外観検査において、目的の欠陥を撮像するためにはカメラの選定が重要です。今回は、製造業の多くで利用されている「ラインセンサカメラ」について、特徴や選び方のポイントをご紹介いたします。
このような方におすすめです
・ラインスキャンカメラの特徴や導入のメリットについて知りたい方
・ラインスキャンカメラとエリアラインカメラの違いについて知りたい方
・外観検査カメラに関連するおすすめ製品について知りたい方
ラインスキャンカメラは、対象物やカメラを移動させながら線状に撮影し、その結果を組み合わせて展開図のような画像を生成します。均一な照明を実現しやすく、表面の凹凸や不良を検知するのに適しています。
また、回転させて長い対象物を撮影することも可能で、特に繊維生地やフィルムなどの検査に向いています。
ラインスキャンカメラは、一列に並んだ多数のピクセルからなるイメージセンサーを用いて、一ライン分の画像取得を繰り返し、対象物がカメラの前を連続的に移動するか、またはカメラ自体が移動して対象物をスキャンすることで、センサーが取得した各ラインの画像データを連続的に組み合わせて全体の画像が生成されます。
高精度な画像を得るためには、カメラと対象物の移動が正確に同期することが重要で、エンコーダなどの同期装置がよく使用されます。取得したラインデータは、専用の画像処理ソフトウェアによってリアルタイムで処理され、欠陥の検出、寸法測定、パターン認識などの高度な解析が可能となります。
ラインスキャンカメラは、一列に並んだ多数のピクセルからなるイメージセンサーを用いることで非常に高い解像度の画像を取得することができます。エリアカメラと異なり、搬送方向への画素数を制限無く延長することができるため、より大きなピクセル数の多い画像を構成することが可能です。
対象物をラインごとにスキャンして画像を構成するため、広範囲にわたる撮影が可能であり、長い物体や広い面積を持つ対象物の全体像を一度に詳細に把握することができます。 例えば、紙や布のような連続した素材の検査や、道路や鉄道の長距離検査において、広範囲を高解像度で捉えることができます。
ラインスキャンカメラは、連続的に動く対象物をリアルタイムでスキャンし続けることができます。生産ラインやベルトコンベア上での検査作業において、途切れることなくデータを取得し続けることが可能です。
例えば、食品や飲料の生産ラインでの品質検査や、電子部品の製造過程における欠陥検出など、連続して動く対象物を正確に検査することが求められる環境で活用されます。
高速で移動する対象物に対しても、ラインスキャンカメラは迅速にスキャンを行い、鮮明な画像を取得することが可能です。生産速度が速い環境でも精度を損なうことなく検査や解析を行えます。
例えば、自動車の製造ラインや高速で流れる紙媒体の製造過程など、スピードと精度を両立させることが求められる際にその性能が発揮されます。
前述したラインカメラの特徴に関する詳細として、エリアカメラとの比較ポイントを解説します。
エリアカメラは、2次元のイメージセンサーを使用して一度に全体の画像を撮影します。対象物の静止画像を一瞬でキャプチャすることができるため、定位置での撮影や特定の瞬間を捉えるのに適しています。
一方、ラインカメラは1次元のイメージセンサーを用い、対象物をラインごとにスキャンして画像を構成します。連続して動く対象物の全体像を時間をかけてスキャンすることで得るため、動きのある対象物の連続的な撮像が可能です。
エリアカメラは、イメージセンサーの縦と横の画素数が固定となっているため、1つの画像における画素数を変更することはできません。そのため、解像度を上げることができない場合があります。
対して、ラインカメラは1ラインのみのイメージセンサーを搭載しているため、カメラを横に並べて取得画像を接続することが容易です。また搬送方向への接続制限が理論上ないため、1つの大きな画像を作成する場合において、画素数の制限が少ないといえます。半導体の検査や高精度の印刷物の品質管理など、細部まで正確に観察する必要がある場面で特に有効です。
エリアカメラは、一度の撮影で広範囲をカバーできるため、静止した対象物や一定のエリアを撮影するのに最適です。例えば、静止した部品の検査や固定されたシーンの全体像を捉える場合に有効です。
ラインカメラは、対象物が移動することでスキャンが進むため、連続的に広範囲を撮像することが得意です。ベルトコンベア上を流れる製品や、長い素材の全体を詳細に撮影する際に適しています。
エリアカメラは、撮影対象全体に均一な照明を必要とし、広い範囲を均一に照らす照明設計が重要となります。照明が不均一であると、画像の一部が暗くなったり、過度に明るくなったりする可能性があります。
ラインカメラの場合、スキャンするラインのみ均一に照明が当たればよいため、LEDバー照明がよく使用されます。エリアカメラの場合より照射方法の自由度が高くなりますが、照度は強いものが必要となります。
ラインスキャンカメラは、道路や建物の検査、工業製品の検査、美術品の解析、果物の選別など、幅広い分野で使用されています。
ラインスキャンカメラが適しているのは、大きな対象物や高精度の解像度が必要な場合、連続した長い対象物、立体的な外観を持つ対象物などです。たとえば、大きな対象物を撮影する場合、エリアスキャンカメラを使用することもできますが、複数の画像を組み合わせる必要があります。一方、ラインスキャンカメラを使用すると、1枚の画像として撮影できるため、画像を結合する手間が省けます。
適切なラインスキャンカメラを選ぶために検討すべきポイントとして「画素数」と「ラインレート」について解説します。
「画素数」とは、カメラの撮像素子に並んでいる画素の数を表す指標です。画素数が多いほど、より高精細な画像を撮影できます。
ただし、必要な画素数は撮影対象物の大きさや必要な精度によって異なり、過剰な画素数は処理に時間がかかるため、必要な精度を満たす画素数を選択することが重要です。
「ラインレート」とは、1秒間にスキャンできるライン数を示す指標です。ラインスキャンカメラは被写体をスキャンするか、あるいはカメラ自体を移動させて撮影する必要があり、この移動速度を「搬送速度」と呼びます。搬送速度とラインレートが適切でない場合、画像に伸び縮みが発生する可能性があるため注意が必要です。
日本エレクトロセンサリデバイス(NED)株式会社は、高品質なラインスキャンカメラを提供する専門メーカーです。同社のラインスキャンカメラには「Ryuganシリーズ」「CLISBee-Aシリーズ」「SUシリーズ」「RAINBOWシリーズ」の主要シリーズがあります。
これらのラインスキャンカメラは、高解像度、広範囲撮影、連続撮影、高速撮影などの特徴を活かし、工業用途や医療用途など、様々な分野で使用されています。
NEDは、ラインスキャンカメラ等の産業用カメラで取得された画像を処理して情報を得る「センシング技術」を実現するための、高機能な画像処理ソフトウェアプラットフォーム TECHVIEWも提供しています。
TECHVIEWは、「プログラミングスキルが無くともアプリケーションの修正や変更ができる」ことをコンセプトに開発された、製造現場の担当者でも簡易的に画像検査アプリケーションを開発することを可能にする製品です。
主な特徴 |
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グラフィカルなユーザーインターフェースを採用し、直感的な操作が可能 |
様々な画像処理機能をノードとして提供し、それらを組み合わせてアプリケーションを構築可能 |
カメラ制御からデータ出力まで、画像処理システム全体を一元管理 |
ラインスキャンカメラは、高解像度、広範囲撮影、連続撮影、高速撮影という特徴を持ち、製造業や品質管理の分野で広く活用されています。エリアカメラと比較すると、撮像方式、解像度、撮像範囲、照明の点で異なる特性を持っており、連続的に動く対象物や長尺の製品の検査に特に適しています。
ラインスキャンカメラの技術は日々進化しており、今後さらに高性能化や用途の拡大が期待されます。製造プロセスの品質向上や効率化を目指す企業にとって、ラインスキャンカメラは非常に有用なツールとなるでしょう。導入を検討される際は、専門家のアドバイスも参考にしながら、自社のニーズに最適なものを選択することをおすすめします。