ガラスフリットは、ガラスを細かく粉砕して得られる粉末状のガラス材料です。600℃以下の低温で軟化・流動する特性と、高い耐熱性・強度を併せ持つガラスフリットの応用は、産業界で広がっています。
本記事では、ガラスフリットの基本的な特徴から製造プロセス、さらに最新の活用事例まで、包括的に解説します。
ガラスフリットとは、ガラスを適度な大きさに粉砕した粉末ガラスのことです。
600℃以下程度の低温で軟化・変形・流動する、低融点ガラスのガラスフリットは、電子部品の接合、封着、被覆等の用途に、広く用いられています。 ガラスの組成を調整することにより、焼成時、軟化・流動した後、結晶化させることもでき、高い耐熱性や強度を発現させることもできます。
また、ガラスフリットを樹脂、溶媒などと混練し、ペースト状にしたものはガラスペーストとよばれ、印刷法などで基材に塗布することができ、シート状にしたものは、エレクトロニクス用の低温焼成基板にも使われています。
ガラスフリットは加熱処理により緻密な網目構造を形成します。無機物質ならではの強固な結合が生まれ、600℃以上の高温環境下でも構造が維持されます。また、適切な組成設計と焼成条件の制御で、曲げ強度や耐衝撃性を大幅に向上させることが可能です。
ガラス特有の非晶質構造が電子やイオンの移動を抑制し、高い電気絶縁性を実現します。同時に、溶融・焼結過程で形成される緻密な構造は、気体や液体の透過を防ぎ、優れた気密性をもたらします。
基板や部品間の接合において、確実な絶縁と密封が実現可能です。
無機物質で構成されるガラスフリットは、炭素-炭素結合を持つ有機材料と異なり、高温での分解や酸化が起こりにくい特徴があります。さらに、酸やアルカリに対する耐性も高く、過酷な環境下でも材料特性を長期間維持します。
産業用途における信頼性の向上に貢献します。
ガラスフリットは、電子部品や太陽電池セルを構成するセラミックスや電極の焼結助剤として使用されます。 使用されてるガラスフリットの粒度や組成は、電子部品や太陽電池の性能を大きく左右します。
断熱やセンサー等の保護のために、製品や部品内部を真空にして使用されることがあります。真空を封止するためには、微量ガスを透過しない、部材との接着性が優れている、封止材料自体が劣化しない等の機能性が必要です。ガラスはそれらの特性を同時に満たす優れた材料で、様々な製品に活用されています。
内燃機関や環境機器等で使用されるセンサーは、高温 / 高圧の環境下で正確に機能する必要があり、当社の耐熱・高強度封止ガラスは、外部環境から内部の電子部品や素子を保護する重要な役割を担います。
その他、ガスセンサーや測距センサー、照明部品の省エネ化に貢献する各種センサーでも、ガラス素材が使われています。
SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)は、「固体酸化物形燃料電池」と呼ばれ、水素などの燃料と酸素の化学反応により電気を生成する発電機で、CO₂排出を大幅に削減するクリーンな発電システムとして利用されています。
SOFCは、一般的には多数のセルを積層して構成され、各セルは燃料と酸化剤を分離し、反応に使用しなかったガスを排出する役割を果たします。このセル間を連結し、反応ガスを外部に漏らさないよう気密封止を行うのがガラスの役割です。 SOFCは高温(700℃~)で稼働するため、封止部のガラス製品は、この高温でも劣化しないことが求められます。
耐熱・高強度封止ガラスは、SOFCの稼働温度で安定した性能を維持し、長期間にわたる発電を可能にしています。
SOFCの逆反応(水を電気分解して水素を得る技術)を利用した固体酸化物形電解セル(SOEC:Solid Oxide Electrolysis Cell)が注目されています。 カーボンニュートラルをキーワードとする 2050年の世界に貢献する技術として注目される SOECには、前述のSOFCで培った気密封止技術の貢献が期待されています。
ガラスフリットの製造プロセスは以下のような手順で行われます。
目的とする特性を持つガラスを製造するため、原料の選択と計量・調合を行います。主要な原料としてシリカ(二酸化ケイ素)が基本となり、ホウ酸やアルカリ金属酸化物(ナトリウムやカリウムの酸化物)が添加されます。
さらに用途に応じて各種金属酸化物も配合。原料の組成比は最終製品の特性に大きく影響するため、高精度な計量管理が求められます。
調合された原料は1000℃以上の高温炉内で加熱溶融されます。溶融過程では原料間の化学反応が進行し、均一なガラス液が形成されます。
溶融条件の制御は最終的なガラス特性を左右する重要な要素です。温度分布の均一性確保や不純物混入防止など、細心の注意を払いながら溶融工程が進められます。
溶融状態のガラスを急速に冷却する工程です。水中急冷法では溶融ガラスを直接水中へ流し込み、ローラー急冷法では冷却ローラー上で薄いフレーク状に成形します。急激な温度低下によってガラスは意図的に脆い状態となり、後工程の粉砕効率が向上します。
急冷されたガラスは粉砕機によって微細化されます。粉砕工程では、最終用途に適した粒子サイズ(一般的に30μmから0.1μmの範囲)まで、段階的に粒度を調整します。
粉砕条件は均一な粒度分布の実現や不純物混入防止の観点から、綿密に管理されます。
粉砕されたガラス粉末から目的の粒度範囲の粒子を選別。篩い分け、風力選別、遠心分離などの手法を用いて、粒度分布の制御を行います。
分級精度は製品の品質に直結するため、各種分級装置の最適な運転条件が設定されます。
製造された各ロットのガラスフリットについて、化学組成、粒度分布、純度などの項目を検査します。蛍光X線分析による組成分析、レーザー回折式粒度分布測定、不純物分析など、多角的な品質評価を実施し、製品規格への適合性を確認します。
ガラスの持つ焼結 / 封止 / 接着 / 耐熱等の性能をいかにして引き出し、お客様ニーズにお応えするか。 当カンパニーは、その歴史的積み重ねを背景として、さまざまな用途での市場化経験を有しており、独自の技術とノウハウで、最適な製品・技術をスピーディーかつ的確にご提案することが可能です。
近年においては、電子部品の小型化やセンサー性能の高精度化、精密な環境システムの開発等が進んでおり、ガラスフリットやペーストの果たす役割はますます重要になっています。これらのトレンドを踏まえ、私たちは、ガラスが持つ封止接着性・耐熱性・絶縁性などの機能性を最大限に活かす、先端材料の開発に取り組んでいます。
低軟化点~高軟化点、低膨張~高膨張、幅広いラインナップでお客様のニーズにお応えいたします。
焼結助剤とは、各種セラミックスや金属の粉末を焼結成形する際に使用する添加剤で、焼結を促進し安定化させることで、セラミックスや金属粉末の製品の性能と信頼性を向上させ、生産効率を高める重要な役割を果たしています。
セラミックスは、高温で焼結し硬化させることにより、硬度 / 耐熱耐摩耗性 / 耐蝕性などの優れた特性を持つ材料です。 当カンパニーの提供する焼結助剤用ガラスフリットは、このセラミックスの焼結を促進させ、環境負荷を低減し、エネルギー効率を向上させます。
金属粉末もまた、高温で焼結することで硬化し、強度が増す素材で、この焼結促進剤としてガラスフリットが使用されています。粉末の焼結助剤としてだけでなく、板、部品、異種材料間での接着や封着にも利用できるガラスを多数ございます。
当カンパニーでは、お客様の基材の特性や焼成温度に合わせて、最適な組成や形状(粉末 / ペースト / タブレット)のガラスをご提供致します。お気軽にお問い合わせ下さい。
グレーズ / オーバーコート用ガラスは、例えば下記のような用途に使用され、その製品の性能及び信頼性向上に重要な役割を果たしています。
HIC(ハイブリッド集積回路)とは、一枚の基板上に、個別に作られたコンデンサや抵抗、トランジスタなどの半導体素子を一つ一つ貼り付け、それらを金属配線で結んで一体化させたものをいいます。このHIC製造過程で、半導体素子の接着や封止、または電子部品の保護などの目的で、これらのガラスが使用されています。
チップ抵抗器とは、面実装抵抗器とも呼ばれる直方体の抵抗器で、小さなセラミック基板上に金属皮膜を抵抗体として形成したものです。この抵抗体を保護する目的でガラスが使用されています。
サーマルヘッドは、基板上の抵抗体に通電することにより発生するジュール熱で、感熱紙または熱転写リボンなどの熱反応材料を反応させ、記録するためのデバイスです。
このサーマルヘッドの発熱抵抗体は印刷時に非常に高温になります。この発熱抵抗体を保護するために使用されています。
こちらも、フリット、ペーストのどちらでもご提供可能です。
所定の温度で焼成すると結晶化し、高耐熱性と強度を持つようになる結晶化ガラス材料です。
その優れた機械的強度や接着性などの特長を活かして、高温稼働が必要になる箇所の封止や接着用途にご好評をいただいており、さまざまな分野で広く利用されています。
当カンパニーでは、電子部品の実装に適した素材として広く使用されているアルミナ基材用をはじめ、SUS等の金属基材用を取り揃え、お客様の用途に応じて、最適なご提案をいたします。ペースト、ガラスタブレットとしても提供可能です。
高周波帯域で誘電損失を飛躍的に抑えることのできるLTCC材料として、比誘電率を振った、”SK4”、”BR03”、”FT7”の3種類の材料を開発しています。 LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)は、低温同時焼成セラミックスのことです。この製造工程で、ガラス材料を加えることにより、従来のセラミックス基板より低温での焼成が可能になり、電気的特性に優れた多層基板が可能になります。
この基板は、高周波特性に有利となり、さらに、基材がセラミックスであるため、耐熱性・耐久性に優れています。 これらの特性から、LTCCは、高周波モジュール、半導体パッケージ用の基板、耐環境性が要求される用途としての基板など広く利用されています。また、5G通信等の高周波帯域で多く使用されています。
その他にも、お求めの特性(誘電特性、強度、熱膨張係数等)に応じて材料を取り揃えておりますのでお気軽にお問い合わせください。
当カンパニーは、少量~量産多品種生産を強みとしています。これにより、市場変化への迅速な対応、多様化する顧客ニーズに対応する新素材の開発等、お客様の取り組みに、最適なガラス製品の提供で貢献いたします。
お客様のご要望に誠実に耳を傾け、ニーズに的確にお応えできる材料組成のご提案、開発を行います。 ガラスの持つ焼結、封止、接着、耐熱等の性能を、お客様の用途に合わせて最適化した製品・技術をご提案いたします。独自に積み重ねてきた技術とノウハウで、製造のみならず、開発においても、きめ細やかなカスタマイズ対応で、お客様のニーズをカタチにいたします。
少量~量産多品種生産とも関係しますが、当カンパニーではお客様のご要望に最適なロットサイズでの製造を強みにしております。 お客様のご所望スケールに合わない設備で製造致しますと、ガラスの均質性等の品質が悪化してしまいます。 したがって、当カンパニーでは、お客様のご要望にしっかりと耳を傾け、高品質のガラスを実現し、量産化に際しても、再現性よくスケールアップすることが可能です。
また、製造プロセスにおける品質管理も徹底しており、コンタミネーションの少ない高品質な製品をお届け致します。
ニューガラスカンパニーでは、焼結助剤、封着・接着用、グレーズ / オーバーコート用など、想定用途に応じて要求されるガラス特性を最大限に活かした製品の設計、加工、量産まで、お客様と伴走しながらサポートしております。 その他、高耐熱結晶化ガラス、超低誘電損失LTCC材料をはじめ、各種高機能ガラスにつきましても、お気軽にお問い合わせください。
近年世界のエネルギー消費量は爆発的に増えており、エネルギー対策は社会の最重要課題のひとつになっています。
日本山村ガラスのコアビジネスであるガラスびんは、3R(Reduce/Reuse/Recycle)すべてに対応し、資源の有効利用と資源循環に最適なモデル素材と言われています。
我々ニューガラスカンパニーも、地球からの贈りものであるガラスの素材特性や機能性を活かし、未来を支える先端材料として、新たな高付加価値ガラスフリット等の開発を通して、環境負荷の少ないエネルギーへの転換を支える素材メーカーとして社会に貢献し、持続可能な社会の実現を目指し取り組んでいます。
100年を越える経験で磨かれた技術を原動力に、これからも私たちはガラスの領域に止まることなく、その技術を活かし、ミクロからナノへ、未来を支える先端材料の開発に取り組んでいきます。ご期待ください。