デジタル圧力計 MT300は、横河計測独自のシリコンレゾナントセンサを搭載した高精度圧力計です。0.01%の確度(精度)と、長年にわたる測定データの蓄積に裏付けられた長期安定性を備えています。一般的な高精度圧力計では対応が難しい液体の測定や、1台での差圧測定にも対応します。
ラボ環境での精密校正からフィールドでの伝送器校正まで、バッテリ駆動による可搬性と高い確度を両立し、幅広い圧力計測ニーズに応えます。
目次
MT300が選ばれる理由

液体も気体も高精度に測定
MT300は、低圧領域において液体と気体の両方を高精度に測定できるデジタル圧力計です。一般的な高精度圧力計は気体のみの測定に限定されることが多い中、MT300は液体系アプリケーションにも対応しています。
近年、EV(電気自動車)の冷却系やデータセンターの冷却水システムなど、液体の圧力を高精度に測定するニーズが拡大しています。MT300はこうした用途において、低圧域の微小な圧力変化も確実にとらえることができます。対応流体は、非可燃性・非爆発性・非毒性・非腐食性の液体および気体です(EU圧力機器指令 2014/68/EC Article 13(1)(a)に定義される物質を除く)。
国際比較に採用される長期安定性
MT300は、0.01%の確度(精度)を12か月間保証しています。この精度保証は、長年にわたり蓄積された測定データに裏付けられたものです。社内評価データでは、2000日経過後も測定値の変動が極めて小さく抑えられていることが確認されています。
横河の圧⼒センサとMTシリーズは、国家計量標準機関に向けた取り組みとして、圧力標準の国際比較用仲介器( トランスファースタンダード: 標準を⽐較するための仲介⽤として⽤いられる標準器) として採⽤されています。

1台で差圧測定が完結
MT300の差圧モデルは、1台で差圧(∆P)測定を行うことができます。一般的な差圧測定では、2台の圧力計でそれぞれの圧力を測定し、その差分を計算する方式が用いられます。この2台方式では、各センサの確度が累積するため(例:0.01% × 2 = 0.02%)、差圧の測定確度が低下します。MT300の差圧モデルは、内蔵した1つのセンサで直接差圧を測定するため、確度の累積がありません。
1台で完結することにより、測定システムの簡素化、省スペース化、データ取得の効率化を実現します。HVAC(空調)の気流試験、風洞試験、部品の圧力損失測定など、差圧を高精度に把握する必要がある場面で有効です。
| MT300 | 通常の差圧測定 | |
|---|---|---|
| 差圧測定方法 | 内蔵した1つの圧力センサで測定 | 独立した2つの内蔵センサモジュールで測定 |
| 差圧表示方法 | 差圧値の直接表示 | 2つの測定値を別々に表示 |
| 差圧値の確認 | 値の直読み | 2つの測定値に対し、計算で算出 |
| センサの確度 | 1センサで測定するため確度がそのまま維持(例:0.01%) | 2センサの確度が累積される(例:0.01% × 2 = 0.02%) |
フィールドでラボグレードの校正を
MT300は、フィールド環境での伝送器校正・メンテナンスに必要な機能を備えています。/DMオプションにより、伝送器に24VDCを供給しながら、その出力信号(1-5Vまたは4-20mA)を直接測定することができます。
ハンドヘルド校正器では得られないラボグレードの確度を、フィールド環境でも実現できる点がMT300の強みです。高精度な校正・検証・ループチェックを現場で実施でき、測定結果への信頼性を確保します。/EBオプションのリチウムイオンバッテリにより、AC電源のない環境でも最大約6時間のコードレス運転が可能です。
高耐圧設計
MT300は、特に低圧レンジにおいて高い耐圧性能を備えています。1kPaレンジではレンジの50倍にあたる50kPa、10kPaレンジではレンジの5倍にあたる50kPaの耐圧を確保しています。一般的な圧力計ではレンジの1.1倍から1.2倍程度の耐圧にとどまるものが多く、過大圧の印加によって故障するリスクがあります。
実験中に意図せず過大圧が加わるケースは少なくありません。特に、ライン圧の高い環境で微差圧を測定する場合には、耐圧性能の高さが重要になります。MT300の高耐圧設計は、こうした現場でのリスクを低減し、長期にわたる安定した運用を支えます。
| Range | Allowable Input | |
|---|---|---|
| 1 kPa | 50 kPa | Range × 50.0 |
| 200 kPa | 500 kPa | Range × 2.5 |
| 70 MPa | 98 MPa | Range × 1.4 |
主な機能
高分解能表示
/R1オプションを選択することで、圧力測定値の表示桁数を1桁追加できます。表示分解能が向上することで、校正環境における不確かさの低減に貢献します。
MT300は4.3型TFTカラーLCD(480×272dot)を搭載しており、測定データを高い視認性で表示します。

高速測定・同期測定
/F1オプションにより、標準・中速・高速の3つの測定モードから選択できます。高速モードでは100ms以下の応答時間を実現し(モデルにより異なる)、圧力の過渡応答や急速な変動を確実にとらえます。
同期測定機能では、最大4台のMT300をデイジーチェーン接続し、複数ポイントの高速・高精度な同時測定が可能です。たとえば、掃除機の吸引力テスト(IEC60312)では、差圧モデルと絶対圧モデルを同期測定することで、吸入空気量と真空度を同時に高精度で取得できます。

リークテスト・統計処理
MT300は、圧力計測の効率化を支援する多彩な機能を搭載しています。
| リークテスト | 測定期間内の圧力変化量またはリークレート(1分あたりの圧力変化量)を測定します。圧力測定系の気密性・完全性の確認に使用できます。 |
|---|---|
| 統計処理 | 連続取得したデータの最大値・最小値・平均値・標準偏差を表示します。 |
| スケーリング | ユーザー独自の係数を設定し、換算値を表示できます。アプリケーションに応じた独自の単位表示が可能です。 |
| D/A出力(/DAオプション) | 測定値をD/A変換して外部端子から出力します。外部記録計や測定システムへのデータ出力が容易に行えます。/F1オプションとの併用で、出力更新間隔を250μsに設定できます。 |
製品ラインアップ
ゲージ圧モデル
大気圧を基準とした圧力測定に対応するモデルです。6つのレンジを用意しており、幅広い用途に対応します。

| レンジ | 10kPa / 200kPa / 1000kPa / 3500kPa / 16MPa / 70MPa |
|---|---|
| 主な用途 | 圧力校正の基準器、生産ラインの検査、圧力損失測定など |
70MPaモデルについて
70MPaモデルはシールドゲージ圧です。高圧領域での測定に対応します。
絶対圧モデル
真空を基準とした圧力測定に対応するモデルです。大気圧測定や真空プロセスの監視に使用されます。傾き補正機能を搭載しており、本体を縦置きで使用する際の測定値オフセットを補正することができます。

| レンジ | 130kPa / 700kPa / 3500kPa |
|---|---|
| 主な用途 | 大気圧測定、真空プロセスの監視、圧力天びんを用いた校正での基準圧測定 |
差圧モデル
1台で差圧測定を行えるモデルです。2つの圧力入力ポートを搭載し、内蔵センサにより直接差圧を測定します。

| レンジ | 1kPa / 10kPa / 130kPa / 700kPa |
|---|---|
| 主な用途 | EV冷却系の圧力損失測定、HVAC試験、風洞試験、部品の圧力損失測定 |
用途例
業界ごとの用途例
MT300は、校正・計測の精度が求められる幅広い業界で活用されています。
| 計量標準・校正機関 |
|
|---|---|
| 自動車(EV) |
|
| 空調・家電 |
|
| 医療機器 |
|
| プラント |
|
| 産業機器 |
|
| インフラ |
|
| データセンター |
|
| クリーンルーム |
|
圧力校正における基準器
圧力天びん(デッドウェイト式圧力計)を用いた校正では、校正値が正しく発生されているかを確認するための基準器と、大気圧を測定するための高精度な圧力計が必要です。MT300は、この用途に求められる高精度・高分解能・長期安定性を備えています。
社内基準器としてMT300を使用する場合、長期安定性の高さにより校正サイクル間の精度ドリフトが小さく、再校正にかかるコストや管理負荷を低減できます。なお、MT300は国際比較においても仲介器として採用されており、計量標準の分野で幅広く活用されています。

EV冷却系の圧力損失測定
EVには、モーター・バッテリ・インバータ・パワー制御ユニットなど、多くの発熱デバイスが搭載されています。各デバイスの発熱量や適正温度が異なるため、1台の車両に複数の冷却系統が設けられることが一般的です。冷却系の設計・開発においては、冷却液が流れる流路の圧力損失測定が不可欠です。
MT300の差圧モデルは液体にも対応しており、冷却液の圧力損失を1台で高精度に測定できます。測定対象に適したレンジと分解能を備え、EV冷却系の性能評価・最適化に貢献します。

空調機器の性能評価
エアコンの冷暖房性能試験では、気流測定ノズル前後の差圧と気温・湿度から性能値を算出します。試験は均衡状態で行う必要があり、内部と外部の圧力を正確に測定することが求められます。MT300は/F1オプションにより急速に変動する圧力の高速測定に対応し、性能試験の精度向上を支えます。
同じ空調・家電分野では、掃除機の吸引力テスト(IEC60312)において、差圧モデルと絶対圧モデルを同期測定する構成も活用されています。

フィールドでの校正・メンテナンス
プラントなどのフィールド環境では、設置された伝送器の校正・検証・ループチェックを現場で行う必要があります。MT300の/DMオプションを使用すると、MT300から伝送器に24VDCを供給して駆動し、その出力信号(1-5Vまたは4-20mA)を直接測定するという一連の作業を1台で完結できます。
/EBオプションのリチウムイオンバッテリにより、AC電源のない現場でも約6時間の連続運転が可能です。GP-IB、USB、イーサネットの通信インタフェースを標準搭載しており、既存の測定システムとの連携も容易です。
横河計測について
事業内容
横河計測株式会社は、横河電機グループの計測器事業を担う企業です。オシロスコープ、パワーアナライザ、データアクイジション、光通信測定器、圧力計測器など、幅広い精密計測ソリューションの開発・製造・販売を手がけています。
横河電機グループは、精密計測器の開発・提供において100年を超える実績を持ちます。圧力計測の分野でも長年にわたり技術を蓄積し、独自開発のシリコンレゾナントセンサ技術を核とした圧力計測プラットフォームを展開しています。MT300をはじめ、圧力校正器CA700、圧力コントローラMC300など、ラボからフィールドまで対応する製品群を通じて、お客様の圧力計測ニーズを支えています。
会社概要

| 企業名 | 横河計測株式会社 |
|---|---|
| 所在地 | 〒192-8566 東京都八王子市明神町四丁目9番8号京王八王子明神町ビル |
| 設立年月 | 1954年07月 |
| URL | https://tmi.yokogawa.com/jp/ |