3Dプリンタ技術の進化により、軽量かつ高強度な部品設計がますます重要視される中で注目されているのが「ラティス構造」です。本記事では、ラティス構造の基本とそのモデリング技術について解説します。
ラティス構造とは、一般的に格子構造を指し、周期的なパターンや配置を持つ立体構造のことです。ラティスの単位セル(格子構造全体を構成する最小の繰り返し要素)は、面や線で構成されたり、特定の基準や方程式によって配置されたりするものなど、多岐にわたります。
ラティス構造の基本的な特徴は、気孔があり、中身が空洞化されていることです。これにより、中身が詰まったソリッド形状に比べて圧倒的に軽量になります。軽量化は、材料費、製造コスト、輸送コストの削減につながるため、製造業において非常に重要視されています。
ものづくりにおいて、より高性能な製品をより効率的に製造することは常に重要な課題です。特に近年普及が進む3Dプリンタ(付加製造、AM)では、従来の製造方法では不可能だった複雑な形状を作成できるようになり、設計の可能性が大きく広がっています。
このような3Dプリンタの特性を最大限に活かすための設計手法は「DfAM(Design for Additive Manufacturing:付加製造のためのデザイン)」と呼ばれています。DfAMを適切に適用することで、従来の製造方法では難しかった軽量化や機能向上、コスト削減などのさまざまなメリットを実現できる可能性があります。
DfAMにはいくつかの種類がありますが、代表的なものとして以下の4つが挙げられます。ラティス構造もその中のひとつです。
ラティス構造 | 複雑な格子状の内部構造を作成することで、デザインの自由度を高め、軽量化や機能向上を目指す手法です。 ![]() |
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パーツの結合 | 複数の部品を一体化して設計・造形することで、部品点数を削減し、組立工程やコストを削減する手法です。 ![]() |
トポロジー最適化 | 設定された負荷条件に対し、必要な強度を保ちつつ材料使用量を最小限に抑える形状をコンピュータが算出する手法です。主に軽量化やコスト削減に貢献します。 ![]() |
ジェネレーティブデザイン | AIやアルゴリズムを用いて、人間では思いつかないような効率的で革新的なデザイン案を自動で生成する手法です。 |
ラティス構造は内部が空洞化されているため、中身が詰まった状態(ソリッド)と比較して圧倒的に軽量です。さらに、構造を工夫することで、熱効率の向上(熱交換・熱放散)衝撃吸収性といった物性値とは異なるパフォーマンスを発揮させることが可能です。
ラティス構造には様々な種類があり、用途に応じて適切なタイプを選択することが重要です。ここでは、「nTop」という3Dプリンタ向けモデリングソフトウェアで作成できる5つのタイプのラティス構造をご紹介します。
線や面を単位とした、周期的なパターンを持つ基本的なラティス構造です。既定のタイプリストから選択するため作成が容易です。
三重周期極小曲面(Triply Periodic Minimal Surface)を利用した、滑らかな曲面で構成されるラティス構造です。既定のタイプリストから選択するため作成が容易です。熱交換効率の向上に効果的な形状です。
特定の点群を基準に、クモの巣のように枝が広がるラティス構造です。点群を操作することで、ラティスの疎密(密度)をコントロールしやすい特長があります。
作成したメッシュデータを元に枝が張り巡らされたラティス構造です。メッシュの形状によってラティスの状態が大きく変化します。サイズコントロールが容易な特長があります。
モデル形状のほか、点、線、面、方程式などを利用して作成するオリジナルのラティス構造です。モデル形状を使用する場合は、配置セルのサイズを指定でき、ラティスの厚みは自動で調整されます。一方、線や面を利用する場合は、セルのサイズやラティスの梁(はり)の厚みを任意に設定できます。
ラティス構造は非常に複雑な形状を持つため、従来のCADソフトウェアでモデリングを行う際には以下のような課題があります。
ラティス構造のように細かく繰り返されるパターンは、データ量が増加しやすく、その結果ファイルサイズが非常に大きくなります。これにより、設計データが重くなって動作が著しく遅くなるだけでなく、そもそもファイル自体が開けず、作業を開始すらできないという致命的な問題が発生することもあります。
従来のCAD機能ではラティス構造のような複雑なパターンの自動生成が難しく、多くの工程を手作業で処理する必要があります。そのため、設計には多大な時間と労力がかかり、業務効率の低下につながります。
ラティス構造の利点は、単なる格子構造にとどまらず、部位ごとに密度や厚み、形状を変えることで、軽量化と機能性(応力分散や熱伝導性の向上など)を同時に実現できる点にあります。しかし、従来のCADでは、シミュレーション結果や外部データをもとに構造を柔軟に調整・最適化することが難しく、こうした非均一な設計を行うには多大な手間がかかってしまいます。
このような従来の設計手法やCADソフトウェアの限界を克服し、3Dプリンタの可能性を最大限に引き出すために開発されたのが、3Dプリンタ向けモデリングソフトウェア「nTop(旧nTopology)」です。
nTopは、従来のCADやCAEソフトを置き換えるものではなく、それらと3Dプリンタの橋渡しをするツールです。既存のCADデータをnTopにインポートし、ラティス構造の生成やトポロジー最適化といった高度なエンジニアリング作業を実行することで、3Dプリントに最適化された造形を実現できます。
nTopは、従来のCADソフトとは異なる陰関数を用いたモデリング手法(インプリシットモデリング)を採用しているため、非常に軽く・速く扱うことができます。特に、従来のCADソフトではデータが重くなりすぎて扱えなかったような複雑なラティス形状や表面テクスチャ、トポロジー最適化した形状などを容易に作成・編集できる点に大きな特長があります。
従来のCADでは処理が困難だった複雑なラティス構造や、微細なシボ加工も、nTopでは軽快に扱えます。
nTop独自の手法により、解析結果に応じて、ラティスの厚さ、密度、穴形状のパターンなどを高度に制御できます。
一度作成したワークフローを、他のモデルに対しても再利用できます。設計フローの一部を自動化することで、繰り返し作業を大幅に削減できます。
3Dプリンタ向け革新的モデリングソフトウェア「nTop」について詳しく見る
nTopは、航空宇宙、自動車、医療、消費者製品など、幅広い産業分野で活用されており、製品開発の迅速化、性能向上、コスト削減に貢献しています。
アメリカのCobraAero社は、無人航空機用エンジンの空冷シリンダーを3Dプリント向けに再設計しました。温度分布・気流・圧力といった各種シミュレーション結果とラティス構造設計を組み合わせることで、50%軽量化と3Dプリンタ製造に適した形状の作成を達成しました。
Puntozero社は、電気レースカーのコールドプレート設計において、nTop独自のラティス設計機能を活用しました。複数のラティス構造を使用し制御することで、25%の軽量化に加え、熱伝達表面積を3倍に増加させることに成功しました。
DMG MORI社では、ロボットヘッド部品を3Dプリンタ向けに再設計しました。トポロジー最適化とラティス構造を組み合わせることにより、62%の軽量化と60%の部品点数、16倍の精度向上を達成しました。また、nTopでの設計過程をワークフローとして保存することで、その後の設計作業を大幅に効率化しました。
株式会社テクノソリューションズは、nTopの正規販売代理店として、お客様のnTop導入を多角的にサポートいたします。
nTopを効果的に活用するには、3Dプリンタでの造形を前提としたDfAMの考え方が重要になります。弊社では、nTopの導入・技術サポートに加え、3Dプリンタの選定に関するコンシェルジュサービスや、ご希望の形状での無料サンプル造形・造形相談なども承っております。お客様の用途や目的に最適な3DプリンタとnTopを組み合わせたソリューションをご提案いたします。
また、製品情報や技術的な内容については、ブログ、Webセミナーアーカイブ、導入事例、資料ダウンロードなど、様々なコンテンツをご用意しております。
nTopの導入支援として、無料の少人数制体験セミナー(ワークショップ/ウェビナー)を随時開催しています。ラティス構造を活用した軽量化や機能向上、3Dプリンタ向け設計にご興味がありましたら、ぜひお気軽にテクノソリューションズまでお問い合わせください。
所在地 | 〒160-0023 |
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設立年月 | 2005年03月 |
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