外壁塗装の厚み測定や自動車の生産ライン、橋梁点検、プラントなどの修理・点検など、多岐にわたる用途で利用されている膜厚計。さまざまなタイプの膜厚計が存在しますが、各種類によって測定原理が異なるため、用途に適した膜厚計を選択することが重要です。
そこで今回は、膜厚計の種類やそれぞれの測定原理・特徴についてご紹介します。膜厚計に関連するおすすめ製品もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
このような方におすすめです
・膜厚計の概要や測定原理について知りたい方
・代表的な膜厚計の種類と各特徴について詳しく知りたい方
・膜厚計に関連するおすすめ製品を知りたい方
膜厚計は、塗膜やフィルムなどの薄い膜の厚さを測定するための装置です。ペンキやワックスコーティング、メガネのコーティング、食品包装フィルムなど、私たちの身近なものに使用されています。これらの膜は極めて薄く、通常の定規では測定できません。
塗る」や「コーティングする」作業に関わる方なら、膜の厚さについて気にされたことがあるかもしれません。膜厚は用途によって適正な厚さが求められ、製品の機能性や品質を確認するために重要です。特に産業界では、膜厚の適正確認や無駄な塗装を避けるための測定が行われています。
膜厚測定にはさまざまな測定器や手法が存在します。ただし、1つの方法ですべての種類の膜を測定することは難しく、膜の種類や厚さに応じて最適な測定器や手法を選ぶことが一般的です。
前述の通り、膜厚測定にはさまざまな種類があるため、用途に適した測定原理のものを選ぶ必要があります。
磁石を引っ張る力、すなわち磁束密度を計測して膜の厚さを算出します。
塗膜が薄い場合、プローブと基材の距離が短くなるため、磁石の引っ張る力(磁束密度)が増します。逆に、塗膜が厚い場合、プローブと基材の距離が長くなるため、磁石の引っ張る力(磁束密度)は減少します。そのため、磁石の引っ張る力は、プローブから基材までの距離に比例する特性を持ち、この性質を利用して膜の厚さを算出します。
ただし、塗膜が磁性を持つ場合は、この方法は適用できないことに留意が必要です。
コイルを内包したプローブを接触させ、電流を流したときに生じる渦状の電流を計測することで、膜の厚さを測定します。
・膜が薄い場合、プローブと基材の距離が近いため、金属面上の渦電流の振幅が大きくなります。
・膜が厚い場合、プローブと基材の距離が遠いため、その振幅は小さくなります。
この渦電流の振幅は、基材までの距離に比例する性質を持ち、これを利用して膜の厚さを算出します。
渦流式膜厚計は、渦電流の振幅を用いて膜厚を測定する「接触式」と、渦電流の位相差を利用して膜厚を計測する「非接触式」の2つに区分されます。ただし、使用する膜が電気を通さない絶縁性被膜であることが、渦流式膜厚計を適用する際の前提条件です。
「測定対象にプローブを触れさせ、センサーから発せられた超音波が基材に反射し、戻ってくるまでの時間から膜の厚さを推定します。
超音波膜厚計による膜の厚さは、以下の式で算出されます。
D = 1/2 × C × t
ここで、Dは膜の厚さ(m)、Cは測定対象の音速(m/s)、tは超音波が測定対象を往復する時間(s)を示します。
測定対象の材料によって音速が異なることがあります。また、同じ材料であっても異なるバリエーションによって音速に違いが出ることがあります。そのため、超音波膜厚計を使用する場合には、実際の測定対象に合わせた調整(キャリブレーション)が必要です。
光干渉を活用した膜厚計です。被測定物に光を照射すると、薄い膜の表面と裏面で光が反射します。これらの反射光には位相差が生じ、薄膜の厚さによってこの位相差が変化します。波は同じ位相で重なると増幅され、逆の位相で重なると減衰する性質を持っているため、この干渉パターンの違いを測定することで膜の厚さを推定します。
赤外線を利用した膜厚計は、測定対象が赤外線を吸収する特性を利用しています。測定対象に赤外線を照射すると、その素材と厚さによって特定の波長の赤外線が吸収されることがあります。この特性を利用して、透過光や反射光の分光スペクトルから膜厚を推定します。
測定対象素材の吸収率と膜厚の関係を予め知っている場合、得られたスペクトルを解析して膜の厚さを計測することが可能です。
膜厚計の種類には測定方法の違いがあります。これにより、金属に塗られた塗料の厚さを測定する装置や、非金属に塗られた塗料の厚さを測定する装置など、使用環境に合わせて異なる膜厚計が存在します。
そのため、必要な環境に合った膜厚計の種類を選定することが重要です。
膜厚計の選択は、持ち運びが容易なものを求めるのか、定期的な断続的な測定を行いたいのかによって異なります。
持ち運びのしやすさが重要な場合は「電磁式膜厚計」「渦電流式膜厚計」「超音波膜厚計」が適していますが、雨天時に使用する際には防水設計の有無を確認する必要があります。
一方、定期的な測定を行いたい場合は「赤外線式膜厚計」「分光干渉式膜厚計」がおすすめです。これらは通常据え置き型で、主に製造ラインなどで使用されることが多く、企業向けの測定機器といえます。
ペイントの膜厚は通常1㎜未満ですが、樹脂、プラスチック、ゴムなどの材料の膜厚は1㎜以上、あるいは1㎝以上にもなることがあります。購入しても用途に合わずに使えない状況を避けるために、測定する膜厚に合った膜厚計の選択が重要です。
各膜厚計には、その測定範囲が指定されています。購入時には必ずその範囲を確認するようにしましょう。一般的な測定範囲は0~1500μmですが、中には0~3000μmの広い範囲をカバーできるモデルもあります。例えば、車のコーティングの膜厚は通常100μm~200μmですから、通常の測定範囲0~1500μmの膜厚計で十分対応できるでしょう。
製品名 | 特徴 |
---|---|
デジタル膜厚計 A456C | 金属上の塗装・コーティング膜厚を素早く正確に測定するデジタル膜厚計です。 |
リアルタイム膜厚モニター「FR-ES」 | 反射率分光法とカーブフィッティング法を組み合わせた光学式非接触膜厚測定装置です。 |
狭小領域膜厚測定器「FR-μProbe」 | 微細パターニング形成後の狭小エリアの非接触膜厚測定に最適な膜厚測定器システムです。 |
鉄下地・非鉄金属下地上のコーティング膜厚を高速で測定。
A456Cモデルには、測定用のプローブを内蔵した一体型と、測定箇所や膜厚に応じて多種多様なプローブを接続できるセパレート型があります。頑丈な本体はIP64の防塵防水仕様で、大きく見やすいカラー液晶画面を搭載した、製造現場でも使いやすい膜厚計です。
ThetaMetrisis(シータメトリシス)社 FR-ESの膜厚測定は反射率分光方式で、光を通す透明または半透明の膜層を測定できます。光学式のため、非破壊・非接触で出荷する実製品を傷つけることなく測定が可能です。
専用ソフトウェアは「横軸:時間、縦軸:膜厚」のグラフ表示で、膜厚の変動をビジュアルとして分かりやすくしています。また、フィルムの両端と中央の3箇所を測定することで幅方向の膜厚ムラを監視することができます。
光学顕微鏡にFR-μProbe膜厚測定器を取り付けたシステムです。
発光ダイオード、フォトダイオードアレイなど、エッチング処理後の膜厚測定に顕微鏡の対物レンズを使用することで測定スポット径を小さくした膜厚測定が可能です。モニターを使って位置指定で測定することができるため、極小エリアでもストレスのない測定を実現できます。
対物レンズ50倍使用時のスポット径:φ10μm