目視検査は、長らく行われている重要な外観検査の手法ですが、近年の社会問題や市場ニーズの変化を背景に、多くの課題に直面しています。
本記事は、それらの課題の解決策の一つとして、データ精度に徹底的にこだわったAI外観検査、Roxy AIをご紹介します。
目視検査とは、製造現場における外観検査の手法です。顕微鏡等を用い、人間の目視で製品や部品の外観を観察し、傷・欠陥・汚れ・異物・歪み等の不良の有無を判定します。
不良品の市場への流出を避けるためには、メーカーにとっては欠かすことのできない重要な工程です。しかし、人間が作業を行う以上、ヒューマンエラーを完全に取り除くことはできません。また、少子高齢化問題を背景にした人材確保も深刻な問題となっており、目視による外観検査に課題を抱えている製造現場は数多くあります。
目視による外観検査の場合、検査員の習熟度に依存する要素が大きく、検査精度にバラつきが生まれやすくなります。また、検査員のその日の体調や集中力など、様々な要因が検査精度に影響を与えてしまいます。加えて、目視による不良の検知には限界があります。僅かな傷や汚れなど、人間の視力では検知が困難な検査を行うことは物理的に不可能です。
熟練した技術を要する検査員を育成するには、それなりの時間とコストが必要です。しかし、育成に時間をかけすぎると、生産効率を下げてしまう恐れもあるため、育成と生産性バランスに常に頭を悩ませている製造現場も少なくありません。
また、必要な人数の検査員を確保するには、採用にかかる負担も軽視できません。急な欠員にも対応をしなければならないため、目視検査は、採用・育成コストが常に発生します。
人が検査を行う場合、検査対象物を一つ一つ観察する必要があるため、その分検査に時間を要します。検査効率の向上は企業にとっては重要な要素であり、検査時間を大幅に短縮することができれば、生産量の増加、ひいては利益の向上に大きく貢献することができます。
しかし、人による目視検査の場合、大幅な効率向上を期待することは難しいのが実情です。
たとえば、円筒状の部品や微細な部品などは、その密度や立体的な特性から、視覚的な目視検査が難しいことがあります。人による検査は通常、容易に目視できる部分に限定されるため、このようなケースの検査には、機械によるアプローチが採用されることが多くなっています。
目視検査は大きな設備投資も不要で、手軽に実施できる一方で、前述のように、経験豊かな人材の確保という採用・育成面において、課題に直面しているケースが多くあります。
少子高齢化が進んでいる日本では特に、経験豊富な熟練検査員が減少し、若手も育てにくいという状況が顕著となっています。
このような社会的問題に加え、近年のものづくり産業においては、部品や製品の小型化が進み、市場で要求される品質レベルも高くなっています。さらに、多様化するユーザーニーズに応えるべく、多品種生産の増加や製品サイクルの短期化といった傾向も背景に、検査にかかる製造現場の負担はさらに大きくなっており、検査工程は、生産プロセスにおけるボトルネックとなっているという声も多く聞かれます。
そこで多くの企業が導入、もしくは導入を模索しているのが、外観検査の自動化です。
画像処理技術とは、取得した画像データをもとに、画像補正・変換などの加工、解析、情報(特徴)の抽出などを行い、一定条件に当てはまるパターンへの分類を行ったり、他のデータとの比較を行う技術です。
この技術を用いることで、人の目視では見逃してしまうような微細な欠陥も検出することが可能となり、目視検査に比べて、より高速で、より正確な検査を実現することができます。
特に近年は、画像認識AIの目覚ましい進化もあり、大きな注目を浴びています。
AIの活用により、これまでの技術では難しかった様々な外観検査の自動化を実現可能になりました。例えば下記のような検査を実現可能です。
複雑な形状を持つ製品の検査 | アルミダイカスト製品など、複雑な形状の製品の検査に対応可能です。 |
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個体差のある製品の検査 | 食品や鋳造製品の表面など、良品の中でも形状や質感の多様性がある製品でも検査可能です。 |
多品種の製品の検査 | 学習内容を応用することで、異なる品種の製品の検査にも対応できます。 |
Roxy AIは、高速かつ高精度な外観検査を可能にするAI外観検査ソリューションです。じっくり見ても見つけることが難しい不良・異物でも、Roxy AIなら素早く検出できます。
Roxy AIは、自動車部品や、食料品、電子機器など様々な製品の外観検査に適用されています。
目視検査を自動化することで、大きく3つのメリットがあります。
生産量の維持・増加は、製造現場における重要な命題ですが、そのためには検査工程の最適化も重要な要素です。実際、これ以上検査にリソースを割くことができないことが理由で、生産量を増やせない製造現場も数多くあります。しかし、目視検査からAIを用いた検査へと移行することができれば、検査工程の自動化を実現することができます。これは、検査工程の効率化、ひいては製造現場全体の生産効率の向上にも繋がります。
また、製造品質という点においても、問題発生時の振り返りで必要なエビデンスの蓄積をはじめ、製造直後の不良検出が可能になるため、不良を後工程に送るリスクを限りなく低減できるというメリットがあります。したがって、AIを活用した外観検査の導入は、稼働率の向上、生産スループット向上に大きく貢献します。
検査を行う各作業者の習熟度に差があることも、製造現場が抱える課題のひとつです。しかし、AIによる外観検査を導入すれば、あらかじめ設定した基準に基づいて良否の自動判定が可能になり、検査品質が安定し、均一化することができます。
高精度のAIは、人間では認識が難しい微細な欠陥でも、容易に検出ができるようになり、目視では100%排除することの不可能なヒューマンエラーの削減も可能となり、検査精度の向上が期待できます。また、検査におけるキャパシティという点においても、抜き取り検査から全数検査も可能となり、いわゆる「ジャパンクオリティ」の、海外への展開も実現可能です。
AI外観検査の導入には検査機やAIソフトウェアなどの初期投資が必要です。
しかし、その後は配置する作業員を見直せるため、検査コストの削減が期待できます。また、急な欠員に伴うスタッフ採用の苦労からも解放されると同時に、作業員を単純作業からより付加価値の高い業務へと、リソースの再配分が可能となります。
少子高齢化が大きな懸念となっている昨今、近い将来確実にやってくる労働力不足への備えともなります。