異方性導電フィルムは、ICなど電子部品を基板に実装したうえで、回路を形成するフィルム素材です。タッチセンサーやカメラモジュールなど幅広く用いられています。今回は、異方性導電フィルムの特徴や用途、メリット・デメリットなどについて解説します。
異方性導電フィルムとは、電子部品やICカードなどの回路を形成するためのフィルムです。異方性導電膜(略称:ACF)ともいわれます。1977年、デクセリアルズの前進であるソニーケミカルが初めてこのフィルムを開発しました。
現在は、スマートフォンやタブレット端末、フラットパネルディスプレイなどのデジタル機器に使用されています。ICチップとディスプレイのガラス基板を接続して、多数の電子回路を形成するには欠かせません。
デジタル機器の性能をより高めるためには、必要不可欠な部品です。
異方性導電フィルムの用途はさまざまです。タッチセンサーや半導体デバイス、カメラモジュールやICカードなど、実に多様なシチュエーションで利用されています。
それぞれの用途について解説します。
スマートフォンやタブレット端末など、タッチセンサーによって感知する機材にも使用されています。これら以外でも、タッチをして操作する端末には異方性導電フィルムが必要です。
手に触れたときに静電容量を検知するため、ガラス基板に透明電極がつけられています。その際、電極を感知する目的で異方性導電フィルムが使用されています。
半導体デバイスの多くには、異方性導電フィルムが使われています。電子回路の回路接続部において、熱圧着させて電気的に接続させるのが、異方性導電フィルムの主な役割です。
接着剤を使わずに、デバイス同士を電気的に接続できます。薄く小型で、さまざまな電子製品に応用されています。
スマートフォンやデジタルカメラのカメラモジュールでも、異方性導電フィルムの特性が活用されています。
例えば、熱に弱いとされるCCD(固体撮像素子)やCMOS(相補性金属酸化膜半導体)などは、低温でも実装できる異方性導電フィルムが使用されています。
異方性導電フィルムは、電子マネーなどのICカードにも利用できます。フィルムが薄型であるため、カード内部に埋め込みが可能です。ICカードに埋め込むフィルムは、電子部品や半導体向けのものとは異なる形状をしています。
電子マネーやICチップのついたクレジットカードには、ほとんど専用のフィルムが埋め込まれています。専用の異方性導電フィルムを使うことで、材料コストや設備コストが低減できる点が最大のメリットです。
異方性導電フィルムには、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を使用したものが使われています。それぞれ特徴が異なるため、製品によって使い分けが必要です。
各タイプのフィルムについて、特徴を解説します。
現在流通している異方性導電フィルムの多くは、アクリル樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が使用されています。導電パスの接着力や電気抵抗の点で優れているのが特徴です。
ただし、高温時に使用する場合には熱硬化が起こるため、冷蔵保管をする必要があります。
あまり使われているシーンはありませんが、熱可塑性樹脂を用いたフィルムもあります。非接触ICカードの回路接続部に使われている場合もあります。熱硬化性のものと異なり、冷蔵保管の必要はありません。
しかし、使用できる用途が限られているというデメリットもあります。
異方性導電フィルムのメリットは、主に3つです。それぞれのメリットについてみていきましょう。
<h3>時間をかけずに接続できる
異方性導電フィルムは、あまり時間をかけずに電極同士を接続できます。低温であっても比較的短時間で接続できるため、はんだ付けよりも効率的です。
多端子を同時に接続できるため、今後も応用できる範囲が広くなると見込まれます。
異方性導電フィルムは、製品ひとつのみでもさまざまな性能を発揮します。ガラス基板に部品を実装できるうえに、鉛フリーでの対応を可能にして製品を軽量化できます。
小さなスマートフォンやタブレット端末などでも応用され、今後も多くの需要が見込まれる部品です。
異方性導電フィルムは、薄型のスマートフォンやディスプレイにも対応しています。ガラス基板の電極にも対応できるため、応用できる範囲は徐々に拡大しています。
小型ながらも高精度でスムーズな機器の使用を実現するには、異方性導電フィルムが大きな役割を果たすでしょう。
異方性導電フィルムは、薄型ながらも活用しやすい電子部品ですが、デメリットもあります。
異方性導電フィルムのメリット・デメリットの両者をよく確認したうえで、生かしていきましょう。
最適な異方性導電フィルムを選ぶには、熱耐性や端子間の距離、接続する部分の面積などをあらかじめ見ておきましょう。多くの製造の現場では、熱硬化性樹脂が選択されています。
適切な異方性導電フィルムを知るためには、専門業者への問い合わせが不可欠です。
異方性導電フィルムは、薄く小型ながらもさまざまな電子部品に活用されています。ICカードやスマートフォン、タブレット端末など、わたしたちの生活の身近なものに使われている部品です。
薄型ながらも、電子部品の性能を引き出すには欠かせません。
将来的にも、異方性導電フィルムが活用される製品は増えてくると見込まれます。さまざまな方面で実装化されて、電子機器をより便利にしてくれるでしょう。