光学顕微鏡と電子顕微鏡は、物質を観察するための顕微鏡でありながら、その観察原理や使用される光や電子の性質が大きく異なります。光学顕微鏡では可視光線を用いて物質を観察するのに対し、電子顕微鏡では電子線を用いて物質を観察します。
そこで今回は、電子顕微鏡の概要・使用用途・代表的な種類についてご紹介いたします。電子顕微鏡関連のおすすめ製品についても併せて紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ポイント
・電子顕微鏡は約100万倍までの拡大により分子や原子レベルの観察が可能
・電子顕微表の代表的な種類は「透過型」と「走査型」
・電子顕微鏡に関連するおすすめ製品をご紹介
顕微鏡は一般的に光学顕微鏡のことを表します。そして、顕微鏡の性能を考えるうえで欠かせないのが「分解能」についてです。
光学顕微鏡の分解能は、物体の微小な構造を識別できる最小距離を表し、波長・媒質の屈折率・対物レンズと物体の間の角度によって決定されます。
ホプキンスの分解能式は、「δ=kλ/nsinθ」と表されます。ここで、δは最小識別距離、kは係数(通常0.5)、λは光の波長、nは媒質の屈折率、θは物体と対物レンズの間の角度(開口角)を表します。
一般的に人間が見ることができる可視光線の波長は、約400nmから700nmの範囲にあります。光学顕微鏡の最小分解能を計算するために、ホプキンスの分解能式を用いると、液浸オイルの屈折率1.515、最大角度72°、波長550nmを代入すると、約190nmです。
光学顕微鏡は、この最小分解能の範囲内でしか微小な構造を識別することができません。拡大倍率を上げても、分解能以上の微細な像は映し出すことができず、分解能を超えた拡大をすることを無効倍率と言います。
したがって、光学顕微鏡は、可視光線の波長範囲内での最小分解能が限界であり、それを超えた微細な構造の観察には、より高度な顕微鏡技術が必要となります。
光学顕微鏡では、約0.2μm程度が最小分解能限界であり、分子や原子レベルの観察は不可能です。そこで、光より波長の短い電子線を用いた電子顕微鏡が開発されました。電子顕微鏡は、約100万倍までの拡大が可能であり、分子や原子レベルの観察が可能です。
電子顕微鏡も光学顕微鏡と同様にレンズを使っていますが、ガラスの代わりに電子レンズが用いられています。電子レンズは電磁石でできており、磁界を利用してマイナスの電気を帯びた電子を曲げます。電子は直接見ることができないため、通り抜けた電子を蛍光板に当て、光った像を観察することが可能です。電子顕微鏡の内部は真空になっており、電子の動きを空気中の分子に邪魔されません。
電子顕微鏡は、様々な分野で活躍しています。例えば、金属部品の破面解析によって原因を調べたり、加工表面を観察することで品質チェックを行うことが可能です。また、高分子ポリマーのネットワークを観察して器械的特性を調べたり、不純物の混入を評価することもできます。
その他、工業分野のみならず様々な分野でも電子顕微鏡は活用されています。特に生物学の領域では電子顕微鏡が多大な影響を与えたことは広く知られており、ウイルスの発見や細胞小器官の構造解明など、得られた成果は非常に重要なものです。ちなみに生物学の分野で、電子顕微鏡によって観察可能な微細な構造のことを「超微細構造(Ultrastructure)」と呼びます。
電子顕微鏡には多くの方がありますが、一般的に電子顕微鏡と呼ばれるものは「透過型」か「走査型」かに分類されます。
透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)は非常に広い倍率をカバーすることのできる電子顕微鏡で、数100倍〜数100万倍の範囲で拡大することが可能です。
小さな倍率下では数10μmの細胞全体の様子を観察でき、大きな倍率下では1nm以下の原子配列まで観察することができるという優れた性能を持っています。つまり、TEMは細胞全体(数μm)の観察から原子配列(0.1nm程度)まで観察することができるのです。
走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)は、光学顕微鏡では見ることができない微細な表面構造を鮮明に観察することができます。SEMはTEMと同様に電子を使用して試料の拡大像を観察しますが、電子の波長が短いため、より小さなものまで観察できるのです。
分解能はSEMで0.5~4nm、TEMで0.1~0.3nmほど。SEMの分解能がTEMに比べて低い理由は、SEMで使用される電子の加速電圧が低いため電子の波長が長くなることと、磁界レンズの特性の違いに由来します。
製品名 | 特徴 |
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ピエゾXYステージ QGNPS-XY-100D | 強力なアルゴリズムと静電容量センサーを搭載する、業界で最も優れた性能を持つピエゾステージです |
ピエゾZステージ SP400 | 精密且つ高速駆動で、生産性の高い光学観察・光学測定のお役に立つピエゾZステージです |
狭小領域膜厚測定器「FR-μProbe」 | エッチングなどパターニング形成後の微小・微細なエリアをピンポイントで膜厚測定 |
顕微鏡カメラ Flexacam C3 | パソコン不要でライブ像観察、画像取得から、測定、注釈、オーバーレイ、ネットワーク設定まで可能です |
QGNPS-XY-100Dは、静電容量センサーと独自のフレクシャーガイドを搭載し、強力なアルゴリズムを持つコントローラからの制御により、業界で最も優れた性能を持つステージです。
動作範囲100 x 100ミクロン、分解能140ピコ、0.5ナノの繰り返し精度、4.0ミリ秒の収束時間を持ちます。最大780Hzの共振周波数は、超高速駆動を実現します。光学顕微鏡、電子顕微鏡の他、様々な分光ソリューションに最適なステージです。
SP400は、分解能0.7ナノ、繰り返し精度4ナノ、移動から目標値+/-5%到達までの収束時間はわずか7ミリ秒など、高精度と高速駆動を両立したピエゾZステージです。生産性の高い高速での観察が可能になります。プライアーの倒立顕微鏡用ステージH117シリーズに直接取り付けの他、主要顕微鏡メーカー様の倒立顕微鏡用ステージに取り付けるアダプタをご用意しております。
光学顕微鏡観察、光学測定など、様々な分光ソリューションに最適なステージです。対物レンズを上下させるOP400のご用意もございます。OP400は、正立・倒立いずれの顕微鏡でもお使いいただけます。
光学顕微鏡にFR-μProbe膜厚測定器を取り付けたシステムです。
発光ダイオード、フォトダイオードアレイなど、エッチング処理後の膜厚測定に顕微鏡の対物レンズを使用することで測定スポット径を小さくした膜厚測定が可能です。モニターを使って位置指定で測定することができるため、極小エリアでもストレスのない測定を実現できます。
Flexacam C3顕微鏡カメラは、画像の取得・記録・共有を簡単、短時間にできます。パソコン不要で、ご利用の顕微鏡をデジタル顕微鏡にも変身させることも出来ます。高い色再現性でサンプルを正確に映し出し、正確な判断をサポートします。
1200万画素CMOSセンサーとハイダイナミックレンジ、パワフルな画像処理エンジンにより、高い色再現性と高精細像で鮮明な画像を取得できます。高速ライブ画像表示でストレスなくチームメンバーとリアルタイムで画像共有、ディスカッションでき、サンプルの細部を効率的に検証できます。
今回は電子顕微鏡についてご紹介しました。光学顕微鏡との違いについて、分解能について、電子顕微鏡の用途について、そして、電子顕微鏡の種類として「透過型電子顕微鏡」「走査型電子顕微鏡」について、それぞれご紹介しています。
evortでは、電子顕微鏡に関連するおすすめ製品を掲載しています。ぜひ一度、ご覧になってみてください。