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チップ抵抗器の故障原因と対策|オープン・ショート別の選定ポイント解説

チップ抵抗器の故障は、その9割以上が断線(オープン)モードですが、特定環境下では短絡(ショート)も発生します。

本記事では、不具合の主な原因である「硫化」「はんだクラック」「サージ」「イオンマイグレーション」の発生メカニズムを解説。それぞれの故障リスクに対し、耐硫化や樹脂電極品といった高機能抵抗器へ置き換えるための選定ポイントを体系的にまとめています。トラブルシューティングと再発防止にお役立てください。

チップ抵抗器の故障モード概要:オープンとショートの発生比率

構造から見る故障の傾向

チップ抵抗器(厚膜タイプ)は、絶縁体であるセラミック基板の上に、銀などを主成分とする内部電極と、酸化ルテニウムなどの抵抗体を印刷・焼成して形成されています。さらに、その上を保護膜(ガラスや樹脂)で覆い、両端にははんだ付け用の端子電極(ニッケルめっき、すずめっき)が設けられています。

電流は「端子電極→内部電極→抵抗体→内部電極→端子電極」という直列の経路を流れます。この経路のいずれか一箇所でも物理的に破断したり、抵抗体が熱で焼き切れたり(焼損)すると、電気の通り道が完全に遮断されます。

このように、チップ抵抗器は構造上、破壊されると導通がなくなる「オープン(断線)」モードになる確率が極めて高く、市場不具合や工程不良の9割以上を占めるとされています。

ショート(短絡)が発生する稀なケース

チップ抵抗器自体が破壊されて、抵抗値がほぼゼロになる「ショート(短絡)」モードになることは、構造的に非常に稀です。抵抗体が破損すれば通常はオープンになるためです。ショートが発生する場合は、抵抗器そのものの故障というよりも、化学的な要因や外部環境が大きく影響します。

代表的な原因は「イオンマイグレーション(電食)」です。これは、高湿度の環境下で電圧がかかり続けることで、電極の金属成分がイオン化して溶け出し、絶縁体の上を移動して隣の電極と繋がってしまう現象です。また、極めて稀なケースとして、過度な電気ストレスによって抵抗体材料が変質(焼結など)し、抵抗値が低下することもあります。

トラブルシューティングを行う際は、まず対象の抵抗器が「断線している(オープン)」のか「短絡している(ショート)」のかを判別することが、真因にたどり着くための重要な第一歩となります。

故障モードとして頻度が高い「オープン(断線)」とは

電気的ストレスによる破壊と対策

チップ抵抗器の故障モードとして頻度が高い「オープン(断線)」は、主に環境要因や物理的なストレスによって引き起こされます。ここでは、その具体的な発生メカニズムと、それを防ぐための対策部品について解説します。

硫化による断線(内部電極の腐食)

硫黄成分を多く含む環境(自動車の排気ガス、ゴム製品の近く、温泉地、工作機械の切削油がかかる場所など)では、「硫化」という現象による断線リスクが高まります。

一般的なチップ抵抗器の内部電極には「銀(Ag)」が使われています。空気中の硫黄成分が保護膜と電極のわずかな隙間から侵入すると、銀と化学反応を起こし「硫化銀(Ag2S)」へと変化します。硫化銀は電気を通さない絶縁体であるため、この反応が進行すると内部電極の導通が遮断され、最終的に断線(オープン)に至ります。

この対策として有効なのが「耐硫化チップ抵抗器」です。内部電極の材料に、硫化しにくい「金」や、銀の比率を下げた「高パラジウム材」などを使用することで、過酷な環境下でも電極の腐食を防ぎ、長期間にわたり導通を維持します。

はんだクラック・基板曲げ応力による破壊

急激な温度変化の繰り返し(ヒートサイクル)によるはんだ接合部の疲労や、製造工程・基板分割時(ブレイク)にかかる「たわみ」などの物理的なストレスも、断線の主要な原因です。

基板がたわむと、その応力が硬いはんだ接合部を通じて抵抗器本体に伝わります。これに耐え切れなくなると、端子電極部分やセラミック素体にクラック(ひび割れ)が発生します。特に電極部分にクラックが入ると、抵抗体と電極が物理的に引き剥がされてしまい、オープン故障となります。

対策には、「樹脂電極品(ソフトターミネーションタイプ)」への置き換えが効果的です。電極の層構造内に柔軟性のある導電性樹脂を取り入れることで、バネのように基板からの応力を緩和・吸収します。

一般的な製品に比べて「たわみ耐性試験」での限界値が高く、クラックが発生しにくい構造になっています。また、接合面積を広げて固着力を高めることで応力を分散させる「長辺電極タイプ」の採用も有効な手段の一つです。

電気的ストレスによる破壊と対策

過負荷(過電流・過電圧)による溶断

チップ抵抗器には、安全に使用できる電力の上限(定格電力)が定められています。回路の誤設計や予期せぬトラブルにより、定格を超える過大な電流や電圧が印加されると、抵抗器内部で過剰なジュール熱が発生します。

特に破壊の起点となりやすいのが、製造工程で抵抗値を微調整するためにレーザーで切り込みを入れた「トリミング溝」です。溝の先端部分は電流の流れる経路が狭くなっているため、他の部分よりも電流密度が高くなり、熱が局所的に集中します。これを「ホットスポット」と呼びます。

過度な発熱によりホットスポット周辺の温度が急上昇すると、熱応力によって抵抗体にクラック(ひび割れ)が入ったり、抵抗体そのものが焼き切れて溶断したりすることで、導通が失われます。

サージ・パルス負荷への対応

定常的な過負荷だけでなく、スイッチを入れた瞬間の突入電流や、静電気放電(ESD)のような、ごく短時間に発生する高エネルギーの「サージ・パルス」も破壊の原因となります。一瞬の現象であっても、抵抗体の許容範囲を超えたエネルギーが加わると、瞬間的な発熱や電圧ストレスにより破壊に至ります。

こうした不具合への対策として有効なのが、「耐サージ抵抗器」や「高電力型抵抗器」の採用です。 耐サージ抵抗器は、トリミング溝の形状を緩やかなカーブにするなどの工夫を施し、電流の集中を緩和させることで、瞬間的な高負荷への耐性を高めています。また、同じ形状でもより高い定格電力を持つ高電力型を選定し、定格に対する余裕(ディレーティング)を十分に持たせることも、信頼性向上のための重要なポイントです。

化学的要因による「ショート(短絡)」とは

チップ抵抗器の故障モードにおいて、ショート(短絡)が発生するケースは、物理的な破壊よりも化学的な要因が大きく関わっています。抵抗体そのものが焼き切れると通常はオープン(断線)になりますが、電極間の絶縁性が損なわれた場合にショートが発生します。

その代表的な原因が、湿度などの環境要因と電圧印加が組み合わさって起きる化学反応です。外観上は異常が見えにくい場合もあり、回路全体に過大な電流を流してしまうリスクがあるため、発生メカニズムを正しく理解しておく必要があります。

ここでは、化学的な反応によって引き起こされるショートのメカニズムとその対策について解説します。

イオンマイグレーション(電食)の発生メカニズム

ショートを引き起こす主要因の一つが「イオンマイグレーション(電食)」です。これは、高温多湿な環境下で、電極間に直流電圧がかかり続けることによって発生する電気化学的な現象です。

メカニズムは以下の通りです。まず、抵抗器の表面に水分が付着すると、電極の金属成分(主に銀)が電気分解によってイオン化し、溶け出します。プラスイオンとなった金属は水分中を移動してマイナス側の電極(陰極)へ引き寄せられ、そこで再び金属として析出します。

析出した金属は、マイナス極からプラス極に向かって、まるで植物の枝や霜柱のような形状で成長していきます。これを「樹枝状結晶(デンドライト)」と呼びます。この結晶が成長して対向する電極に到達すると、本来絶縁されている電極同士が電気的に繋がり、ショート状態となります。

この現象を防ぐには、以下の対策が有効です。

耐湿性の高い
部品の選定
吸湿しにくい材料や、電極部分を強固にガードする保護膜を採用した「耐湿性向上タイプ」の抵抗器を使用し、水分の侵入を防ぐ。
設計による
回避
パターン設計において電極間の距離(沿面距離)を十分に確保し、デンドライトが到達しにくい構造にする。

原因別・対策抵抗器の選定マトリクス

トラブルシューティングにおいて最も重要なのは、原因を除去し、再発を防止することです。以下のマトリクスは、故障原因と破壊モード(オープン/ショート)を整理し、それに対応する高機能抵抗器を示したものです。

故障原因:オープンモード(断線)

  発生メカニズムの概要 推奨される対策抵抗器
硫化 硫黄成分が内部電極(Ag)を腐食させ、絶縁体の硫化銀を形成して断線させる。
  • 耐硫化チップ抵抗器
    (内部電極に金や高パラジウム材を使用)
熱衝撃基板たわみ 温度変化や物理的応力により、はんだ接合部や抵抗器素体にクラック(ひび)が入る。
  • 樹脂電極品
    (ソフトターミネーションタイプ)
  • 長辺電極タイプ
サージ 瞬間的な過電流や過電圧による発熱で、トリミング溝に応力が集中し溶断する。
  • 耐サージ抵抗器
    (トリミング形状を最適化)
  • 高電力型抵抗器

故障原因:ショートモード(短絡)

  発生メカニズムの概要 推奨される対策抵抗器
吸湿
(イオンマイグレーション)
水分と電圧により電極金属がイオン化・移動し、電極間でショートする。
  • 耐湿抵抗器
    (保護膜の強化、耐湿材料の採用)

まとめ

  1. チップ抵抗器の故障は、部品単体の問題にとどまらず、機器全体の機能停止や信頼性低下を招く重大なリスク要因となります。
  2. コストのみを重視した標準品選定ではなく、硫黄、振動、熱、湿度といった使用環境や、サージなどの回路条件を見極め、各リスクに対応した製品を選ぶことが重要です。
  3. 耐硫化や樹脂電極などの高機能品を「適材適所」で採用することで、市場不具合や工程不良を未然に防ぎ、長期的な品質コストの低減と製品価値の向上を実現しましょう。

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