オシロスコープとは?基礎知識や使い方・値段などを詳しく解説
今回は、オシロスコープの使い方や歴史などの基礎知識、波形の種類などについて詳しく紹介していきます。
目次
オシロスコープとは?
オシロスコープとは、電気信号の時間的な変化を波形として視覚化する測定装置のことを言います。
テスターとは異なり、ただ電圧の大きさの数値を表すだけでなく、電気信号の増減の変化を二次元的な情報として観測できることから、電気回路のメンテナンスや検品などに広く使われています。
オシロスコープを使うと何が分かる?
オシロスコープを使用すると、電気信号の位相差や立ち上がりの時間、周波数や周期が分かります。
この特性を活かして、電気回路の動作検証や、ノイズなどの異常信号や、学術関係の実験などにおける観測で用いられています。
オシロスコープの歴史
電子機器が当たり前のように使われる現在では、オシロスコープは必要不可欠な存在です。オシロスコープは電子工学技術の発展とともに進化してきました。
オシロスコープの歴史は電子測定装置の中でも古く、既に19世紀末にはオシロスコープの原型とされるているものが存在していたようです。
当時のオシロスコープは現在よく使われているデジタルオシロスコープではなく、アナログオシロスコープと呼ばれるもので、陰極線菅(ブラウン管)に電気信号の波形を表示していました。
1940年代に、トリガ回路を用いたオシロスコープが開発されると、不安定な波形の観測もできるようになり、電子工学の分野で広く普及していきました。
その後、2000年代までアナログオシロスコープは高機能化が続きましたが、デジタルオシロスコープの台頭により、現在ではあまり使用されなくなりました。
一方、デジタルオシロスコープは1970年代に発明され、基本的な原理は今とほとんど変わらず、CPUの進化とともに高性能化していきました。
最近のものでは、小型化が進み、屋外作業でも持ち運びが容易なオシロスコープ製品も存在しています。
オシロスコープの使い方
測定された電気信号は、フロントパネル画面に波形として表示されます。
画面は電圧の大きさを表す垂直軸と、時間を表す水平軸の2つの軸から構成されており、画面左端の中央に電圧が0Vであることを示すグランドマークが表示されています。
垂直軸は8個のグリッド、水平軸は10個のグリッドで分割されており、それぞれ1divとして数えられます。
ツマミを回すことによって、ひとつのグリッド当たりの電圧の大きさ(V/div)や時間の大きさ(Time/div)を変更することができるため、対象の周波数や電圧に合わせて計測することができます。
トリガーの掛け方
トリガー(トリガ)とは、複数の波形が重なって見づらいときなどで、特定の波形だけを取り出したいときに使用する機能のことです。
トリガーポジションで時間を決め、トリガーレベルで電圧の大きさを決めると、そこの地点を設定した電圧の大きさになる波形だけを取り出すことができます。このことを「トリガーを掛ける」と言います。
ただ電圧の大きさを決めるだけでなく、その地点で波形が立ち上がる(電圧が増加する)のか、立ち下がるのかを選択することもできます。
プローブとは?
プローブとは、測定対象から電気信号をオシロスコープへ伝えるための器具のことを言います。使い方は、オシロスコープの入力にプローブを接続し、測定対象とプローブを接続します。
さまざまな対象を測定するためのプローブが存在しています。
プローブの種類と選び方
プローブはただ電気信号を伝えるためのケーブルのような単純なものだと認識されてしまうことがありますが、プローブを適切に選択できていない場合は、正しい波形の測定ができなくなる原因になる可能性があります。
それぞれのプローブの特性を踏まえて、対象の測定に使用できるか正しく知識を持っておく必要があります。
ここでは、主なプローブの種類について紹介します。
プローブは、電圧プローブ、電流プローブ、特殊プローブの大きく3つに分類されます。
・電圧プローブ
電圧プローブは、電圧を検出し、オシロスコープへ入力するプローブです。受動型(パッシブ)と能動型(アクティブ)の種類から構成されています。
受動プローブとは、オシロスコープの入力部をそのまま対象の測定と直接繋げるような形で拡大したものと説明できるものです。
一方、能動プローブとは、先端の近くに高入力インピーダンスのアンプを内蔵しており、入力容量が小さくても測定できるプローブのことを言います。小さい入力容量で計測できるため、高い周波数の波形を測定できます。
・電流プローブ
電流プローブとは、対象の電流を電圧信号に変換することによって、オシロスコープでも電流を測定できるようにするプローブのことを言います。
電流プローブも受動型と能動型の2種類から構成されています。
・特殊プローブ
特殊プローブは、特殊な用途や形状をしたプローブのことを指します。
正しく観測できないときの対処法
オシロスコープを使用する際に、正しく観測ができていないときは以下の確認をしてみると良いでしょう。
・正しく補正できているか
プローブを接続する際は、プローブの補正を行わなければいけません。オシロスコープの入力容量は機種によって異なるため、それぞれに合わせた補正が必要です。
・正しいプローブを選択できているか
測定対象に合ったプローブを選択していなければ、正しく計測することができません。他の用途のものを無理に流用したり、本来のプローブの特性を確認しないで使用することは避けましょう。
・接続アクセサリが間違っていないか
対象に合わせてプローブに取り付けるアクセサリを変える必要があります。
接続アクセサリに合っていない対象を測定してしまうと、負荷がかかって故障やノイズの原因になることがあるため、アクセサリは必要最低限の使用を意識するとよいでしょう。
オシロスコープの波形の種類
測定する対象によって波形の形はさまざまです。オシロスコープで測定できる主な波形について紹介します。
波形の種類
波形は測定する対象によって異なります。一定間隔ごとに位相の変化を繰り返すような文字通りの波の形状をするものから、一定の電圧の大きさで変化しないものや、複雑な位相変化をするものまで多種多様です。
正弦波
正弦波は基本的な波形の形状ともいわれ、sinのグラフと同じ形状をしています。基本的に家庭用コンセントのような交流電源ではこの形の波形がみられます。
方形波と矩形波
方形波は一定の間隔でオンとオフを繰り返すような形状で、直線で構成されるような形状が特徴です。主に、コンピュータなどで、0と1を電気信号として表すような場面でみられます。
のこぎり波と三角波
のこぎり波は見た目の通り、のこぎりの歯のような形状をしており、一定間隔ごとに位相が急激に下がっては直線的に上昇するのを繰り返す波形です。
テレビのブラウン管の走査線を制御する際の波形としても用いられます。
ステップとパルス
ステップ波は、電圧が突然変化し、変化後は一定で止まるような形状の波形を言います。パルス波は、電圧が一瞬だけ上昇する瞬間的な波形のことを言います。
どちらも、定期的には発生しない波形として「単発信号」などと言われることがあります。
周期的な信号と非周期的な信号
周期信号は、波形が同じ間隔で繰り返す信号のことを言い、常に波形間隔が変わる信号のことを非周期信号と言います。
先ほど紹介した正弦波などの波形も、一定周期で繰り返す波形のため、周期信号に含まれます。
同期信号と非同期信号
2つの信号の変化が一致している場合、同期しているとみなすことができ、同期信号とされます。
一方で、お互いの変化が一致していないような場合は非同期信号とみなされます。
複雑な波形
先ほど紹介した正弦波や方形波、パルス波などが合成された波形も存在します。高性能なオシロスコープでは、複雑な波形を輝度を用いて表示できるものもあります。
オシロスコープの値段
オシロスコープの値段は範囲が広く、小型のものは1万円以下から、工業製品用のものは100万円以上するものがあります。
また、オシロスコープと合わせて使用するプローブも値段に幅があり、工業製品用のものでは10万円程度のものも存在します。
オシロスコープについてのまとめ
このように、多種多様な波形を計測できるオシロスコープはエレクトロニクス分野ではなくてはならない存在です。
入力できる電圧や測定できる周波数が機種によって異なるため、入念に必要なスペックについて検討したうえでオシロスコープを選択すると良いでしょう。
関連記事
分光器とは?仕組みや種類、選び方を解説
研究開発の現場から製造ラインの品質管理、さらには最先端の科学技術まで、幅広い分野で「光」を利用した分析が行われています。光には、物質の成分や状態に関する豊富な情報が含まれており、その情報を解き明かす鍵となるのが「分光器」です。分光器は、目には見えない光の世界を可視化し、高精度なデータへと変換する役割を担っています。 本記事では、分光器の基礎から、その応用、そして最適な分光器を選ぶためのポイントまで、幅広くご紹介します。
2025年10月16日
X線検査装置とは?食品製造業の品質管理における応用例や選定ポイント
食品製造業において、異物混入は企業の信頼と存続を脅かす深刻なリスクです。その対策のひとつとして注目されているのが、X線検査装置です。X線検査装置は、製品を壊さずに内部を検査できる技術であり、目視や他の検査方法では見つけにくい異物も高精度で検出可能です。金属、ガラス、石、骨片など、さまざまな異物に対応し、食品の「安全」と「安心」を守るうえで欠かせない存在となっています。本記事では、食品製造業におけるX線検査装置の基礎知識から応用例、装置選定の際のポイントをご紹介します。
2025年09月09日
ハーネスチェッカーとは?選び方やメリット・デメリットについて解説
ハーネスチェッカーは、電気製品の電線の切れや端子の抜けがないか検査をするための機械です。 どのぐらいの電圧に耐えられるかを測定したり、異常のある回路がないかを検査したりします。不良品がないか確認するためには欠かせない検査装置です。 今回は、ハーネスチェッカーの特徴や検査の種類、メリット・デメリットについて解説します。
2025年10月13日
データロガーとは?記録から分析までの完全ガイド
データロガーは、温度や電圧などを精密に記録し、重要な情報を提供する装置です。 この記事では、データロガーの基本的な使い方から、温度や電圧測定、グラフテックやキーエンスなどの主要メーカー、さらには車や熱電対への応用までを幅広く解説。 データロガーの価格や選び方についても触れていきます。
2025年10月11日
膜厚計とは? 測定原理や種類、選び方のポイントを解説します
外壁塗装の厚み測定や自動車の生産ライン、橋梁点検、プラントなどの修理・点検など、多岐にわたる用途で利用されている膜厚計。さまざまなタイプの膜厚計が存在しますが、各種類によって測定原理が異なるため、用途に適した膜厚計を選択することが重要です。 そこで今回は、膜厚計の種類やそれぞれの測定原理・特徴についてご紹介します。膜厚計に関連するおすすめ製品もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。 このような方におすすめです ・膜厚計の概要や測定原理について知りたい方 ・代表的な膜厚計の種類と各特徴について詳しく知りたい方 ・膜厚計に関連するおすすめ製品を知りたい方
2025年09月25日
エアリークテスターとは?選び方から導入の流れまで解説
現代の製造業では、製品の気密性や液密性が品質と安全性の確保に欠かせません。容器や配管、自動車部品、医療機器など、液体や気体を封じ込める製品では、微小な漏れが性能低下や機能不全、さらにはリコールや事故につながるリスクがあります。こうしたリスクを防ぎ、製品の信頼性を高めるために、リークテストは製造ラインの重要な工程となっています。 エアリークテスター(Air Leak Tester)は、加圧・減圧による圧力変化を数値化して漏れ量を定量的に測定できるため、単なる合否判定を超えた精密な品質管理が可能です。不良率の解析やトレーサビリティの確保も容易になり、製品の信頼性向上に大きく貢献します。
2025年09月08日
寸法検査|自動化が求められている背景や検査の方法・手順を解説
寸法検査とは、製品や部品の寸法が仕様書や図面の要求通りに製造されているかを確認する重要な工程です。 この記事では、寸法検査の重要性や方法、手順に加えて、自動化がもたらす製造業界への影響について詳しく解説します。
2025年09月25日
超音波膜厚計とは?原理や種類、選び方から導入の流れまで解説
製造現場における品質管理や、インフラ設備のメンテナンスにおいて、製品や部材の厚さを正確に測定することは極めて重要です。超音波膜厚計は、対象物を破壊することなく、迅速かつ高精度に厚さを測定できる非破壊検査機器として、幅広い産業で活用されています。 本記事では、超音波膜厚計の導入を検討されている製造業のご担当者様に向けて、その基本的な原理から主な用途、選定のポイント、導入後の運用フローまで、網羅的にご紹介します
2025年10月17日
レーザ変位センサ 用途に応じた種類や選び方
レーザ変位センサは、用途や測定環境に応じた製品選びが重要です。本記事では、レーザ変位センサの仕組みや種類、また、「精度」についての考え方、分解能・直線性・繰り返し精度の違いなどを解説、センサを選ぶ際に考慮すべきポイントについてご紹介します。
2025年09月11日
3Dセンサーとは? 仕組みや測定の種類、活用事例について解説します
3Dセンサー技術は製造業をはじめとして、様々な分野でその価値を発揮しています。今回の記事では、3Dセンサーの基本原理からその多様な応用例までを詳しく解説し、この先端技術がもたらす可能性に焦点を当てます。 3Dセンサーの種類や特徴、利点と課題、そして未来の展望について理解を深めることで、この技術が秘めた将来性について把握できるようになるでしょう。 このような方におすすめです ・3Dセンサーの概要やメリットについて知りたい方 ・3Dセンサーにおける測定別の種類について知りたい方 ・3Dセンサーの具体的な活用事例について知りたい方
2025年09月05日
近赤外分光法(NIR)とは? 応用分野や赤外分光法(IR)との比較を解説
近赤外分光法(NIR)は、物質に近赤外光を照射し、その相互作用から物質の組成や構造を分析する非破壊的な手法です。従来の分析手法と比較して、前処理が不要で迅速な測定が可能という特長を持ち、品質管理や成分分析など幅広い分野で活用されています。 本記事では、近赤外分光法の基本原理から応用分野まで、その特徴や赤外分光法(IR)との違いについて詳しく解説します。
2025年09月16日
スプレードライとは? 特徴・工程プロセス・応用例を解説
スプレードライ(噴霧乾燥)は、液体原料を熱風中で瞬間的に乾燥させて粉末を製造する産業技術です。工程の簡略化、優れた粉体特性、高い処理能力などの特長を持ち、食品、医薬品、化学製品など幅広い分野で活用されています。 本記事では、スプレードライの特徴やメリット、工程プロセス、さらに具体的な応用例について解説します。
2025年09月12日
ロータリーエバポレーター 蒸留の原理や使用時の注意点について解説
ロータリーエバポレーターは、成分の濃縮や溶媒の除去などの目的で使用される装置です。化学、製薬、食品分野などで広く利用されています。しかし、適切に使用しないと突沸が生じるリスクがあります。本記事では、ロータリーエバポレーターの蒸留の原理や具体的な用途例、基本構成、使用時の注意点について詳しく解説します。
2025年09月12日
高精度圧力計・圧力測定器の種類・メーカーの選び方
高精度デジタル圧力計・測定器は、産業界や研究分野で不可欠な計測機器です。従来のアナログ式と比べ、高い精度と使いやすさを兼ね備え、多様な用途に対応します。 本記事では、圧力計の基本から高精度デジタル圧力計の特徴、用途、選び方まで詳しく解説します。
2025年09月09日
微差圧とは?測定方法や計測器、有用性を解説
昨今、多くの業界で、製品の小形化・高精度化・高効率化が求められており、様々な新しい計測ニーズが生まれています。「微差圧」もその例外ではありません。微差圧の正確な把握は、製品の付加価値を高め、競争力を強化する為にも重要な要素となります。
2025年09月09日
断面観察とは?製造業における目的や手法、非破壊での観察装置の選び方を解説
現代の製造業において、製品の品質を保証するためには表面的な検査だけでは不十分です。目に見えない内部の状態を正確に把握することが、製品の信頼性や競争力に直結します。断面観察は、こうした製品や材料の内部を可視化するための重要な技術です。 断面観察には、試料を加工して観察する手法から、製品を壊さずに内部を見る非破壊の手法まで、様々なアプローチが存在します。本記事では、製造業における断面観察の重要性から、具体的な手法、そして非破壊で観察するための装置の選び方まで、詳しく解説します。
2025年08月29日
OCT(光干渉断層撮影)の種類と選び方 | 導入のポイントや医療研究での活用について解説
OCT(Optical Coherence Tomography:光干渉断層撮影)は、近年、医療研究分野において不可欠なイメージングツールとして注目を集めています。非侵襲的かつ高解像度で生体組織の断面画像をリアルタイムに取得できるという特性から、眼科領域でのゴールドスタンダードとしての地位を確立するだけでなく、さまざまな分野の医療研究目的や基礎生物学研究など、その応用範囲は広がり続けています。 本記事では、OCTの基本原理から測定方式別の種類、そして最適なOCTシステムの選び方まで詳しく解説します。
2025年09月01日
水分計とは?種類や測定対象別の選び方を解説
物質の中の水分量を測定するために使われる水分計。さまざまな種類があり、どのように選べば良いのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。 今回は水分計の種類と、測定対象別の選び方を解説します。用途に合わせた選び方の参考にしてみてください。
2025年09月08日
ガスクロマトグラフとは?原理や特徴を分かりやすく解説
ガスクロマトグラフは、気体や液体に含まれる成分の濃度を測定できる装置です。その高度な分析能力と汎用性の高さから、環境・化学工業・食品・製薬など幅広い分野で活用されており、今日の科学技術の発展を支えています。 この記事では、ガスクロマトグラフの原理や装置の仕組みなどを分かりやすくご紹介します。
2025年09月09日
画像解析ソフトとは?目的や使用用途・仕組み・AI技術まで徹底解説
多種多様な産業で用いられている画像解析ソフトは、工程を効率化するうえで必要不可欠です。現在、画像解析のためのAI技術が発展しており、注目が集まっている分野となっています。 今回は、画像解析ソフトについて、仕組みや用いられる技術といった基礎知識から実際の用途、フリーの画像解析ソフトのメリットとデメリットまで詳しく紹介いたします。
2025年09月08日