光学薄膜 | 技術特性や薄膜の種類・加工事例の紹介
薄膜技術は現代の産業に不可欠であり、食品包装から人工衛星まで、さまざまな分野で幅広く活用されています。薄膜の中でも、光学製品や光学部品に用いられ、光の波長、強度、偏光などを制御するための技術が光学薄膜です。光学薄膜の本格的な利用は1950年代に始まり、現代に至るまで進化し続けています。
光学薄膜とは?
ユニークな光学特性を持つ薄膜
光学薄膜は、光学部品の表面に蒸着され、光の反射や透過を制御します。膜の厚みや材料、層数を調整することで、干渉条件をコントロールし、ユニークな光学特性を得ることができます。

3つの効果
光学薄膜は、ガラス表面に光の波長よりも薄い膜を付着させることで、光の挙動を変化させる技術です。この技術を用いることで、光の干渉作用を利用し、反射の削減や逆に増加などが可能となり、反射防止・色調調整・光学フィルターの効果が得られます。

反射防止効果
光学薄膜を導入することで、光の反射を低減させることができます。具体的な例として、スマートフォンの画面に応用される薄膜技術が挙げられます。この技術により反射が抑制され、画面の視認性が向上しています。

色調調整効果
光学薄膜を活用することで、光の波長による色調の調整が実現します。 例えば、サングラスに採用される薄膜技術は、光の強度を微調整することで、眩しさを軽減する効果があります。

光学フィルター効果
光学薄膜を応用することで、特定の波長の光を通過させたり、遮断したりすることが可能です。たとえば、カメラのレンズに組み込まれた薄膜技術は、特定の波長の光を遮断することで、色の再現性を向上させる効果があります。

光学薄膜の加工方法
真空蒸着
真空蒸着は、蒸着材料を真空中で加熱し、蒸発させた蒸気を基板に付着させることで薄膜を形成する技術です。電子ビームや抵抗線加熱を用いるこのプロセスは、高い成膜速度が得られ、乖離しやすい物質にも対応可能です。古典的な手法でありながら、材料選択の幅が広く、多様な製品に応用されています。

イオンプレーティング法
イオンプレーティング法は、蒸発粒子をプラズマ中に通過させて基板に付着させる成膜技術で、蒸着粒子の一部がイオン化されます。導入ガスプラズマによるスパッタリング効果も得られるため、優れた物理的特性を持つ薄膜が形成されます。この手法は、高い耐久性や密着性を持つ薄膜を作り出し、幅広い用途で有用とされていま

イオンビームスパッタ
イオンビームスパッタは、イオンガン(スパッタ源)を備えており、アルゴンガスに高周波(13.56MHz)をかけてガスをプラズマ状態にします。プラズマから電圧をかけた格子状のグリッドによって引き出されたアルゴンイオンが、ターゲット物質に強く衝突して膜材料をスパッタします。

プラズマCVD
基板表面で原料気体が分解されたり分子間の化学反応が促進され、その結果として薄膜が析出します。プラズマCVD法はCVD法の一種で、原料ガスをプラズマ分解して活性なラジカルやイオンに変換し、これを用いて薄膜を形成します。

光学薄膜の種類
バンドパスフィルター
バンドパスフィルターは、電子工学や信号処理の分野で広く使用される重要な要素です。特定の周波数帯域の信号を通過させ、それ以外を遮断する機能を持ち、通信システムから医療機器まで多岐にわたる応用があります。

ダイクロイックミラー /フィルター
異なる屈折率を持つ誘電体薄膜を多層コーティングすることで、光の干渉を利用し、特定の波長で光を透過または反射させることが可能です。層数は数層から数百層まで調整可能で、基板の形状も多様に対応できます。

ノッチフィルター
特定波長の光のみを減衰させ、それ以外の波長を透過させる光学フィルターです。光学系から不要な光を効果的に排除します。単一波長から複数波長まで対応し、紫外、可視、赤外の波長域を選択可能です。

DLCコーティング
DLCコーティングによる高耐久性の赤外反射防止膜は、赤外領域で高い透過性と優れた耐環境性・耐摩耗性を提供します。シリコンやゲルマニウムにも効果的にコーティング可能で、独自のプラズマCVD法により高透過率と耐久性を両立しています。

金属膜コーティング
金、銀、アルミなどの金属膜を各種基板へコートします。 赤外線イメージセンサーを高感度に保つ為に必要な真空封止に適したハンダ付け用のメタライズ加工も可能です。

反射防止膜(ARコート)
ARコーティングは、基板表面に誘電体薄膜を形成し、光の干渉作用で反射を低減させる技術です。これにより、透過率を向上させ、映り込みやゴーストを防ぎます。光学デバイス、レンズ、カメラ、ディスプレイなどで使用されます。

リニアバリアブルフィルター
LVFは、ガラス基板上に線形に変化する膜厚をコーティングし、複数の波長を連続的に透過させるフィルターです。入射光の位置を変えることで透過スペクトルが調整可能で、バンドパス、ロングパス、ショートパスフィルターが製作可能です。サイズは自由に設定でき、高密度な金属酸化膜により高い耐久性を持ちます。

赤外域用フィルター
近赤外線(0.7~3.0μm)、中間赤外線(3.0~8.0μm)、遠赤外線(8.0~15μm)で使用されるフィルターの製作が可能です。

ビーム・スプリッタ―
光学部品として、任意の比率で透過光と反射光を分離することができる製品があります。入射光からp偏光とs偏光を分離する(PBS:偏光ビームスプリッター)タイプや、偏光依存性が少ないタイプ(N-PBS:無偏光ビームスプリッター)などが製作可能です。

コールドミラー・フィルター
熱を含む波長を透過または反射させ、除去するためのフィルターです。このフィルターは、誘電体多層膜を使用しており、耐熱性や耐候性に優れています。楕円鏡や他のリフレクター基板へのコーティングも可能です。

NDフィルター
NDフィルターは、特定波長帯域で透過率を一定に制御するフィルターで、金属膜や誘電体多層膜で製作可能です。紫外線から赤外線まで対応し、カメラやセンサーの感度補正に使用されます。平坦な透過率スペクトルを提供し、反射型、吸収型、無反射型が選べます。

日本真空の光学薄膜
歴史
1946年の創業以来、日本真空光学は薄膜設計技術、コーティング技術、プロセス制御技術の三本柱で技術の最先端を切り拓いてきました。光学薄膜の専門メーカーとして、UVからIRにわたる広範な波長領域で医療、計測、映像、露光など多様な分野に対応し、一貫して業界の先頭を走り続けています。

対応領域
紫外領域から赤外領域まで、当社はワンストップで対応可能です。この広範な波長帯域のカバレッジにより、半導体の製造装置や検査装置から赤外線カメラまで、多岐にわたるアプリケーションにおいて優れたサービス提供が実現でき、さらにコストとスピードの面でも優位性を持っています。

高い耐久性
業界トップレベルの高いレーザー耐性を持つ日本真空光学は、特にレーザーミラーや光学フィルターの製作に優れた製品を提供しています。高いレーザー損傷閾値を誇るHRコート(高反射膜)やARコート(反射防止膜)は、厳しい環境でも信頼性が高く、耐久性に優れています。

光学薄膜の事例
「はやぶさ2」搭載 赤外線ディテクタ
当社の製造した赤外線ディテクタ用光学ウインドウが、小型着陸機「MASCOT」に搭載され、小惑星リュウグウの科学的観測に貢献しました。この光学ウインドウは、熱サイクルに対する耐久性とブロードバンドでの反射率抑制により、リュウグウ表面の撮像に寄与し、はやぶさ2のミッションに成功裏に参加しました。

高出力レーザー用ミラー・ARコーティング
高いレーザー耐性が求められる中、最適な成膜物質と成膜プロセスの選定、薄膜設計を行い、その結果、レーザー損傷閾値データベース化試験において常にトップクラスの評価を受けています。今後も高耐力レーザーミラー・ARコーティングの開発に注力し、レーザー技術の発展に寄与していきます。

すばる望遠鏡 Hyper Suprime-Cam
すばる望遠鏡のHyper Suprime-Cam(HSC)用に直径600mmの大口径赤外線フィルタを製作しました。日本真空光学は、高精度なフィルタ提供において成膜技術の高度なスキルを展開し、天文学や研究分野に貢献しています。

レンズ曲面へ特性ムラを抑えたコート技術
曲率およびサイズが大きなレンズに対する反射防止膜コーティング技術を開発しました。この技術は宇宙観測用途にも応用されており、産業用途においては精密描画システムや露光装置などでのレンズコーティングにおいて有用です。

半導体製造装置用フィルター・ミラーコーティング
半導体製造装置や液晶・OLED用のフィルター・ミラーを製造し、高耐久性の膜質を実現しています。成膜プロセスを最適化し、紫外線光源の使用増加に対応しています。

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