プリント基板は、私たちの身の回りにある電子機器のほとんどのものに使われているもので、電子機器に必要な部品をコンパクトに配置することが可能です。
プリント基板の存在は私たちの生活を便利にしてくれています。
今回は、社会や生活になくてはならないプリント基板について、基本的な知識や今後期待できる分野などについて解説します。
私たちの生活を便利にしてくれるプリント基板ですが、そもそもプリント基板とはどのようなものでしょうか。
プリント基板とは、絶縁体でできた板材に配線やはんだ付けされた電子部品が乗っている基板の総称です。通電すると電子回路として動作する基板を「プリント基板」と言います。
一度、安定動作するプリント基板を作れば、そのあとは同じ配線と部品構成で一定の品質の基盤を大量生産することができるため、効率化を図ることが可能です。
プリント基板の主な役割はこちらです。
・信号を伝える役割
プリント基板上の電子分同士が正しく信号を伝え合わなければ、電子回路が正常に働きません。プリント基板の役割は、これら電子部品の各種信号を正しく伝える役割があります。
・電力を送る役割
プリント基板は、電化製品を目的に合わせて動かすための動力となる電力を送る働きを持っています。
プリント基板はさまざまな産業や応用分野で広く使われていて、その重要性は現代の製造プロセスや技術に欠かせないものになっています。
主な用途と産業をいくつかご紹介します。
情報技術製品であるコンピューターやパソコン、タブレット、スマートフォンなどにはプリント基板が欠かせません。
プリント基板の上にCPU、メモリ、グラフィックチップなどの電子部品が配置され相互接続されています。
自動車産業でもプリント基板は不可欠です。
エンジン制御ユニットやブレーキシステムなどさまざまな電子機器が使われている自動車ですが、これらの電子機器はプリント基板の上に構築されます。
プリント基板は、医療機器や医療用デバイスにも使用されています。医療ロボットや医療画像診断装置、患者モニターなどさまざまな装置にプリント基板が組み込まれています。
プリント基板は、産業制御システムや工場自動化にも広く使われています。
モータードライバーやセンサー、プログラマブルロジックコントローラーなど、さまざまな制御部品がプリント基板の上に搭載されています。
プリント基板は、複数の材料を積層して構成されています。
電気を流す性質がある銅箔は、回路の信号を伝送する働きを持っています。
プリント基板のベースとなる板で、プリント基板の層間の絶縁性を保持する働きを持っています。コア材の材質により性能や価格に違いが生じます。
プリプレグは、コア材と同様に層間の絶縁性を保つものですが、それに加えて層間を接着する働きを持っています。ガラスクロスに樹脂を含浸させたものです。
ソルダーレジストは、プリント基板の表面を絶縁させるための保護用コーティングです。
はんだ付けを防ぐ耐熱性材用で、プリント基板に余分なはんだが付着しないように防ぐ働きを持っています。さらに、空気中のゴミや湿気からプリント基板を守る役割もあります。
プリント基板は「層構成」と「コア材の材質」で分類されます。
層構成による分類について、それぞれの特徴を説明します。
片面基板は、表面化裏面のどちらかだけに外線や電子部品が配置されているプリント基板です。片面だけの配線なので、比較的単純な回路の作成の際に使われています。
両面基板は、基板の表裏両面に配線や電子部品が配置されている基板で、プリント基板では最もベーシックなものです。
配線同士が重なる場合にも、裏面を利用してレイアウトできるため、より複雑な配線が可能。また、基板の小型化を実現することができる方式になっています。
多層基板は、信号線の多い回路に使われる基板です。多層化することで、より複雑な回路をコンパクトにすることができます。層数は回路規模によって使い分けされています。
フレキシブル基板は、基板の素材にポリエステルやポリイミドなどの柔らかい材料を使った基板です。主に、基板の電子ユニットとの接続、小型端末の配線などに使われています。
ビルドアップ基板とは、複数の絶縁層と導体層を交互に重ねて作られる高密度のプリント基板の一種です。
従来の基板よりも細線で、小さな穴径と高い配線密度を有しているため、モバイル機器などのハイテク製品に適用できます。
コア材の材質は、「リジッド基板」と「フレキシブル基板」の2つに分類されることが多いです。
一般的に硬い素材で作られていて平面であり、曲げることができません。組み立てや取り扱いが比較的容易であり、家電製品や産業機器などの多くのアプリケーションで使われています。
柔軟な素材で作られていて曲げることができるため、複雑な形状に対応可能です。
フレキシブル基板は、携帯電話や医療機器などの軽量化やスペースの節約が求められるアプリケーションで使用されています。
プリント基板の製造の一般的な方法とステップは以下の通りです。
プリント基板の製造工法には、いくつかのものがあります。
銀箔で全面を覆った基板の配線部分以外の不要な銀箔をエッチング液により除去し、配線パターンを形成します。
絶縁体基板であるベース材の上に、メッキ処理を行ってから配線パターンを形成します。銅などの導体を基板の表面に追加して配線パターンを形成する方法です。
基板の表面に感光性の樹脂を塗布し、感光されない部分を除去します。この方法は、高精度で複雑な印刷が可能なので高密度パターンの製造に適しています。
メッシュ状の版材を使用して基板上にインクを印刷する方法です。メッシュを通してインクを塗布し、基板に文字やパターンを印刷します。この方法は、比較的低コストで大量生産に適しています。
プリント基板の製造方法は、これらの他にもいくつかありますが、どの方法も基板設計にとって重要な要素です。コストや信頼性などを考慮して選びます。
プリント基板の製造工程を以下にご紹介します。
はじめにプリント基板の素材を選びます。一般的には、FR-4、金属基板、フレキシブル基板などがあり、アプリケーションや設計要件に応じて適切な素材を選択します。
ソフトウェアを使って回路図からレイアウトを作成し、部品の配置や配線パターンを決定します。
プリント基板の表面に感光性のフィルムを塗布し、CADデータで作成したマスク(フォトマスク)を使って紫外線を照射してフィルムにパターンを形成します。
3の工程で残ったフォトレジストを取り除き、露出した部分の金属をエッチングにより除去します。これによって基板上に適切な配線パターンが出来上がります。
一般的にドリルによる機械加工かレーザーにより穴あけします。穴あけは、必要に応じて部品の取り付けや層間の電気的接続のために行います。
穴にメッキを施して導電性の層を作る工程です。これによって部品を取り付けるための電気的な接続の確保が可能になります。
基板上に電子部品を取り付けます。部品は手作業または自動化されたマシンを使って配置します。
基板に部品が取り付けられたら、はんだ付けの工程によって部品が基板に固定されます。
この8つの工程を経て作られたプリント基板は、自動検査装置や目視検査によって接続の欠陥や不良部品がないか検査します。さらに、電気的なテストを行って動作を確認します。
最後に保護用のコーティングや表面処理を行う仕上げ処理を行って完成です。
プリント基板は、さまざまな分野で活躍していますが、今後どのような活躍が期待できるでしょうか。
近年、リモートワークや遠隔授業などの普及に伴って、ITインフラ分野やパソコン、タブレットなどの電子機器の需要が急速に拡大しています。
プリント基板の需要はDX分野においてさらに増加すると考えられています。
電気自動車の普及によりプリント基板の需要も増えてきています。EVの制御回路や充電システムには、高性能なプリント基板が不可欠です。
電子機器の高性能化や小型化が求められるなか、プリント基板はより高密度化されることが期待されます。基板上により多くの機能を搭載するためには、積層技術の発展が必要です。
フレキシブル基板は、折り曲げに対する耐性があるため、特定のアプリケーションに適しています。
フレキシブル基板が発展することで、今後もより多くの製品がフレキシブル基板を採用していくことが予想されます。
3D印刷技術は、プリント基板の将来に大きな役割を果たす可能性があります。
プリント基板は、3D印刷技術を使うことで従来の製造方法では難しかった構造や形状を持つ基盤を製造することが可能になり、これまでより柔軟で革新的なデザインの実現が可能になります。
プリント基板は、IoT(Internet of Things)や5Gなどの高速通信技術の普及に伴い、高速信号伝送用のものが求められます。今後、高速信号や高周波に対応した基板材料や設計が開発されるでしょう。
AI(人工知能)技術が進歩していくことによって、プリント基板の製造プロセスや設計が自動化されることが予想されます。
AIを使った設計の最適化や生産ラインの自動化で、製品開発のサイクルが短縮される可能性があります。
電子廃棄物は環境問題の一部ですので、プリント基板の製造や廃棄に関する環境への配慮が重要です。
今後、より持続可能な基板材料や製造プロセスが開発されてリサイクル可能な基板が使われるかもしれません。
プリント基板は、私たちの生活を便利にするために欠かせない機器です。今回は、プリント基板について基礎知識から製造工程、今後の展望について解説しました。
プリント基板は、これからも発展を続けてさまざまな分野で活躍し、電子機器の進化や開発に貢献していくでしょう。