高精度デジタル圧力計・測定器は、産業界や研究分野で不可欠な計測機器です。従来のアナログ式と比べ、高い精度と使いやすさを兼ね備え、多様な用途に対応します。
本記事では、圧力計の基本から高精度デジタル圧力計の特徴、用途、選び方まで詳しく解説します。
圧力計・圧力測定器は、液体や気体の圧力を測定するための計測機器です。様々な産業の安全性の確保や品質管理において重要な役割を果たしています。
適切な圧力計を選択し、正しく使用することで、様々なシステムや製品の信頼性を高めることができます。
ブルドン管圧力計は、最も一般的な圧力計です。C形、スパイラル、ヘリカルなどの形状の金属パイプを使用し、圧力による変形を指針の動きに変換して圧力を表示します。シンプルで頑丈な構造のため、耐久性が高く、長期間安定した性能を提供します。
ダイアフラム圧力計は、弾性のある円板状の受圧素子(ダイアフラム)を使用します。圧力によるダイアフラムの変形を電気信号に変換して圧力を測定します。この方式は高精度な測定が可能で、特に低圧力の計測に適しています。
ベローズ圧力計は、蛇腹状の金属を使用して圧力を測定します。圧力の変化によってベローズが伸縮し、その動きを機械的に増幅して圧力を表示します。比較的大きな変位が得られるため、微小圧力の測定に適しており、差圧計としても広く使用されています。
液柱圧力計は、液体の高さの変化を利用して圧力を測定します。U字管やマノメーターとも呼ばれ、簡単な構造で正確な測定が可能です。主に低圧力の測定に使用され、教育現場や研究室でよく見られます。大気圧との差圧を直接観察できるため、理解しやすい測定方法として知られています。
高精度デジタル圧力計は、多くの製品が±0.25%F.S.(フルスケール)以下の高精度を実現しています。この精度は測定範囲全体の0.25%以内の誤差しか生じないことを意味し、非常に正確な測定が可能です。
さらに、最高峰の製品では±0.01%という超高精度を達成しているものもあり、科学研究や高度な工業プロセスなど、極めて厳密な測定が要求される場面で重宝されています。
従来のアナログ式圧力計と比較して、デジタル表示を採用することで読み取りやすさが大幅に向上しています。数値が直接表示されるため、測定値の読み間違いを防ぎ、迅速かつ正確な計測が可能になります。
また、多くの製品ではバックライト付きの大型液晶ディスプレイを採用しており、暗所や屋外でも容易に読み取ることができます。
高精度デジタル圧力計は、液体や気体など、さまざまな媒体の圧力測定に対応しています。例えば、水や油などの液体、空気や窒素などの気体、さらには蒸気などの測定も可能です。
そのため、産業用途から研究開発まで、幅広い分野で活用することができます。
一部の製品では高い防塵・防水性能(IP67など)を備えています。IP67は、完全防塵性能と一時的な水没に耐える防水性能を示しており、過酷な環境下での使用も可能です。そのため、屋外や工場など、ほこりや水しぶきにさらされる環境でも安心して使用することができます。
また、一部の製品では耐衝撃性や耐振動性も強化されており、さまざまな現場での使用に適しています。
高精度デジタル圧力計・測定器は、その精度と信頼性によって、様々な産業分野や研究領域で重要な役割を果たしています。
研究開発の現場では、実験データの正確性が極めて重要です。高精度デジタル圧力計は、新製品開発や材料研究などにおいて、微小な圧力変化を正確に捉えることができます。例えば、新しい流体力学の理論検証や、微細な圧力変化を伴う化学反応の観察などに利用されます。
また、品質管理においては、製品の性能や安全性を確保するために精密な圧力測定が必要です。自動車部品や医療機器など、高い品質基準が要求される製品の検査に活用されており、製品の信頼性向上に貢献しています。
製造業や化学工業などの分野では、プロセス内の圧力を正確に監視し、制御することが生産効率と製品品質の維持に不可欠です。高精度デジタル圧力計は、リアルタイムで正確な圧力データを提供し、必要に応じて自動制御システムと連携することで、プロセスの最適化を実現します。
例えば、石油精製プラントでは、各工程の圧力を厳密に管理することで、製品の品質を一定に保ち、安全性を確保しています。また、食品製造業では、殺菌プロセスにおける圧力管理に利用され、食品の安全性と品質を確保しています。
高精度デジタル圧力計は、その高い精度から、他の圧力計や測定器を校正するための標準器として使用されます。計測器の校正は、測定の信頼性を維持するために定期的に行われる重要な作業です。
計測器メーカーでは、これらの高精度機器を用いて、様々な圧力計や圧力センサーの精度を確認し、必要に応じて調整を行います。
建物の空調設備や産業用冷凍システムの効率的な運転と長寿命化には、適切な圧力管理が欠かせません。高精度デジタル圧力計は、これらのシステムの定期点検や故障診断に使用されます。
例えば、冷媒の圧力を正確に測定することで、システムの効率低下や潜在的な問題を早期に発見できます。また、大規模な冷凍倉庫や食品加工工場では、温度と圧力の精密な管理が製品の品質保持に直結するため、高精度な測定器の使用が不可欠です。
高精度圧力計を選ぶ際には、以下のポイントを考慮することが重要です。
精度 | 高精度:高精度な計測を求めてる場合は一般的に±0.25%F.S.以下の精度を持つものを選びます。用途によっては、さらに高い精度(例:±0.03%FS)が必要な場合もあります。 長期安定性:圧力計は一般的に使用年数が経つにつれて精度が低下する傾向がありますが、校正の頻度を最小限に抑えつつ、長期間にわたって高い精度を維持できる製品を選ぶことが重要です。 |
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機能性 | 高分解能表示:より細かい圧力変化を捉えるために、高分解能の表示機能を持つ製品を選ぶと便利です。 統計処理機能:連続測定データの最大値、最小値、平均値、標準偏差などを表示できる機能は、測定の信頼性向上に役立ちます。 |
環境適応性 | 防塵・防水性能:使用環境に応じて、高い防塵・防水性能(例:IP67)を持つ製品を選びます。 温度補償:温度変化の影響を受けにくい製品を選ぶことで、より安定した測定が可能になります。 |
使用の容易さ | 電池駆動:携帯性や現場での使用を考慮する場合、電池式の製品が便利です。 多様な圧力単位:複数の圧力単位を選択できる製品は、様々な用途に対応できます。 |
その他の考慮点 | 測定対象:液体や気体など、測定対象に適した製品を選ぶ必要があります。 校正サービス:JCSS校正証明書の発行が可能な製品を選ぶことで、トレーサビリティを確保できます。 外部機器との連携:必要に応じて、データ出力機能やコンパレータ機能を持つ製品を選ぶと効率化を図れます。 |
圧力計の精度を表現する際、フルスケール精度とリーディング精度という2つの主要な方法があります。これらの違いを理解することは、圧力計の選択や使用において重要です。
フルスケール精度は、圧力計の測定可能な最大値(フルスケール)に対する誤差の割合を示します。
表記例
±1%FS、±2%F.S.、±3% of full scale
特徴
測定範囲の最大値を基準にしている
低い圧力を測定する際、リーディング精度と比較して相対的に誤差が大きくなる
リーディング精度は、実際の測定値(読み値)に対する誤差の割合を示します。
表記例
±1%rdg、±2% of reading
特徴
測定値に依存して比例的に変化する
ディジタル圧力計「MT300」は、横河計測株式会社が開発した高性能な圧力測定器です。高精度と長期安定性能により、様々な産業分野での圧力計測ニーズに応えることができます。
主な特徴 |
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高精度・長期安定性 横河独自開発のシリコンレゾナントセンサを採用し、リーディング精度ベースによる0.01%の高い測定確度を実現しています。また、長年にわたって蓄積した測定データに裏付けられた長期安定性能も高く評価されています。 |
豊富なラインアップ 3モデル、9レンジをラインアップしており、用途に応じて最適なモデルとレンジを選択できます。 |
多様な圧力測定ニーズに対応 ゲージ圧、差圧、絶対圧の各モデルがあり、様々な圧力計測ニーズに対応しています。 |