旭化成のセルロース技術
旭化成は90年以上、セルロースに関する研究を行ってきました。私たちのコア技術はセルロースの構造をマクロに限らずミクロな構造まで成形できることです。構造を変化させることでセルロース100%でも様々な効果が生まれ、過去6製品が製品化されました。
用途は医療から農業、資材、衣料、コスメ等と多岐にわたります。現在はこのノウハウを生かし、マイクロファイバーやセルロース粒子等の新たな開発を進めています。
ベンベルグ® | |
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ベンリーゼ® | |
BioCradle® | |
NanoAct® |
世界で唯一行われる銅アンモニア法の再生セルロースとは?
銅アンモニア法は、再生セルロースの一種である銅アンモニアレーヨンを製造する特殊な製法です。
旭化成が独自に開発し、世界で唯一行われるものとされます。この製法では、コットンリンターを原料とし、銅アンモニアという溶媒を使用してセルロースを再生します。
銅アンモニアレーヨンは柔らかな肌触りや高品質な繊維が特徴であり、吸湿性と通気性にも優れています。
また、環境への配慮からサステナビリティを推進し、自然界でバイオデグラデーションが可能な特性を持っています。これらの特長から、再生セルロースの代表的な製品として幅広い産業分野で利用されています。
銅アンモニア法再生セルロースの歴史
897年にドイツの化学者マックス・フレメリーとヨハン・ウルバンが、白熱電球のフィラメント用として発明した銅アンモニアレーヨン。
しかし、フィラメント用途としての成功は得られず、特許はJ・P・ベンベルク社が取得し、服地として使われるようになりました。
日本では日本窒素肥料(現在の旭化成およびチッソ、JNC)がベンベルク社と提携し、1931年に生産開始。銅やアンモニアの処理の難点で多くの国が撤退しましたが、旭化成は再利用技術を確立し、世界唯一のベンベルク製造メーカーとなりました。
日本ではベンベルグが広く知られる呼び名となっています。
現在開発中の素材*
*詳細は資料をダウンロード、もしくはお問い合わせください
セルロースマイクロファイバー
- 分散性が良い
- 低粘性
- ピュアリティが高い
サーキュラリティとサステナビリティ
旭化成のセルロース素材は、環境に配慮した工程・技術を通じ、天然由来の原料から生まれます。使用後は自然に還る、サステナブルな素材です。
原料 | -副産物であるコットンリンター* |
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製造過程 | -有機溶媒を使用していません |
生分解性 | 海洋、土壌 |
生分解性(海洋・土壌)
海洋でも土壌でも形状に左右されず、迅速に生分解します。
再生セルロースの高い生分解性は、廃棄物の削減や環境への負荷の軽減に寄与し、サステナビリティを追求するための重要な要素となっています。また、生分解性が高いことから、自然界に対する環境影響が少ない素材として注目を集めています。
OK biodegradable認証
キュプラは環境への影響を評価するための国際認証であるOK biodegradable認証を取得しています。この認証には、OK compost INDUSTRIAL(産業堆肥化)、OK compost HOME(家庭堆肥化)、OK biodegradable SOIL(土壌分解)の3つのカテゴリがあります。それぞれのカテゴリは、特定の条件下で製品がどれくらい効率よく生分解されるかを評価するものです。
OK compost INDUSTRIAL認証は産業堆肥化の条件下で、OK compost HOME認証は家庭堆肥化の条件下で、OK biodegradable SOIL認証は土壌分解の条件下で、製品が期待される速度で分解されることを確認します。この認証は、製品の環境への影響を考慮した持続可能な製品開発に貢献しています。
キュプラの持つバイオデグラダブルな性質とOK biodegradable認証により、再生セルロースの素材として環境への配慮が高まり、サステナビリティを重視した製品が注目を浴びています。
セルロースの機能化・二次加工
再生セルロースは、化学修飾や他の機能性材料との複合化によって、様々な機能を付与することが可能です。
また、旭化成の再生セルロース製品であるベンベルグ®は、長繊維・短繊維の両方を使用した織物・編物も取り扱っています。これらの製品は、再生セルロース特有の柔らかな肌触りと吸湿性・通気性に加えて、長繊維の使用による強度と耐久性を兼ね備えています。
比較的軽量でありながら強度が高いため、アパレル製品やインテリア製品などの様々な分野でベンベルグ®を使用した製品が利用されています。
また、再生セルロースの生分解性も考慮された製品開発により、サステナビリティへの貢献が期待されています。再生セルロース製品の多様な応用と高い性能は、持続可能な素材としての重要な特徴となっています。
ベンベルグ®の基本性能
*詳細は資料をダウンロードorお問い合わせください
- 吸尽性
- 生分解性
- 耐溶剤性
- 低熱膨張率
- 耐熱~200℃程度
- 丸断面(繊維)
- 繊維径約10~15μm
- 高セルロース純度
旭化成の再生セルロース 事例・用途例
メディカル用途 | 長繊維不織布によるピュアリティーの高さや、多孔膜・中空糸など様々な形状に加工できる特長を生かし、メディカル用途で幅広く活用されています。 (例)医療用ガーゼ、消毒用ウェットワイパー、止血材、創傷面被覆材、製薬プロセス用ウイルス除去膜、イムノクロマト診断発色剤など |
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農業資材 | 生分解性を活かし、河川法面保護工事や緑化用資材として、また省力化用農業資材としても活用されています。 (例)植生工事用ネットや播種用シードテープなど |
工業・産業資材 | 高セルロース純度と耐溶剤性、吸尽性等を活かし、それぞれの業界にあった商品を提供しています。 (例)工業・産業用クリーンルームワイパー、吸着剤など |
環境への取り組み
私達は製造過程において、環境に配慮した取り組みを続けています。
例えば延岡のベンベルグ工場では、産業廃棄物を出さない「ゼロ・エミッション化」に取り組んでおり、繊維くずは工場の発電に再利用するなどして徹底した結果、2016年度のゼロエミッション率は99.8%を達成しました。
同時に自社発電設備での水力発電・バイオマス発電などによる再生可能エネルギーも4割に上っており、今後も自社発電設備の能力増強を予定しています。
旭化成の社会貢献
旭化成は、グループ理念に「世界の人びとの “いのち”と“くらし”に貢献します」を掲げ、社会課題の解決への貢献を重ねています。
社会貢献への取り組みの一例として、ベンベルグ®のインドでの活動をあげます。
ベンベルグ®は、サリーやデュパタなどの高級な民族衣装用繊維として、インドで40年以上親しまれています。ベンベルグ®の原料であるコットンリンターは、綿実油を生産するオイル工場から購入しています。
インドは世界有数の綿花の生産国でありながらコットンリンターを製造する設備を所有するオイル工場は少なく、また品質管理技術も十分ではありませんでした。
結果として綿実油には多くの不純物が含まれ、品質も劣り、また適切な設備があれば得られるはずの、コットンリンターや殻という貴重な副産物が活用されていないという状況でした。
そこでインドの複数のオイル工場に対して、旭化成からコットンリンターの製造に必要な設備や分析機器を無償貸与し、技術指導も行いました。
この取り組みを開始した2010年から2019年の間に、旭化成がインドから購入するコットンリンターの量は約3倍となっただけではなく、インドのオイル工場では純度の高い綿実油生産が可能となり、収益増と技術力向上に貢献しました。また同時にコットンリンターなどの販売という、新たな収入源の開拓にもつながりました。
さらに生地生産者への技術支援や、学生教育支援を行い、これらの活動が評価され、2016年からは国連開発計画(UNDP)が主導するビジネス行動要請(BCtA)に参加しました。
今後も旭化成のセルロースが展開する様々な業界において、それぞれに求められる社会貢献を行っていきます。
アパレル、医療に限らない!再生セルロースが秘める今後の可能性
旭化成のセルロースは様々な製品に形を変え、人びとの“いのち”と“くらし”に貢献することで、発展してきました。今後も再生セルロースの新たな可能性を開拓し、より良い持続可能な社会につなげていきたいと思っています。
現在は、銅アンモニア法再生セルロースの特長を活かし、MOF(金属有機構造体)やナノ粒子との複合体、マイクロファイバーなどの研究開発を進めており、既存の商流・用途に捕らわれない、新たなニーズを模索しています。
副産物から生まれ、土に還る特長をもち、サステナビリティの観点からも需要が高い再生セルロースとして、これからもアパレルや医療など既存の領域に留まらず、さらに幅広い分野で、新たな製品はもちろん、新たな社会貢献の扉も開いていきます。
旭化成株式会社 ベンベルグ事業部について
出展団体名 | |
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所在地 | 〒100-0006 |
設立年月 | 1931年05月 |
URL |
旭化成株式会社 ベンベルグ事業部
Creating for Tomorrow
昨日まで世界になかったものを
出展団体名 | 旭化成株式会社 ベンベルグ事業部 |
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所在地 | 〒100-0006東京都千代田区有楽町1丁目1番2号 日比谷三井タワー |
設立年月 | 1931年05月 |
URL | https://www.asahi-kasei.com/jp/ |