耐久性、耐熱性、耐摩耗性に優れた特性を有する「特殊鋼」という素材は、自動車部品、建産機、工作機械、工具類など幅広い分野でその性能を発揮しています。
この記事では、特殊鋼が有する特性や提供するメリット、種類、加工方法、さらには宮崎精鋼株式会社による特殊鋼製品について詳しくご紹介します。特殊鋼を活用した加工製品の採用を検討中の企業様は、ぜひ参考にしてみてください。
特殊鋼とは、鉄に炭素以外のさまざまな元素を加えた合金鋼のことです。
この素材は硬度、強度、粘り強さ、耐磨耗性、耐熱性、耐食性などにおいて優れた特性を提供するため、その特性に応じて自動車や機械などの軽量化や信頼性向上、工具類の性能向上、工業部品の性能向上などに貢献しています。
特殊鋼の特性には以下のようなものがあります。
特殊鋼は、通常の鋼に比べて顕著に高い硬度と強度を備えています。鉄基体にカーボンやその他の合金元素を添加することで、これらの特性が強化されます。建設機械や運搬車両の部品として使用する際、極端な圧力や重量に晒される環境でも、材料の変形や破損を最小限に抑え、長期間安定した性能を保証します。
高い耐摩耗性を備えた特殊鋼は、表面の硬さを高めることで摩耗を大幅に減少させます。機械のギアや軸、カッターブレードなど、摩擦による摩耗が問題となる部分に最適であり、長期間にわたる使用でも性能の低下を抑え、交換の頻度を減らすことができます。
特殊鋼は高温環境下でもその性能を維持する能力を持ちます。合金元素の添加が鋼の結晶構造を安定させ、ジェットエンジンや発電所のタービンなど、高温で運用される環境での使用に最適です。熱による変形や強度の低下が大幅に抑制され、耐久性と安全性を保証します。
ステンレス鋼を含む特定の特殊鋼は、顕著な耐食性を備えています。クロム、ニッケル、モリブデンなどの元素が鋼の表面に保護層を形成し、錆や化学的な腐食を効果的に防ぎます。化学工業、海洋構造物、医療機器など、厳しい環境や衛生が要求される場所での使用に理想的です。
高い靭性を有する特殊鋼は、衝撃や急激な力に対しても折れにくく、変形しにくい特性を持っています。温度変化が激しい環境や、衝撃が頻繁に起こる環境で使用される材料には、この特性が求められます。構造用鋼や車両のフレーム、工具に利用され、安全性と信頼性を高めます。
特殊鋼にはさまざまな種類があります。
炭素鋼は、鉄と炭素の合金で、他の元素の含有量が非常に少ない(通常は1.65%以下のマンガン、0.6%以下のシリコン、及び0.6%以下の銅)鋼です。炭素含有量によって低炭素鋼(0.25%未満)、中炭素鋼(0.25%~0.6%)、高炭素鋼(0.6%以上)に分けられます。強度と硬度は炭素含有量に比例しますが、伸縮性や靭性は低下します。
自動車部品、工具、刃物などに使用されます。
合金鋼は、特定の特性を得るために、鉄に一つ以上の合金元素(ニッケル、クロム、マンガン、モリブデンなど)を添加した鋼です。耐食性、硬度、強度、耐熱性などの特性が向上し、特定の用途に適した材料となります。
自動車部品、建築構造物、パイプラインなどに使用されます。
快削鋼は、加工性を向上させるために、硫黄や鉛などの添加元素を含む鋼です。これらの元素は切削中にチップを短くし、工具の摩耗を減少させます。
主に自動車部品や機械部品の製造に使われます。
この鋼材は、熱処理工程を省略しても優れた機械的特性を維持することが可能です。具体的には、鍛造後自然に空冷するか、圧延後に空冷することで、その性質が保たれます。典型的な非調質鋼としては、バナジウムを含む炭素鋼があり、この合金により、バナジウム炭素の微粒子が形成され、材料の強度が増します。
主に、自動車のサスペンションやエンジンなどのコンポーネントに用いられます。
高強度鋼は、特別な製造プロセスや合金元素の添加により、通常の鋼よりも高い強度を持つ鋼です。
軽量でありながら高い負荷に耐えることができるため、自動車の構造部材や橋梁などに使用されます。
ボロン鋼は、鉄に少量のボロンを添加した鋼です。ボロン添加により、硬度と強度が大幅に向上します。
自動車産業での衝撃吸収部材や農機具など、耐摩耗性が要求される用途に使用されます。
ステンレス鋼は錆に強く、主に鉄(Fe)に11%以上のクロム(Cr)を含有する合金鋼です。
耐食性をはじめ、機械的性質、加工性、耐熱性など優れた特性を持つため、食器、建築材料、機械構造部品、医療機械器具、航空機部品など非常に広範囲な分野で使用されています
ばね鋼は、優れた弾性限界と強度を持つ鋼で、ばねやその他の弾性部品に使用されます。高炭素鋼や合金鋼から成り、特に高い引張強度と復元力が求められる用途に適しています。
耐熱鋼は、高温環境での使用に適した鋼です。酸化やクリープ(高温での変形)に対する耐性があり、発電所、化学プラント、ジェットエンジンなどで使用されます。
特殊鋼の加工方法には、熱処理や塑性加工、切削加工などがあります。特殊鋼は硬度、強度、耐摩耗性などの特性を持つ合金であり、加工方法はその特性に合わせて選定する必要があります。
熱処理は、特殊鋼の硬度、耐摩耗性、そして靭性を最適化するための重要なプロセスです。このプロセスは、特殊鋼を一定の温度まで加熱し、その後特定の速度で冷却することで行われます。鋼の内部構造が変化し、所望の機械的特性を実現します。
熱処理にはさまざまな種類があります。例えば、焼入れは鋼を非常に高温に加熱し、急速に冷却することで硬度を増します。対照的に、焼戻しは焼入れ処理された鋼を中温で加熱し、その後ゆっくりと冷却することで、過度の硬さを抑え、所望の靭性や強度を得るために行われます。
これらの熱処理は、特殊鋼の性能を最大限に引き出すために、非常に精密に制御される必要があります。
塑性加工は、材料に圧力を加え塑性変形させることにより、所望の形状に加工する方法です。熱処理を加えてから塑性加工を行う熱間(温間)鍛造と、常温で行う冷間鍛造があります。
塑性加工には、鍛造、圧延、押出し、引き抜きなどの方法があります。鍛造では、圧力を直接適用して材料を形成します。圧延では、材料をローラーの間で圧縮し、板材や棒材などの形状に加工します。押出しでは、材料を特定の金型を通して押し出し、複雑な断面形状の製品を製造します。引き抜きは、材料を引き伸ばして所定の形状、寸法にする加工方法です。
特殊鋼の塑性加工は、製品の用途に合わせた正確な形状や寸法を得るために重要であり、加工プロセス中に材料の機械的特性を向上させることが可能になります。
塑性加工は、高い生産性と歩留率向上を可能にするため、特殊鋼製品の製造において広く利用されています。
切削加工は、特殊鋼を所定の形状や寸法に加工するために用いられる方法です。特殊鋼の高い硬度に対応するために、高度な技術と特殊な工具が必要とされます。切削工具の材質には、超硬合金やセラミックスが使われることが多く、特殊鋼の硬度に耐えられるように設計されています。
切削加工には、旋盤加工、フライス加工、研削加工など、製品の形状や必要な精度に応じた様々な方法があります。旋盤加工では、鋼材を回転させながら切削工具で削り取ることで製品を形成します。フライス加工では、回転する切削工具を鋼材に押し当てることで、複雑な形状や平面を削り出します。研削加工は、高精度で滑らかな表面仕上げが求められる場合に使用されます。
特殊鋼製品の製造は、原材料の精緻な選定から始まり、一次加工による鋼片の形成、厳しい品質検査を経て、二次加工メーカーでの高度な加工技術による製品仕上げに至るまで、高度な技術と厳格なプロセスを要求される複雑な工程です。
特殊鋼は、鉄鉱石や鉄のスクラップに、クロムやニッケル、マンガン、モリブデンなどの特定の合金成分を適切に混合して作られる鋼であり、製造プロセスにおいては最初にこれらの原材料を溶かすことから始まります。
続いて、不要な成分を取り除き、必要な合金成分を加えます。その後、この混合物を鋳型に流し込み、冷やして固め、鋳片を形成します。この鋳片は、大きなローラーなどを用いて圧延され、鋼片となります。鋼片はさらに、様々なサイズの棒鋼やコイルに加工され、厳密な品質検査を経て市場に出されます。最終的に、これらの製品は二次加工を行うメーカーに引き渡されるのです。
特殊鋼は、初段階の加工を行うメーカーから、更なる加工を施す二次メーカーへと送られます。二次加工メーカーへ依頼する企業は、自らが製造する製品に適した特性と形状を持つ特殊鋼を必要としています。
この要望に応えるため、二次加工メーカーは様々な技術を用いて、顧客の要求に沿った特殊鋼の形状、サイズ、そして機械的特性を具現化します。
宮崎精鋼株式会社は特殊鋼棒線の二次加工における固有技術にさまざまな付加価値を加え、お客様に満足いただける製品やサービスの提供を行なっています。
→宮崎精鋼の特殊鋼加工技術についてこちら
最新鋭の生産設備を導入する事により、設備の合理化とリフレッシュを実施。 品質・生産性の向上と物流の整流化を図り、環境負荷の削減も実現。 徹底したキズ防止管理のもと、お客様の満足する品質の製品を提供しています。
生産能力 | 13,000t/月 (生産委託含む) |
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鋼種 | 普通鋼、炭素鋼、合金鋼 非調質鋼、高強度鋼、ボロン鋼 他 |
製造範囲 | φ5~φ46 |
宮崎精鋼では、冷間圧造用鋼線の更なる加工製品として、中間粗形材である「ファインスラグ」の製造を行なっています。
長年培ってきた冷間圧造用鋼線の製造技術をベースにスラグ形状・金型・加工工程の設計に至るまで、独自のノウハウと徹底した管理により製造。「形状・焼鈍・被膜」の3拍子揃ったスラグを提供することが可能です。また、ニアネットシェイプ化を可能にするだけでなく、コスト削減効果や省エネ・省資源等の環境問題にも大きく寄与します。
生産能力 | 1,300t/月 |
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用途 | 冷間プレスで使用される自動車用部品の中間粗形材 |
特殊鋼線材(COIL)または棒鋼(BAR)を素材に、冷間で引抜加工を行う引抜製品、表面キズゼロを保証するピーリング(研削)製品、長尺センタレス(研磨)製品と、それらに切断・面取等の加工を施してユーザー様の用途や要望に応じて高品質・高性能の磨棒鋼製品を製造しています。
生産能力 | 冷間引抜品 3,000t/月 研削品(ピーリング) 2,000t/月 研磨品(CG) 300t/月 |
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鋼種 | 普通鋼、炭素鋼、合金鋼、快削鋼 他 |
製造範囲 | 丸鋼 φ5~φ63、六角 H12~H46、ピーリング φ18~φ65 |
素管としてPIC(パイプインコイル)を使用し、磨棒鋼のノウハウと引抜鋼管の技術を融合、「軽量化」という新たなバリューを生み出します。
生産能力 | 冷間引抜 300t/月 |
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鋼種 | 機械構造用炭素鋼 |
製造範囲 | 外径 φ9.5~φ32、肉厚 t1.2~t7.4 |