logo_w
logo_w

evort SOLUTION MEDIA

チップ抵抗器

  1. TOP
  2. メディア
  3. チップ抵抗器
  4. 耐サージチップ抵抗器

耐サージチップ抵抗器の選び方|突入電流・パルス対策の設計手順

電源回路やインバータ設計において、突入電流やサージによる抵抗器の焼損は避けるべき重大なリスクです。本記事では、汎用品がパルスに弱い構造的な理由を「電流集中」の観点から解説し、耐サージ厚膜やMELF抵抗器が持つ技術的メリットを紹介します。

また、定格電力だけでは見えない「パルス限界電力曲線」の読み解き方や、実際の波形を用いた選定計算の手順など、設計品質を高めるための実践的な知識をまとめました。

過渡エネルギーによる抵抗器の破壊メカニズム

抵抗器の選定ミスによる市場トラブルを防ぐためには、まず部品を破壊に至らしめるエネルギーの正体を正しく理解する必要があります。ここでは、混同されがちな「サージ」と「パルス」の違いや、汎用的な抵抗器が構造的に抱える弱点について解説します。

「サージ」と「パルス」の物理的な違い

電子回路設計の現場では「サージ」と「パルス」という言葉が区別なく使われることもありますが、物理現象としては明確な違いがあります。抵抗器の破壊を防ぐには、対策したい現象がどちらの性質を持っているかを見極めることが重要です。

「サージ」は静電気(ESD)や雷のように、電圧が高く持続時間が極めて短い現象を指します。一方、「パルス」は突入電流などのように、比較的時間が長く、大きな電力を伴うエネルギー性の現象です。

サージとパルスの特徴比較

  サージ (Surge) パルス (Pulse)
主な発生源 静電気放電 (ESD)、誘導雷 突入電流、回生電力、スイッチング
持続時間 ナノ秒〜マイクロ秒
(極短時間)
ミリ秒〜秒
(比較的長い)
ストレスの性質 電圧駆動型
(高電圧スパイク)
エネルギー駆動型
(大電力・熱)
主な破壊要因 絶縁破壊、沿面放電 ジュール熱による焼損、熱疲労

サージ対策では電圧への耐性が、パルス対策では熱エネルギーを受け止める容量が重視されます。

汎用厚膜抵抗器のアキレス腱「レーザートリミング」

広く普及している標準的な「厚膜チップ抵抗器」は、実は構造的にパルスなどの過渡エネルギーに弱い側面を持っています。その最大の理由は、製造工程で行われる抵抗値の調整作業(レーザートリミング)にあります。

抵抗器を規定の抵抗値(公差±1%など)に収めるため、メーカーは抵抗体の一部にレーザーで切り込みを入れます。一般的に用いられる「L字カット」などの形状は、電流が流れる経路を物理的に狭くしてしまいます。

この狭くなった部分は、道路の車線減少による渋滞と同じように、電流が集中しやすい箇所(ボトルネック)となります。定常的な電流であれば問題ありませんが、突発的な大電流が流れた際、この狭い部分が抵抗器全体の「アキレス腱」となってしまうのです。

局所発熱「ホットスポット」による断線リスク

トリミングによって電流経路が狭まった部分では、何が起きているのでしょうか。電流密度が局所的に高まることで、その部分の発熱量は劇的に増大します。

抵抗器全体としては許容範囲内の電力であっても、電流が集中するピンポイントな箇所では、瞬時に数百℃を超える「ホットスポット」が形成されることがあります。

ホットスポットによる破壊プロセス

  1. 過渡電流の印加: 突入電流などのパルスが抵抗器に入力される。
  2. 電流集中: トリミングの狭窄部に電流が集中し、ジュール熱が急増する。
  3. ホットスポット形成: 局所的な温度が材料の耐熱限界を超える。
  4. 破壊: 抵抗体や保護ガラスが溶融したり、基板にクラックが入ったりすることで、最終的に断線(オープン故障)に至る。

このように、汎用品の焼損事故の多くは、部品全体の能力不足ではなく、この局所的な発熱によって引き起こされています。

耐サージ・高電力抵抗器の構造技術と特性比較

厚膜チップ抵抗器の耐サージ技術(ノントリム・特殊トリム)

汎用的な厚膜抵抗器の弱点である「電流集中」を克服するため、耐サージ仕様の製品ではトリミング工程に工夫が凝らされています。その代表的な手法が「ノントリム(トリミングレス)」と「特殊トリミング」です。

ノントリム仕様は、その名の通りレーザーによる切り込みを一切行わず、印刷精度のみで抵抗値を制御する方法です。電流を遮る切り欠きが存在しないため、抵抗体の全面積を使って均一に電流を流すことができ、ホットスポットの発生を根本から防ぎます。

また、高精度が求められる場合に採用されるのが特殊トリミングです。標準的なL字型ではなく、曲線を多用した「カーブカット」や、電流経路を蛇行させる「サーペンタインカット」といった形状を採用します。これにより、電流の通り道が急激に狭くなることを防ぎ、発熱を分散させることで高いパルス耐性を実現しています。

円筒形構造がもたらすMELF抵抗器の優位性

MELF(メルフ)抵抗器は、一般的な平らなチップ抵抗器とは異なり、円筒形のセラミック基板全体に抵抗膜を形成した部品です。この独特な形状が、パルス対策において大きな物理的アドバンテージを生み出します。

最大の特長は、有効な抵抗体面積の広さです。同サイズの平型チップ抵抗器と比較して、円筒表面全体を使えるMELFは約3倍の実効面積を持っています。面積が広いということは、それだけ熱を受け止める「熱容量」が大きいことを意味し、瞬間的なパルスエネルギーが印加されても温度上昇を低く抑えることが可能です。

また、抵抗値の調整には「ヘリカルカット」と呼ばれる螺旋(らせん)状の溝を入れる手法が用いられます。これにより電流経路を長く確保できるほか、円筒形状ゆえに機械的な強度も高く、長期的な信頼性に優れています。

大電力領域をカバーする金属板抵抗器と巻線抵抗器

MELFや耐サージ厚膜チップでも対応しきれない、数キロワット級の巨大なパルスエネルギーが発生する箇所では、金属板抵抗器や巻線抵抗器が選定の主役となります。

金属板抵抗器は、抵抗体そのものが金属の合金板で構成されています。セラミック基板上の薄い膜とは異なり、金属の塊としての質量があるため熱容量が非常に大きく、数百アンペアの突入電流にも耐えうる堅牢さを持っています。

一方、巻線抵抗器はセラミック等のコアに金属線を巻き付けた構造をしており、こちらも抵抗線自体の質量により高いパルス吸収能力を発揮します。電気自動車(EV)のプリチャージ回路など、一瞬で極めて大きな熱が発生するアプリケーションにおいては、これらの技術がシステムの安全を支える最後の砦となります。

EV・産業機器における主要なアプリケーション

電気自動車(EV)や産業用ロボットなどの高電圧システムでは、汎用品では対応できない過酷な電気的ストレスがかかる箇所がいくつか存在します。ここでは、特に耐サージ・高電力抵抗器が必須となる代表的な回路を紹介します。

プリチャージ回路(突入電流防止)

EVやハイブリッド車のインバータ回路には、電圧を安定させるための大容量コンデンサ(DCリンクコンデンサ)が搭載されています。システム起動時、このコンデンサが空の状態へいきなり高電圧バッテリーを接続すると、理論上、数千アンペアもの巨大な「突入電流」が流れます。

この電流は、バッテリーとインバータをつなぐメインコンタクタ(リレー)の接点をアーク放電により溶着させ、車両が暴走したり停止できなくなったりする致命的な事故を引き起こしかねません。これを防ぐ門番の役割を果たすのが「プリチャージ抵抗」です。

メイン回路がつながる前に、一時的にこの抵抗器を経由して電流を制限しながらコンデンサを充電します。この際、抵抗器にはわずか数百ミリ秒〜数秒の間に、数百ジュールにも達する巨大な熱エネルギーが一気に投入されます。そのため、この用途には瞬間的な高熱に耐えうる、熱容量の大きな耐サージ厚膜抵抗器やMELF抵抗器、あるいは巻線抵抗器が選定されます。

ゲート駆動回路とスナバ回路

モーターを駆動するパワー半導体(IGBTや、次世代のSiC/GaN MOSFETなど)を制御するゲート駆動回路も、抵抗器にとって過酷な環境の一つです。

「ゲート抵抗」は、パワー半導体のスイッチング速度を調整し、ノイズやサージ電圧を抑制する重要な役割を担っています。ここには、スイッチング周波数に合わせた高周波のパルス電流が、システムの稼働中ずっと繰り返し流れ続けます。

また、パワー半導体を過電圧から守る「スナバ回路」でも、サージエネルギーを熱として消費するために抵抗器が使われます。これらの回路で抵抗値が変化(ドリフト)したり断線したりすると、パワー半導体の破壊に直結します。そのため、単発のサージに強いだけでなく、繰り返されるパルス負荷に対して抵抗値が変動しない、長期的な安定性と耐久性が強く求められます。

データシートに基づく選定の科学

パルス限界電力曲線」の読み解き方

耐サージ抵抗器を選定する際、カタログの表面に記載されている「定格電力(0.5Wや1Wなど)」だけで判断するのは危険です。定格電力はあくまで定常的な負荷に対する仕様であり、瞬間的なパルスに対する耐性を示したものではないからです。

パルス用途での適性を正しく判断するために必ず確認すべきなのが、詳細データシートに記載されている「パルス限界電力曲線(Pulse Limiting Power Curve)」です。これは「ワンパルス限界曲線」とも呼ばれ、対数グラフで表現されます。

このグラフの横軸は「パルスの持続時間」、縦軸は「破壊せずに耐えられる最大電力」を表しています。一般的に、パルスの時間が短ければ短いほど、熱が逃げる前の「熱容量」だけでエネルギーを受け止めることになるため、定格電力よりもはるかに大きな電力を許容できることが読み取れます。設計者は、自身の回路で発生するパルス幅において、許容電力が十分かどうかをこの曲線で一点一点確認する必要があります。

実波形のエネルギー計算と等価方形波への変換

実際の回路で発生するサージやパルスは、データシートの基準となっているきれいな「長方形の波(方形波)」であることは稀です。多くの場合、コンデンサの充放電に伴う「指数関数的に減衰する波形」や「三角波」などが観測されます。

そのため、選定にあたっては、実際の複雑な波形を「エネルギー量が等しい方形波」に換算して、パルス限界電力曲線と照らし合わせる計算プロセスが不可欠です。

例えば、最も一般的なCR回路の放電波形(指数関数波形)の場合、以下の手順で換算します。

時定数の算出 回路の抵抗値 R とコンデンサ容量 C から時定数 τ(タウ)を求めます(τ = R × C)。
方形波への変換 エネルギー的に等価な方形波のパルス幅は、時定数の半分として計算できます。
照合 算出した時間を横軸にとり、発生するピーク電力がグラフの許容値以下であることを確認します。

このように、波形の形ごとの変換係数(三角波なら1/3など)を用いて方形波に置き換えることで、データシートの数値を正しく活用した安全な選定が可能になります。

長期信頼性を左右する環境要因への対策

硫化(Sulfurization)による断線メカニズム

抵抗器の故障は、電気的なストレスだけでなく、設置される環境の大気成分によっても引き起こされます。その代表例が「硫化」による断線です。

自動車の排気ガスやタイヤのゴム、あるいは温泉地や工業地帯の大気中には、硫黄成分が含まれています。一般的なチップ抵抗器の内部電極には銀(Ag)が使われていますが、この銀が空気中の硫黄と化学反応を起こすと、硫化銀(Ag₂S)という物質が生成されます。

問題は、元の銀が電気を通す導体であるのに対し、生成された硫化銀は電気を通さない「絶縁体」であることです。硫化が進行すると、電極部分が絶縁物に置き換わってしまい、抵抗値が上昇し続け、最終的には完全に電気が流れなくなる「断線(オープン故障)」に至ります。

この現象を防ぐためには、内部電極に硫黄と反応しにくい金(Au)や特殊な合金を使用した製品や、電極部分への硫黄の侵入をブロックする特殊な保護膜構造を持った「耐硫化チップ抵抗器」を選定することが重要です。

高湿環境下でのマイグレーションと実装ストレス

高温多湿な環境もまた、抵抗器にとっては過酷な条件です。湿度が高い場所で電極間に電圧がかかり続けると、電極の金属(特に銀)がイオン化して水分中に溶け出し、マイナス極に向かって移動する現象が起きます。

移動した銀イオンはやがて樹木のような形状の金属結晶(デンドライト)として析出し、成長してプラス極に達するとショート故障(短絡)を引き起こします。これが「エレクトロケミカルマイグレーション」と呼ばれる現象です。

また、物理的なストレスへの対策も欠かせません。基板分割時の曲げ応力や、動作時の急激な温度変化(ヒートサイクル)は、基板やはんだ接合部にクラック(亀裂)を生じさせます。

こうしたリスクに対しては、電極部分に柔軟性のある樹脂層を設けて応力を吸収する「樹脂電極(ソフトターミナル)品」や、物理的に強固で円筒形状を持つ「MELF抵抗器」の採用が有効です。これらは、過酷な環境下でも長期間にわたり回路の機能を維持するために設計されています。

まとめ

  1. 耐サージ抵抗器の適切な選定は、突入電流やサージによる焼損事故を未然に防ぎ、製品と回路全体の安全性を担保するために不可欠なプロセスです。
  2. 「パッケージサイズ」や「定格電力」といった表面的なスペックだけで判断せず、トリミング形状などの内部構造の違いや、パルス限界電力曲線のデータを詳細に確認することが重要です。
  3. 設計品質を確実に高めるために、メーカーが提供する詳細なデータシートや技術資料をダウンロードし、実際の回路条件と照らし合わせて検証しましょう。

チップ抵抗器関連製品・サービス

チップ抵抗器関連記事