アルミニウムは、合金の種類によりますが、一般的には比較的柔らかな金属です。そのため、軽量で加工が容易な利点がありますが、一方で機械部品などの強度が必要な場面では利用が難しいという課題がありました。しかし、アルマイト加工を施すことでアルミニウムの硬度や耐食性を向上させる効果を調整することができます。
そこで今回は、機械部品などの分野で需要が高まっているアルマイト加工のメリットや種類についてご紹介します。アルマイト加工に関連するおすすめの製品も併せて紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
ポイント
・ アルミニウムの耐食性や絶縁性の向上効果を調整できるアルマイト加工
・アルマイト加工の種類には「白アルマイト加工」「 着色アルマイト加工」「硬質アルマイト加工」などが挙げられる
・アルマイト加工に関連するおすすめの素材加工技術やサービスをご紹介
アルマイト加工とは、アルミニウムを電解液中で通電することによって表面を強制的に酸化させ、自然の状態よりも厚く丈夫な酸化皮膜を生成する表面処理のことです。
アルマイト加工によって、アルミニウムの表面の硬度が格段に高くなり、傷や摩耗にも強くなるため、耐摩耗性が向上します。また、アルミニウムはイオン化傾向の高い金属で、腐食や変色を起こしやすい欠点がありますが、アルマイト加工を施すことで化学的に安定するため、耐腐蝕性が向上します。
一方、アルマイト皮膜は耐熱性が低く、100℃ほどでクラックや剥がれが生じるため、高温で使用される部品には向かないというデメリットもあります。
メッキは、素材の表面に金属の薄い層を被せる過程です。素材を陰極にすることで、電解液中の金属イオンが還元され、金属皮膜が表面に形成されます。
一方、アルマイトはアルミニウムの素材表面だけでなく、内部にも酸化皮膜を形成する処理です。この加工処理では素材を陽極にし、電解を行います。
アルマイト加工は、製品の機能やデザイン要件に合わせて選択できるさまざまな種類があります。
無色のアルマイト加工、通称「白アルマイト加工」は染料を使用せずに行われる加工処理です。この処理によって製品は白っぽい外観を持ちますが、実際に着色されているわけではなく、その色はアルミニウム自体の色に近いものです。
白アルマイト加工は非常に汎用性が高く、家庭用品、機械部品、工業製品など幅広い分野で利用されています。
着色アルマイト加工(カラーアルマイト加工)とは、アルマイト加工後の表面に形成された微細な孔(ポア)に有機染料や無機化合物を吸着させて染色する方法です。このプロセスにより、多様なカラーバリエーションが実現できます。
また、別の手法としてアルマイト加工後に金属塩を溶解した浴中で電解を行い、金属または金属化合物を皮膜孔内に析出させて染色する方法も存在します。この手法は電解着色と呼ばれるものです。
硬質アルマイト加工は、低温(0〜5℃)の処理液を使用して厚いアルマイト皮膜を生成し、高い硬度と耐摩耗性を持つ皮膜を形成する方法です。
通常、硬質アルマイト皮膜は約50μmの厚さを持ちます。一方、白アルマイト処理の皮膜は約5~25μm程度です。この違いによって、素材の特性が皮膜の性能差として表れます。
アルマイト加工を施すことによって様々な効果・機能を引き出すことが可能になります。
アルマイト加工により、耐食性を向上させることが可能です。特にアルミニウム合金は、特定の金属を添加することで、自然酸化皮膜だけでは腐食が進行する可能性があるため、アルマイト加工は非常に重要なプロセスとなります。
アルミニウムの硬度はHv20〜150(合金により異なる)ですが、アルマイト加工を施すことでHv200以上の硬度に向上させることが可能です。これにより、部品や機械の摩耗や傷の発生を抑制し、表面の耐摩耗性と耐久性を向上させることができます。
アルミニウムは高い導電性を持つ金属ですが、アルマイト膜を形成する酸化アルミニウムは電流を通さない絶縁体のため、アルマイト加工を施すことによって絶縁性の向上を期待できます。
アルマイト膜は、高い放射性を持つ遠赤外線などの特性を有しており、ヒートシンクなどの放熱性能向上に適用されることがあります。
アルマイト加工によって生成される酸化皮膜は多孔質構造を持ち、色素を浸透させることが可能です。そのため、さまざまなカラーバリエーションを楽しむことができ、装飾性が向上します。
銀、銅、金に続く熱伝導率の高い素材であるアルミニウムですが、アルマイト膜を施すことで、その熱伝導率は通常のアルミニウムのおよそ3分の1に低下します。
アルマイト加工によってアルミニウムの表面に形成されるアルマイト酸化被膜は、柔軟性に乏しく脆い性質を持ち、このためアルマイト加工部分を曲げたり加工したりすると、酸化被膜が破損する可能性があります。
高温には弱く、通常のアルマイト酸化被膜は100 ℃を超える高温環境で、熱膨張によるクラックや剥がれが発生するリスクがあるため注意が必要です。
また、アルマイト処理によって耐腐食性や硬度が向上しますが、強酸や強塩基の溶液には弱く、これらの溶剤に対しては溶解の危険性があります。
その他、湿潤な状態で他の金属と接触すると腐食のリスクが高まるため、使用目的に合わせて処理方法を選ぶ必要があります。
製品名 | 特徴 |
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溶融塩浸漬法を用いた「耐食・耐摩耗性の向上」 | 安価な処理浴を用いて高い耐摩耗性と耐食性を有す高硬度表面を実現します |
小ロット受託溶解・鍛造・圧延 | お客様カスタマイズの金属材料を原材料の配合から素形材の成形まで一貫生産可能です |
異種金属接合技術「AKROSE」 | 「冷間圧造技術」を活かした新発想の接合技術です |
金属用 耐熱コーティング剤「クレコート」 | 耐熱性・ガスバリア性に優れた 新しい金属用 耐熱コーティング剤です |
従来、機械部品や金型等、耐久性や耐摩耗性を要求される金属部材は、コーティング、拡散処理、熱処理等によって表面を改質し、耐食性や硬度を向上させてきました。しかし素材や用途、形状によっては、それら処理ができなかったり、耐久性に問題が生じるケースがあります。
そこで高品質でかつ容易に金属表面を硬化することのできる安価な処理方法を研究し、溶融塩浸漬法を用いた「ホウ化処理法」を実現。
この方法によって非常に高い硬度を金属部材に賦与することができます。また安価なホウ素源であるホウ砂を用いて短時間で硬化処理を行うことが可能です。
お客様カスタマイズの成分配合調整が可能です。
工場では20種類以上の原材料を常備し、真空誘導溶解炉を利用した脱ガス精錬によりクリーンなインゴットを溶製できます。通常、特殊鋼メーカーにカスタム合金の依頼すると1ロットあたり数百キロの量を要求され納期も半年以上要することは珍しくありません。
エイワの溶解するインゴットは15kg、30kg、100kgと小型化も可能で納期も1.5~2.0か月程度と競争力があります。溶解後は熱間鍛造と熱間圧延により鋳造組織を分塊し動的再結晶により微細化していきます。
異種金属接合技術「AKROSE」は、市場トレンドである2種以上のマルチマテリアル化に対応した、新発想の接合技術です。
・常温環境における1回のプレスで、「所定形状への成形」と「部材同士の接合」を 同時に行うことが可能。
・冷間圧造を応用した技術を用い、工程を単純化。それを通じて、「密着性」と「接合強度」を高水準で両立。
・接合箇所や接合強度を調節することができるため、自由な発想で設計が可能。2種以上のマルチマテリアル化にも適応。
「クレコート」は、主成分に粘土鉱物を使用した新しい金属用 耐熱コーティング剤です。
金属材料に塗布し、600℃の焼成によってコーティング剤と金属素材が密着します。
耐熱性とガスバリア性に優れた特性を活かし、高温環境での金属の腐食抑制や水素などのガスの遮蔽など、さまざまな用途への応用が可能です。
アルマイト加工は、耐食性や耐摩耗性を求められる様々な製品に施されています。
自動車部品 | エンジン部品、サスペンション部品、ホイール、ボディパーツなど |
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電子機器 | スマートフォン、タブレット、ノートパソコン、テレビなど |
建築資材 | 窓枠、ドアハンドル、手すりなど |
スポーツ用品 | 自転車フレーム、釣り竿、ゴルフクラブなど |
航空宇宙産業 | 航空機の部品や宇宙船の構造部品など |
医療機器 | 人工関節、手術器具、歯科用具など |
照明器具 | ランプベース、シャンデリアのアームなど |
今回は、アルマイト加工について解説しました。アルミニウムをアルマイト花王することにより、耐食性や耐摩耗性、放熱性、絶縁性などが向上します。使用目的や環境に合わせて処理法を選択すれば、多様な分野での応用が可能です。また、カラーリングも実現できるため、デザインの幅も広がるでしょう。
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