近年注目を集めている3Dプリンターには、一般消費で普及している家庭用途のものとは別に「業務用3Dプリンター」があります。価格はもちろんのこと、造形できる幅の違いや材料の違いなど、両者には大きな差異があります。この記事では、業務用3Dプリンターの概要や選び方のポイントについてご紹介します。
3Dプリンターとは、PC内で作成した3Dのモデリングデータを元に、金属や樹脂の素材を積層して立体モデルを造形する機械です。機械を用いることで、これまで切削や射出成型でなければ作成できなかった形状を比較的簡単に造形できるため、製造業の分野では試作開発などで用いられることが多いです。例えば、BMWでは自動車部品の製造機器として3Dプリンターを活用し、NASAでは火星探査機「ローバー」の部品を3Dプリンターで製造しています。
業務用の3Dプリンターは非常に高額で、金属用の3Dプリンターであれば億単位のものも珍しくありません。しかし、近年では価格を抑えたものやレンタルサービスの普及により、3Dプリンターの導入を検討する企業も増えてきています。
3Dプリンターには業務用・家庭用のものがありますが、モデリングデータを元に立体モデルを造形するという基本的な仕組み・用途は同様です。
しかし、利用用途に違いはなくとも、両者には精度・強度・価格の観点において違いが生まれやすくなっています。そのため、ソフトウェアで作成した3Dモデリングを高い再現性で造形したい場合や、製品として耐えうる強度の高いものを造形したい場合は、業務用3Dプリンターを選ぶ必要があります。
製品名 | 特徴 |
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Ultimaker 3Dプリンター | プロトタイプから製造支援、最終用途部品まで適用でき、コンパクトな設置面積にも関わらず造形エリアが広いのが特長の3Dプリンターです。 |
Nexa3D NXE400 3Dプリンター | 大容量、超高速、高解像度を兼ね備えた産業用3Dプリンターです。 |
DesktopMetal 3Dプリンター | 複合材プリントから量産金属プリントまでの高度産業用3Dプリンターです。 |
マイクロ領域の産業用 3Dプリンター | 世界トップクラスの超精密水準を実現する、マイクロ射出成形の解像度と公差に匹敵する機能を備えた、産業用アプリケーション向けの精密微細構造を提供します。 |
Markforged | 治工具やエンドユースパーツといった試作に留まらない利用にフォーカスを当てた製品です。従来アルミを使用していたパーツの置換えが可能で、大幅なコスト及び工数の削減を見込めます。 |
Figure 4® | 高強度・高耐候性・耐薬品性などに優れたマテリアルを最新のFigure4テクノロジーで超高速かつ高精細な表現を実現した3Dプリンターです。 |
Phrozen Sonic Mighty 8K | 幅218mmx奥行123mmx高さ235mmの幅広い印刷範囲で8K精度の光造形が可能な3Dプリンター機です。 |
3Dプリンタによる受託造形 | 造形が困難と言われている銅の造形が可能で、高周波焼入れ用コイルの製作実績も多数ございます。 |
Ultimakerは、オランダの3Dプリンターメーカーで、同社の熱溶解フィラメント方式(FFF/FDM方式)プリンターは全世界で使用されています。
Ultimaker 3Dプリンターは、プロトタイプから製造支援、最終用途部品まで適用でき、コンパクトな設置面積にも関わらず造形エリアが広いのが特長です。
また、オープンフィラメントシステムを採用しているため、メーカー純正だけでなくサードパーティ製フィラメントから、あらゆる種類のフィラメントを選択できるメリットがあります。
Nexa3Dは、カリフォルニア州 ベンチュラの3Dプリンターメーカーで、同社の独自技術であるLSPc技術(Lubricant Sublayer Photo-curing)は、同じクラスの他の3Dプリンターよりも最大6.5倍速い造形速度が可能です。
LSPcは、光学歪みによってパフォーマンスが低下する可能性があるDLPとは異なり、ビルドプレートのすべての領域に均一で高出力で歪みのない光出力を可能とし、パーツ精度と均一性を確保します。
DesktopMetalは、マサチューセッツ州バーリントンの3Dプリンターメーカーで、同社プリンターは、複合材もしくは、小規模生産用、量産用の金属3Dプリントを可能とします。
microArch®シリーズは、マイクロ射出成形の解像度と公差に匹敵する機能を備えた、産業用アプリケーション向けの精密微細構造を提供します。BMF社の超高精度AM技術により、樹脂部品の加工交差は±10um/±25umまで縮小され、リードタイムは最短1営業日まで短縮されています。 この金型不要の製造プロセスによって射出成形用の金型作成費用の削減が可能となり、精密部品の開発プロセスは新たなステージに移りつつあります。
Markforged(マークフォージド)の3Dプリンタは、治工具やエンドユースパーツといった試作に留まらない利用にフォーカスを当てた製品です。
母材であるプラスチックとカーボンをはじめとする長繊維を配合することでアルミ切削パーツ並みの強度を実現できるため、従来アルミを使用していたパーツの置換えが可能となります。それにより、製造コストおよび工数の大幅な削減を見込むことができ、ものづくりのプロセスに劇的な変化をもたらします。
Figure4は高強度・高耐候性・耐薬品性などに優れたマテリアルを最新のFigure4テクノロジーで超高速かつ高精細な表現を実現した3Dプリンターです。
100mm/時のスピードにより、即日プロトタイピングが可能な他、3DSystems社製品の特徴である綺麗な造形結果が得られます。
ビッグスケールでありながらも思わず息を吞む様な高精度な出力品が自宅や会社で印刷可能な時代に。幅218mmx奥行123mmx高さ235mmの幅広い印刷範囲で小さい出力品の大量複製や大型出力品のワンパーツ印刷などが可能です。
造形が困難と言われている銅の造形が可能で、高周波焼入れ用コイルの製作実績も多数あります。
保有しているプリンターは、パウダーベッド方式でレーザーで金属粉末を溶融し、凝固させるタイプです。特徴として、精密な造形ができるので、複雑な形状のものを造形することに適しております。
業務用3Dプリンターを選ぶ際はいくつか気を付けるべきポイントがあります。導入をした後に思っていた造形を実現できず、実用化が出来ないまま手放してしまうといったケースは避けたいものです。ここでは、適切な業務用3Dプリンターを選ぶためのポイントして「用途」「造形方式」「材料」という3つの視点をご紹介します。
基本的に業務用3Dプリンターは使用用途や目的を想定して開発されているものです。例えば、試作開発で用いられるのであれば、大まかな形状を確認する簡易な試作なのか、あるいは製品としての強度が求められる機能試作なのかによって3Dプリンターに必要な機能や精度は異なってきます。確かに3Dプリンターは一台導入すれば様々な用途で活用できますが、主な使用目的が定まっていないと利用頻度が減っていき、費用対効果が出せないということにも繋がってしまいます。
3Dプリンターには造形方式による種類分けがあり、代表的なものとしては「メタルデポジッション方式」「FDM(熱溶解積層)方式」「バインダージェット方式」などが挙げられます。それぞれの造形方式には特徴や得意・不得意があるため、最適なものを選択する必要があります。例えば、高い精度や再現性を求めるのならば光造形方式・MJT方式を選択し、大きな造形や高い強度が必要な場合はFDM方式を選択し、生産性を重視するならばSLS方式を選択するなどの判断が必要です。
用途・造形方式を決めた次は、使用する材料・素材を決めます。しかし、3Dプリンターで使用できる素材の種類は非常に豊富なため、素材ごとの特徴や対応している造形方式を事前によく調べておく必要があります。
【3Dプリンターで使用できる材料例】
・ABS
・ASA
・PLA
・Ultem
・石膏
・ナイロン6
・ナイロン11
・ナイロン12
・光硬化性樹脂
・ポリカーボネート
・ポリプロピレン(PP)
・ワックス
業務用の3Dプリンターは非常に高額で、数千万のものもあれば、億単位のものも珍しくありません。価格面は導入を検討している企業にとってもネックとなるポイントのため、国の支援制度である「ものづくり補助金」を利用するのがおすすめです。「ものづくり補助金」の制度は中小企業・小規模事業者向けの支援制度であり、サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するために成立されています。補助金の支給額は購入予定の3Dプリンターによって異なりますが、1000万円の補助を受けられることもあるため、一度公式の情報をチェックしてみてください。
今回は業務用の3Dプリンターについてご紹介しました。業務用・家庭用の3Dプリンターの違いについて、業務用3Dプリンターの選び方のポイントとして「用途」「造形方式」「素材」という3つの観点について、そして、導入の支援となる「ものづくり補助金」についてそれぞれご紹介しています。
evortでは業務用3Dプリンターに関連するおすすめの製品を掲載していますので、ぜひ一度参考にしてみてください。