研磨加工は、製品の表面を滑らかにし、所定の形状や寸法を実現するための重要な技術です。金属加工から鏡や宝石まで、様々な素材に対して高精度な仕上げを可能にします。
研磨加工の基本的な概要、研削加工との違い、各種研磨方法の特徴やメリット、具体的な手順、そしてナノ単位の精密研磨を提供するNEOSの技術について詳しく解説します。
研磨加工とは、材料の表面を滑らかにし、所定の形状や寸法、表面粗さを実現するための加工方法です。金属加工はもちろん、鏡や石材、宝石など、私たちの身の回りにある身近な製品において、表面の仕上げ加工として重宝されています。
研削加工は、主に高速回転する砥石を用いて材料を削る方法であり、比較的粗い仕上がりとなります。一方、研磨加工はさらに細かい仕上げを目的とし、高精度かつ高品質な表面を実現するための工程です。
研削加工が粗加工を担うのに対し、研磨加工は更なる精密加工を担うため、それぞれが連携して活用されることもあります。
表面の凹凸(切削痕)を無くし、滑らかな表面を作ります。これにより、汚れや残留物が付着しにくくなります。 また、摩擦抵抗が低減され、摩耗や熱の発生が抑えられます。
表面に光沢を与え、光の反射率が高まり、視認性や機能性が向上します。また、美観を向上させ、高級感を与える事ができます。
研磨の種類によって耐食性の向上は異なります。例えば、バフ研磨のみでは不働態化被膜の形成は期待できませんが、電解研磨を行うことで表面に薄い被膜を形成し、錆や変色を防ぐことができます。これにより、製品の耐食性が高まり、寿命を延ばすことができます。
表面に異物が残りにくくなります。これにより、製品に清浄性を与え、製品の機能や性能に影響を与える汚染物質を除去することができます。
表面の微細なバリを低減します。これにより、製品自身からの発塵を低減し、クリーンな表面状態を実現します。
表面の濡れ性を制御し、汚れを残さないようにします。これにより、製品の清潔さを保ち、汚れによる機能や性能の低下を防ぎます。 また、洗浄やメンテナンスの手間を省くことができます。
表面が滑りやすくなり、摩擦や摩耗を低減し、製品の寿命向上に貢献します。また、動作をスムーズにすることで、熱や音の発生を抑え、製品の快適性や効率性を向上させます。
表面を流れやすくします。これにより、摩擦や圧力が低減させ、個体、液体、粉体などの流動性を向上させます。
研磨加工には、さまざまな工法があります。各工法には、それぞれ特徴があり、製品に応じて、実現したい機能的特性を想定し、使い分けることが重要です。
概要 | 古くからある研磨手法で、電解作用によって、対象物の凹凸を溶解する施工方法です。 表面を溶解し、不動態皮膜を形成するため、清浄で安定した表面状態になります。 |
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原理 | 電解液中に被研磨品を投入し、陽極として通電させる事により、微細な凹凸を溶解し、平坦化・光沢化表面に仕上げます。 |
メリット・デメリット | 表面に物理的・熱的な影響なしに、平滑性・清浄性・光沢性・耐食性が得られる一方、前工程が必要であったり、均一な処理が難しいという、メリット・デメリットがあります。 |
不動態皮膜 | 電解研磨により表面を溶解し、Cr/Fe比が1.0~1.5程度のクロム酸化膜が生成されます。 この膜は清浄で安定した表面状態を保ち、耐食性や金属イオン溶出の低減に寄与します。 |
概要 | 化学反応による溶解と機械研磨を複合させた研磨方法です。機械研磨に比べて清浄性に優れ、かつ、電解研磨に比べて平滑性に優れています。 ステンレス鋼をはじめ、アルミ、チタン等非鉄金属まで、加工変質層を伴わずに、安定な超鏡面が得られる工法となります。 |
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原理 | 研磨液の溶解力と物理的な回転による研磨力を複合させた研磨工法です。 化学研磨による溶出作用と研磨パッドに含浸させた砥粒の擦過作用との複合により、効率よく平滑な表面を得られ、ウエハのような高精度を求められる研磨としても使用されます。 |
メリット・デメリット | 研磨剤や研磨液の選定が可能で、高精度の研磨ができます。 また、局所的な研磨を得意とし、高い清浄性を実現する一方、下地処理との組み合わせが必要であったり、また、広い範囲を一度に処理することが難しいなどのデメリットも有します。 |
表面状態 | 3500倍で見ると研磨痕が見える程度で、安定的な超鏡面が得られます。 |
概要 | ラップ定盤という硬い平板と、粒度の細かい研磨材を用いて、部品を定盤に押し付けて擦り合わせることにより、高精度の平滑性を実現する研磨工法です。平面にのみ施工可能です。 寸法精度や、うねりを制御することが可能で、CMP※に代表されるポリシングと組み合わせることにより、より鏡面に近く、精度の高い表面を実現することができます。 ※CMP(chemical mechanical polishing)とは、「ケミカル要素(化学特性)」と「メカニカル要素(機械特性)」を組み合わせて行う研磨加工です。近年では、ウェハー表面の平坦化仕上げや、回路形成時の配線製造工程など、半導体製造工程全般で広く活用されています。 |
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原理 | ラップ定盤と工作物の間にラップ剤を流し込み、上から圧力をかけて定盤と部品を回転させます。 このとき、ラップ剤に含まれる砥粒が部品の表面を削ります。これにより、表面の凹凸が平坦化されます。 ラップ剤には、酸化アルミニウムや炭化ケイ素、ダイヤモンドなどの粒子が使用されることが多いですが、研磨の目的や材料の特性に合わせて適切に選択することが重要です。 |
メリット・デメリット | うねりやダレを発生させず、特に両面ラップ研磨ではμm単位の高さ寸法のコントロールが可能となり、精密な寸法制御が必要な部品の研磨に有効です。 しかし、平面部分のみの研磨にしか対応できず、その精度は、定盤の管理状態にも大きく依存します。 また、施工可能なワークサイズにも制約があり、大きな部品の研磨は困難であるというデメリットを有しています。 |
表面状態 | 表面に研磨傷はほとんど見えない程度になり、鏡面研磨が可能です。 |
円形に布を束ねたバフをグラインダーなどに取り付け、研磨剤をバフに塗布して回転させ、対象物に押し当てることで表面を磨く方法です。
大型の機械に加工物と研磨石、研磨剤、水を入れて回転・振動させる方法です。この方法は、一度に大量の部品を効率よく研磨できる点に特徴があります。自動車部品や大量生産される部品の仕上げに適しており、経済的に大量の部品を処理することが可能です。
ただし、精度はやや低く、仕上がりの均一性に限界があるため、高精度な仕上げが求められる部品には向いていません。
適用範囲が広く、特にバリ取りやスケール除去に効果的です。
高速回転する砥石を用いて材料の表面を削る方法です。砥石は砥粒と結合剤で構成され、砥粒が摩耗しても新しい砥粒が現れるため、連続して研削が可能です。金属加工や工具の製造に広く用いられ、精度の高い仕上がりが求められる場面で重宝されます。
使用する砥石の種類や粒度により、粗研削から精密研削まで幅広い加工が可能で、特に硬度の高い材料や複雑な形状の加工に適しています。
適切な砥石を選定することで、効率的かつ精度の高い加工が実現できます。
研磨加工の最初のステップである「下地」では、粗い砥粒を使用して材料表面の大きな凹凸や付着物を除去します。この工程は、全体的な大まかな削り取りが目的であり、表面の大きな不規則性や汚れを取り除くことが主眼です。
粗い砥粒を使用することで迅速に材料を削ることができますが、深い傷が残らないように適切な粒度を選ぶことが重要です。粗すぎる砥粒を使用すると、次のステップでの修正が困難になるため、素材の特性や目的に応じた粒度の選定が求められます。
「ならし」のステップでは、中程度の砥粒サイズを使用して、下地で生じた大きな傷を小さくしていきます。この段階で徐々に細かい砥粒に移行し、表面をより平滑にしていきます。表面の粗さを均一にすることが目的であり、各段階で使用する砥粒の粒度を慎重に選定することが必要です。
ならし工程を適切に行うことで、後の工程での仕上がりが大幅に向上します。特に金属や硬質材料の場合、ならし工程での微細な調整が最終的な製品の品質に大きな影響を与えます。
「つや出し」の工程では、さらに細かい砥粒を使用して表面を滑らかに磨き上げます。この工程では、表面がほぼ完成に近づくため、非常に細かい砥粒を使用して微細な傷を取り除きます。つや出しによって表面は鏡面に近い状態まで仕上がり、その美しさと平滑さが強調されます。
つや出しの工程を丁寧に行うことで、最終製品の見た目の質感と性能が大幅に向上します。特に、光学機器や高級装飾品など、外観の美しさが求められる製品では重要な工程です。
最後の工程である「鏡面仕上げ」では、極細の砥粒を用いて、完全な鏡面状の表面を実現します。この工程では、表面の最小の欠陥まで取り除き、完璧な滑らかさと光沢を追求します。必要な光沢度や表面粗さに応じて、この工程の砥粒サイズを微調整し、高精度な仕上げを行います。
鏡面仕上げは、製品の機能的な美しさだけでなく、耐腐食性や摩耗耐性の向上にも寄与します。最終的な仕上がりは、製品の品質を決定付ける重要な要素であり、高い専門技術と熟練の技術者が求められる工程です。
NEOSでは、ナノ単位での精密研磨技術を提供しています。この技術は、次世代の半導体や液晶製造装置のガス供給システムにおいて、超高純度ガスの純度を保持したままユースポイントに送るために欠かせません。また、超清浄な表面状態を実現するため、最終工程はclass100のクリーンルームでの精密洗浄を行なっています。
豊富な実績と経験を活かし、多様な研磨工法とノウハウを駆使して、材質や用途に応じた最適な研磨方法をご提案いたします。
「不動態化」とは、金属表面に酸化皮膜が形成された状態をいい、この酸化皮膜には、腐食(錆び)から素材を保護し、製品の耐食性を向上させる作用があります。
ステンレスの脱脂洗浄、酸洗浄後、さらに金属表面の不純物を除去すると同時に、金属表面上に化学的に安定した酸化皮膜を形成させます。
NEOSでは、形状を問わず最適な方法で施工します。ステンレス鋼の多くの場合、不動態化皮膜は、Cr2O3であり、数10Å程度の極めて薄い保護皮膜です。
機械研磨・電解研磨・化学複合研磨など、研磨手法は問わず、どの研磨工法でも、表面を平滑化させ、安定的な酸化皮膜を形成することが可能です。