浄に使用した廃液は、含有成分に応じた適切な処理が必要です。環境規制を遵守し、定められた方法で処理・廃棄を行います。

安全対策

化学洗浄作業では、薬剤の取り扱いに関する安全対策が不可欠です。作業者は適切な保護具(保護メガネ、手袋、保護衣など)を着用し、薬剤との直接接触を避けます。また、作業場所の換気を十分に行い、発生するガスや蒸気による健康被害を防止します。薬剤のSDS(安全データシート)を確認し、記載された取り扱い上の注意事項を遵守することが重要です。

この記事のまとめ

  1. 熱交換器のスケールは、水中の溶存成分が温度変化や濃縮によって析出・付着したもので、水質や温度条件、流速などが発生要因となる
  2. スケールは熱伝導率が低いため、付着すると伝熱性能が低下し、エネルギーコストの増加や設備トラブルの原因となる
  3. スケール除去方法には物理的方法と化学的方法があり、スケールの種類や設備構造に応じて選定する
  4. 化学洗浄は効果的だが、母材への影響を考慮した薬剤選定と適切な洗浄条件の管理が重要である
  5. 洗浄作業では安全対策を徹底し、洗浄後の処理や廃液の適正処理も忘れずに行う

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