産業用ロボットは、さまざまな部品と周辺機器から構成されていますが、その中でも特に重要な役割を担っているのがロボットアームです。ロボットアームには多くの種類があり、それぞれが異なった特徴を有し、選定時に考慮すべきポイントがいくつもあります。
そこで今回は、ロボットアームの代表的な種類や種類別の特徴、おすすめの関連製品についてご紹介します。
ポイント
・プログラミングが可能な人間の腕に似たメカニカルアームの一種である「ロボットアーム」
・ロボットアームの代表的な種類は「垂直多関節ロボット」「スカラロボット」「パラレルリンクロボット」「直交ロボット」「双腕ロボット」に分類される
・ロボットアームに関連するおすすめ製品をご紹介
ロボットアームとは、プログラミングが可能な人間の腕に似たメカニカルアームの一種です。産業用ロボットの中で広く採用されており、自動車製造や食品工場、金属加工、医療業界などさまざまな分野で活用されています。
一般的には6軸の動きを持つロボットアームがよく見られ、各軸の動きを人間の体の動きに近づけることで、効率的に人の作業を代替することが可能です。
ロボットアームは、一般的に人間の関節に相当する部分をジョイント、そして人間の骨に相当する部分をリンクとして構成されています。ジョイントはリンクの向きを変えることができるため、ジョイントの数が多いほどロボットアームの動きが滑らかになります。一方、リンクはロボットアームの動きによって生じる負荷に耐えられる十分な剛性を有していることが求められます。
また、ロボットアームの関節部分(ジョイント)を動かすためには、アクチュエータや減速機、エンコーダなどが必要となります。アクチュエータはエネルギーを与えてロボットアームを動かす役割を果たし、減速機はアクチュエータが発生させる動力を適切な速度に減速し、エンコーダは位置や角度を計測して制御にフィードバックします。これらの要素が連携して、ロボットアームが正確かつ効率的に動作するようになっているのです。
アクチュエータは、動力源から得られたエネルギーを回転や直線運動などの様々な動作に変換する装置です。ロボットのジョイントには欠かせない部品であり、ロボットアームを回転させたり、直線的な動きを実現するために重要な役割を果たします。
アクチュエータにはモーターが組み込まれていますが、産業用ロボットでは非常に高い精度が求められるため、一般的なおもちゃなどに使われるモーターでは対応できません。そのため、サーボモータが使用されます。サーボモータは高度な制御が可能なモータで、回転周期や速度を精密に制御できます。
アクチュエータは電気、油圧、空圧などのエネルギーを利用して動作します。一般的には電気が最もよく使われますが、油圧も一部の場合に使用されます。油圧のメリットは出力が大きく、耐衝撃性に優れていることです。
減速機は、モーターと連携してその出力を増幅させる装置です。自転車のギアを重いギアに切り替えることで少ない回転数で大きな推進力が得られるように、減速機で小さなモーターの力を増幅させることで、重いロボットアームを効率的に制御できるようになります。
エンコーダは、モータの回転角や回転数を検出する装置です。特に、アクチュエータの位置制御において重要な役割を果たしています。回転した方向や回転した角度を正確に把握することが可能です。
光学式エンコーダが使われているのが一般的で、モーターの回転軸に円盤が取り付けられており、光を透過するスリット、発光ダイオード、そして光の強さを検出するフォトダイオードで構成されています。
モーターが回転すると、光がスリットを何回通過したかによって、回転角や回転速度が計測されます。このようにしてエンコーダはモータの動作を精密に把握し、正確な位置制御を実現するのです。
ロボットアームはその構造によっていくつかの種類に分類され、それぞれの種類によって得意な作業や適した用途は異なっています。
現在の産業用ロボットにおいて主流となっているのが、「垂直多関節ロボット(Vertical Articulated Robot)」です。人間の腕のような自由な動きを再現できる特徴があります。
多関節構造と幅広い可動領域により、高い自由度を持ち、さまざまな複雑な作業に適応できますが、一方で制御やメンテナンスはやや複雑になる傾向があります。
汎用性が高く、比較的小さな設置面積で広範な作業範囲に対応できるため、産業用ロボット業界で最も広く導入されている種類となっています。
スカラロボットは、複数の回転軸とアームを持ち、先端にはZ軸があります。これらの回転軸とアームは、全てロボット先端の水平移動を行うために使用されます。回転軸の動きにより、ロボット先端をワークの真上に移動させ、その後Z軸を用いてワークに対して作業を行います。
このロボットの構造は比較的単純で制御が容易であり、高速かつ高精度な動作が可能なのが特徴です。垂直多関節ロボットのような3次元的な動作はできませんが、一方向からの単純作業を効率的に実行し、人の作業をロボットに置き換える際に非常に適しています。
通常の産業用ロボットは、人の操作制御の下でマニピュレータと呼ばれる機構部分を駆動して動作します。パラレルリンクロボットは、このような産業用ロボットの中でも特徴的な種類で、マニピュレータに「パラレルリンク」という仕組みを採用しています。パラレルリンクとは、ロボットの関節にあたるリンク(軸)が並列に連結されており、これらのリンクが連携して稼働することで、高速かつ精密な動作が可能となっています。
このパラレルリンクロボットは、目視検査では難しい製品の微細な差異を検出する作業や、高速で流れる製品の箱詰めなど、さまざまな作業に対応できます。特に製造ライン上での作業において、高い効率性と精度を発揮するロボットとして利用されています。
直交ロボットは産業用ロボットの一種で、2〜3つの直交するスライド軸で構成されています。英語では「Cartesian coordinate robot」または「ORTHOGONAL ROBOT」と表現されることもあります。スライド軸を使って移動するため、ガントリーロボットとも呼ばれています。
直交ロボットの特徴は、非常にシンプルな構造を持っていることです。そのため、生産技術部門で自社製造される企業もあります。加えて、状況に応じて設計を変更することが容易であり、臨機応変なニーズに対応する強みがあります。この柔軟性により、様々な用途に合わせて直交ロボットを活用することが可能となっています。
双腕ロボットは、ロボットの胴体とそこから伸びる2本の腕(アーム)を持つロボットのことを指します。それぞれのアームに異なる役割を与え、個別に動作させることができるため、双腕ロボットは複雑な作業を実行できる利点があります。
自社に適したロボットアームを選ぶために重視したいポイントについていくつかご紹介します。
ロボットアームの選定の際には、そのアームが届く範囲や作業可能な範囲内で目的の作業を実行できるかを検討する必要があります。もし不可能な場合は、ロボットアームの再選定やライン設計の見直しが必要となります。
一般的には軸数が多いほど自由度が大きくなるため、複雑な動きができる垂直多関節ロボットが主流です。しかし、例えば直角座標型(直交)ロボットはシンプルな動きしかできないものの、高速な動きが可能であり位置決め精度も高く、メンテナンス性にも優れたメリットがあります。それぞれの用途やニーズに合わせて最適なロボットアームを選ぶことが重要です。
ロボットアームが持ち上げることのできる最大の重量が「可搬重量」です。各ロボットアームには、カタログや仕様書で明示された可搬重量が設定されていますので、実際に運搬する対象物の重量を把握し、適切なロボットアームを選定するようにしましょう。無理のない適切な選択をすることで、アームへの負担を軽減し、効率的で安全な作業を実現しやすくなります。
工場において、ロボットの動作速度と位置精度は非常に重要な要素です。生産性向上のためには、迅速な動作速度が必要ですが、同時にロボットの停止時に振動が残らず、高い精度で停止できることも欠かせません。
ロボットアームが停止した際に揺れが残ってしまうと、精密部品の組み立てなどの工程において、次の作業に移行することができません。移動速度が速くても、振動が収束するまで待たなければならず、結果として生産性が低下してしまいます。したがって、ロボットの安定性と高い位置精度を確保することが、効率的な生産を実現するために求められるのです。
生産ラインにロボットアームを組み込む場合、周辺機器との連動性にも十分な配慮が必要です。ロボットの動作速度が優れていても、周辺機器の処理能力が追いつかなければ、ロボットの性能を最大限に発揮できません。逆に周辺機器が遅すぎると、ロボットが待ち時間を余儀なくされ、生産効率が低下する可能性があります。
加えて、ロボットアームを既存の生産管理システムなどと連携させる場合には、システム間のスムーズな連携を確認することが重要です。ロボットアームの選定段階でこの連携を十分に検討しておくようにしましょう。
製品名 | 特徴 |
---|---|
キタガワ製ロボットハンド | チャックメーカーならではの高い精度と耐水・耐久性が特徴のロボットハンドです |
TMロボット | 「SMART・SIMPLE・SAFE」のコンセプトで作られたロボットです |
パレタイザロボット「YZロボット Pシリーズ」 | 省スペースで設置できる汎用性の高い産業用ロボットを用いたパレタイザロボットです。 オールインワンパッケージで手軽に導入が可能で、パワフルな搬送を実現することで、パレタイズ工程の生産性向上を支援します。 |
RobotFit(ロボットフィット) | 水、ミスト、油、ホコリなど飛散物から守るロボットカバーです |
ヒト型ロボット「NEXTAGE」 | オールインワンタイプのヒト型ロボットです |
キタガワ製ロボットハンドの特徴は、チャックメーカーならではの高い精度と耐水・耐久性。切粉対策を強化し、メンテナンス性の向上も実現しました。
北川鉄工所は従来の“つかむ”技術に新たな付加価値を加え、時代に合わせたニーズへの貢献を続けていきます。
TMロボットは、「SMART・SIMPLE・SAFE」のコンセプトで作られたロボットです。
【SMART】ロボットとカメラ・ビジョン機能が統合された
【SIMPLE】簡単操作の革新的なユーザーインターフェース搭載の
【SAFE】国際安全規格を取得した協働ロボットです。
『YZロボット Pシリーズ』は、省スペースで設置できる
汎用性の高い産業用ロボットを用いたパレタイザロボットです。
オールインワンパッケージで手軽に導入が可能で、パワフルな搬送を実現することで、パレタイズ工程の生産性向上を支援します。
塗装、食品加工、組立、搬送、研磨、成型など協働ロボットを使用する様々な環境、シーンで使用でき、ロボットを保護します。『RobotFit(ロボットフィット)』でより清潔に、より安心してロボットを使用でき、ロボット本体の長寿命化につながります。
NEXTAGEは、「人と一緒に働くヒト型ロボット」というコンセプトのもと、製造現場の安全性確保と生産性の向上を目的に開発されました。
頭部と両腕にカメラを持ち、周囲の環境や作業対象を認識しながら作業することが可能な汎用性の高いロボットです。
今回はロボットアームについてご紹介しました。ロボットアームの構成要素について、代表的な種類として「垂直多関節ロボット」「スカラロボット」「パラレルリンクロボット」「直交ロボット」「双腕ロボット」について、そして、適切なロボットアームを選ぶための4つのポイントについて、それぞれ紹介しています。
evortでは、ロボットアームに関連するおすすめの製品を掲載していますので、ぜひ一度ご覧になってください。