私たちの身近にあるデジタル機器に欠かせないフレキシブルプリント配線板とも呼ばれるフレキシブル基板(FPC)。
フレキシブル基板は、スマートフォンやパソコン、デジタルカメラ、自動車、医療機器の電子回路などに幅広く使われています。
今回は、フレキシブル基板の概要や構造、用途などについて詳しく解説していきます。
フレキシブル基板(FPC)とは、「フレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuit Board)」と呼ばれるプリント基板のことです。
硬く曲がらない一般的な基板とは異なり、薄いプラスチックフィルムで作られたフレキシブル基板は、折り曲げることができるのが特徴です。
曲げて使用しても電気的性能に変化はないので、電子機器に内蔵する可動配線や三次元配線として、身近な電子機器に数多く使用されています。
スマートフォンやディスプレイなどの電子機器のコンパクト化、サイズダウンの一役を担っています。
フレキシブル基板とリジッド基板は、基本的な加工工程は似ていますが、回路表面の保護に違いがあります。
一般的にリジッド基板はソルダーマスクを印刷するのに対して、フレキシブル基板では、カバーレイというプラスチックフィルムをラミネートして加工します。
また、フレキシブル基板とリジッド基板では、使用目的が異なるため、別物だと言えます。
フレキシブル基板はケーブルとしての使用がメインですが、リジッド基板の場合は電子部品の搭載とその配線がメインとなります。
フレキシブル基板の主なメリットには、柔軟性や小型化・軽量化、耐久性の高さが挙げられます。
フレキシブル基板の最大のメリットは、折り曲げて使用することができる点です。
非常に柔軟性に優れていて、繰り返し折り曲げることができるので、設計の自由度が高く、さまざまな形状に対応できます。
フレキシブル基板に使われる材料のフィルムは薄いため、基板自体も数十〜数百µmと薄く、軽いのが特徴です。
そのため、フレキシブル基板を使用する製品自体の小型化・軽量化にも貢献します。
フレキシブル基板は、ガラス基板や金属基板などと比較して、衝撃や振動による耐久性が高いのもメリットです。
また温度や湿度などの変化にも強いので、長期間使い続けることができます。
フレキシブル基板は、折り曲げて使用できるというメリットがある一方、曲がりやすい点には注意が必要です。
また何度も曲げられる訳ではなく、メーカーや製品によって耐屈曲性は異なります。
基板を曲げ過ぎてしまうと内部の配線が断線するおそれがあるため、取り扱いには十分注意しなければいけません。
また、フレキシブル基板は、静電気に非常に弱いため、静電気対策は必須です。
フレキシブル基板の構造には、大きく分けて以下の3つがあります。
構造によって、柔軟性や耐久性、設計の自由度などが異なるので、それぞれの特性を見ていきましょう。
片面構造は、フレキシブル基板の特徴である薄さ・柔らかさを最大限活かせる構造で、省スペースでも使用できます。
折り曲げて使う場合や可動部に使う場合は、一般的に片面構造が採用されることが多いです。
両面構造は、フィルムの上下に銅箔を挟んだ二層構造のフレキシブル基板です。
接続密度が高まるため、接続端子の逆向きやクロス配線など、設計の自由度や機能性は高まりますが、片面構造に比べると可動に対する耐久性が下がります。
多層基板は、大きく「フレックスリジッド構造」「多層フレキシブル基板構造」の2種類に分かれます。
フレックスリジッド構造は、フレキシブル基板にリジッド基盤を組み合わせた構造です。基板間を接続するコネクターが必要ないため、省スペース化ができます。
コネクター不要による薄型化が実現するので、スマートフォンやカメラなどの小型の電子機器などに活用できます。
多層フレキシブル基板構造は、片面構造や両面構造の両方を併せて、全面フレキシブル基板の材料だけで作った構造です。
多層フレキシブル基板構造は、薄型化と高密度化が高まります。また、すべて同じ材料と構造で成り立っているので、耐熱性にも優れています。
フレキシブル基板は、さまざまな業界で応用されており、私たちがよく使用する電子機器にも使用されています。
フレキシブル基板は、主に以下の用途があります。
今や私たちの生活に欠かせないスマートフォンにも、フレキシブル基板は使用されています。
ひとつの端末の中に、複数の基板が組み込まれており、スマートフォンの小型化や薄型化に大きく貢献しています。
スマートフォンに使用するフレキシブル基板は、省スペースかつ複雑な配線が可能なことが求められます。
スマートフォンに搭載されているカメラや、デジタルカメラなどにも、フレキシブル基板は欠かせません。
カメラに使用するフレキシブル基板は、限られたスペースにも搭載できる薄型で小型なものが求められます。
また、スマートフォン用のフレキシブル基板は薄型・小型以外にも、形状を保つための柔軟性も必要です。
自動車産業では、エンジン制御システムやナビゲーションシステム、音響システム、ブレーキ、エアバッグなど、多くの部分にフレキシブル基板が使用されています。
フレキシブル基板は耐久性に優れているため、走行中の振動や衝撃にも耐えられます。
またハイブリッド車や電気自動車では、バッテリーを監視する電子機器にも使われているため、フレキシブル基板は自動車産業に大きく貢献していると言えるでしょう。
ただし、車に搭載するのに必要な耐熱温度などの条件を満たす必要があります。
医療機器では、医療用のカメラやペースメーカー、血圧計、電子部品など高度な電子制御システムにフレキシブル基板が使用されています。
フレキシブル基板は、医療機器の設計の自由度を高め、小型化にも貢献しています。
ただし、生命に関わる医療機器では高い信頼性と精度が求められます。
航空宇宙産業では、航空機の制御システムや通信システム、エンジン制御システム、ナビゲーションシステムなど、多くの電子機器の部品としてフレキシブル基板が使用されています。
今回は、フレキシブル基板の構造や用途、メリット・デメリットなどについてご紹介しました。
フレキシブル基板は、柔軟性や耐久性の高さや、小型化・軽量化のメリットがある一方、曲がりやすい点には注意が必要です。
フレキシブル基板には、スマートフォンやカメラ、自動車、医療機器など、用途に合ったものを選んでください。