金属部品の加工に必要不可欠なマシニングセンタ。自動車産業や航空宇宙産業から、医療器具やロボットの部品加工など多種多様な分野で使われています。
今回はマシニングセンタの基礎知識から長所や短所、価格についてまで全てを詳しく解説していきます。
マシニングセンタとは、中ぐり、フライス削り、穴あけなどの加工を、自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)を用いることで自動で工具を交換し、1台で効率よく加工を行えるようにした装置のことを言います。
自動車部品や医療用部品などさまざまな製造の分野で幅広く使用されており、近年も高性能化が進んでいることから注目を集めています。
マシニングセンタを導入することで、部品加工の効率化実現につながります。詳しくみていきましょう。
マシニングセンタと近い装置として「フライス盤」があります。フライス盤は自動で工具を取り換える装置がついていないため、ひとつのフライス盤につきひとつの加工しか行えませんでした。
そのため、他の加工を行う場合は、工具の取り換えなどが必要になります。
一方で、マシニングセンタには自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)がついているため、ひとつのマシニングセンタで複数の加工が行え、さらに自動なため安全性と効率化を図ることができます。
マシニングセンタでは機械が自動で加工を行います。そのため、人による作業とは異なり、繰り返しが必要になる作業では、同じ精度で同じ製品をより短時間で加工することが可能です。
マシニングセンタにはメリットがある反面、デメリットも存在します。
マシニングセンタでは高速回転時に発熱してしまい、旋盤での加工よりも真円度に誤差が生じてしまい精度に劣るという短所があります。
マシニングセンタやフライス盤は、材料を固定して工具を回転させて加工する原理である一方で、旋盤は、工具を固定して材料を回転させて加工する原理であるため、どうしても旋盤には丸物の加工の精度で劣ってしまうようです。
マシニングセンタは直接加工のため、工具摩耗が発生してしまいます。そのため、深さが必要な加工はできないというケースがよくみられます。
マシニングセンタは機械にプログラムで加工の指示を出すため、加工の前にプログラムを制作する必要があります。
一度プログラムを作ってしまえばその後は自動で加工を進めてくれますが、複雑な加工になるほど、加工プログラムも複雑なものになり、作成に時間がかかってしまいます。
導入コストの高さはマシニングセンタだけでなく、NC工作機械などの類似の装置にも言えることですが、やはりATC装置などのコストもかかることから、他の加工装置よりも導入コストが嵩んでしまう傾向にあります。
マシニングセンタは主に金属材料を加工する工程で使用されます。自動車部品や家電製品などあらゆる産業で使用されています。
自動車の部品は多くが金属製であり、多くの部品はマシニングセンタによって加工されています。
エンジンやトランスミッションといった、複雑な加工が必要なものによく用いられます。
航空機の部品も金属製のものが多く、エンジン、油圧シリンダーといった部品の加工に使用されています。
人体の中で使用するペースメーカーなどの医療用機器から、MRIといった大型の装置まで、マシニングセンタの加工によって製造されています。
工場での組み立てや塗装、搬送などに使用される産業用ロボットの製造でも用いられています。
マシニングセンタは用途や軸数などによって分類することができます。基本的には立形・横形・門形の3種類に分類されます。
立形マシニングセンタは刃物工具が垂直に上から下に向かって設置されており、テーブルに取り付けた工具を上から水平に加工します。
上から加工を行うため、重量のある加工材料に対しても対応が可能であることや、設置面積が小さくなるという点がメリットです。
ただし、切りくずがたまりやすいため、空気による吹きつけや切削油による洗浄が必要です。
横形マシニングセンタは刃物工具が横から突き出て設置されており、刃物工具が垂直に動くことで加工します。
テーブルとコラムとサドルがそれぞれZ軸、X軸、Y軸に動き、さらにテーブルが水平方向に回転する軸を持つものもあり、4軸で加工を行えることから、面替えの手間が省けるというメリットがあります。
また、切りくずが重力によって加工面から下へ落ちるため、切りくずの洗浄などが必要ないという点もあります。
門形マシニングセンタは、刃物工具が動く主軸を支える部分が門のような形をしています。
立形マシニングセンタと同じく上から刃物工具で加工を行いますが、奥行方向により動かせる点で異なり、長い部品や大きな部品の加工に用いられます。
5軸マシニングセンタは、X軸Y軸Z軸に2つの回転軸のA軸とB軸を追加することで、5軸で加工を行えるようにしたマシニングセンタです。
他のマシニングセンタにはできない複雑な加工を行えるというメリットがあります。
しかし、加工プログラムも複雑なものになってしまうというデメリットも存在しています。
マシニングセンタは先ほど述べたように、いくつか種類はありますが、基本の構成は共通しています。マシニングセンタを構成する部品と要素を解説します。
NC装置とは、NCプログラムを読み込み、各部品に指示を送る頭脳のような役割を果たす装置です。
NCとは、数値制御(Numeral Control)の意味で、加工に関する情報を電気信号で機械制御できるようにした装置のことをNC装置と言います。
ATC装置とは日本語で自動工具交換装置という意味で、加工で必要な工具の交換を自動で行う装置です。
刃物工具を取り付けた台が回転することで交換する「旋回式」と、ツールマガジンに収納した工具をアームによって交換する「タレット式」の2種類が存在しています。
この装置により、手動の工具交換が省けるようになったため、加工の効率化が進みました。
マシニングセンタの最下部に位置する基礎のような部分をベッドと言います。マシニングセンタの核となる部分です。
サドルはベッドの上に取り付けられ、案内面を移動します。マシニングセンタによっては移動方向がZ軸方向であったり、Y軸方向であったり異なります。
材料を固定する台のことを指し、このテーブル部分が回転するものもあります。
主軸は、切削工具を回転させるための部分で、モータなどによって回転します。
マガジンは、交換する工具を収納するための部分で、ツールマガジンとも言います。マシニングセンタによっては100個以上の工具を収納できるものもあります。
マシニングセンタの相場は、1,000万円~1億円とされており、幅が大きいです。
立形マシニングセンタの場合、中型のもので1,000万円~3,000万円程度、大型になると5,000万円以上となります。
また、軸が多い5軸マシニングセンタは8,000万円程度のものが多く、より大型で高性能なものになるほど価格が高くなるという傾向があります。
マシニングセンタの耐用年数は種類や用途によっては異なりますが、「機械装置」の「金属製品製造業用設備」とみなした場合は、法定耐用年数は10年となります。
マシニングセンタが生産する部品が属する業種によって耐用年数が異なるため、しっかりと調査しておく必要があるでしょう。
マシニングセンタは、フライス旋盤などの人の手で加工する装置よりも効率化ができるというメリットがあることから、さまざまな産業で盛んに導入されています。
しかし、自動化ができる一方で、取り扱うための知識が求められることや、導入コストが大きいなどの課題もあるため、しっかりと検討してから導入を考える必要があるでしょう。