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TDIカメラの動作原理と高感度撮像の仕組み|通常ラインスキャンとの性能差

TDIカメラは、複数のラインセンサで同一対象を繰り返し露光し、信号を蓄積することで高感度撮像を実現するカメラ方式である。高速搬送される対象物を低照度環境でも高コントラストに撮像できるため、半導体ウェーハ検査やディスプレイパネル検査などで広く採用されている。
本記事では、TDI(Time Delay Integration)の動作原理と段数の関係、通常のラインスキャンカメラとの性能差、導入時に考慮すべき搬送同期やシステム構成の要件を解説する。

この記事で分かること

  • TDIカメラの動作原理と、段数が感度に与える効果を理解できる。
  • 通常のラインスキャンカメラとの感度・ノイズ特性の違いを把握できる。
  • 半導体検査やディスプレイ検査など、TDIカメラが有効な用途を確認できる。
  • 搬送速度とライン同期に関する設計上の要件を整理できる。
  • 導入時に検討すべきシステム構成のポイントがわかる。

TDIの動作原理と段数の意味

TDI(Time Delay Integration)は、搬送方向に並んだ複数のラインセンサが同一の被写体領域を順次撮像し、得られた電荷を加算していく方式である。通常のラインスキャンカメラが1ライン分の露光で画像を取得するのに対し、TDIカメラは複数回の露光信号を蓄積するため、同じ搬送速度でも高い感度が得られる。この蓄積に使われるライン数を「段数(ステージ数)」と呼ぶ。

電荷蓄積の流れ

被写体がセンサ上を移動すると、1段目のラインセンサがまず電荷を生成する。被写体の移動に同期して、この電荷が2段目のラインセンサへ転送され、2段目で新たに生成された電荷と加算される。この転送と加算を段数分だけ繰り返し、最終段で蓄積された電荷が読み出される。

段数と感度向上の関係

理論上、N段のTDIセンサでは信号量がN倍に増加する。一方、ノイズはランダムノイズが支配的な場合にN の平方根に比例して増加するため、信号対雑音比(SNR)は段数の平方根に比例して改善される。段数が多いほど感度面で有利だが、センササイズの増大やデータ転送量の増加といったトレードオフも生じる。

CCD方式とCMOS方式

従来のTDIカメラはCCD型が主流であり、電荷転送の仕組みとTDIの蓄積方式が原理的に親和性が高い。近年はCMOS型TDIセンサも実用化されており、読み出し速度の高速化や消費電力の低減が図られている。方式の選択はライン速度やフレームレートの要件に応じて検討する必要がある。

通常ラインスキャンカメラとの性能比較

TDIカメラと通常のラインスキャンカメラは、いずれも搬送方向にスキャンして画像を取得する点では共通している。しかし、感度特性と適用条件に明確な違いがある。用途に応じた選定のために、両者の性能差を整理する。

比較項目通常ラインスキャンカメラTDIカメラ
露光方式1ライン1回の露光複数ライン(段数分)の蓄積露光
感度1ライン分の電荷量に依存段数に比例して信号量が増加
SNR基準段数の平方根に比例して改善
搬送速度への適応速度が上がると露光時間が短縮し感度低下段数で補償できるため高速搬送に有利
同期要件エンコーダ同期で十分搬送速度と電荷転送速度の精密な同期が必要
システム複雑性比較的シンプル同期制御・照明設計がより高度

通常のラインスキャンカメラは搬送速度が上がるほど1ラインあたりの露光時間が短くなり、感度が低下する。照明の増強で補う方法もあるが、対象物への熱影響や照明コストの上昇が課題となる。

TDIカメラは段数による信号蓄積で感度を確保できるため、照明強度に過度に依存しない設計が可能になる。ただし、搬送方向の速度ムラや振動がSNR劣化に直結するため、機械系の精度が問われる。

TDIカメラが有効な検査用途

TDIカメラの強みは、高速搬送かつ低照度の条件で高コントラスト画像を取得できる点にある。この特性が求められる代表的な検査工程を整理する。

半導体ウェーハ・マスク検査

半導体の製造工程では、微細なパターン欠陥を高速に検出する必要がある。ウェーハやフォトマスクの表面検査では、高解像度と高スループットの両立が求められるため、TDIカメラが広く採用されている。暗視野照明との組み合わせにより、微小な異物やパターン欠陥を効率的に検出できる。

FPD・ディスプレイパネル検査

液晶パネルや有機ELパネルの検査では、大面積の基板を高速に搬送しながら画素欠陥やムラを検出する。基板サイズが大きくなるほど検査時間の短縮が重要となり、TDIカメラの高感度特性がスループット向上に寄与する。

印刷・フィルム・シート検査

ウェブ搬送される印刷物やフィルムの表面検査でも、TDIカメラは有効である。搬送速度が高い条件下でも安定した画質を確保でき、色ムラ・汚れ・印刷欠陥の検出精度を維持できる。連続搬送ラインとの親和性が高い点も利点となる。

搬送速度とライン同期の設計要件

TDIカメラで高画質を維持するためには、搬送速度と電荷転送クロックの精密な同期が欠かせない。同期がずれると、蓄積される電荷が被写体の同一点に対応しなくなり、画像のぼけやSNRの低下を招く。ここでは同期設計の要点を整理する。

エンコーダ同期の精度

搬送速度の変動に追従するため、一般的にはロータリーエンコーダやリニアエンコーダのパルス信号をTDIカメラのライン同期トリガーとして用いる。エンコーダの分解能が不足すると、搬送速度の微細な変動に追従できず画質が劣化する。段数が多いカメラほど、蓄積時間が長くなるため速度変動の影響を受けやすい。

搬送系の速度安定性

搬送系のジッタ(速度の微小変動)はTDIカメラの画質に直接影響する。段数分のライン露光期間にわたって速度が安定している必要があるため、搬送ローラーやステージの速度制御精度が重要になる。振動源の特定と抑制も設計段階で考慮すべき事項である。

搬送方向と直交方向の位置精度

TDIの電荷蓄積は搬送方向の移動を前提とするため、搬送方向に対して直交方向のずれ(横ずれ)が発生すると画質が低下する。搬送ガイドの精度や基板の蛇行を一定範囲に抑える機械設計が求められる。

導入時に確認すべきシステム構成

TDIカメラの導入にあたっては、カメラ単体の性能だけでなく、周辺機器やインターフェースを含むシステム全体の構成を検討する必要がある。以下に主要な確認ポイントを整理する。

データ転送とインターフェース

TDIカメラは段数と解像度に応じて大量の画像データを出力する。インターフェースの帯域幅がボトルネックにならないよう、Camera Link HS、CoaXPress、GigE Visionなどの高速インターフェースの中から要件に適した規格を選定する。フレームグラバーやケーブル長の制約も事前に確認が必要である。

照明設計

TDIカメラは感度面で有利ではあるが、照明が不要になるわけではない。検査対象の材質や欠陥の種類に応じて、明視野・暗視野・同軸落射などの照明方式を選定する。TDIの蓄積方向と照明の均一性が整合していることが、安定した検査品質の前提となる。

画像処理系の処理能力

高速ラインレートで取得された大量のデータをリアルタイムに処理するため、画像処理ボードやGPU演算環境の処理能力が求められる。検査アルゴリズムの計算負荷とデータレートを事前に見積もり、処理系がボトルネックにならない構成を設計する。

[TDIカメラ]に関連するFAQ

TDIカメラの段数を増やせば感度は無限に上がるのか?

段数を増やすと信号量は比例して増加するが、ノイズも増加するためSNRの改善は段数の平方根に比例する。また、段数の増加はセンササイズやデータ量の増大を伴うため、実用上は搬送条件やシステム制約とのバランスで段数を選定する。

TDIカメラは搬送が停止している対象物にも使えるか?

TDIの原理は被写体とセンサの相対移動を前提としているため、停止した対象物には適さない。静止物の撮像にはエリアスキャンカメラや通常のラインスキャンカメラが適している。

通常のラインスキャンカメラで照明を増強すればTDIカメラと同等の画質が得られるか?

照明の増強で信号量を増やすことは可能だが、対象物への熱影響、照明の均一性確保、消費電力の増大といった課題が生じる。TDIカメラは照明に過度に依存せず感度を確保できる点で、高速搬送ラインではシステム全体の設計に優位性がある。

CCD型とCMOS型のTDIカメラはどのように使い分けるのか?

CCD型は電荷転送効率の高さから高段数・高感度が求められる用途に適している。CMOS型は読み出し速度やフレームレートの面で有利であり、より高速なライン速度が要求される工程で採用が進んでいる。要求されるライン速度と感度のバランスで選定する。

この記事のまとめ

  • TDIカメラは複数段のラインセンサで電荷を蓄積し、段数の平方根に比例してSNRを改善する。
  • 通常のラインスキャンカメラと比べ、高速搬送・低照度環境での感度確保に優れる。
  • 半導体ウェーハ検査、ディスプレイパネル検査、印刷・フィルム検査などが主要な適用分野である。
  • 搬送速度と電荷転送クロックの精密な同期が画質維持の前提条件となる。
  • 導入時はデータ転送インターフェース、照明設計、画像処理系の処理能力を含むシステム全体の設計が重要である。

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