エリアスキャンカメラの仕組みと得意な検査対象|ラインスキャンとの使い分け
本記事では、エリアスキャンカメラの撮像原理やシャッタ方式の違い、得意な検査シーン、ラインスキャンカメラとの使い分けの判断基準、そしてセンサ解像度とレンズ選定の関係までを解説します。
この記事で分かること
- エリアスキャンカメラの撮像原理と二次元センサの基本的な仕組みがわかる。
- グローバルシャッタとローリングシャッタの違いと検査への影響を理解できる。
- エリアスキャンカメラが得意とする検査シーンを具体的に把握できる。
- ラインスキャンカメラとの使い分けを判断する基準がわかる。
- センサ解像度とレンズ選定の関係を理解し、システム設計に活かせる。
エリアスキャンカメラの撮像原理
エリアスキャンカメラは、二次元に配列された画素(ピクセル)を持つイメージセンサを使い、一度の露光で面全体を撮像します。フィルムカメラやスマートフォンのカメラと同様の原理であり、産業用途ではCCDセンサやCMOSセンサが用いられます。
対象物にレンズを通じて結像された光が、センサ上の各画素で電荷に変換されます。この電荷をデジタル信号として読み出すことで、一枚の画像データが生成されます。
撮像は「露光→電荷蓄積→読み出し」というサイクルで行われます。検査では、対象物が視野内に入ったタイミングでトリガ信号を与え、必要な瞬間だけを撮像するのが一般的です。
グローバルシャッタとローリングシャッタの違い
エリアスキャンカメラのシャッタ方式には、グローバルシャッタとローリングシャッタの二種類があります。どちらを選ぶかによって、動いている対象物を撮像したときの画質が大きく変わります。
グローバルシャッタの特徴
グローバルシャッタは、センサ上のすべての画素が同時に露光を開始し、同時に終了する方式です。すべての画素が同じ瞬間を捉えるため、移動中の対象物でも歪みのない画像が得られます。
搬送中のワークを撮像する検査ラインや、振動がある環境では、グローバルシャッタが適しています。ただし、同方式に対応したセンサはコストが高くなる傾向があります。
ローリングシャッタの特徴
ローリングシャッタは、センサの行(ライン)ごとに順番に露光していく方式です。上の行と下の行で露光タイミングがずれるため、動いている対象物を撮像すると像が斜めに歪む現象(ローリングシャッタ歪み)が起こります。
静止した対象物の撮像であれば問題なく使用でき、センサのコストが抑えられる利点があります。対象物が確実に停止した状態で検査できる工程では、有力な選択肢となります。
検査用途での選び方
| 項目 | グローバルシャッタ | ローリングシャッタ |
|---|---|---|
| 露光方式 | 全画素同時 | 行ごとに順次 |
| 動体撮像 | 歪みなし | 歪みが発生する可能性あり |
| 静止物撮像 | 問題なし | 問題なし |
| コスト傾向 | 高め | 低め |
| 推奨シーン | 搬送中の検査・振動環境 | 停止状態での検査 |
エリアスキャンが適する検査シーン
エリアスキャンカメラは、視野内に収まる対象物を一度に撮像できるため、比較的小さなワークや定位置での検査に向いています。ここでは代表的な検査シーンを整理します。
静止状態での外観検査
ステージ上に固定されたワークの表面傷、汚れ、異物の有無を確認する検査に適しています。対象物が動かないため、ローリングシャッタのカメラでも十分に対応できます。
電子部品の実装検査やコネクタのピン曲がり検査など、限られた視野で高精度な判定を行うケースが代表例です。
位置決め・アライメント検査
組立工程でワークの位置ずれや回転角度を検出する用途にも多く使われています。一枚の画像から二次元的な位置情報を取得できるため、X方向・Y方向のずれを同時に把握できます。
ロボットビジョンとの連携
ピッキングロボットのハンド先端にエリアスキャンカメラを搭載し、対象物の位置と姿勢を認識する用途があります。撮像範囲が面で取得できるため、対象物の形状特徴を一度に捉えられます。
ばら積み部品の認識やトレー上のワーク検出など、位置が毎回異なる状況にも対応しやすい方式です。
ラインスキャンカメラとの判断基準
エリアスキャンカメラとラインスキャンカメラは、それぞれ得意な検査領域が異なります。どちらを選ぶかは、対象物の大きさ・搬送状態・求める解像度によって決まります。
対象物のサイズと搬送状態
視野内に収まるサイズの対象物であれば、エリアスキャンカメラで一度に撮像できます。一方、フィルム・鋼板・長尺基板のように視野に収まりきらない連続体を検査する場合は、ラインスキャンカメラが適しています。
対象物が一定速度で搬送される環境では、ラインスキャンカメラが搬送方向に沿って高解像度の画像を合成できます。搬送が間欠的で停止タイミングがある場合は、エリアスキャンカメラが導入しやすくなります。
求める解像度と視野の関係
広い領域を高解像度で撮像したい場合、エリアスキャンカメラではセンサの画素数による制約を受けます。ラインスキャンカメラは、搬送方向の解像度を搬送速度とライン読み出し速度で調整できるため、長手方向に高解像度を確保しやすい構造です。
逆に、狭い視野で十分な解像度が得られる検査であれば、エリアスキャンカメラのほうがシステム構成がシンプルになります。
選定の判断フロー
| 判断項目 | エリアスキャンが有利 | ラインスキャンが有利 |
|---|---|---|
| 対象物のサイズ | 視野内に収まる | 視野に収まらない連続体 |
| 搬送状態 | 停止または間欠搬送 | 連続搬送 |
| 広域×高解像度 | 画素数に制約あり | 搬送方向に高解像度を確保可能 |
| システム構成 | シンプル(エンコーダ不要) | エンコーダ・照明同期が必要 |
センサ解像度とレンズ選定の関係
エリアスキャンカメラの検査性能は、センサの画素数だけでなく、レンズとの組み合わせによって決まります。検出したい欠陥のサイズから逆算して、センサとレンズを選定することが重要です。
画素分解能の考え方
検査で検出すべき欠陥のサイズに対して、1画素あたりの実寸法(画素分解能)が十分に小さい必要があります。一般的には、検出したい欠陥サイズに対して1画素の実寸法がその半分以下となるように設計します。
画素分解能は、センサの画素ピッチとレンズの倍率によって決まります。同じセンサでもレンズの倍率を変えれば画素分解能を調整できるため、両者をセットで検討します。
視野とワーキングディスタンスの調整
レンズの焦点距離を長くすると倍率が上がり画素分解能は向上しますが、視野は狭くなります。逆に短焦点レンズでは広い視野を確保できますが、1画素あたりの実寸法が大きくなり細かい欠陥が検出しにくくなります。
ワーキングディスタンス(レンズ先端から対象物までの距離)も設置環境に合わせて考慮が必要です。視野・分解能・ワーキングディスタンスの三要素をバランスさせてレンズを選定します。
センササイズとの整合
レンズにはイメージサークル(結像可能な範囲)があり、使用するセンササイズ以上のイメージサークルを持つレンズを選ぶ必要があります。センササイズに対してイメージサークルが小さいと、画像の周辺部が暗くなる「ケラレ」が発生します。
センサのフォーマットに適合したレンズマウントを確認し、光学的に整合の取れた組み合わせを選定することが安定した検査画像の取得につながります。
[エリアスキャンカメラ]に関連するFAQ
エリアスキャンカメラとラインスキャンカメラの違いは何ですか?
エリアスキャンカメラは二次元のセンサで面全体を一度に撮像し、ラインスキャンカメラは一列のセンサで搬送方向に画像を合成します。対象物のサイズや搬送状態に応じて使い分けます。
グローバルシャッタとローリングシャッタはどちらを選べばよいですか?
搬送中のワークを撮像する場合はグローバルシャッタが適しています。対象物が確実に停止した状態で検査できる工程であれば、コストを抑えられるローリングシャッタも選択肢になります。
エリアスキャンカメラで広い範囲を高解像度で撮像できますか?
センサの画素数に制約があるため、広い範囲と高い解像度を両立するのは難しい場合があります。視野が広く高解像度が必要な場合は、ラインスキャンカメラの検討やカメラ複数台の構成も選択肢となります。
レンズ選定ではどのような点に注意すべきですか?
検出したい欠陥のサイズから画素分解能を逆算し、焦点距離・視野・ワーキングディスタンスのバランスを取ることが重要です。使用するセンササイズに対応したイメージサークルを持つレンズを選ぶ必要もあります。
エリアスキャンカメラはどのような検査に向いていますか?
静止状態の外観検査、位置決め・アライメント検査、ロボットビジョンとの連携などに向いています。視野内に収まるサイズのワークを対象とした検査で導入しやすい方式です。
この記事のまとめ
- エリアスキャンカメラは二次元センサで面全体を一度に撮像する方式である。
- グローバルシャッタは動体撮像に強く、ローリングシャッタは静止物の撮像でコストを抑えられる。
- 静止検査、位置決め、ロボットビジョンなど視野内に収まる対象物の検査に適している。
- ラインスキャンカメラとの使い分けは、対象物のサイズ・搬送状態・求める解像度で判断する。
- センサ解像度とレンズの組み合わせを検出したい欠陥サイズから逆算して選定することが重要である。
[産業用カメラ]
関連資料ダウンロード
産業用カメラの関連資料ダウンロード
産業用カメラに関してメーカー・販売企業に問い合わせ
産業用カメラの関連記事
マシンビジョンカメラとは|特徴・用途例・選定ポイントを解説
マシンビジョンカメラの基本的な仕組みと特徴、製造現場での具体的な用途例、選定時に押さえるべきポイントをわかりやすく解説します。
ラインスキャンカメラとは? 特徴や選び方のポイントを解説
ラインスキャンカメラの仕組みや特徴、エリアカメラとの違い、画素数・ラインレートなど選定時のポイントをわかりやすく解説します。
外観検査に求められるカメラの特徴とは? エリアカメラとラインカメラの違いとおすすめ関連製品をご紹介します
外観検査用カメラの導入メリットや画像処理技術を活用した検査の仕組み、エリアカメラとラインセンサカメラの違いと選び方のポイントを解説します。
FAカメラとは|工場自動化で求められる機能と選定基準
FAカメラの定義や一般的なカメラとの違い、工場自動化ラインで求められる機能・撮像方式・周辺機器との連携・選定基準を体系的に解説します。
TDIカメラの動作原理と高感度撮像の仕組み|通常ラインスキャンとの性能差
TDIカメラの動作原理を通常のラインスキャンカメラと比較しながら解説。段数による感度向上の仕組み、高速搬送ラインでの活用場面、導入時の同期設計要件を整理する。
フレームグラバーの役割と必要になる場面|インターフェース別の選び方
フレームグラバーの基本的な役割と、CoaXPressやCamera Linkなどフレームグラバーが必須となるインターフェース規格を解説。GigE VisionやUSB3 Visionとの構成の違い、選定時に確認すべき仕様項目を整理します。
CoaXPressとは?規格のメリットやCoaXPressカメラ・製品を紹介
CoaXPress(CXP)は1本の同軸ケーブルで高速データ転送・制御・電源供給を実現する産業用画像処理の国際規格です。規格の仕組みやメリット、他インターフェースとの違い、適した用途を解説します。