EVの冷却系開発における流路圧力損失測定のための圧力測定器の活用
液体の微小な差圧も1台で高精度に捉える、EV冷却系最適化のための圧力計測
課題
液体クーラントの圧力損失を測定するために、高精度な差圧測定値を担保する必要があります。
解決策
液体対応の差圧モデルと高感度センサにより、微差圧を1台で高精度に測定します。
期待効果
冷却系の電力消費低減と航続距離延伸につながる開発最適化が期待できます。
EV冷却系開発における圧力損失測定
電気自動車(EV)には、モーター・バッテリ・インバータ・パワー制御ユニットなど、多くの発熱デバイスが搭載されています。各デバイスは発熱量や適正温度が異なるため、1台の車両に複数の冷却系統が設けられることが一般的です。こうした水冷式デバイスの開発・設計段階では、クーラント(冷却液)が流れる流路の圧力損失を正確に把握することが不可欠です。
MT300差圧モデルは、液体にも対応する差圧測定器として、各デバイスの冷却流路における圧力損失を1台で高確度に測定する用途で活用されます。バッテリパック上部に設けられたウォータージャケットをはじめ、冷却回路上に配置されるさまざまな水冷式デバイスの流路設計評価に適用できます。

流路設計における課題
EVの普及拡大と脱炭素化の進展に伴い、航続距離の向上や電費の改善が自動車業界における競争軸のひとつとなっています。モーターやバッテリなどの発熱デバイスを効率よく冷却することは、車両全体の消費電力を抑え、航続距離を伸ばすうえで欠かせない要素です。冷却系の効率は、流路設計と、それを支える計測の精度に大きく左右されます。
冷却ポンプの消費電力削減
冷却システムの消費電力は、流路内で生じる圧力損失の大きさによって決まります。損失が大きいほど車両の電費や航続距離の低下要因となるため、流路設計の最適化にあたっては、発生する微小な圧力損失を高精度に捉えることが求められます。
液体の低圧域測定の難しさ
クーラントは液体であり、効率化された流路では圧力損失もごく小さな領域に入ります。一般的な高精度圧力計は気体のみを対象とするものが多く、液体の低圧域では精度が保証されないケースも見られます。結果として、冷却流路を詳しく評価できる計測手段が限られる状況が生じています。
評価システムの省力化
EVでは発熱量や適正温度が異なる複数のデバイスが搭載され、それぞれの冷却流路を個別に評価する必要があります。デバイスや流路に応じた圧力レンジへの対応、測定データ取得の効率化など、計測側にも多くの要求が生じます。
デジタル圧力計 MT300による解決

1台で完結する差圧直接測定
MT300差圧モデルは、内蔵した1つのセンサで差圧(ΔP)を直接測定する方式を採用しています。2台の圧力計でそれぞれの圧力を測定して差分を計算する一般的な方式では、各センサの確度が累積するため(例:0.01%×2=0.02%)、差圧測定の確度は低下しがちです。1センサ方式では確度の累積が生じず、測定システムの簡素化、省スペース化、データ取得の効率化にもつながります。
液体・気体に対応する仕様
MT300差圧モデルは、測定流体として気体および液体(非可燃性・非爆発性・非毒性・非腐食性の流体)に対応します。レンジは1kPa/10kPa/130kPa/700kPaの4種類から選択でき、クーラント流路の設計条件や想定される損失の大きさに応じて、適切なレンジと分解能を組み合わせられます。
液体にも対応できる背景には、金属製ダイアフラムで圧力を受け、内部に封入したシリコンオイルを介してセンサへ圧力のみを伝える構造があります。半導体ベースの高感度センサを測定流体から直接触れさせない設計のため、気体・液体のいずれに対しても安定した測定が可能です。
横河独自のシリコンレゾナントセンサ
MT300には、横河独自開発のシリコンレゾナントセンサが搭載されています。シリコンウエハ上に形成された振動子に圧力をかけ、共振周波数の変化から圧力を検出する構造です。2つの振動子の固有振動数の差から圧力を求める差動方式により、周囲温度などの外部環境の影響を相殺し、小さい温度依存性と高い分解能を両立しています。圧力標準の国際比較用仲介器(トランスファースタンダード)として採用されている点も、センサの長期安定性を裏付けています。
微小な圧力損失の高精度把握
最小レンジの1kPa差圧モデルでは、表示分解能0.00001kPa、相対確度±(0.01% of reading + 0.00025kPa)という細かな測定条件を備えています。冷却流路の効率化により小さくなった圧力損失も安定して捉えられるため、流路設計の評価精度向上に寄与します。
MT300活用による期待効果
MT300差圧モデルを活用することで、EVの冷却系開発において以下の効果が期待できます。
冷却ポンプの消費電力低減
微小な圧力損失まで高精度に把握できることで、流路設計上のボトルネックを特定しやすくなります。流路抵抗を抑えた設計が可能になれば、冷却ポンプに求められる駆動電力を抑える方向での最適化が見込まれます。
航続距離・電費の改善寄与
冷却系の消費電力はEVの電費全体に影響します。冷却流路の効率化を通じて冷却系の電力消費を抑えることは、車両全体のエネルギー効率を高め、航続距離の延伸や電費改善に寄与することが期待できます。
開発段階での評価効率化
1台で差圧を直接測定できるため、測定系統の簡素化と省スペース化が図れます。複数デバイスの流路評価を並行して進める開発現場でも、システム構成を合理化しながら必要な精度を担保することが可能です。
長期安定運用による信頼性確保
MT300は測定確度0.01%を12か月間保証しており、シリコンレゾナントセンサによる長期安定性を備えています。例えば一年に一回の再校正サイクル間の精度ドリフトが小さく、開発拠点での継続的な計測基盤として長期にわたり活用することが期待できます。
関連製品・サービス
MT300 デジタル圧力計
デジタル圧力計 MT300は、横河計測独自のシリコンレゾナントセンサを搭載した高精度圧力計です。0.01%の確度(精度)と、長年にわたる測定データの蓄積に裏付けられた長期安定性を備えています。一般的な高精度圧力計では対応が難しい液体の測定や、1台での差圧測定にも対応します。
ラボ環境での精密校正からフィールドでの伝送器校正まで、バッテリ駆動による可搬性と高い確度を両立し、幅広い圧力計測ニーズに応えます。