熱交換器とは?種類や特徴・計算法をわかりやすく解説!
今回は、熱交換器の種類や特徴について長所短所を交えて紹介し、熱交換器に関する計算もわかりやすく解説していきます。
目次
熱交換器とは?
熱交換器とは、温度の高い物体から低い物体へ熱を移動させることによって加熱や冷却を効率的に行うための装置のことを言います。
エアコンといった家庭用のものから、製造工程で必要な冷却などのための産業用のものまで幅広く活躍しています。
熱交換器の用途
温度の高い物体から熱を効率的に温度の低い物体へ移動させるという基本的な原理は共通しているにもかかわらず、熱交換器の用途は多種多様です。
加熱
温度の低い物体を加熱させるために熱交換器が用いられます。
用途としては、ボイラーで温められた温水を利用した暖房などが挙げられます。熱交換器の用途としては最もポピュラーな用途です。
冷却
エアコンや冷蔵庫など、日常生活でよく利用するものにも熱交換器が利用されています。
産業では、食品製造や化学薬品産業、液晶製造などでも利用されており、加熱と並んで主な熱交換器の使用用途とされています。
特に液晶パネルの製造では、成膜工程で装置内に熱が発生する過程で装置の冷却が必要となるため、その際に熱交換器が使われています。
製造業以外ではデータセンターの大型冷房などでも活用されています。
冷凍
食品を冷凍するためだけでなく、インスタントラーメンなどのフリーズドライ食品の製造にも用いられています。
0度を下回っても凍らない不凍液を冷媒として使用することで、空気を冷やし冷凍を行うことができます。
蒸発
液体を気体へと蒸発させるためにも熱交換器が用いられる場面があります。
都市ガスを海外から輸入する際は、気体の状態のガスを一度液体の状態にします。液体の状態にすることで体積を600分の1に減らし、効率よくタンカーに積み込んで運ぶためです。日本に到着後、液体のガスを気体に戻す際に熱交換器が使われます。
凝縮
蒸発とは真逆で、気体を液体にするための熱交換器も存在します。
除湿器は室内の空気の中にある水分を熱交換器によって取り出すメカニズムが使われています。
熱交換器の仕組み
熱は温かい物体から冷たい物体へと移る特性があります。熱が移ることによって最終的に両者は同じ温度になります。
この特性を利用して、より効率的な熱の移動を促し、産業や生活で使えるようにしたものが熱交換器です。
熱を効率よく移動させるために、冷媒などの流体を循環させることによって常に熱が移動し続けるシステムを採用しているものがよくみられます。
熱交換器の種類と特徴
熱交換器はさまざまなタイプのものが存在していますが、大きく分けてチューブ式とプレート式の2つの種類に分類することができます。
・チューブ式
チューブ式は、管の内部と外部に温度が異なる別々の流体を流すことによって熱の移動を促す熱交換器のことを言います。
チューブによって熱が伝わる表面積を大きくすることによって、より熱の移動がしやすい状態にしています。
チューブ式は用途と形状によって「固定管板式」「遊動管板式」「U字管式」などに分類することができます。
・プレート式
プレート式は、薄い波型の熱交換プレートを通して熱を移動させる熱交換器のことを指します。
金属でできた熱交換プレートに、温度が異なる流体の流路を通すことによって、熱交換プレートに熱が伝わり、温度の低い方の流体へと熱が移動していく仕組みとなっています。
プレート式は主に液体どうしの熱交換に用いられます。
熱交換器は構造を単純化してみた場合は、この2種類で考えることができますが、さらに細かい分類でみていきます。
空冷式熱交換器
空冷式熱交換器は主に、チューブとファンによって構成されており、チューブ内に液体の流体を流し、ファンで空気をそのチューブに当てることによって流体の冷却や加熱を行います。車のラジエーターなどで用いられています。
設置場所の制限が少なく、屋外に設置できるという点や、メンテナンス性に優れているという点が特徴です。
ただし、熱交換器の大きさが大きくなってしまう点と、流体と周囲の空気の温度差によって効率が変化し、周囲の空気の温度以下は冷却ができないという制約があります。
ファンコイルユニット
冷却水または温水を流体とし、これらの流体を循環させたコイルにファンを使って送風する仕組みを用いるのがファンコイルユニットです。工場のチラーや、家庭用エアコンなど幅広く使用されています。
天吊り型や床置き型など、設置場所の自由度が高いですが、流体を循環させるための装置が必要となります
ブレージングプレート熱交換器
熱交換プレートに流体が流れる流路を通し、熱交換プレートを通じて熱の移動を行う仕組みを用いているのがプレージングプレート熱交換器です。医薬品や半導体などの厳密な温度管理が要求される場面で使用されます。
プレージング部は主に銅製のものが使用されますが、使用用途によってはステンレス製のものなども使われることがあります。
熱交換器の中では小さいサイズであることや、効率が良いため温度差を最大限に活かした熱交換が可能です。
一方で、流路に何らかの原因でつまりが発生してしまうことがあるうえ、分解ができないためにメンテナンスが難しいという点があります。
ガスケットプレート熱交換器
熱交換プレートに流体の流路を通して、プレートを通じて熱のやり取りを行うという基本的な構造はブレージングプレート熱交換器と同じですが、プレートとプレートの間をゴム製のガスケットで区切ることにより、全体を分解できるようにした点で異なります。
さらに、プレートどうしをボルトで押さえる形になっており、部品の交換やプレートの追加などを行える構造になっています。
ブレージングプレート熱交換器と同じく、厳密な温度管理が要求される場面で使用されています。
熱効率が良さはもちろん、分解ができることによりメンテナンス性がしやすいですが、ブレージングプレート熱交換器よりはサイズが大きくなってしまいます。
シェル&チューブ熱交換器
シェル(胴体部)の中にチューブを通し、シェルの内部とチューブの内部に別々の流体を流すことによって熱交換をする仕組みを用いているのが、シェル&チューブ熱交換器です。
圧力損失を小さくできるため、粘度が比較的大きい流体にも対応できます。化学プラントなどで利用されています。
メンテナンスが比較的容易で、低温や高温、低圧や高圧、加熱や冷却、蒸発や凝縮といった様々な条件下でも幅広く使用できるものの、サイズは大きくなってしまいます。
投げ込み式(浸漬型)熱交換器
冷却対象の液体が入っているタンクに直接流体が流れるチューブを通す仕組みを用いているのが、投げ込み式(浸漬型)熱交換器です。製薬産業や、水処理、食品および飲料産業などで用いられています。
導入コストが低コストである点やサイズの自由度が高いのが特徴です。
ただし、効率があまり良くないため、撹拌機などの装置が必要である点や、結露が発生する可能性があるという点は注意が必要です。
ジャケットタンク
内槽とそれを包み込む外槽(ジャケット)から構成されており、内槽内部の液体を外槽(ジャケット)内の流体を用いて加熱・冷却・保温を行う仕組みを採用しているのが、ジャケットタンクです。
ステンレス製のものが多く、清掃・メンテナンスが容易であるため食品・飲料関連の産業でよく用いられています。
注意点として、比較的効率が良くないため、撹拌機などの装置が必要な点が挙げられます。
熱交換器の温度効率
シェル&チューブ熱交換器などの隔板式熱交換器では、温度が異なるそれぞれの流体の流れる向きによって温度効率が異なります。
温度効率は流体の方向が向かい合って流れる向流が一番良く、次にそれぞれの向きが直交に交わる直交、そして同じ向きに流れる並流となっています。
温度効率は、低温流体の出口温度で比較することが可能です。
熱伝達式
熱交換器の設計で必要となる熱伝達量の計算ですが、以下の計算式で求めることができます。
Q = k × A × LMTD
Q:交換熱量(kW)です。
k:総括伝熱係数(kW/(m^2・K))で、より大きな値になるほど効率的な熱伝達ができていることを示します。
A:伝熱面積(m^2)です。
LMTD:対数平均温度差(K)で、熱交換の温度条件を表します。
対数平均温度差
熱伝達量を求めるにはLMTD(対数平均温度差)を求める必要があります。
LMTDは以下の計算式で求められます。
※向流の場合
LMTD=[ (T1-t2) - (T2-t1) ] /In[ (T1-t2) / (T2-t1) ]
※並流の場合
LMTD=[ (T1-t1) - (T2-t2) ] /In[ (T1-t1) / (T2-t2) ]
向流と並流で引き算が異なるため注意が必要です。
総括伝熱係数
総括伝熱係数は以下の計算式で求められます。
1/k = 1/α1 + 1/α2 + δ/λ + Rf
α1:高温側流体とその伝熱表面の間の伝熱係数(W/(m^2・K) )です。
α2:低温側流体とその伝熱表面の間の伝熱係数 (W/(m^2・K) )です。
δ:伝熱面の厚さ(m)です。
λ:金属の熱伝導率 (W/(m・K))です。
δ / λ:壁の抵抗値です。
Rf:汚れ係数(m^2・K/W)です。
熱交換器についてのまとめ
熱交換器は多種多様な形状のものが存在しており、シンプルでありながら複数の用途に使用できる特徴があることから、日常生活に限らずさまざまな産業分野で使用されています。
熱交換器にはそれぞれ特性やメリット・デメリットがあるため、しっかりと用途と照らし合わせて導入する必要があるでしょう。
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